6月 2013 - Cinema A La Carte

『コン・ティキ』感想、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート納得の海洋映画の新たなる傑作!!信じることはこれほど美しいことなのか…。[ネタバレ解説あり]


『コン・ティキ』基本情報

タイトル
=コン・ティキ

原題
=KON-TIKI

監督
=ヨアヒム・ローニング
=エスペン・サンドベリ

出演
=ポール・スベーレ・バルハイム・ハーゲン
=アンダース・バースモー・クリスチャンセン
=ヤコブ・オフテブロ
=トビアス・サンテルマン
=オッド・マグナス・ウィリアムソン

ストーリー
「コン・ティキ号」と名付けたいかだで8000キロの太平洋横断に挑戦した男たちの実話を映画化し、第85回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた海洋アドベンチャードラマ。1947年、ポリネシアのファツヒバ島で現地民と暮らしながら研究を続けていたノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールは、「ポリネシア人の祖先が南米から海を渡ってきた」という学説を発表するが、誰にも信じてもらえない。そこでトールは、自説を証明してみせるため、1500年前と同じ材料や方法でいかだを作り、5人の仲間とともに風と波を頼りに8000キロにわたる太平洋横断に挑む。

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=e40J3Gh5oC4


感想「信じることの美しさたるや…強烈だった…。」

本作の先行レビュー等をいくつか見ていて痛感したことがありました。「私は馬鹿だ。」と。みなさん小学生の時にエピソードを読んだことあると書かれてるんですが私記憶にありません…習って忘れたのでしょうか…。馬鹿が全力でブログ頑張ってますが今後共どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

さて本題へ。実話を元にしたこの『コン・ティキ』ですが素晴らしかったです!魅力は大きく3つでしょう。

・ありえない実話に映画化により感動、つまり作品の総合力

・信念をしっかり描くことで伝わってくる勇気とロマン

・時に美しく、時に苦しい映像

この辺りでしょうか。

[DVD/Blu-ray発売済み]
まず実話ということで史実を展開したいと思います。本作はノルウェーの人類学者で冒険家トール・ヘイエルダールによる『コンチキ号漂流記』を元にしています。コンチキとはインカ帝国の太陽神ピラコチヤ"コンチキ"の名前からきています。

ヘイエルダールは、南太平洋ポリネシアの神々がインカ帝国のものと似ていることに気づき、ポリネシア人は南米から移ってきた民族であることを仮説を立てます。しかしポリネシア人が8000キロもの海を渡って南米から来たなど信じられるはずもありません。そこで、彼は自説を証明しようといかだを作って南米から南太平洋に向かう計画を立てたのです。その物語が本作です。ありえない(笑)

驚いたのがこの事実、戦後なんです。ペルーを1947年4月に出発して102日後の8月ポリネシアのツアモツ諸島に到着しています。その物語です。よくもまあこんなことを…。

冒頭書いたように私この史実を知らなかったのでてっきりコロンブス的な大陸発見アドベンチャーかと思ってたんです。そしたらこんな言ってしまえばバカバカしいエピソードだったとは…。バカバカしいとは悪い意味ではなく「何でこんな命がけのことを…。」という意味です。映画見て何度も死にかけてたので驚愕でありました。

ここまで完全ネタバレで航海は成功したと言ってしまってますが史実なので問題ありません。映画も「成功するか失敗するか」の焦点で描いてませんし。映画の軸となっているのはヘイダールの信念です。彼のブレない心が航海を成功に導いたと捉えられる演出になっています。

誰も信じなくても、命の危険があっても、自らの信念に基づいて本気で遂行する。その力強さを本作に感じました。

それが見事な映像表現で展開されるのでもう文句無しに傑作だと思いました!残念ながらアカデミー賞外国語映画賞受賞はなりませんでしたが、これは今年『ライフ・オブ・パイ』があり、海洋ものが並んでたこともあっての不運だったと考えるのが妥当でしょう。本当に見事な作品でした。

ちなみのこの映画の神憑り演出を買われて監督2人はパイレーツ・オブ・カビリアン5の監督に大抜擢です!…ちょっと不安…(笑)


参考書籍

Amazon
=コン・ティキ号探検記 (河出文庫)
=コンチキ号漂流記 (偕成社文庫 (3010))


written by shuhei


『真夏の方程式』感想、この映像と演出センスはお見事過ぎる…映画的完成度に唸るしかない【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]


『真夏の方程式』基本情報

タイトル
=真夏の方程式

監督
=西谷弘

出演
=福山雅治
=吉高由里子
=杏
=前田吟
=北村一輝、
=山崎光
=風吹ジュン
=田中哲司、
=塩見三省


予告編

最初に思った正直な感想

『容疑者Xの献身』は惜しい作品でした。
素晴らしい部分がたくさん、たくさんあるのにところどころ演出的にテンポが乱れていたり、単純に湯川と石神の空気感がズレていたりと。

それでも堤真一さんの演技を中心にとても切ない映画に仕上がっていたと思いました。

その先遂に訪れたガリレオシリーズの再始動。
まずはドラマ版からスタートして高視聴率記録。
映画ヒットもこれは確約されたようなもの。

普段洋画ばかりの私も吉高先生(吉高由里子)が出るというミーハーな理由で劇場へ←


いやはや、驚きました。
終わった後の正直な感想を言うと
「何でこんな地味な題材なのに一切飽きずに画面にのめり込んでいたのだろう…」
でした。

[DVD発売済み]
客観的に考えればですよ。
どう考えても『容疑者Xの献身』の何倍も地味な題材なんですよ。
単純に場所柄もそうだし。湯川と競う石神みたいな存在もないし。

でも映画体験としては『容疑者Xの献身』以上どころか今年でもトップクラスな満足度なわけで・・・

何なんだこれ・・・
邦画詳しくないから何でかもわかんないし・・・

って思いながら劇場を後にしたわけですが、
理由分かりました。そして納得しました。





本作の魅力は映画的魅力

いくつか本作の魅力をまとめてみました。
すいません。邦画レビュー慣れてないので箇条書きで失礼。

・タイトルから『ガリレオ』を外しドラマ的軽さも排除したこと

・それによって映画、とりわけサスペンス的シリアスさが出たこと

・「実に面白い」を封印したこと

・テーマ曲をエンドロールまで使わなかったこと

・湯川が深刻になり過ぎない代わりに少年に心を開いたことを"行動"で示したこと

・吉高由里子を辺に前に出しすぎなかったこと

・杏のいい意味の地味さ

・前田吟ここ一番の熱演

そして!!

