2月 2013 - Cinema A La Carte

『ダイ・ハード/ラスト・デイ』、これはダメ。もう少しどうにかなっただろうよ?w【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]




基本情報

日本語タイトル
『ダイ・ハード/ラスト・デイ』

原題
"A Good Day to Die Hard"

監督
ジョン・ムーア

出演
ブルース・ウィリス、セバスチャン・コッホ、ラシャ・ブコヴィッチ、コール・ハウザー

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/diehard-lastday/

ストーリー
久しく会っていなかった息子ジャック(ジェイ・コートニー)がロシアでトラブルを起こした上に、ある裁判の証人となったと知らされた刑事ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)。身柄を引き取りに現地を訪れた彼だが、そこでテロ事件に巻き込まれてしまう。相変わらずの運の悪さを呪いながらも、混乱状態に陥った状況下でジャックと再会するマクレーン。しかし、なぜか親子一緒に次期ロシア大統領候補の大物政治家、大富豪、軍人らが複雑に絡む陰謀の渦中へと引きずり込まれるハメになり……。(シネマトゥデイより)

予告編



感想(一気に語り下ろしw)
映画は娯楽であり楽しむものというのが私のスタンス。
どんな映画でも楽しめるところはある。
映画が詳しいからこそ上から目線ではなくより楽しむべきだと思っています。

なので、どんな映画も大概良い点を見つけてレビューを書くことが多い私ですが、
本作に関しては…
率直に言って極めてつまらない映画でした(真顔←


大真面目に怒ってつまらないとは言いませんが、
いや…もう少しどうにかなったんじゃないか?
と苦笑しながら劇場を後にした感じでしたw

Twitterで珍しく映画の酷評をしたもんなのでお叱りリプも頂きました。
が、まあたまにはいいじゃないですか。
楽しめないもんは、努力しても楽しめないことだってあるのですw

ちなみに今作は私がつまらないと思ってるだけでなく、世界的に酷評の嵐ですw
アメリカの映画レビューサイトRotten Tomatoesを見ると顕著にそれが出てます。

ちなみにアカデミー賞作品賞を獲得したの『アルゴ』の評価は以下の通り。
※左の数値が評論家の平均点、右が一般ユーザーの平均点です。


アカデミー賞主演女優賞を獲得した『世界にひとつのプレイブック』は以下の通り。


日本でも大ヒットを記録した『レ・ミゼラブル』は以下の通り。


そして!『ダイ・ハード』は以下の通り!!爆死状態ですw

普通なら死んでもおかしくない状態でも不死身なマクレーン刑事、
大規模なアクションなど面白い部分は面白いのです。
ただ、今回マクレーンの必死さがいまいち伝わってこなかったんですよね。


画像の表情からもわかる通り、『マシンガンあれば無敵だぜ!』と、
マクレーンが自分は不死身であると悟ってしまってるようでした。
それゆえに今まであった"おもしろおかしさ"を感じることができませんでした。

では、なぜそれが起きてしまったのか?
これはシナリオの問題ではないのかなと思います。

『フライト』のロバート・ゼメキス監督も「最も大切なのは脚本」
と仰られているように素晴らしい脚本あってこそ傑作映画は完成します。
それがアクション映画だろうと。

本作は次から次へとアクションが展開され、俗にいう"中だるみ"はありません。
しかし、進む展開に疑問が次々と湧いてしまうのです。
「なぜそこでそうなる?そのあとどうしてそうなる?何で今そうなってるの?」と。

アクション映画なんて突っ込みあって何ぼな時も確かにあります。
ただしそれは突っ込ませる隙がないくらい面白い時にこそ、そうあって良いのです。
本作は突っ込みを考えさせる隙だらけ。特に終盤の原発関連の描写はいくらなんでも…



舞台がロシアになった点は息子を登場させる故に仕方なかったのかなと。
ただ、モスクワでカーチェイスまがいのアクションを展開すると、
史上最高のカーチェイスを備えた『ボーン・スプレマシー』を思い出さずにはいられません。


そして当然『ボーン・スプレマシー』には勝てないので陳腐に見えてしまうのです。
『ダイ・ハード』のモスクワのチェイスシーンはマクレーンが完全に邪魔者になってる点もよろしくない。
そういった冷めてしまう要素の連続が映画へののめり込みを妨げるのです。

