□私的満足度
★★★★★=星5=お見事!これは傑作です!【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。
□『あなたを抱きしめる日まで』基本情報
タイトル=あなたを抱きしめる日まで
原題
=PHILOMIA
監督
=スティーブン・フリアーズ
キャスト
=ジュディ・デンチ
=スティーブ・クーガン
=ソフィ・ケネディ・クラーク
=アンナ・マックス
ストーリー
1952年、アイルランド。18歳で未婚の母となったフィロメナは親から強制的に修道院に入れられ、3歳になった息子のアンソニーはアメリカに養子に出されてしまう。養子に出すことを認めたフィロメナは「絶対に息子の行方を捜さない、誰にも息子のことを話さない」ことを誓約書に署名させられるが、それから50年後、イギリスで娘のジェーンとともに暮らしていたフィロメナは、手離した父親違いの息子の存在をジェーンに明かす。そして、ジェーンの知り合いのジャーナリストとともにアメリカへ息子探しの旅に出たフィロメナは、思いもよらぬ事実を知ることになる。
予告編
□こんな映画です
実話です。1950年代のアイルランドは非常に敬虔なカトリックの街が多かったようです。そんな街では結婚もせず若くして身ごもった女性は頭がオカシイとされ精神病院に入れられるがごとく修道院にぶち込まれていました。
主人公はそこにぶち込まれたフィロメナです。フィロメナは子供を出産するも3歳になったところで修道院が勝手に子供を売ってしまったのです。権限など何もないフィロメナは為す術無く…。
そして50年後、結婚し新たに子供も生まれ普通の生活をしていたフィロメナは娘にこの秘密を打ち明けます。娘はその事実をしっかりと認識し、そして生き別れた子供を探す協力をします。そこで協力を要請したのがブレア政権のブレーンも務めたジャーナリストのマーティン。彼に協力してもらい息子を探し始めます。
マーティンの協力もあり、息子がアメリカへ渡ったことを知るフィロメナ。アメリカに渡り・・・そして・・・。
□感想を率直に申し上げますと
どこまでも重い感動巨編かと思いきや、緩急見事でユーモアもあり、そして衝撃の展開に涙も流す非常に優れた作品でした。文句なく5つ星+の満点を付けさせて頂きます。[DVD発売済み]
作品を理解するのに予習は特に必要ありませんが、公開までに余裕がある方は同じくスティーブン・フリアーズ監督作品でヘレン・ミレン主演の『クイーン』をご覧になってから本作をご覧になられると良いかもしれません。
あの作品はダイアナ元皇太子妃が亡くなってからエリザベス女王が嫌々追悼コメントを出すまでの展開を描いた映画です。題材はダイアナにも触れていますのでとってもシリアスです。しかし映画はかなりユーモア溢れており、しかしふざけてるわけでもなくエリザベス女王の内面を描き、観客の心も打つ傑作に仕上げていました。
スティーブン・フリアーズ監督の作品って、この魅力があるんですよ。シリアスな題材で描き方によっては全編胸を締め付けるような映画にもできるのです。そういう傑作も多くありますよね。しかしスティーブン・フリアーズ監督作は違います。全てが計算されながらも余裕があるのです。その余裕は我々が映画を楽しむポイントにもなりますし、感動を素直にできるポイントにもなるのです。
そんな本作ですが、"こんな映画です"のところに書いたあらすじは映画の3割くらいです。そう、この映画は生き別れた息子を探して感動の再会をする物語ではないのです。どういう話かは言いません。映画を是非ご覧になってください。
言ってしまえば今まで100回は見てきた型にはまった感動巨編では全くもって無いのです。そのストーリーの行き着く先が素晴らしかったです。ただフィロメナが再会したいという一方的な目的成就の映画ではないのです。生き別れた息子がどう思っていたかもちゃんと描かれるのです。正直まさかの結末でしたが、しっかりと心が描かれていて、感動して涙を流しました。
本作はフィロメナと息子の物語だけでなく、社会問題にも切り込んでいきます。修道院が息子を売った行為は人身売買です。その行為に関してマーティンが怒るシーンがありますが、その時の感情って実は映画を見てる私達の感情の代弁になってたりするんですよね。
そして社会問題としてはアメリカにまで本作は言及していきます。同性愛の問題についてです。レーガン政権下では同性愛の問題はネガティブに扱われていました。そのこととフィロメナの息子探しがどう絡んでくるのかも是非映画を見て色々感じてほしいと思います。
また本作はジャーナリストのマーティンの心の旅でもあります。マーティンは政権のブレーンも務めたエリートです。神も信じず、仕事も政権の仕事がクビになってからどうもうまくいかず、プライドは高く、フィロメナを最初は蔑んでいます。しかしそんな彼が変わっていくのです。
最後のフィロメナの表情と台詞群が最後の最後でマーティンの心を癒やしたと私は推測します。フィロメナと息子の物語としても、社会問題への切り込みとしても、マーティンの心の旅としても見事な締めであったと思います。
本作はアカデミー賞作品賞や主演女優賞にノミネートされています。イギリスの小品で受賞のパワーは正直ないですが、ノミネート納得の作品クオリティとジュディ・デンチの演技だったと思います。
原題はフィロメナの名前なんですが、邦題は『あなたを抱きしめる日まで』になりましたね。良し悪しは置いておいて、このタイトル、終わってから考えると涙腺きます…。
日本公開は2014年3月15日です。多くの方に見ていただきたい満点の傑作です。
原作
written by shuhei