・次から次へと繰り出される美しい映像カットの数々!!

・特に夕日や海中!!


あくまでも1本の映画として作るぞという製作陣の意思に俳優たちが応え、そしてそれが美しい映像を持って完成したという。もう素晴らしいのなんの。原作が要因の地味さをそれ以外が多分に補って素晴らしい作品になったんだと思うわけであります。

いくつかレビュー拝見させて頂いたのですが、撮影監督に柳島克己さん。
そう、この方北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海』を撮ったあの方。
納得であります。あの港町の美しさ。職人芸ですこれは。

オープニングの雪降る中の主観映像なども"意味あるもの"でしたし、
私は犯人こそわかりましたがオープニングの意味は後半になるまでわからなかったので、
やはりサスペンス性もしっかり演出が成されていたなと思いました。

そしてペットボトルロケットのシーン。
いやはやこのシーンいいですね。
映画的に地味とも思えるシーンでありながら本作で最も派手なシーン(笑)

しかしここ"地味"で片付けてはいけません!
『容疑者Xの献身』で湯川教授が石神が泣き崩れた時別室で泣いていました。
本作で湯川教授はそういった感情を表に出しません。

が!、その代わりにこのシーンなわけでありますよ。
湯川教授が大嫌いと言った子供相手にペットボトルロケットを飛ばす実験を一緒にしている。しかも本気で。その行動自体が湯川教授の成長や心変わりを示しているんです。素晴らしいのなんの。

悲しい家族の真実と少年の夏休みに絡む湯川教授。
少年の「花火、やっちゃいけなかったの?」が胸に響きました。
最後は悲しかったですね、ホント。

素晴らしい映画であります。

最後に後輩がツイートしていた感想が見事だったので引用紹介。


取調室のシーンね。最初の前田吟さんが一人で座っているフレームの外から取調官の声が入り、カメラは動くことなく吟さんをとらえて、回想を挟みながらカメラが引いたら今まで見ていたものが鏡面反射だと気付いた瞬間に心を鷲掴みされました。湯川が出て行ったあと、あれはアラン・パーカーの『ミッドナイト・エクスプレス』の面会シーンを彷彿とさせる熱量。凄すぎる。

ラストの駅舎のシーンさ、引き→寄りでのカットバック→外の売店からの駅舎へ被写体を追ってって感じだけど、あれはマニの『山浦への道』っぽくもジャンクーの『プラットホーム』っぽくもあって、日本もアジア映画なんだよねってつくづく実感するいいラストシーン。



『容疑者Xの献身』と似た構成など、原作的欠点は無きにしもあらず。
しかしその欠点を補う様々な映画的魅力に溢れた傑作でありました。
ドラマの映画化だっていうステレオタイプで馬鹿にするのは良くないです。

参りました。




written by shuhei



『ローマでアモーレ』感想、いつものウディ・アレン映画で楽しい(笑) ハマれば爆笑素敵コメディ!【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



『ローマでアモーレ』基本情報

タイトル
=ローマでアモーレ

原題
=To Roma with Love

監督
=ウディ・アレン

出演
=アレック・ボールドウィン
=ウディ・アレン
=ペネロペ・クルス
=ロベルト・ベニーニ
=ジェシー・アイゼンバーグ
=エレン・ペイジ

ストーリー
ウッディ・アレンが初めてローマを舞台に描いた群像ラブコメディ。イケメンのローマっ子と婚約した娘のもとへやってきた元オペラ演出家、恋人の親友で小悪魔的な魅力を振りまく女優に恋した建築家の卵の青年、純朴な新婚カップルの宿泊先に現れたセクシーなコールガール、ある日突然、大スターに祭り上げられた平凡な男など、それぞれの人物が織りなす恋模様をユーモアたっぷりに描き出す。

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=anetXoE3pRI


感想「バカバカしくて大笑い!楽しんで作ったことが伝わってきました!」

昨年『ミッドナイト・イン・パリ』が当たりすぎたためそこからのこの作品ときて結構落胆された方が多いように思いました(笑)いつもウディ・アレンは作りたい作品を好き勝手作ってると思いますが本作も通常営業で『ミッドナイト・イン・パリ』よりサービスが無いので賛否割れましたね。

この映画の魅力は明確でして、
・ローマが美しい

・登場人物がバカバカしい(笑)

・ウディ・アレン通常運転(笑)

まずローマですね。私はローマに行ったことがあるのでそれでかもしれませんが、この街は変です(笑)建物は歴史的建造物が多くとても美しいのですが、治安が良くないしゴミも落ちてるし"汚いけど美しい街"という印象なんです。意外に思いませんか?(笑)パリの方が5億倍綺麗です(笑)

でもそれでこそローマ、雰囲気はいいんですよ。それを肌で実感したからこそ見ていて何か楽しくなっちゃいましたね。『ミッドナイト・イン・パリ』もそうでしたがウディ・アレンは観光地的な場所を本当に魅力的に描きます。本作でもそれが映画の魅力の一つになっているのが間違いありません。

そんな美しい街で展開される物語はまあバカバカしい。オペラも交えつつロベルト・ベニーニをこれでもかと無駄遣い(笑)褒めてますよ?(笑)滑稽な人間たちがあれこれやりつつもなぜか憎めない。なぜならこれはウディ・アレン映画だから。笑ってなんぼの展開に心が軽くなっていく気がしました。

おっさん、おばさんたちの物語にスパイスを効かせるジェシー・アイゼンバーグとエレン・ペイジがまた良かった。私自身がこの年代なのでどうしてもここを魅力的に思います。年寄りを描きつつ若者の恋もちゃんと描くウディ・アレン素敵であります。

