『ダークナイト』の脚本力【ダークナイト・シリーズ徹底解説コラム Vol.11】

2013/07/07

09:『ダークナイト』シリーズコラム

t f B! P L
ダークナイト  (期間限定出荷/スペシャル・パッケージ仕様) [DVD]


今回は『ダークナイト』の脚本について。

スポンサードリンク


(1)バットマンの存在定義

『ダークナイト』は本当にとんでもない傑作です。
とんでもない傑作というのは細かい話抜きにして"すごい映画"であるんだと思います。
要するに誰がどう見ても(ぼーっと見てても)凄いと思える映画。

それが『ダークナイト』でしょう。

しかし、そういう作品こそ深く見ることでより素晴らしく感じることができます。

必ず心得ておいてほしいのが『バットマンビギンズ』によって描かれたバットマンのしっかりとした存在定義です。

『バットマン・ビギンズ』の解説で書きましたが要約してこちらにも。

・ヒーローになりたいのではなく過去の悲しみからゴッサムの街を平和にしたい

・「正義は秩序のため、復讐は自己満足のため」、よって悪人だろうと人殺しはしない

・あくまでも人間。超能力はない。頼れるのは装備と己の肉体。

この3つが根底にあります。『バットマンビギンズ』も是非観てくださいね。

(2)脚本の完成度が凄まじい

では『ダークナイト』について語りたいと思います。まずはなぜこんなにも傑作なのか?

何がこの映画をこんなにも傑作にしているのか。
最大の魅力は間違いなく脚本の完成度でしょう。

おそらく公式に発表されてる資料には記述はないと思いますが、
この『ダークナイト』の脚本、どれだけの期間をかけられたかご存知ですか?

クリストファー・ノーラン監督がジャパンプレミアで仰っていたので記憶してますが、何と10ヶ月だそうです。

10ヶ月間かけて脚本を仕上げたわけです。
もちろん期間が全てではありませんが、それだけかけたまさに命がけの脚本に仕上がっているのでさすがとしか言いようがありません。

例えとして邦画の『アンフェア the Answer』ですが、佐藤監督は、脚本の構成はサラッとできて書き上げるのに1ヶ月くらいでスムーズにいったとインタビューで答えています。良し悪しは置いといてそれくらいで書けるものは書けるということなのでしょう。

それが10ヶ月です。

10ヶ月かけてストーリーを構築したわけではありません。
本作はキリスト教の物語や哲学的な理念、善と悪そしてその間にあるもの、人の良心や苦悩など様々な要素を物語の中に含んでいます。

それらを説教臭く描くのではなくバットマンというアメリカンコミックの世界で徹底したクライムサスペンスアクションとして描いているのです。

どこまでも徹底的に、綿密に構成された最高レベルの脚本が『ダークナイト』を傑作にしているのです。

(3)脚本の何が素晴らしいのか。

では、脚本の何が素晴らしいのか。

それは言わずもがなストーリー展開でしょう。

オープニング6分の銀行強盗シーンで本作の悪役ジョーカーを登場させ、観客を映画に一気に引きこみます。

そして映画の冒頭15分かからずに『バットマンビギンズ』の悪役で最後行方不明のまま終わったクレイン博士との決着を付けてしまう。これによってストーリー上で前作のしがらみがなくなります。まあライジングでまた出てくるけど。

そしてそこから本作の新たな主要人物であるハーヴィーデントを登場させ、物語の下地を整えます。そこからは毎度のクリストファー・ノーラン監督らしいリアリティある世界観が展開されます。

構図自体は『バットマンビギンズ』に比べかなりわかりやすいです。クリストファー・ノーラン監督の映画の中で最もわかりやすい構成でもあるでしょう。時間軸いじってないですし。次々と進むストーリーの中で明確な対立構図が見えてきます。


バットマン、デント、ゴードン、レイチェルら平和、正義を望む者たち

VS

ジョーカー / マフィア / 警察の汚職

です。


特にジョーカーが主役レベルの存在感を出しているので、実質ジョーカーという悪を根絶させるためのストーリーと言っても間違えではありません。もちろんこういった解説を書いている以上ジョーカーはあくまでもストーリーの一端に過ぎませんが、「ジョーカー凄かった」というレビューがたくさんある通りそこだけに注目してもある程度の満足感は得ることが出来るでしょう。

