スタジオジブリの1年のドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』のレビューです。
□『夢と狂気の王国』基本情報
ウェブサイト=http://yumetokyoki.com/
監督
=砂田麻美
出演
=宮崎駿
=高畑勲
=鈴木敏夫
=庵野秀明
=宮崎吾朗
概要
「エンディングノート」で数々の映画賞を受賞した砂田麻美監督が、スタジオジブリの内幕に迫ったドキュメンタリー。「風立ちぬ」を最後に長編映画の製作から引退を表明した宮崎駿監督、宮崎監督の盟友でともに切磋琢磨してきた高畑勲監督、2人の巨匠の間で奔走する鈴木敏夫プロデューサーというスタジオジブリの核となる3人を中心に、数十年におよぶ長い時間の中で、いかにして夢を生み出してきたのか、3人の抱える愛憎や創作現場としてのスタジオジブリの実態を描き出した。「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴの会長で、2011年からスタジオジブリでプロデューサー見習いとしても働く川上量生が初プロデュースを務めた。
[ Blu-ray/DVD 発売済み ]
予告編
□感想:映画としての評価はいらない、ただ色々考えさせられた
私は映画が大好きで、ジブリも大好きで、ブログも書いてて映画ライター業にも進出しました。しかし、ドキュメンタリー映画は数えるほどしか見てません。なのでドキュメンタリー映画の評価基準を自分の中に持ちあわせていません。よって本作に関してもドキュメンタリー映画として優れているかどうかはわかりません。ただ、スタジオジブリの映画が大好きな方は以下の4つの理由から見るべき映画ではないかと思いました。
1:『風立ちぬ』のメイキング映像となっているのでジブリファンにはたまらない
2:宮崎駿監督の引退に関する内容が含まれていて感慨深い
3:宮崎駿×鈴木敏夫メインのジブリと思われるがその裏でどれだけ高畑勲監督の存在が重要か再認識させられる
4:『風立ちぬ』の中に宮崎駿監督と高畑勲監督の関係性が暗示されてるとわかる
この4点です。
『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の製作現場に迫ったドキュメンタリー映画かと思いきや違いました。これは『風立ちぬ』の製作現場を中心にしたドキュメンタリーです。しかし少ししか登場しない高畑勲監督がどれだけ重要なものかが、それによって明快に伝わってくるのです。
高畑勲監督と宮崎駿監督は元々師弟関係。高畑師匠に宮崎さんが見出されたと言っても過言ではありません。
しかし、今現在アニメの巨匠は宮崎駿監督。それでも宮崎駿監督の中では高畑勲監督は永遠のライバルなんだなと映画を見ながら感じました。
2人は今でも当然仲良しでありながらライバルです。同じジブリにいながらも一緒に映画を作ることはここ十数年ありませんでした。
それは『風立ちぬ』における堀越二郎と本庄のライバル関係にも現れていると映画を見てわかりました。
『風立ちぬ』において、二郎と本庄は大の仲良しでありライバルでした。そんな2人が一緒に働くことを上司の黒川はやめろと言いました。それはまさに宮崎駿監督と高畑勲監督の関係そのものではありませんか。
これを映画を見て痛感し鳥肌がたちました。それだけで本作を見た価値があったなと思いました。
引退に関するエピソードを見ることで何とも言えない気持ちになりました。先日の引退会見後、様々なコメントをみなさん出しています。ねぎらう声、惜しむ声様々です。「また作るでしょ」という声もありました。
この映画を見たあとに思ったことは、
「周りが引っ張り出せば作れるのかもしれないけど、もう自由にさせてあげようよ」
ということです。
宮さんはもうやり切ったと思うんです。あとは会見の通り"自由"にさせてあげればいいと思うんです。
なので「もう一本期待します!」なんて思わないのがいいと思うんです。惜しいのは間違いないんですけどね。
そんな感じで映画の良し悪しを完全に飛び越えて、ジブリの様々な事について自らの思い出と併せて考えさせられた次第です。
そう感じるものがあるので、ジブリが好きな方は是非ご覧になってほしいです。
written by shuhei