そんなこんなで今回の感想を集約すれば「ウディ・アレン通常運転」となるわけです(笑)ローマというウディ・アレン映画初めての舞台でバカバカしい物語が展開されて大笑い。映画の至福でありました。


12月1日追記) DVD発売中

=ローマでアモーレ [Blu-ray]


ウディ・アレン監督作品on iTunes




written by shuhei


『ロマン・ポランスキー 初めての告白』感想、巨匠の波瀾万丈の人生にただただ唖然【映画紹介/2013年公開作】



『ロマン・ポランスキー 初めての告白』基本情報

タイトル
=『ロマン・ポランスキー 初めての告白』

原題
=Roman Polanski: A Film Memoir

監督
=ローラン・ブーズロー

出演
=ロマン・ポランスキー

ストーリー
数々の名作を残しているロマン・ポランスキー監督が自らの人生を語ったドキュメンタリー。1933年、仏パリで生まれたポランスキーは、幼少期に移り住んだポーランドで第2次大戦を迎え、ユダヤ人としてゲットーに収容されるも、そこから脱出し、映画大学に入学。初期長編作で早くも国際的な評価を獲得していくが、68年、妻で女優のシャロン・テイトが惨殺されるという悲劇に襲われる。70年代には児童わいせつの容疑で国外逃亡など数々のスキャンダルに見舞われながらも、多くの傑作を発表し続けているポランスキーが、自身の言葉で生い立ちから現在に至るまでを赤裸々に告白する。

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=J_JHraxR7k4


感想「元々ポランスキー支持派なのでより彼を知れたことはとても良かった。」

・1933年フランス・パリ生まれ
・幼少期に移り住んだポーランドで第ニ次大戦
・ユダヤ人としてゲットーに収容されるも脱出成功
・映画大学に入学して初期長編作で国際的な評価を獲得
・1968年、妻で女優のシャロン・テイトが惨殺される
・1970年代、児童わいせつの容疑で国外逃亡
・2009年、スイスで拘束され自宅軟禁

ここまで波瀾万丈な映画監督もまあいないわけでして…しかも名匠ですからね。『戦場のピアニスト』がやはり有名ですが私は近年の『ゴーストライター』や『おとなのけんか』などポランスキー的余裕の垣間見られる作品が好きです。

そんなポランスキーが自分の人生を余すこと無く語った記録ビデオ的な映画であります。もちろんわいせつ事件についてもちゃんと語ってます。被害者との話し合いは済んでるそうですが司法の方が厄介なのでそれで逮捕される国へは出向かないのだそうです。うむ…。

それは軽いジャブに過ぎず、やはり戦争や奥さん殺害の件を語っている方がメインです。これもう見ていて心痛みますね…。

映画ではありますがテレビのドキュメンタリー番組の様相です。映画的評価はしにくいですがポランスキー好きとしては知ってたようで知らなかった彼の一面を見れていい経験になりました。でもヘヴィーでした…。


[DVD発売済み]

written by shuhei


美しく切なく・・・青春の記憶を呼び起こしてくれる『言の葉の庭』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]


基本情報
日本語タイトル
『言の葉の庭』

監督
新海誠

公式サイト

ストーリー
靴職人を志す15歳の高校生タカオは、雨が降るといつも学校をさぼって公園で靴のスケッチに熱中していた。そんなある日、彼は27歳のユキノと出会い、雨の日だけの再会を繰り返しながらお互いに少しずつ打ち解けていく。タカオは心のよりどころを失ってしまったユキノのために、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作ろうと決心する。(シネマトゥデイより)

予告編


珍しく邦画のレビューであります。
というか今年初ですねはい(笑)
フォロワーさんに勧められた『くちづけ』観に行かないと早く・・・

さて本作全くノーマークだったのですが、Youtubeサーフィンしてたらたまたま予告編に遭遇して気になって観て参りました。
46分という短編と言いますか中編のアニメーションなんですが…いやはや素晴らしいの何の…

『秒速5センチメートル』の新海誠監督作品で、
雨の日に学校をサボる靴職人を目指す高校生の青年とたまたま出会った27歳の女性の交流を描く物語になります。

5月31日より公開されており、iTunesで独占先行配信で既に購入することもできます。



46分という短い時間で物語は起承転結をしっかり描き、かつその先の未来もしっかり暗示させて映画は幕を閉じます。

ストーリーがしっかし主人公二人の心の内面を描いている点、新宿駅周辺と新宿御苑のリアルな描写、あまりに美しい木の葉と雨の描写、感傷的な音楽、それらが見事に融合し、新海監督ならではの世界が見事に広がっていました。




今年鑑賞している映画では例年以上に感じるのですが映画は人それぞれ好みや生きてきた境遇で感じるものが異なります。昨年だと『桐島、部活やめるってよ』が最も顕著にそれを表していたと思います。

ハマった人は映画の評価だけでなく自らの高校生活を思い出し、その過去と映画を照らしあわせ涙したり心沈んだり、そして語りたくなったりと熱狂的な反応をし、響かなかった方には独特の時間軸構造もあり意味不明の映画として酷評されていました。

本作は美しさがあり、物語も46分という短編として起承転結をしっかり押さえており、『桐島、部活やめるってよ』より遥かに万人受けする傑作だと思いました。

しかし、私にとってこの映画は今年の『桐島、部活やめるってよ』ポジションのような気もします。私の高校生活とは全く相反する高校生活がそこに描かれていましたが、小さなエピソードや台詞が高校時代だけでなく、中学時代、大学時代の忘れていたことを思い出させたのです。

新宿御苑に一時期一人で通ってた時期もあり、本作の中心となる日本庭園をリアルに何度も見て空気を吸っていたのも自分の過去を思い出させた要因かもしれません。

そして物語に感動しただけでなく、自分の過去にまでそのパワーは浸透し心の奥底に響いたのです。映画のクライマックス泣かれた方多いようですが私は泣きませんでした。帰り道何か色々思い出してうるっとしたのです。いい意味でも悪い意味でも。

基本的に相当ポジティブ気質な性格なので、嫌なことなどはサクッと忘れるようにしています。ただ人間て実は記憶したことは忘れないんですよね。思い出せない、思い出さないだけなのです。その思い出していなかったものが様々溢れ良い思い出と悪い思い出とが入り混じり切ない気持ちになりました。