"中だるみ"はなかったと言いました。
その点退屈は確かにしませんでした。
そこは良い点でしょう。

ただそこまで。料理で言うとコース料理で全てにステーキが出てきた印象です。
最初から最後まで大味のアクション、アクション、またアクションと。
胸焼けするんですw
コース(シナリオ)の緩急を付けて、メインディッシュ(アクションやシリーズとしての面白さ)を際立たせないとなのです。
そして料理のセンス(演出)もそれに合ったものにしないとなのです。

とは言ってもそんな料理も美味しいと感じる時もあります。
よって今作を面白かった方という意見にあれこれ何か言うことはありません。
むしろ楽しみたかったのに楽しめなかったのでそう言った方が羨ましいですよ。


では、本作は失敗作でしょうか?
これ結論からいくと成功作になります。
なぜか?

興行的には成功しているからです。
アクション映画なんてアカデミー賞かかるわけないので、興行的に成功することこそ成功なのです。
世界的にヒットしてますのでここは成功印と言って問題ないでしょう。


興行的に成功したのでもしかしたら次回作あるかもしれません。
しかしその際は是非シナリオのちゃんとした脚本で挑んでほしいです。

基本的に私はダイ・ハードシリーズ大好きです。
1,2,3面白いですもん!
だからこそ今回は率直に「ダメ!」という感想を書きました。

「シリーズのファンなら敬愛しろ」というツイートも見かけましたが、
いやいやいやいや、愛してる恋人にいつも甘やかすことってありますでしょうか?
愛してるからこそ思ってることや直してほしいところをちゃんと伝えるのです!

あなたを愛してるからこそ言うわ!シナリオを直して!!

というのが私からダイ・ハードへの愛のメッセージになりますw


先に書いた通り、突っ込みどころあってもいいのです。
突っ込む隙のないくらい楽しませてくれれば良いのですこのシリーズなら。
トランスフォーマーは批評家袋叩きだけど、あれ結構好きなんです。
あんな路線のシナリオや演出で次回はお願いしたいです。


もしくは今回の酷評を受けて0からリフォームするかですね。
次回作、サム・メンデス監督×ジョン・ローガン脚本、
マクレーンのキャスティング交代でダニエル・クレイグとかいかがでしょうか!?

それ『007 スカイフォール』ですねwww
すいません、この辺で戯言はおしまいにしますw



子供が駆け落ち!島中大騒動のファンタジー的ラブストーリー『ムーンライズ・キングダム』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報
日本語タイトル
『ムーンライズ・キングダム』

原題
"Moonrise Kingdom"

監督
ウェス・アンダーソン

出演
ジャレッド・ギルマン、カラ・ヘイワード、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン

公式サイト
http://moonrisekingdom.jp/index.html

ストーリー
1960年代ニューイングランド島。自分が養子だということを寂しいと感じながらボーイスカウト活動をしていたサムは、常に本を読んでいる少女スージーに恋をする。キャンプでの生活になじめない二人は文通を始め、キャンプから勝手に抜け出し森で自由気ままに過ごしていた。一方、村では保安官やスージーの両親らが、二人を捜していたのだが……。

予告編




感想
みなさんはウェス・アンダーソンという名前をご存知でしょうか。
『ムーンライズ・キングダム』の監督です。
今回のレビュー、そして映画を通して是非この名前を覚えてほしいと思います。

彼の監督した作品はどれも独特です。
完全に彼の世界観が構築されてるものばかりです。
ティム・バートン映画を観たら誰もがティム・バートンの映画だとわかるように。

ウェス・アンダーソンの世界観はとても可愛く風変わりです。
あまりの風変わりさに最初は「何か好きになれない」と食わず嫌いをしていた時期もありました。
しかし、映画の食わず嫌いは後悔しか生みません。彼は天才です。本作でそれを再確信しました。

本作はお伽話のような小さな島で、小学生二人が駆け落ちする話です。
小学生の駆け落ち程度の出来事が大人を巻き込み、周りの子供も巻き込み、
人生を振り返り、そして未来を見据える動機となっていくのです。

