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第65回ゴールデングローブ賞作品賞、第80回アカデミー賞7部門ノミネート1部門受賞という評価を得た傑作イギリス映画です。身分の違いをものともせず、結ばれて愛し合った男女と女の妹の3人を主人公に戦争に翻弄される姿を描いていきます。
どんな映画?
1935年イギリス。ある夏の日、タリス家の末娘ブライオニーは、姉セシーリアと使用人の息子ロビー・ターナーの些細ないさかいを目撃し……。ひとりの無垢な少女の嘘によって人生を狂わされてしまった一組のカップルの運命を描く、現代英国文学界を代表するイアン・マキューアンによる傑作小説「贖罪」(新潮社刊)を、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督&キーラ・ナイトレイ主演で映画化。共演にジェームズ・マカボイ、ロモーラ・ガライ、バネッサ・レッドグレイブら。
参照:http://eiga.com/movie/53171/
本作はざっくり言えばラブストーリーです。原作はイアン・マキューアンのベストセラー小説『贖罪』。英語タイトルは原作も映画も『Atonement』ですが、日本では原作『贖罪』、映画邦題『つぐない』となっています。意味は同じなので問題は特にありません。
映画の構成は大きく3つに分かれています。
・夏の長い長い一日
・戦争に翻弄される三人
・妹の「つぐない」
この3つの構成です。
長い長い一日をかけて、キーラ・ナイトレイ演じるセシーリアとジェームズ・マカヴォイ演じるロビーの男女の恋を描いていきます。二人は結ばれ激しく愛し合うも、あることをきっかけにセシーリアの妹ブライオニーに執拗に妬みを買ってしまい、ある事件の冤罪としてロビーが逮捕されてしまいます。二人は引き裂かれるのです。
引き裂かれたあとは時代は代わり第二次世界大戦へ突入。それぞれ引き裂かれた三人が別々に描かれていきます。妹のブライオニーは三つの場面それぞれで演じる女優が異なり、幼少期はシアーシャ・ローナン、成人期はロモーラ・ガライ、老年期はヴァネッサ・レッドグレイヴが演じています。
つらい戦争時代を経て映画はクライマックスへ。ここでタイトルの「つぐない」の意味が明かされるのですが、ここで衝撃の事実に驚き唖然、そしてとてつもない悲しみと言いますかやりきれなさを心に植え付けられ映画は幕を閉じます。
とてつもなく美しい映像で描かれるラブストーリーでありながら、その美しさはまるで三人の運命を嘲笑っているかのようでどこか意地悪。心と脳にこびりつき、後を引く美しく切ないラブストーリーなのであります。
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図書室のラブシーンの美しさたるや
個人的な話ですが、この映画は私の歴代ベストムービーです。そう言うと各メディアの記事を御覧頂いた方々も手に取ってくださるのですが、要注意点はラブシーンです。家族で見ると気まずくなります。恋人同士ならむしろオススメ。この映画にはビジュアル的に激しいラブシーンは存在しません。しかし、この映画のラブシーンはとても官能的なのです。
ラブシーンといって、みなさんは何を想像されますか。当然男女の行為そのものですが、その中の何を想像されますか。裸で抱き合ってるそれなのか、より踏み込んだそれなのか、何かの映画のラブシーンなのか、この辺は人それぞれ異なると思います。
この映画のラブシーンが官能的な理由は「見えてないのに何をしているかわかる」こと。見ればわかります。ビジュアル的にR指定かかるものは無いのに何が起きているかわかるのです。
ブライオニーは邸宅の長女、ロビーは使用人の息子で身分が異なる二人。しかし二人は長年心のどこかで好意を感じていたのでしょう。ちょっとした"ラブレタートラブル"が結果的に好転して気持ちを通い合わせた二人は我慢できる図書館で激しいキスを交わし、ラブシーンへと突入します。
激しく愛し合い、求め合い、そして・・・ある瞬間、二人の呼吸が一瞬止まるのです。これはエロいという側面での官能性を超越してとてもとても美しい官能性に満ちあふれています。
そして二人は"I love you."、"I love you too."と囁き合ってより激しく求め合います。邸宅の図書室での情事ですが、二人にとっては永遠の愛の希望を持った瞬間であったに違いありません。
しかしそんな二人の行為は13歳のブライオニーに見られてしまい、これが悲劇への突破口となってしまうのでした。この激しい求め合う行為がこの後の映画全体に影響していきます。
美しく激しく官能的で意味があるラブシーンなのです。ある意味このお互いが求め合う激しさこそ最高の愛なのかもしれません。
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少女ブライオニーの妄想と暴走が悲劇を助長
ロビーとセシーリアの激しい行為を見てしまったブライオニーは心の何処かでロビーを好きだったこともあり激しい嫉妬を抱きます。そもそも13歳という少女が目の前で、しかも図書館で行為する二人を見たわけですので影響がない方がおかしいです。前述の"ラブレタートラブル"とは、ふざけて下ネタ的に書いたラブレター。それを間違えてブライオニー経由でセシーリアに渡してしまうのですが、ブライオニーがそれを見てしまったんです。"Cunt"、つまり"女性器"という単語を用いたふざけたラブレター。それがセシーリアに渡ったことは結果的に激しい行為になったわけですが、この単語を13歳のブライオニーが見たらそりゃ驚くわけです。
"Cunt"という言葉を用いた"淫乱なラブレター"、"図書室で行為に及ぶ淫乱な二人"、少女の認識ではこのように"淫乱"、もっと言ってしまえば"変態"としてロビーの印象はどんどん悪くなっていってしまうのです。
そしてある強姦事件を目撃してしまったブライオニーは、被害妄想と想像の暴走から犯人はロビーであると警察に言うのです。ブライオニーは実際に犯人の顔を見ました。しかし自信満々に犯人はロビーと警察に言ったのです。少女には激しすぎた愛の形が妬みとなり、冤罪という悲劇を生んでしまったのです。
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妹は罪の贖いを願った、二人は再会を信じた
ここまで書いてきたことは映画の導入部に過ぎません。本題はここからで、ここからは是非DVD等を借りてご覧頂きたいです。
引き裂かれてしまったロビーとセシーリア。運が悪く第二次世界大戦へと時代は突入していき、ロビーは兵役へ。セシーリアもブライオニーも離れてそれぞれの道を歩むことに。
罪の贖いを願ったブライオニー、再会を信じたロビーとセシーリア。
その結末は如何に。あまりに衝撃的な結末に驚くと共に、愛の大切さや儚さを感じる美しく切なく儚いラブストーリーであります。
written by shuhei