何か語りモードに入ってしまいましたが、つまるところこの映画は私の心の奥底にまで響いた今年の『桐島、部活やめるってよ』ポジションの傑作であったということです。



物語に関しては短編である以上少しでも語るとネタバレになってしまうので語りません。冒頭書いたように雨の日の新宿御苑で出会った青年と女性の心の交流を描いた物語です。女性の謎の解き明かし方、そして最初女性に抱いた「ダメ女と見せかけて・・・」の伏線が見事でした。

本作の魅力は起承転結見事なストーリーも当然ですが、私はそれ以上にリアルなアニメーション描写だなと思いました。今までの新海監督の映画もそうですが、とにかくリアルな世界を描写するのです。

本作ではシンプルに新宿駅周辺と新宿御苑。この描写がホント凄まじいのです。リアルな新宿駅と新宿御苑そのものなのです。空撮的な描写なんてGoogle Earth見てるかのような精細さで鳥肌ものです。

新宿を知らなくても街の描写としてとても巧みなことはきっとわかると思います。新宿知ってる方ならもう驚くしかないでしょう。Twitterでリプ頂いたのですが毎度のこのリアル描写に批判もあるようですね。

いやいや、これがいいのではありませんか。リアルな世界での話なんだから実写でもいいとお思いの方もいるでしょうが、ん〜これ実写だと私冷めてしまうと思います。

光の当たり方や突然雨が上がり光が差す描写などはアニメーションでないとできない演出です。妥協なきリアルな描写にアニメーションだからこそ感動するストーリーや演出が見事にマッチしてるのです。新宿ドコモビルの上を横切るカラスとか、新宿駅の線路に咲いている花からのホームの視点とか、そういったリアルな世界のアニメーション描写が見事なのです。

そしてそれこそが魅力なのです。
この詳細描写とにかく素晴らしいなと思いました。

それと新緑と雨の描写、これがまたもう素晴らしいの何の。
雨の描写がとても美しいわけですが、これ雨単体の美しさではなく雨と新緑の融合による美しさだと思うのです。冒頭でやられましたからねこれ。最後の雪描写も良かったです。

音楽も人の描き方もとにかく美しい。
私はジブリが大好きでCGアニメのピクサーも大好きです。
ジブリの温かみある映像好きですし、CGなのに心のこもったピクサーも大好きです。

それとはまた違ったこの新海監督のテイストも大好きです。46分という短編でありましたが、是非2時間のドラマも次観たい所です。大変だと思いますが(笑)


今年観た映画、様々な傑作があります。

エロ熊全開の下品ムービーかとおもいきや映画愛に溢れ最後は感動と笑顔をくれた『テッド』。

オサマ・ビンラディン暗殺までのリアルなサスペンスと緊迫の突入シーンを描き、最後はそれでも世界に平和は訪れないという痛烈なメッセージを残した『ゼロ・ダーク・サーティ』。

登場人物全員ダメ人間、だけれどもダメならダメなりに元気に笑顔に生きていけばいい。心を通い合わすことが大切だと教えてくれた『世界にひとつのプレイブック』。

タランティーノ節炸裂で西部劇を彼らしくどこまでも勢いを持ってどこまでもバイオレンスに描き娯楽の究極性を教えてくれた『ジャンゴ 繋がれざる者』。

不倫破滅劇という残虐な物語をこれでもかと美しい映像とセット、衣装で彩り、舞台演出を加え不思議な感覚を味あわせてくれた『アンナ・カレーニナ』。

両足切断という悲劇に遭いながらも人間の本能的部分を綺麗事でなく力強く、どこまでも力強く見せてくれた『君と歩く世界』。

どこまでもエンターテイメントで笑いあり、涙あり、歌あり、ダンスあり、で社会問題まで言及したインド映画『きっと、うまくいく』。

バズ・ラーマン監督がド派手演出と抑制演出を巧みに使い、一人の孤独な男の詠歌盛衰をどこまでも美しく残虐に描いた『華麗なるギャツビー』。

スマトラ沖地震の津波で被災した家族の生還と再生を描き、賛否両論と大きな拒絶反応も巻き起こしている『インポッシブル』。

とにかく様々な傑作がありました。
それらはどれも傑作であり、ここに書いてないその他多数の傑作映画もあります。それらは一概に比べられるものではありません。

そんな中本作『言の葉の庭』は美しくリアルな映像と切ないストーリー、それら作品の持つクオリティだけでなく自らの記憶に触れた作品として当然1つの傑作として今年の年末また語るであろう作品の1つです。

私この作品に関して他の方のレビューも何も見てないで今レビューを書いています。評価いいのか悪いのかもわかりません。ただ私には心に響きました。記憶に触れました。その切ない気持ち、これって実は気持ちいいものではないんですが、それを呼び起こしてくれたこと感謝したいです。

いい作品でした。
劇場公開中の映画ですが、iTunesで独占先行配信もしており2000円でダウンロードして何度も観ることができます。(HDは2500円)



近くに劇場ある方は是非劇場で、無い方はiTunesでダウンロードしてこの映画、是非堪能してほしいと思います。

『言の葉の庭』、オススメです!




written by shuhei


問題作ではある。しかし生きることの大切さを教えてくれた『インポッシブル』- スマトラ島沖地震の津波から奇跡の生還を果たした家族の物語【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]


基本情報
日本語タイトル
『インポッシブル』

原題
"The Impossible"

監督
J・A・バヨナ

出演
ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー、トム・ホランド、サミュエル・ジョスリン、オークリー・ペンダーガスト

公式サイト
http://gacchi.jp/movies/impossible/

ストーリー
2004年末、マリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)は、3人の息子と共にタイにやって来る。トロピカルムードあふれる南国で休暇を過ごすはずだったが、クリスマスの次の日、彼らは未曾有の天災に巻き込まれる。一瞬にして津波にのみ込まれ、散り散りになった家族はそれぞれの無事を祈りつつ再会への第一歩を踏み出す。(シネマトゥデイより)

