『グランド・ブダペスト・ホテル』感想、ウェス・アンダーソン節大炸裂!可愛くコーティングされた大傑作の裏にはシュテファン・ツヴァイクへの敬意と現代への皮肉も描かれる…[ネタバレなし]
ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したウェス・アンダーソン監督の最新作『グランド・ブダペスト・ホテル』が6月6日に公開されます!一足お先に鑑賞して参りました!
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□私的満足度
★★★★★=星5=お見事!これは傑作です!【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。
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□『グランド・ブダペスト・ホテル』基本情報
タイトル=グランド・ブダペスト・ホテル
原題
=The Grand Budapest Hotel
公式HP
=http://www.foxmovies.jp/gbh/#top
監督
=ウェス・アンダーソン
キャスト
=レイフ・ファインズ
=トニー・レヴォローリ
=マチュー・アマルリック
=F・マーリー・エイブラハム
=エイドリアン・ブロディ
=ウィレム・デフォー
=ジェフ・ゴールドブラム
=ハーヴェイ・カイテル
=ジュード・ロウ
=ビル・マーレイ
=エドワード・ノートン
=シアーシャ・ローナン
=ジェイソン・シュワルツマン
=レア・セドゥー
=ティルダ・スウィントン
=トム・ウィルキンソン
=オーウェン・ウィルソン
=ボブ・バラバン
美しい山々を背に優雅に佇む、ヨーロッパ最高峰のグランド・ブダペスト・ホテル。エレガントな宿泊客たちのお目当ては、“伝説のコンシェルジュ”グスタヴ・Hだ。彼の究極のおもてなしの秘密は、マダムたちの夜のお相手も辞さない徹底したプロ意識にあった。ところが、グスタヴの長年のお得意様である伯爵夫人が殺され、遺言で貴重な絵画を贈られたグスタヴが容疑者に!ヨーロッパ大陸を逃避行しながら、愛弟子のベルボーイのゼロと共に謎に挑むグスタヴ。果たして、自らの潔白を証し、命より大切なホテルの威信を守れるのか?
予告編
□まず率直に面白い!楽しい!可愛い!
物凄く面白かったです!物凄く楽しかったです!物凄く可愛かったです!っていう、ボキャブラリー足りないんじゃないかっていう素直な感想がこの映画にはお似合いです。
チャーミングで少し意地悪な物語、
どこまでも独特な映像表現、
ピンクや赤が基調の可愛い世界観、
他作品では見れない豪華俳優陣のコメディ演技、
時代ごとにスクリーンサイズを変える妙味、
最高に独特で記憶に残る音楽、
油断した辺りでふざけるエンドロールなどなど・・・
最高の食材を、王道ではなく風変わりに、でも最高に美味しく料理したレストランに行った気分になる映画でありました!
[DVD発売済み]
ヨーロッパの架空の国ズブロフカ共和国で繰り広げられるチャーミングでカオスなコメディサスペンス。最初にストーリー概要を書きましたがこれはストーリーを楽しむ映画ではありません。ウェス・アンダーソン監督の世界観を楽しむ映画です。
いくらストーリー概要やネタバレを読んでも、この映画を理解することはできません。言うならばストーリー全部ネタバレしても楽しめる映画です。だって映画の映像1つ1つが絵本を見てるようなんですもん。絵本ってストーリーわかってても楽しめるじゃないですか。それです本作は。100分の絵本を読んだ感じです。
ウェス・アンダーソンという監督の作品の1つでも知っていてそれが好きなら見ないと損!極上のウェス・アンダーソン・ワールドが繰り広げられ、それが大好きな私としてはもう大熱狂するしかないのです。
□ウェス・アンダーソン監督作品が好きなら見ないと!
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ダージリン急行』、『ムーンライズ・キングダム』・・・独特な世界観の映画を次々と生み出しその度にファンを増やしているウェス・アンダーソン監督。彼の世界観は言葉で言い表すことは難しいです。言うならばティム・バートン系ですよ。独特の美学やテイストが味わえる作品を生み出し続ける天才なのです。あまりに独特故に大嫌いという方もいらっしゃることでしょう。そういう方には当然お勧めできない映画でもあります。
しかしどうでしょう。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ダージリン急行』、『ムーンライズ・キングダム』などなど、ウェス・アンダーソン監督の作品を1つでも見ていてあなたがそれを好きならば・・・?
これはもう『グランド・ブダペスト・ホテル』見ないといけないと思います!