小さな小さな物語だけれども、大きく大きく心に語りかけてくれるのです。
駆け落ちする二人が無駄に冷静で大人たちの方がわめいてるのもシュールです(笑)
何かメッセージを受け取る作品というより、子供心を思い返す作品だなと私は思いました。

終わった後には満足感溢れる作品ですが、感動はそこまでしなかった、
しかし、それは子供心を思い出させてくれたからであり、それでいいんだなと思いました。
不思議な世界を旅し、不思議な気持ちになる、満足度は極上。
これぞウェス・アンダーソン映画なのです。


魅力はあれこれたくさん!
名優たちが普段ならしないであろう役柄に挑んでいるのも大変魅力的です。
ブルース・ウィリスが情けない警官で、
エドワード・ノートンが頼れないボーイスカウト隊長で、
ビル・マーレイとフランシス・マクドーマンドが夫婦。
ティルダ・スウィントンはお似合いの冷徹役w
子供に振り回されながらも少しずつ心境の変化が生じているのが面白いです。

そんなウェス・アンダーソンの世界観はセットと音楽のよって魅力が何倍にも膨れ上がっています。
小さな島のセットはどこかおもちゃのように可愛いのです。
アレクサンドル・デプラの音楽もコミカルでファンタジー色の強いかわいいものになっています。


可愛さから私たちは子供心を思い出す
脚本、演技、映像、セット、音楽、
あらゆる魅力的の融合がウェス・アンダーソンワールドを構築しています。
それらが私達に子供心を思い出させてくれるのです。

子供の頃の思い出は人それぞれ。
思い出したくない人もいるでしょう。
また本作で思い出せない人もいるでしょう。

しかし子供の頃を思い出すことが出来たら本作はきっと魅力的なものになるでしょう。
私は感動よりも喜びを感じた作品でしたが、当然感動する方もいるでしょう。
兎にも角にも、ウェス・アンダーソン監督の映画はその世界観に浸かってしまうのが一番です。
楽しんで何ぼ!!な映画なのです。


繰り返されるテーマ曲=洗脳w
アレクサンドル・デプラは今最も人気の映画音楽家の1人でしょう。
『ハリーポッターと死の秘宝』や『ものすごくるさくて、ありえないほど近い』、
今年度のアカデミー賞関連では『アルゴ』『ゼロ・ダーク・サーティ』を担当しています。

そんなアレクサンドル・デプラの本作のスコアはとにかく可愛いです。
同じテーマは何度も繰り返されるので耳に残り、脳にこびりつきますw
一曲貼っておきますw


挿入歌の"Le Temps de l'Amour"もセンス良く光ってます。
あの下手くそなダンス、わかるなぁああいう子供時代w


もう全てが愛おしい『ムーンライズ・キングダム』w

ティム・バートン映画が好きな方はそのストーリーやメッセージ性などは二の次で良くて、
あの世界観が好きな方多いのではないでしょうか。
ウェス・アンダーソン映画もそれなのです。だから好きなものは好きなのですw

音楽1つ1つすら愛おしいのです。



とにかく楽しむ!
語ること実はそんなありません。
だって肌で感じて楽しむ映画なのですから。
最初に書いた通り"ウェス・アンダーソン"監督という名前を是非覚えて頂きたいです。

好き嫌いは人それぞれですが、熱狂的ファン拡大中のウェス・アンダーソン。
彼の過去作『ダージリン急行』や『ファンタスティック・Mrフォックス』を遥かに凌ぐ傑作です。
みなさんがどういう感想を抱くかはわかりませんがとにかく可愛い映画なのは保障します。

子供の頃、同じ経験をした方は少ないかもしれません。
しかし、何かしらの"冒険"をした方は多いのではないでしょうか。
その"冒険"を思い出し、笑顔になり、一瞬子供に返り、癒しを得る。

そんな素敵な時間を過ごせる映画です。


オススメです!