予告編






感想
2004年12月26日に起きたスマトラ島沖地震。
M9.1の大地震により大津波が発生し、インド洋沿岸地域を襲いました。
死者22万人、負傷者13万人という甚大な被害が出ました。

本作はその津波に襲われた一組のスペイン人家族に焦点を当てて描かれています。

"演出的に強調されていることはありません。エピソードを追加といったこともありません。ただ、全てを見せてしまうというのは見ている方にとって刺激が強すぎる部分もあるので、どこまでを見せるか、というのは非常に難しい部分もあったと思います。"

と本作で描かれているご家族の母親マリアさんがインタビューで答えているので実話を誇張していることも無さそうです。

率直な感想をまず書きたいと思います。

映画の完成度面、メッセージ性、そして震災を経験した日本との兼ね合いなど、どれを取っても傑作だと私は思いました。

[DVD発売済み]
映画好きの人間は演出があれこれ、音楽があれこれ、演技があれこれと語りたくなるものです。そんなことなど気にならず(気にならない=完璧ということでもある)に称賛したいのが本作です。

本作は大批判、大論争も巻き起こしています。
東日本大震災の津波で被災した方の本作に対する批判を目にしてあくまでも"津波なんて経験したことない蚊帳の外の人間"として感動したんだなと改めて思いました。
その点後述します。まずは感想を書ききります。

あまりに強烈な津波描写やその後の地獄絵図、目を背けたくなる傷口の描写が実話であることを物語胸が苦しくなりました。そんな状態でも離散した家族たちは懸命に生き、再会を信じ各々が行動をしました。その積み重ねに何度も涙を流しました。

人間の弱さが露呈しながらも、その弱さが人の強さを引き出し、そして絆を作り上げていく様、その温かさと言葉では表せない信じる心や生きる意思を感じることができる映画でした。

再会した家族の実話であるため美談にではあります。しかし美談に留めず、最後の飛行機のシーンで同時に助からなかった数多くの人々がいる現実をしっかり盛り込み、作り手の謙虚な姿勢も感じました。それでも足りなさすぎるという批判も多いです。

ナオミ・ワッツとユアン・マクレガーの熱演が見事で胸を打ちます。そして長男のトム・ホランドくん始め子供たちの演技がそれにも増して素晴らしく涙腺崩壊に追い打ちをかけました。

特にこのトム・ホランドくんの演技は今まで観てきた全ての映画の子役演技を含めてもベスト級ではないでしょうか。長男らしい強さと弱さが見事に表現できていて、行動1つ1つが涙を誘います。兄弟の再会シーンなんて…思い返しただけで涙が出てしまいそうです。

苦しい映画ではありましたが、映画の完成度として申し分のない完璧さ。作り手の謙虚な姿勢とあの現実を伝えようとする意思。そして震災を経験、目の当たりにした日本人として言葉に言い表せない何かを感じた素晴らしい映画でした。

映画の存在意義に関しては様々論争が起きていますが、映画のクオリティは津波の残虐描写含め一級品。素晴らしい映画であると思いました。




"怖い"ということ、"生きる"こと、タイトルの本当の意味
レビュー的なものは上にサクッとまとめましたので溢れていることをこの章にて。

本作には"怖い"という台詞が印象的に出てきます。
東日本大震災を思い出しながら観る私たち日本人はこの映画の感じ方はみなさん異なることでしょう。
私はとにかく"怖い"が印象的に記憶に残っています。

母親と長男が津波に流され木に捕まるシーン、
父親がホテルの上部(避難してる所)で次男に話しかけるシーン、
至るところで"怖い"が印象的に響きました。

私は関東に住んでるため東日本大震災において直接的被災者ではありません。
しかしあの時の地震はとてもとても怖かったです。
どこでも恐いとその時は言いませんでしたがとても怖かったです。

映画を見ながらストッパーをかけてたその怖かった気持ちを思い出しました。
「あの時怖かったなあ・・・震えてたな・・・でも我慢してたな・・・でも怖かったな・・・」
そんなことを映画を見ながら思い出したので"怖い"が印象的に感じたのかもしれません。

映画の中でも語られていますが、恐怖は一人でいるより複数でいる方が和らぎます。
その気持ちが共有できるからでしょう。
それがこの映画では家族の括りや避難所の人との括りで描かれ胸を打ちました。



そして本作の中心に存在するのは”生きる"ということなのは明確でしょう。
母親は病院に運ばれた時、心のどこかで父親(夫)と次男、三男は亡くなってしまったという覚悟があったようです。
なので長男に残された家族は自分しかいないと思い、瀕死の重傷で衰弱していても生きる意思を持って生き抜いたのでしょう。

家族が再会した際に死を覚悟した言葉が出たのはそのためでしょう。
子供には親が必要。その強い意思がそれらに表れていました。
ナオミ・ワッツの熱演に改めて拍手を送りたいです。

"人間は何のために生きているのでしょうか?"
哲学としてよく問われることばですよね。
哲学的な正解ではないのかもしれませんが私は本作を観て一つの答えを得ました。

"人間は生きるために生きている"のです。
今この一瞬は未来の一瞬一瞬を生きるために生きているのです。
言葉で言い表すと難しく聞こえるかもしれませんが、映画を観て明確にそう思いました。

生きるために津波に飲まれても生きようと必死にもがいたのです。
生きるために避難したのです。生きるために治療をしたのです。
生きるために瀕死の状態でも最後の力を振り絞って心臓の鼓動を止めなかったのです。

だから、今ある生命を改めて大切にしようと思いました。
無駄にしようと思ったことはないですが、改めてそう思った次第です。



本作のタイトル『インポッシブル』には深い意味がありました。
津波に飲み込まれてそこからの生還と再会、再生なのでその意味での『インポッシブル=不可能』かと思いましたがそれだけではありませんでした。

『インポッシブル』のタイトルの本当の意味は映画の中盤の次男と見知らぬ女性との会話に由来します。

夜空に光る星はもう何年も前に無くなってしまった星もある。
その輝きが何年も宇宙を旅して今こうして光り輝いている。
今存在している星と無くなってしまった星を見分けることは"不可能"="インポッシブル"。
だけれどその疑問て悪く感じない疑問だったりする。

