『リリーのすべて』感想、究極で、親密で、美しいラブストーリー
3月18日公開の『リリーのすべて』をお先に鑑賞させて頂きました。世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベを描いた本作。リリー・エルベへの感情移入はもちろん、リリーの"妻"ゲルダに感情移入して胸が苦しくなりました。何日経ってもラストシーンが鮮明に脳裏に浮かびます…。
この記事の目次
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■ 感想Q&A
■ 感想:親密で美しいラブストーリーだった
■ とにかく美しい
■「ラストシーンにこんなにやられた経験があっただろうか…
■ リリー・エルベとゲルダ夫妻について?
■ 『リリーのすべて 』作品概要
感想Q&A
柳下さんは満足できましたか?
苦しいと思うほどのラブストーリー…。
家族で楽しむことはできますか?
難しいかもしれないけど、知る価値はある物語。
小学生の子供が楽しむことはできますか?
難しいかもしれないけど、知る価値はある物語。
友達同士で楽しむことはできますか?
語りたいが言葉にできないという事象が発生するかも。
デートで行くのはどうですか?
究極の愛の物語を前にあなたたちは何を思う?
(重い話なので軽いデートには向きません)
映画リピーターは見た方が良いですか?
トム・フーパーはずさねえ・・・
感想:親密で美しいラブストーリーだった
世界で初めて女性への性転換手術を受けたリリー・エルベを描く映画です。
難しいことなど言わずに、率直な感想を申し上げれば「なんて究極で、親密で、美しいラブストーリーなのだろう」と言うこと。
ラブストーリーというものは「愛するものたちの物語」であるわけですが、性別が変わることがそこにあってもお互い愛する(特に妻ゲルダからリリーへの思い)は非常に強く揺るぎないもので、「人はここまで人を愛せるのか」という力強い何かをもらいました。
「愛すること」の究極を描いているので、その意味で二人が決して"普通"で無いとしても私たちには親密であるのです。もちろん、そこには今この現代において昔よりはトランスジェンダーに理解が広まっている風潮があるのが事実。しかし、それを差し置いてもとても親密であるなと感じました。
(エディ・レッドメイン自身がインタビューで本作を「親密で美しい」と語っています)
リリーの壮絶なドラマに心が揺さぶられながら、妻のゲルダの愛がそれにも増して私たちを感動させます。
本当に・・・凄い女性です。究極的に人を愛する手本と言っても過言では無いでしょう。薄っぺらい「愛」や「恋」など語るのが恥ずかしくなるほどです。
とにかく美しい
1920年代のデンマークという美しい舞台、エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルという美しき主演。美しき美術、美しき音楽。『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』と時代モノで力を付けてきたトム・フーパー監督の演出が細部にまで冴え渡ります。
「女性になるには?」を問うリリーは仕草など細部までこだわります。
エロティックさももちろんその中に入るため、あるお店を「そう使うのか」と感心の目で見てしまうシーンもあるほど。様々な美しさが内在する映画ですが、このリリー自身の美しさはそれだけで1つの魅力と言えるものです。
『つぐない』や『キャロル』などでも指先に意識がいく演出が成されましたが、本作もそういった細部を非常に感じる繊細な美しさを持った作品でした。
そして音楽は語りたくなります。絶好調のアレクサンドル・デスプラのスコア。『英国王のスピーチ』でもトム・フーパー監督と組んでおり、他の監督作品では『イミテーション・ゲーム』『ハリーポッターと死の秘宝』『グランド・ブダペスト・ホテル』などが有名ですね。
本作もアレクサンドル・デスプラらしさが遺憾なく発揮されていて、美しいピアノのメロディーが心に染みます。そこにあの映像・・・。後述しますが、ラストシーンが映像と音楽合わさって脳裏から離れないのです。
ラストシーンにこんなにやられた経験があっただろうか…
本作のラストシーンはとにかく印象的。決して超ドラマティックな何かが起きるシーンではありません。
物語に1つの区切りがついた「その後」の小さなエピソードに過ぎません。しかしそれがあまりにも・・・もう・・・言葉で言い表せないほどのインパクトでした。
「愛」とはここまで深いのかを映画全編で見せつけられ、ラストシーンで「自由」とはこんなにも切なく表現できるのかを見せつけられました。
見ればわかります。泣いたとか、感動したとか、その上をいく何もできず、考える思考が止まってしまう、そんなラストシーンでありました。
本当に素晴らしかった。(私の中で歴代ベストにラストシーンかもしれない)
そんな「愛」と「自由」を意識させられました。
リリー・エルベとゲルダ夫妻について?
リリー・エルベと妻のゲルダについては本作の最初の情報が来た時に記事にさせて頂きましたが、読みやすいようにこちらにも書いておきましょう。
・本名はエイナル・モーゲンス・ヴェゲネルで、リリー・エルベは女性としての名前
・女性であるゲルダ・ゴットライプと結婚
・ゲルダの絵のモデルで女性の服装を身にまとい、そこから目覚めた
・ゲルダはリリーが女性になりたいと思った後も支え続けた
・1930年から1931年にかけて5回に渡る手術を受ける
・睾丸摘出手術、陰茎の除去、卵巣の移植手術、拒絶反応による卵巣の再摘出手術、そして新たな卵巣移植手術などを得て母としての体になった
・1930年にデンマーク国王クリスチャン10世がリリーとゲルダの婚姻を無効とした
原作は2001年に出版されたデイヴィッド・エバーショフの著作です。こちらの映画化ということになります。
どことかは言及しませんが、史実と明確に異なるシーンが複数ありました。
もちろん「史実を元にした映画」は脚色されているので当たり前のこと。私が気付いた脚色シーンは、映画的な感動を増幅させリリーとエルダ(特にエルダ)の内面をより強く描く効果となっていたので良かったと思います。
『リリーのすべて』はトランスジェンダーを描くということで偏見を抱いている方も正直なところいらっしゃるかと思います。しかし、冒頭に書いた通りこの映画は「究極で親密で美しいラブストーリー」なのです。
「愛すること」の本質を描いています。
リリーとゲルダの愛の人生を是非劇場で堪能してみてください。
『リリーのすべて』作品概要
映画タイトル
『リリーのすべて』
『リリーのすべて』
キャスト
エディ・レッドメイン
アリシア・ビカンダー
ベン・ウィショー
セバスチャン・コッホ
アンバー・ハード
マティアス・スーナールツ
エディ・レッドメイン
アリシア・ビカンダー
ベン・ウィショー
セバスチャン・コッホ
アンバー・ハード
マティアス・スーナールツ
監督
トム・フーパー
トム・フーパー
ストーリー
1926年、デンマークのコペンハーゲン。風景画家のアイナー・ヴェイナーは結婚して6年目になる肖像画家の妻ゲルダと仲睦まじい日々を送っていた。ある日、ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を引き受けたのがきっかけとなり、自分の中に潜んでいた女性の存在を自覚するようになる。最初は遊びのつもりでアイナーに女装をさせ、“リリー”として外に連れ出し楽しんでいたゲルダも、次第にアイナーが本気だと気づき激しく動揺するが…。。
公開日
2016年3月18日
鑑賞者のレビュー
Filmarksの参照をオススメします。
予告編