他人事物語ではない?秀逸な構成と演出で魅せる『愛、アムール』の不思議な魅力【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報

日本語タイトル
『愛、アムール』

原題
"Amour"

監督
ミヒャエル・ハネケ

出演
ジャン=ルイ・トランティニャンジョルジュ、エマニュエル・リバ、イザベル・ユペールエヴァ、アレクサンドル・タローアレクサンドル

公式サイト
http://ai-movie.jp/

ストーリー
パリ在住の80代の夫婦、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。共に音楽教師で、娘はミュージシャンとして活躍と、充実した日々を送っていた。ある日、教え子が開くコンサートに出向いた2人だが、そこでアンヌが病で倒れてしまう。病院に緊急搬送され、かろうじて死だけは免れたものの、半身まひという重い後遺症が残ってしまう。家に帰りたいというアンヌの強い願いから、自宅で彼女の介護を始めるジョルジュ。しかし、少しずつアンヌの症状は悪化していき、ついに死を選びたいと考えるようになり……。(シネマトゥデイより)

予告編




感想(一気に語り下ろし)
第85回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した本作。
これは凄いです。とんでもなく傑作です。
ただ癖はありますし、幸せな気持ちにもなれません。しかし繰り返します、傑作です。

ミヒャエル・ハネケ監督はとても変わった映画人です。
そのフィルモグラフィーがああだこうだ語り始めると1万字超えるのでそれはやめますw
一言で言えば"人を不快にする演出をしたり、映画の結末解釈を観客に委ねる"監督です。

なので映画を見てすっきりすることもありませんし、
映画を見ながら途中で不快感を感じることもあるのです。
本作は一見ハネケらしからぬ題材のように見えますが、題材がそうなだけで演出はしっかりハネケでした。

いくつかのレビューサイトを見ましたがほとんどの方が大絶賛しています。
しかし批判レビューを見ているとやはり不快に感じたとの意見がありました。
これは故意的なわけですが、真に受けて映画を楽しみにきてる方にはやはり批判対象になってしまうんですよね。

不快感を感じる=映画にのめり込んでるということでもあります。
その辺さすがハネケだなとも改めて思います。



本作は元音楽家の老夫婦の物語です。
妻を介護する夫と、夫に介護される妻。
その二人の物語が静かに静かに描かれていきます。

日本では現実に多数存在している老老介護の物語ということです。
この設定だけ見てみると、正直言って"500回見た話"です。
新鮮味はないですし、高齢社会の日本では「何をいまさら」とも思うでしょう。

しかし、この映画は凄いです。
感じるものが格段に違います。
息苦しさや不安感、喪失感といったものが私たちの心に積み重なっていきます。

映画を鑑賞するというよりも、二人の物語を覗き見した感覚を覚えました。
体験したというか、見てしまったというか…
物語の構成が巧みで、映画としても面白さを感じ、意外と不快感はありませんでした。
爽快感ももちろんないですけどね。


本作の結末は物哀しいものです。
老人である以上、死はすぐそこにあります。
死をもって物語は終焉を迎えます。しかし、どのようにそれを迎えたか?これは映画を見て目撃してほしいです。

悲しく、少しばかり驚く結末ですが、現実味はありますね。
そして、その悲しい結末と対照的な理想化されたシーン(空想・妄想)も描くことで一層映画に深みが増します。

これはジョー・ライト監督の『つぐない』のラストシーンと似た感覚を抱きました。
実際あったことと異なる理想化された映像を我々に提示することで、
私たちが抱く切なさや物哀しさを増幅させ、映画に深みを与えるのです。



物語は驚くほど静かに進みます。
音楽は劇中のピアノを弾く音しかかかりません。
そして故意的に長回しを使うことで小さなストレスを私たちの心に植え付けます。

そのストレスは映画らしくないもの。
つまり言ってしまえば現実的に思える演出をしているのです。
これを"間延び"、"退屈"と思う人もいて当然、しかしこれは狙った演出なのです。

そういった意味で私たちはこの映画を耐えながら見ることになります。
しかしその"耐える"ことを私はしてよかったなと思いました。
なぜなら私たちも生き続ければ老人になるのです。
全く同じでないにせよ、このようなことが起こりえるのかもしれないということを
リアルな演出をもって見ることができたのですから。