つまり、離れた家族と再会できる可能性がある限り絶対に諦めない。
もう一度会えると希望を見出す強い意思を持つこと、諦めない心を持つことが大切。
可能性が少しでもあるなら可能性を信じる、それって悪いことじゃなかったりする。

それが『インポッシブル』のタイトルに込められた意味になります。
深いですよね。
辛い映画ではありますが、もう何回か観に行ってより深く味わうことができたらなと思ってます。




◯今観るべきでない人もいる。一生観なくていい人もいる。
この映画で描かれている津波は地震発生後、スリランカ、インド、モルディブ、アフリカ諸国などへはすぐ津波が押し寄せました。しかし震源の東側であるタイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなどでは地震発生から2時間半を過ぎて津波が到達したようです。

本作の舞台はタイのプーケットから100キロほど行ったところなので津波が遅く到達した地域でしょう。警報などはならずにいきなり津波が押し寄せたのを見る限りここまでの被害は予想してなかったんだなと思いました。実際東日本大震災でもこれほどの津波は警報鳴れどもすぐに予測できるものではなかったですしね。自然の脅威を改めて感じます。

本作は5人家族の旅行先での幸せなひと時が描かれ、すぐに津波が襲うシーンに入ります。
この津波描写がとても強烈でして、私たち日本人であれば東日本大震災を思い出さずにはいられません。津波の被害者ではない私でも正直直視するのがとても苦しかったです。

実話なので軽くストーリーにも言及しますが、5人家族は津波に飲み込まれるも生還することができました。しかし父親と次男・三男、母親と長男の二組に離散してしまいました。

この津波に関して予備知識が無くとも、東日本大震災を目の当たりにした私たちであれば遠くまで流されて再会できなくなるという物理的構図は想像することができるでしょう。

私たちはこの映画を東日本大震災を意識せずして観ることはできないでしょう。それは仕方のないことですし、むしろそう観て然るべき映画でもあると思います。

以下本作に関する批判等に関してご紹介します。
本作は論争されるべき映画ですので。

"(前略)・・・結局は家族全員が生き残り、再会を果たして感動のエンディングを迎えますが、 逆に私はそこでは泣けなかったし、心に残ったのは「感動」ではありません。 非常に複雑な気持ちを抱えたまま、未だにうまく感情の整理ができていないので 何と表現したらいいのか難しいのですが、 まだ、これを見て感動できるような心理状態じゃないというか、 まだ、心の準備ができていない、というのが一番しっくりくるというか、 感動よりも、なんせ恐怖だったり、悲しさだったりの感情が大きく上回る感じ。・・・(後略)"
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id343970/rid7/p2/s0/c15/



"(前略)・・・実話ってことでは結末にケチはつけられない、ここは素直に感動するべきなのだろうけど、見終わった後、そりゃ大変な目に遭ってしまったけど、あなた達は最後は家族揃って、しかもあんなVIP待遇で地獄を脱出できたんじゃない、と意地悪な気持ちになってしまった自分がすごく嫌でした。 悲惨さを競うわけじゃないけれど、どんなにひどい状況でもそこに残るしかない被災者より、あなた達はすごくラッキーで、所詮は他国の出来事じゃないの、と。 あ~ 私って心狭い~ あの甚大な被害の中に実在した幸運な家族の物語に、感動したり勇気もらったりできるほどには自分はまだ立ち直ってないんだなあと思い知らされました。 日本人には、と言うか私にはまだちょっと無理な映画でした。・・・(後略)"
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id343970/rid3/p2/s0/c19/


こういった意見が出て然るべき映画なのだと思います。
映画の出来ではなく、映画の存在や公開意義に対して意見が出て然るべきなのです。
まだ鑑賞するのが辛い方がたくさんいるということを知ってほしく引用させて頂きました。

また、是非みなさんに読んで頂きたいブログがあります。

ご本人から引用の許可を頂いたので一部引用させて頂きますが、できればブログへ飛んで全文読んでください。これは正論でありますので。

"インポッシブルの見所は津波の映像表現や、避難所の空気感を再現した場面くらい。津波が海岸を襲う映像表現はたしかに見事だった。妻が津波の濁流に飲まれて、ミキサーのようにかき回されるシーンではあまりの痛々しさに目を覆った。
だがやはり津波を見事に描いた一方で、災害時における混乱、略奪、人身売買などがほとんど描かれていない。スマトラ大震災では、まだ息のある被災者のアクセサリーが略奪され、治安の悪化が原因となる強姦が多発し、親と逸れた子供達がマフィアによって誘拐されたという現実がある。インポッシブルでは、災害時の大混乱や本当の被災者の姿が描かれていないのだ。

この程度のストーリーと描き方で、『感動した』だの『涙が止まらなかった』だの言ってるのは、大災害を体感しなかった頭の中がお花畑の連中くらいだろう。お花畑の連中は大津波が沿岸部を襲った映像をテレビの前から眺め、遺体も映らない検閲された映像だけで、被災地の悲劇を何となく想像して理解した気になっていた。インポッシブルはそんな奴らが喜びそうな映画だ。
マスコミによって加工され、情報統制された映像は、被災者を分かりやすい弱者として演出し、彼らの同情を誘った。
彼らは安全圏から傍観できる立場から、被災者に同情する一方で、放射能の影響を大げさにわめき散らし、デマで情報かく乱した上に、被災地を煽りまくった。物資が十分にあるはずの首都圏で、食料品を買いあさり、復旧が進まない状態で被災地ツアーに出掛ける。復興ボランティアという名目で、偽善者どもがドヤ顔で被災地を踏み漁る。普段は何の影響力を持たない彼らが、自分たちより悲惨な人達を助けることで自尊心を満たそうと被災地を訪れた。"
東日本大震災で津波の被害に遭われた方が本作を観たご意見です。
私は「感動した」「涙を流した」と書きました。それは事実ですし、もう一度観てもそうなるでしょう。なぜなら私は真の震災被災者ではなく、画面を通じた津波しか知らないからです。