人によりその作家の最高傑作は異なるでしょう。本作が絶対的な最高傑作かはわかりません。しかし、本作が今までのウェス・アンダーソン監督作品の様々な長所を取り入れ、その先へ、次の次元へと進んだ最高に可愛く面白い映画なのは間違いありません。
ウェス・アンダーソン監督のファンであるならば、この映画を愛せないわけがないでしょう。
ウェス・アンダーソン監督
□可愛い映画の裏に込められたシュテファン・ツヴァイクへの敬意(軽く解説)
本作は1930年代に活躍した作家シュテファン・ツヴァイクの影響を受けていると映画内でも示されます。映画を見た時は本作におけるこのシュテファン・ツヴァイクの影響がイマイチわからず、「楽しい映画だけどまあそこまで」と満点ではないけど良い映画だね的な印象を持っていました。
しかし、映画評論家の町山智浩さんの『グランド・ブダペスト・ホテル』解説を聴いてこの映画の見方が変わりました。
シュテファン・ツヴァイクについて軽く知ると、この映画が希望と絶望の両面を描いていることを痛感し、この映画の深さを思い知り唸るか熱狂するか絶賛するしかできなくなります。
町山さんの解説はこちら(鑑賞前に聴いてもOKというか聴いたほうが堪能できます)
シュテファン・ツヴァイクはウィーンの作家で『マリー・アントワネット』や『メリー・スチュアート』、『ジョセフ・フーシェ』などの伝記を書いた人物として知られています。
とは言っても私含めて多くの日本人は初耳ではないでしょうか。どうやらアメリカでも知らない方多いようですねえ。そんな忘れられた作家シュテファン・ツヴァイクの影響を本作はかなり受けているのです。
シュテファン・ツヴァイクが生きていた時代のウィーンはオーストリア・ハンガリー帝国でした。世界史選択の方なら耳にされたことあるのではないでしょうか。ユダヤ差別を禁止していた国でユートピアとまではいかなくてもとても華やかで幸せ溢れる平和な国でした。
フロイト、カフカ、シュトラウス、ブラームス、ブルックナー、マーラー……凄い時代ですよね。
しかしそんな国も第一次世界大戦へ巻き込まれていきます…。そう、本作では戦争における国境検問のシーンが2回出てきます。架空の国の設定ですがこれが第一次世界大戦と第二次世界大戦(もしくはその周辺の戦争)をモチーフにしてるのは間違いないでしょうね。
そして町山さんの解説を聴いていて最も驚いたことが、シュテファン・ツヴァイクがロマン・ロランやゴーリキーらと作家のネットワークを作っていたというお話。おっと、映画内でグスタフはコンシェルジェのネットワークを駆使してピンチに立ち向かうシーンが!!
つまり、『グランド・ブダペスト・ホテル』の主人公グスタフはシュテファン・ツヴァイクだということなのです!影響どころかど真ん中でシュテファン・ツヴァイク使ってるという・・・
シュテファン・ツヴァイクは第二次世界大戦を目の当たりにして「世界平和なんて叶わない」と絶望し自殺をして生涯を閉じました。本作のグスタフはそうではありませんが、戦争に翻弄され、そして消え去るという点では同じですね。
第一次世界大戦、第二次世界大戦はとうの昔に終わりました。しかし今でも世界平和なんて訪れていません。人々は傷つけあっています。本作最後、ちょっぴりほろ苦い結末はそんな現代社会への皮肉が込められている気がしてなりません。
同時に、現代の少女が過去を本から知る描写に、ウェス・アンダーソン監督自身がシュテファン・ツヴァイクの書籍を読んでインスパイアされた姿がイメージできてほのぼのともしました。
そんな絶妙な希望と絶望のさじ加減が『グランド・ブダペスト・ホテル』。どうやって貶せというのでしょうか。
□最後にまとめ
久々の長文レビューとなってしまいました。それだけ本作を評価しているということであります。要するに表裏一体の映画なんですね。ウェス・アンダーソンの世界観が好きなら頭空っぽにしてポップコーンでも食べながら見ればそれで存分に楽しめます。同時にシュテファン・ツヴァイクの人生に思いを馳せ、裏のシリアスなメッセージを掴むのもありでしょう。
あと本作、映画的な遊びで面白いことがあったので紹介しておきます。本作は現代、1960年代、1930年代と3つの時間軸が存在するのですが、全て画面のサイズが異なるのです。HPにあった画像を拝借するととてもわかりやすいです。
1930年代は1.37:1フォーマットでほぼ真四角。これがいい味出してたんですよ。現代から本の中へ入り込んでいった感じがしました。
褒めるところしか見当たりません。というか独特のウェス・アンダーソンワールドが大好きなので褒めるしか出来ないのです。私が褒めてるところを丸々貶す方もいるでしょう。悪いことではないです。趣味は人ぞれぞれです。
映画を終わった後の「これは今年ベストだ!」という熱狂ではなく、終わって時間が経って映画を思い返しながら映画の良さ、鑑賞した喜びが沸々と湧いてきています。
これは紛れも無く私にとって、とってもとっても素敵な映画であったことを改めて噛み締めている次第であります。
おしまい。
□ウェス・アンダーソン監督関連作品
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written by shuhei