ハネケの映画らしくラストは全てを描きません。
要するに介護をしていた夫に結末が見えません。
しかしどうなったかの解釈はそんなに難しくないでしょう。
複数の解釈を目にしましたが、私はスタンダードな解釈をしていると思います。

映画には鳩が出てきます。
その鳩の扱い方と心情は当然マッチしています。
鳩を逃がす、鳩を包み込む。それがは心でもあるわけです。

そんな静かなる老老介護の物語のタイトルが『愛、アムール』。
この物語に"愛"と付けたこと、その究極の愛こそ最後の結末なんでしょうね。

娯楽性はゼロ、爽快度はゼロ、感動というより唖然。
そんな本作ですが、ハネケの演出が凄まじく映画体験としてとんでもない時間でした。
この感覚は不思議と嫌ではありません。静かな演出なのに圧倒されました。

全ての人に勧められる映画ではないです。
しかし改めて言います。

とんでもない傑作です。



『横道世之介』感想、映画を見終わった後に主人公をここまで思う映画はそうはない!【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



『横道世之介』基本情報

タイトル
=横道世之介

監督
=沖田修一

出演
=高良健吾
=吉高由里子
=池松壮亮
=伊藤歩
=綾野剛

ストーリー
「悪人」「パレード」の吉田修一による青春小説を、「南極料理人」の沖田修一監督が映画化。1980年代を舞台に、長崎の港町から大学進学のため上京したお人好しの青年・横道世之介や、その恋人で社長令嬢の与謝野祥子らが謳歌した青春時代を、心温まるユーモアを交えながら描く。主人公の世之介に高良健吾、ヒロイン・祥子に吉高由里子ほか、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛らが出演。

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=FYhrbvDiw9E


感想「世之介という人間が好きになったら離れられない!そして吉高由里子最強伝説再び(笑)」

普段洋画9割の私ですが『桐島、部活やめるってよ』の時のように周りの映画好きさんが大騒ぎでしたので迷うこと無く劇場へ。行って正解でした。素晴らしかったです。

この映画の魅力は大きく2つあります。

・主人公世之介の人柄の良さが心にまで沁みる

・吉高由里子が可愛い

この2点でしょう。横道世之介という主人公の人生というか学生時代にフォーカスして永遠とそのエピソードを我々は目撃していきます。上映時間何と2時間40分。この手の映画にしては超長尺であります。

しかしその長さを感じさせません。いや、この長さが必要だったと思います。じわじわと横道世之介の人柄というかダサさ含めて微笑ましくなってきます。それでいて結末はちょっとビターな感じ。映画の完成度どうこうではなく映画を観終わったあとも「世之介元気かな〜?」と懐かしむ気持ち。新しく友達ができた感覚になります。

女性だと世之介の魅力をもっと掴めるのではないでしょうか。異性だし。その意味私は同姓なので友達という感覚ではありましたが。しかし男性ですのでその意味吉高由里子演じる祥子の魅力にやられたわけでありまして。いや、吉高由里子好きなんですよ(笑)

世之介と祥子と愉快な登場人物たち、ダサくて痛い世之介の行動に苦笑しながらもそれすら魅力の世之介。「こいつ最高だわ〜!」と思いながら吉高由里子が可愛すぎてもう大満足ですよ。吉高由里子嫌いな男性っているんですか?結構いるかアンチ(笑)私はもう大好きすぎて…!

そんな感じで『横道世之介』は1人の人生を目撃する映画です。終わってすぐより数日経ってからの余韻に浸れる映画だと思いました。


12月1日追記)DVD/iTunes発売中

Amazon
=横道世之介 [DVD]
=横道世之介 [Blu-ray]
=横道世之介 (スペシャル版) [Blu-ray]

iTunes



まさかの爆笑シーン連発のイ・ビョンホン主演の娯楽大作『王になった男』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報
日本語タイトル
『王になった男』

原題
"광해, 왕이 된 남자"

監督
チュ・チャンミン

出演
イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ、キム・イングォン、シム・ウンギョン

公式サイト
http://becameking.jp/

ストーリー
1616年、暴君の悪名高き朝鮮第15代王の光海君(イ・ビョンホン)は権力争いの渦中にあり、常に暗殺の危機にさらされていた。そんな折、彼とそっくりの容姿を持つ道化師ハソン(イ・ビョンホン)が王の影武者として宮中に上がることになる。重臣たちは、何とかして身分の低い平民であるハソンを王に仕立て上げようと画策するが……。(シネマトゥデイより)