しかしそれは事実なのです。

今回私が強く思ったことは映画のメッセージや姿勢がどうこうということ以上に、私のような津波蚊帳の外の人間が「感動した」ということは津波の被災者を苛立たせたり、傷つけたりするものでもあるんだなと言うことです。

なので本作のレビューを消そうと思いました。
しかし今回紹介したブログの方とやり取りができ、ブログの引用許可も快く頂いたので消すことはせず事実をここに追記している次第であります。

この方とは際どい話をいくつもしましたが冷静に真摯的にご対応頂き、最後は温かい言葉まで頂きました。ご対応頂いたことこの場を借りて御礼申し上げます。

映画の感想は良い作品も悪い作品も口コミを生みます。しかし、本作の口コミは場合によっては人を傷つけるのです。難しい映画です。東日本大震災を描いたものではなくスマトラ沖地震の津波の話でもありますしね。でも津波は津波。尊い命が失われたことは同じです。とっても難しいです。

私の考えがまとまっておらず、このブログも中途半端ですが・・・一先ず閉じたいと思います。




written by shuhei


SF映画の新たなる傑作『オブリビオン』、なめてかかってごめんなさい。【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報
日本語タイトル
『オブリビオン』

原題
"OBLIVION"

監督
ジョセフ・コシンスキー

出演
トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、モーガン・フリーマン、アンドレア・ライズブロー

公式サイト

ストーリー
エイリアン“スカヴ”の侵略を食い止めたものの、その戦いによって地球が半壊してから60年。生き残った者たちがほかの惑星へと移住してしまった中、ジャック・ハーパー(トム・クルーズ)だけが地球に残って上空から偵察していた。パトロールに向かっていた彼は、誰一人として生存しているわけがないエリアで何者かの襲撃を受けてしまう。混乱するジャックの前に現れたのは、ビーチ(モーガン・フリーマン)という謎の男。彼との遭遇を機に、ジャックは地球、人類、そして自身の運命を担う冒険に出ることに。(シネマトゥデイより)

予告編



感想
『トロン・レガシー』の監督×トム・クルーズ主演で先日より公開された本作。
映画である以上賛否割れるのが当たり前ですが、本作は肯定派の方が多く、
意外にも批評家の方々からも愛されてるというのが現状ですね。

私は本作、とても楽しめました。
感動することもでき、記憶やアイデンティティについても考えさせられました。
SF映画として文句なしに傑作だなと思った次第です。

[DVD/Blu-ray発売済み]
予告編からは世界観は伝わるもののストーリーがイマイチ掴めなかったため私は当初期待をしていませんでした。
あまり好きではない『007 慰めの報酬』でボンドガールを務めたオルガ・キュリレンコが出演していたのも期待を下げる要因にw
しかしアメリカでいち早く公開され大ヒットの大絶賛。これを観て楽しみな気持ちが高まっていきました。

観てみたらもう語りたくて褒めたくて仕方ないところが色々あったわけでして。

あ、書き忘れないうちに言っておきますと、本作SF映画で意図的に2D映画にしており、
映像や音響が見事なので音響の良い映画館や大きな劇場を選んだ方が良いと思われます。
さてそれでは感想を。

本作はストーリーや設定が細部にまでしっかり作りこまれています。
「どこかで見たことある」なんて言ってる方がいらっしゃいますが、いやいやいやいや。
そんな言葉で否定的な心のバリアを張ってしまっては時間の損でしかありません。ちゃんと観ましょうね。

月を破壊することで地球に天変地異が起きるという設定がまず斬新ではないですか。
地球に広がるのは廃墟ではなく不毛の大地、昼間のシーンをメインにし、
映像をしっかり作り込んでいた辺り製作側の本作への意気込みを感じました。

人工的でスタイリッシュに作りこまれた居住空間やライド。
それらディテールがまた見事でして、それがしっかりストーリーに影響を及ぼすのもまた見事。

人工的でかつての地球の暮らしとは完全に異なるもの。
タイトル"オブリビオン"の伏線にもなってますね。
前半登場人物は3人だけと言っても過言ではないですが、それでも見事に話が進んでいき後半へ影響を及ぼしていきます。

中盤から後半にかけてドラマ性が増していきます。
前半にSFにの世界観を提示した後それに甘えること無くしっかりとドラマを描いていくのです。

そこではアイデンティティや記憶についてが語られていきます。
それはSFの世界だけでなく私たちが今現実世界において考えるべき事柄でもありますよね。
遠くのSF世界の映画でありながらもしっかりと私たちにアプローチしてくれているのです。

そして本作はラブストーリーとしての比重を増していきます。
クローンとアイデンティティ、記憶の消去、夫を思う女性、妻のいる男性を好きになる女性、など様々な要素が絡んでいきます。
実は◯◯が△△で、□□でした的なSF設定だけでも見応え充分なのにしっかりと愛に絡んだドラマ要素を入れてきているのです。

記憶を消されて昔好きだった人の記憶が無くなっても、会ったらまた好きになってしまう…
人間の心の性ですね。しかもそれが結ばれることのない相手。
何て切ない話を入れてくるんでしょう、映画として見事な要素ではありませんか。

そしてラストは切なさと言いますか私たちに「それで良かったのだろうか?」という提示をして映画が終わります。疑問は残りませんが問題提起をして終わるのです。

「自分が彼ならあの最後の決断はできただろうか?妻の幸せのためにそうできただろうか?」

この答え、出ません。

そういった意味でもやもやが残ります。
しかしそれは余韻なのです。終わった後そんなことを考える自分。映画にやられたというわけです。傑作の証なわけです。




意図的に展開を読ませ余力を与えてくれる演出
本作は冒頭30分ほどは不毛の地となった地球と空に広がる居住空間を中心に映画の世界観を伝える装置として機能します。
ここはいささか我慢も必要なスロー展開。ただしこれがあったからこそ後半雰囲気がガラッと変わってからの驚きや感動が増すんですよね。

映画における批判というのは理解できてないのが主な要因。
私は冒頭を見ながら些か不満を抱きましたが、後半になるにつれ納得に変わっていきました。
わからないで批判的心を持ってはいけないとこの映画を通して改めて反省しきりでした。