もっと魅力が沢山あるのでその辺は記事でお伝え出来ればと思っております。
ジョーカーがやることは卑劣なことばかりですが、一見お調子者の行き当たりばったりに見えて行動1つ1つをかなり綿密に計算してるんだろうなぁと思います。

バットマンもデントもゴードンもレイチェルもジョーカーを全く止められません。常にジョーカーは裏をかきます。マフィアさえもジョーカーを恐れジョーカーと手を組みます。汚職警官すらジョーカーの支援をします。

そうしないと自分たちの存在意義、存在価値がなくなってしまうからです。よって平和を望む正義の者たちはジョーカーに振り回されまくりです。その中で人々が次々へと死んでいきます。あまりに先が読めない物語、次から次へと展開していく物語で、各レビューでは「どんでん返しに次ぐどんでん返し」という記述も目立ちましたね。

どんでん返しという言葉の使用には賛否あるかもですが、実際のところ予想できないストーリー展開なのでどんでん返しのようなものではありますね。

「そうきたか!」

「次はこうきたか!」

「次はその手か!」

「そこまでやるか!!」

というような展開が続いて行きます。

それがその場凌ぎの観客へのサプライズではなく、次に展開されるストーリーのきっかけになっているのだから凄まじい脚本だなといつも思います。例えば1時間30分付近の護送車VSジョーカー軍団のチェイスシーン。

一見映画におけるアクションシーンとして娯楽的に入れこんでるように見えます。しかしこのチェイスの最後の結末はどうだったでしょうか?最後に驚くべき人物が護送車を運転していたことがわかりました。

そう、チェイスシーンでどこまでも負けずに抵抗する護送車。そこにバットマンも登場しジョーカーを仕留めようとします。そこからデントは優雅に警察の車で帰還。その警察の車の運転手の顔をチェックしておきましょう。


そう、これも伏線といいますか次のシーンへのきっかけになっているのです。どこまでも徹底されているのです。見れば見るほどこういった細かい設定に気づき、どの映画でも存在する「ツッコミどころがある」的なレビューが意味を成さないことがわかるのです。

私も映画が好きなので映画のツッコミたまにしますが本作については偉そうにツッコミをネットに書くと実はそれその当事者がポイントを見落としてただけでツッコミする要素がなかったなんてこと多くあります。恐ろしいクリストファー・ノーラン脚本(笑)

もちろん少しはツッコミあると思いますけどね。その辺りはご愛嬌。

他の映画の脚本に比べればどこまでもどこまでも深い設定が成されているのです。それだけ凄まじいのに、そこに娯楽性も兼ね備えており、プラスして『バットマンビギンズ』で描かれたバットマンの存在定義もしっかりと守られています。本当に完璧な脚本構成なわけです。

(4)終盤の展開には驚愕

特に終盤の展開には驚愕しました。
少しネタバレをしますが、これを知っても傑作ですので言わせて下さい。

本作は普通のアメリカンコミックやヒーロー映画ではタブーとされていることを中盤にやりました。そう、ヒロインであるレイチェルが爆死します。1作目から活躍してきた人物、しかも紅一点だった女性の主要人物を吹き飛ばしたのです。

誰がこの展開を予想したでしょうか。

よくありがちな実は生きてました的なオチもありません。救いようがないことを簡単にやってしまったのです。しかも終盤ではなく中盤で。

また、実際にどう殺されたかは書きませんが、ジョーカーは以下の人物も殺しました。ゴードン、ハーヴィーデント、市長、判事、そしてバットマン。この5人の殺害にはトリックがあるので実際当事者5人が死んだわけではないですが、レイチェル含め主要人物を容赦なく次から次へと殺していってます。

よく考えてください。この『ダークナイト』はシリーズ2作目です。最終章でもないのに次から次へと容赦無い展開が続いていくのです。あまりに痛々しい展開ですが、この容赦無い世界観こそジョーカーを体現しており、隙のない半端無い悪役、映画史に残る悪役と言われる所以でしょう。

この展開を作り上げたクリストファー・ノーランはもう天才としか。そしてストーリー終盤でジョーカーは主要人物だけでなく、市民をも試します。フェリー爆破のシーンですね。

囚人の乗ったフェリーと市民の乗ったフェリーに爆弾を仕掛け、お互いの船に起爆スイッチを入れる。先に押したほうが吹っ飛ぶという「ゲーム」です。ジョーカー的にはゲームなのです。あまちに卑劣ですが。。。

