映画『007スカイフォール』紹介、史上最高の007ここにあり!サム・メンデス監督はやはり天才!![ネタバレなし]
□『007スカイフォール』基本情報
タイトル=007 スカイフォール
原題
=SKYFALL
製作年
=2012年
日本公開
=2012年
監督
=サム・メンデス
出演
=ダニエル・クレイグ
=ハヴィエル・バルデム
=ジュディ・デンチ
=レイフ・ファインズ
=ベレニス・マーロウ
=ナオミ・ハリス
=ベン・ウィショー
=アルバート・フィニー
ストーリー
MI6のエージェントのジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、NATOの諜報(ちょうほう)部員の情報が記録されているハードドライブを強奪した敵のアジトを特定し、トルコのイスタンブールに降り立つ。その組織をあと少しのところまで追い詰めるも、同僚のロンソンが傷を負ってしまう。上司のM(ジュディ・デンチ)からは、敵の追跡を最優先にとの指令が入り、後から駆け付けたアシスタントエージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)と共に、敵を追跡するボンドだったが……。
予告編
□『原点回帰と家族の物語』
23作目を迎えた007シリーズ最新作『007スカイフォール』。23作、年にして50年目。往年のファンからここ十年のファン、ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドとなったここ3作品からのファン、様々なファンが取り巻く世界的シリーズの新作は、映画自体を取り巻く状況を映画の世界に反映させた素晴らしい作品でした。本作が描こうとしているテーマは「原点回帰」でしょう。サイバーテロ的なストーリーで進む前半は、それに合わせて新型のワルサー(銃)や無線発信などの最新のものを駆使して敵に挑んでいきますが、後半は猟銃や踏むと爆発する仕掛け爆弾などこれでもかとアナログな戦いになっていきます。
それは古いものへと逆戻りしていくといってしまえばそこまででしょうが、これは「原点回帰」の一つの描き方なのです。映画の後半の幕開けとも言える逃避行のため車を乗り換えるシーンで007のあのテーマ曲がやっとかかります。
逃避行のために乗り換える車は往年シリーズで活躍したあのアストンマーチン!私の見た回にはファンの方が多かったようでこのシーンで歓声と拍手が起きました(笑)
武器の「原点回帰」だけでなく、車やテーマソングまでここで「原点回帰」していきます。前半の「面白いけど007ぽくない」部分はこのための演出だったのかと唸るしかありませんでした。
そして逃避行の目的地はジェームズ・ボンドの出生の地なのです。幼い頃にトラウマがあるジェームズ・ボンドもここで故郷へと「原点回帰」するのです。ありとあらゆる「原点回帰」が最後の戦いを前に全貌を見せるというわけです。
嵐の前の静けさの中で語られる物語はボンドの幼少期について、つまり家族の物語。ここである程度映画詳しい方ならまた唸るわけです。そう、本作の監督はサム・メンデス。アカデミー賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』、『ロード・トゥ・パーディション』『レボリューショナリー・ロード』などで家族のあり方について描いてきた監督です。
家族の物語をここに入れ、尚且つ実際の母親ではない上司Mをボンドや敵のシルヴァは"Mom"、"Mommy"と母親的に呼びます。家族の物語の中に家族"的"な非家族要素も入れ込まれていくのです。
『原点回帰と家族の物語』、これぞサム・メンデスの描く007!!お見事!!
この辺りで映画中盤のあるシーンを思い出すのです。長崎市の軍艦島をモチーフにした敵のアジトでボンドは自らの趣味を「復活」といいます。「復活」は本作では「原点回帰」のことなのです。ボンドの趣味「復活」=「原点回帰」は出生地での最後の戦いへと進んでいきます。
戦う方法は先に述べた猟銃や仕掛けの爆弾など、そしてここまでアナログでいくかと言わんばかりの地下脱出路まで出てきてクライマックスの決着を付けるシーンは「原点回帰」の元の元であるボンドの家族の眠る墓のそば。
シンプルでわかりやすく進むストーリーの下に徹底されている「原点回帰」そして「家族」の物語。深い・・・お見事・・・素晴らしい・・・。
そうして映画はエピローグへと進んでいきます。MI6の新たなオフィスはハイテクではなくこちらも「原点回帰」を意識した木の温もりのあるものに。そしてラストシーン直前である人物の本名が明かされます。シリーズのファンはここで「おお!!!!」となります。なりました(笑)
映画は大きな疑問点も残さず次のミッションへの期待を抱かせ終了。ガン・バレルが映されエンドロールになって思ったこと。「何を取っても最高の007映画だ!」。興奮冷めやらぬまま劇場を後にしました。
□最大の魅力は映像(撮影)!
表面のストーリーはシンプルでわかりやすいのにその中に深みを持たせることに成功した本作ですが、最大の魅力は「原点回帰」のストーリーではありません。最大の魅力、私は映像(撮影)だと思います。サム・メンデス映画お馴染みのロジャー・ディーキンスが撮影を担当していますが、サム・メンデス監督同様ロジャー・ディーキンスもアクション映画は初めてです。普段芸術的な"静"の芸術を撮ってきた撮影監督のアクション撮影は"動"の芸術で、芸術的に変わりなく息を飲むのもでした。
オープニングの1カット目から「これちょっと凄いことになるんじゃないか」と思わされたわけですが、影を多用したシーンは本当に芸術的でした。是非"映像がとても素晴らしい"ということを頭に入れて映画堪能してほしいと思います。
□予習しておくべき作品
本作を最大限楽しむためにできれば過去の007映画2本を見ておいてほしいです。一本目が『007ゴールドフィンガー』。かれこれ40年以上前の作品で007シリーズ3本目です。この映画へのオマージュが映画後半で用意されています。是非この映画を見てあるシーンで熱狂してほしいです。余裕があればもう1本、ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドになった初代作品の『007カジノ・ロワイヤル』。こちらも是非見ておいてほしいです。ストーリーは直接関係していないですが、ここ3本(カジノ・ロワイヤル、慰めの報酬、スカイフォール)は過去の20本に比べてシリアスなテイストに軌道修正されています。
プレイボーイなジェームズ・ボンドの側面が相当削られているのです。そのテイストに慣れ、かつボンドが愛した女性との悲しい過去を押さえておく意味で『007カジノ・ロワイヤル』も是非予習してみてください。
この2本を鑑賞したら是非劇場へ行きましょう!そして007面白いと思ったら残りの20本を見ていきましょう。