映画を観ながらあることに気づいたのです。

この映画、一歩先の展開が割りと読めるのです。
しかしそれは「展開が読める」という安易さではないことに気づいたのです。
この映画「観客に展開を読ませて誘導している」のです。

そうすることで映画のテーマである愛やアイデンティティ、
記憶について私たちに考えさせる余裕を与えてくれているのです。
ストーリーを追うのに必死にならない余白を与えてくれてるのです。

一歩先を読ませるだけでラストまでのレールは予想できません。
一歩先が見えることでまた一歩先が見える。
その繰り返しで最後の着地が見えてくるのです。

ディテールがここまでしっかりしていて全編において次の展開が読めるのでこれが演出意図なのは明確でしょう。ラストもしっかり着地しますしね。
「展開読めた」なんていう安易な批判は意味を成さないのでネットから消去してください←

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余談になりますがこの手の話をするといつも思い出すことがあります。『ダ・ヴィンチ・コード』の感想で「最初にルーブル映った時に墓の位置俺わかったからつまらなかったわ」という謎の自慢話。
映画を楽しめてない典型的なパターンですね。映画には様々楽しむ要素があるのにそれだけで楽しめないとかアホ丸出し。オチだけ知りたいならなぞなぞでも一生問いてろバカ野郎って思うんですよ。
ってか嘘だろその自慢。ルーブル映っただけでわかるわけねーだろ。てめえ原作読んでただけだろ!って思いますけどね。いい加減にしてほしいですこういう馬鹿丸出しなのに馬鹿だってわかってない発言。
すいません、言葉が荒くなりました、話を戻しましょう←
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展開を読ませつつ、映像のクオリティは一級品で、演技も皆お見事。
考える余力を私たちに提示しつつ楽しませてくれるわけです。
100点満点で100点ではないかもしれませんが、娯楽・SF・ドラマ・ラブストーリー、様々楽しむ要素がある見事な映画だなと改めて思うのです。


SF映画の受難と比喩表現
『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』は今でも熱狂的なファンが多いです。
いや、公開当初はむしろ評価されておらず後世で評価が高まっているといっても過言ではありません。

SF映画にはそういったパターンが存在します。
そういった意味において本作も今は理解できないけれど後で見たら面白かったという方が出てくると思うのです。

ですから本作において明確に論理的に批判が出来ない場合は批判なんてせず「わからなかった」でいいではありませんか。

好きな女の子の初対面が「何こいつ」だったのに後々好きになった経験てありませんか?あるでしょ?ねえあるでしょ?素直になれよみんな!(※本日テンション崩壊中)

他の映画ジャンルでも言えることですがSF映画は何かの比喩表現であることが多いです。
本作の設定を大企業に当てはめてみましょう。
記憶を消された主人公は社員。

しかし断片的に過去の記憶は残っています。
つまり社畜として洗脳的に会社へ属することを当たり前と納得させられた社員だが、
過去の"俺はこんなところで終わらせないで転職して光り輝くんだぜ"という気持ちを少しは覚えてる。

そして苦悩するのです。夢と現実と未来とで。

不毛の地となった地球はかつて自分が理想とした安らぎ。
その安らぎをもう一度手にしたい、心の平穏を手にしたい。
それは今の状態から脱したいという感情の例えになります。

そして自らのアイデンティティと戦い、属することへ反発をし、外の世界を知る。

こじつけの例えかもしれませんがそういった現実世界への比喩的例えの象徴となっているのは間違いないでしょう。

『スターウォーズ』だってそうじゃないですか。
一番わかりやすい例えで言えばダークサイドのエピソードであるとか。(脱線するので割愛)

こういった比喩的例えや映画の価値観は時がきてわかることもあります。
逆に時が来て必要とされず評価をされない時もあります。
本作がどっちに転ぶか。それは本作云々ではなく、我々の生きる道先が決めること。

未来はどっちへ進むのか、期待も不安もありますが今日、明日、明後日と今をしっかり生きたいと思う次第であります。


まとめ
映画である以上賛否あって然るべきです。
私が絶賛したからといって面白いとは限りません。
本作『オブリビオン』もそうでしょう。

たくさん解説を書かせてもらいました。
楽しむ要素満載ですので是非楽しんでいただけたらなと思います。

映画評価において肯定も否定も様々なアプローチがあります。
好き嫌い、合う合わないが大半でしょう。
それは好みの問題ですから最後どうするかは自分自身です。

本作の批判レビューをアップした方に対して見てもない方々が同調したのをネットで見ました。
批判はあって然るべきでその記事はむしろ興味深く拝見したのですが、
見てもないものに、理解もしてないものでも何となく同調する日本人の良くない一面を改めて目にしてとても残念な気持ちになりました。

しかも私が上に書いたように「どこかで見たことある」という安易なものも。
設定だけネットで見てこういう批判書くのってとても悲しくなるのです。
批判は作品のあらたなる魅力を発見するものにもなるのですが見てもないのに書くのはいかがなものかと思います。

見てからの論理的な批判は大好きなんですけどね。
町山智浩さんやライムスター宇多丸師匠の酷評レビューとか大好物ですのでw

私がかつて映画の知識皆無だった時に言われたある言葉を思い出します。
「人にお勧め聴いたり、何見るから迷ってる暇があるならどれでもいいから2本でも3本でも映画を見ろ。」
この言葉を今でも大切にしています。

人に勧められた作品はできるだけ見てます。
自分で見たいと思ったものもできるだけ見てます。

そしてHuluなどのストリーミングサイト等でたたまた目に止まったものも見るようにしてます。
何となく見て楽しめたら嬉しいじゃないですか。
たくさんの作品があるのです映画には。

そこで故・淀川長治先生のあの言葉を思い出します。
「通は駄作も楽しむ。」
これですよ。映画が好きなら映画を楽しみましょうよ。

しかしこれだけは最後に言わせてください。
『オブリビオン』は傑作ですからね。
批判してる人も「◯◯はいいが△△が〜」てきな批判なので映画として一定のクオリティをどなたも感じていると思います。

以上です。
次回の『グランドマスター』のレビューは通常テンションでお送りする予定です。
暴言・乱文失礼しました。



written by shuhei