そんな究極の選択のシーンは劇的な展開でした。ある意味この映画で数少ない光かもしれません。これは必見です。ジョーカーとの戦いが終盤に差し掛かった時、もう一人の殺人鬼が登場します。トゥーフェイスです。言ってしまいますが、これはハーヴィーデントです。

ゴッサムの光の騎士、正義の象徴であったデントは悪へと転落します。これはレイチェルの死亡の悲しさ、怪我による思考の麻痺、そしてジョーカーの洗脳のせいです。よくいきなりダークサイドに落ちるなんてゆるいと指摘されてますが顔の傷の痛みを想像してみましょう。

そうなるだろうなとすぐ納得できました。あれは激痛レベルを超越してますよね…頭おかしくなって当然です。トゥーフェイスは次から次へと人を殺していきます。ジョーカーで終わらずもう一山持ってくるこのストーリー展開、、、凄まじいとしか・・・

そして最後の決着が一応付きますが、「ダークナイト」のラストは一応「ジョーカーの勝ち」になります。まさかですよね・・・もちろん完全勝利ではありませんが、ゴードンが台詞発してますね。「ジョーカーの勝ちだ・・・」と。

(5)THE DARK KNIGHT

この時点で映画はあと2分というクライマックスなわけですが、ここからの2分は映画史に残る、いや、映画史上最高のシーンでしょう。バットマンのとんでもない重い決断のシーンです。一瞬でジョーカーの勝ちはなくなります。凄まじい凄まじい・・・

そして映画の最後は『バットマンビギンズ』と同じくゴードンの台詞で終わります。その最後の台詞が本作のタイトルが『ダークナイト』である理由が語られる台詞です。

なぜバットマンではなくダークナイトなのか。バットマンはヒーローではなく街の守護者なのです。そう彼は暗黒の騎士なのです。暗黒の騎士を英語でいうと『A Dark Kngiht』なのです。そして映画はおしまい。「バットマンビギンズ」と同様に最後に初めてタイトルが初めて出ます。

THE DARK KNIGHT

と。

鳥肌、そしてジャパン・プレミアでは拍手喝采になった瞬間です。

凄まじい展開の連続であった『ダークナイト』という映画は、凄まじい名シーンで幕を閉じたのでした。クライマックスラスト2分は「ここがクライマックスなんだろうなぁ」と何となくわかります。しかし私はここでこう思いました。

「お前は悪くない!ここで終わるな!悪くないんだから!」と。

2時間半の映画ですが、本当に終わってほしくなかったですね。しかしここで映画はおしまい。ジョーカーに勝ってはいませんが、決着は付いてます。まさに完璧のラストです。

今でも何度も見返してしまうシーンです。そんなラストの感動は展開されてきたストーリーによるものです。なので脚本がやはり素晴らしいと思うのです。何度も何度も見ていると細かい部分に気づくので、それでまた「ダークナイトの脚本は本当に凄まじい」と思うのです。

それが本作の最大の魅力だと思います。

バットマンの存在定義の描写は『バットマンビギンズ』で済んでるので、ビギンズほど哲学的名言はありません。だからこそストーリー面が徹底されており、結果として凄まじい展開が完成したのでしょう。

次回は脚本をより掘り下げてジョーカーについて徹底解説したいと思います。

⇒次のコラムへ

(6)『ダークナイト』3部作を見る!

『ダークナイト』3部作は、Netflixをはじめとした動画配信サービスで閲覧できる時もあります。「時もある」というのは、動画配信サービスでは常に配信作品が入れ替わるためです。2020年1月27日現在は、Amazon Primeビデオでの有料レンタル等有償に限られているようです。変わったのを確認次第、案内文も書き換えます。

『バットマン・ビギンズ』


『ダークナイト』


『ダークナイト・ライジング』


(7)徹底解説コラムもくじ(全24記事)

























(8)付録:オススメの動画配信サービス

※この章は、映画紹介の各記事共通の項目です。2020年1月現在の情報になります。

時代は移りゆくもので、映画館での公開が終わった作品の視聴はBru-Ray/DVDと併せて、動画配信サービスで視聴される方が増えてきました。

私自身は、普段映画メディアの編集長をしている関係で映画に触れる機会が多めですが、その中において現在契約している動画配信サービスを「正直なお気に入り順で」紹介してまいります。

ただし、下位のものも契約している時点で支持をしているものです。それぞれに特性があり、私の好みやライフスタイルから以下の順番で重宝をしております。

オススメ1:Hulu



私は映画が大好きですが、普段民放テレビ局で最も視聴しているのは日本テレビです。テレビドラマに限らず、「Another SkyⅡ」も毎週楽しみにしており、ふと見返すことも多いです。よって、映画外の好みのコンテンツの側面からHuluを最も重宝しています。
日本テレビ系のドラマや各テレビ番組、「名探偵コナン」などを好きな方にはオススメのサービスです。映画のラインナップは日々変動しますが、他社に比べて劣ってると感じる事は少ないです。
金額:933円(税別) ※無料トライアル期間が2週間あり

オススメ2:Netflix



映画切り口でいくと、やはりNetFlixが現時点では王者の風格だなと個人的には思います。「さて、今日は何の映画を見ようか」と思ったら、とりあえずNetFlixを開きます。

併せて、日米それぞれオリジナル作品も多いです。「アイリッシュマン」「ROMA/ローマ」「全裸監督」などなど。今最も目の離せないサービスと言っても過言ではありません。なお、スタジオジブリの配信権獲得が発表されましたが、これには日米は含まれていません。日本で始まるとするならば、日本テレビ資本の入っているHuluの可能性が高いと勝手に思っています。

金額:3種類あり(ベーシック:800円/スタンダード:1200円/プレミアム:1800円 各々税別)
※無料トライアル期間が1ヶ月あり

オススメ3:Disney Delexue



名前の通り、ディズニー作品を楽しむことができるサブスクリプション動画配信サービスです。時によって見れる作品は異なりますが、ディズニー作品のアニメ・実写。ピクサー作品、スター・ウォーズ、マーベル作品と、ディズニー系列の作品の多くを見ることができます。

常に誰もが知っている作品が配信されており、安心して一度見た映画を鑑賞したいときにはこれで間違いありません。なお、2020年1月現在、ディズニーによって買収された20世紀フォックスの作品はまだ配信されておりません。今後されるとは思いますが。

金額:770円(税込)
※無料トライアル期間が1ヶ月あり

オススメ4:Amazon Primeビデオ


NetFlixと並んで知名度が高いのはこれでしょう。映画やドラマといった映像作品を鑑賞するためのサービスではなく、「Amazon Prime会員」向けサービスの中の一つとして、映画やドラマも見れるよという触れ込みなのが他と異なります。

年間契約での割引が用意されていますが、月額支払いでもたったの500円という破格の仕様。しかもAmazonの他のあらゆるサービスもそれで使えるわけです。普段Amazonを使う方なら「とりあえず入っとけ」サービスでもあります。

金額:500円(税込)
※年会費だと4900円
※無料トライアル期間が1ヶ月あり


オススメ5:Paravi



Huluと同様で、特定のテレビ番組をリピートしたい方向けなのはParaviです。こちらはTBS系列およびテレビ東京系列の番組を楽しむことができます。質の高いドラマの多いTBS系列ドラマを見たい方は入るべきサービスと言えるでしょう。

私自身もそのTBSドラマと、テレビ東京系列のビジネス番組の鑑賞目的、よって映画向けには使ってないです。テレビ東京のビジネス番組は質が高いので、教養目的と考えると日々の出費も投資考えることができて心に優しいです。

金額:925円(税込)
※無料トライアル期間が1ヶ月あり

オススメ6:U-Next



U-Nextは異色です。定額料金で各作品を鑑賞できると同時に、新作を有料で販売、レンタルもしています。言うならば、サブスクリプション系サービスとiTunes等販売・レンタル系サービスのハイブリッドと言えるでしょう。

と聞くと、割が悪いようにも思ってしまいますが、ポイントも貯まっていくので、そのポイントで新作をいち早くレンタルして自宅で鑑賞することができます。どうしてもサブスクリプション系サービスでの配信は少し時差が出てしまうので、ここまで紹介してきた各サービスをうまくサポートする役割として利用をしています。

金額:1990円(税込)
※無料トライアル期間が1ヶ月あり


以上が、2020年1月現在私が契約しているサブスクリプション系サービスです。仕事柄多めです。これら全てを契約することはオススメしません。それぞれ特性があるので、何を目的にするか、頻度はどれくらいかをみなさん自身でお考えの上で選択してみてください。

また、ここにはないサービスもたくさんあります。その旨も理解の上で参考になれば幸いです。

このブログを検索

人気の投稿

QooQ