予告編



感想
韓国映画は普段見ないのですが、試写の機会があったので数年ぶりに観てきました。
イ・ビョンホン主演の歴史フィクションということ以外事前情報入れず。
どんな話か一切わからない状態で試写ってきました。

いやぁ…とんでもなく面白かったです!
文字通り"面白かった"です!!
宮廷サスペンスという軸にたくさんの笑いが散りばめられ、リーダーシップについても語り描く。
エンターテイメント映画として文句なしの完成度、傑作映画でした。


史実ベースにフィクションを織り交ぜた本作、始まってすぐに劇場は爆笑の渦に包まれました。
くすくすではないのです。大爆笑です。私も声出して笑ってしまいました。
何に笑ったかは言わないでおきます。とにかく面白かったですw

そんな笑いの場面を挟み込みながら皇帝と、皇帝そっくりの影武者、
イ・ビョンホンが一人二役で彼に演じて物語は進んでいきます。
神経質な皇帝、呑気な影武者、その演じ分けはお見事でした。

宮廷の中でほとんど繰り広げられるため、下手な演出をするととても窮屈な印象が出てしまいます。
しかし本作はそんなことなく、見事な緩急の付け方で飽きるところが一切ないのです。
笑いの場面の後に緊迫した場面、また笑い、そして語りで心に響く台詞の数々…
セット等美術や衣装など視覚的にも楽しめる要素が満載で文句の付けようがありません。

あまりに面白く物語が進み、影武者の方の皇帝をずっと見ていたくなったわけで、
途中で『これどういうオチに持っていくのだろう…』と不安になりました。
しかしとても素晴らしい落とし所が用意されてました。とても感動的でした。

政治的軋轢が生じている日本と韓国ですが、娯楽映画である本作では
『それは置いといて』というスタンスが良いと思います。
というかあまりに面白いのでそんなこと忘れます。それくらい面白い映画でした。

私はイ・ビョンホンの過去作をほとんど見てないのですが、
どうもイ・ビョンホンの過去作は一般受けしない作品が多いとのツイートを目にしました。
しかし本作はそんなことなくとんでもなく面白い、とその方はツイートしてました。

その通りだと思いました。
映画において"面白い"という言葉は非常に抽象的です。
しかし本作は本当に"面白い"のです。

イ・ビョンホンを中心に周りの俳優陣も素晴らしく、
美術や衣装、音楽も洗練されていて、物語も面白い。
そして爆笑シーンが連発。これぞ映画ですよ。

ゲストのいないただの試写会なのに最後は拍手喝采でした。
大満足でした!

韓国映画やイ・ビョンホンについてあまりの知識が乏しいので詳細や解説は書かず、
これにてレビューはおしまいにしますが、
とにかく全ての方にオススメできる娯楽映画です。

こういった期待してなかったけど面白い、という体験、
幸せだなと改めて思った次第です。


名匠オリヴァー・ストーンのぶっ飛んだ痛快作!『野蛮なやつら SAVAGES』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]




基本情報
作品情報
日本語タイトル
『野蛮なやつら SAVAGES』

原題
"SAVAGES"

監督
オリヴァー・ストーン

出演
テイラー・キッチュ、アーロン・ジョンソン、ブレイク・ライブリー、ベニチオ・デル・トロ、サルマ・ハエック、ジョン・トラボルタ

公式サイト

ストーリー
平和主義者のベン(アーロン・テイラー=ジョンソン)と元傭兵(ようへい)のチョン(テイラー・キッチュ)は親友同士。彼らはカリフォルニア州ラグーナ・ビーチを拠点に大麻栽培のベンチャー起業で大成功を収め、二人の共通の恋人オフィーリア(ブレイク・ライヴリー)と3人で生活している。だが、ある日、彼女がメキシコの麻薬組織に拉致され……。(シネマトゥデイより)

予告編



感想(一気に語り下ろし)
褒め言葉として一言で表現しましょう!!
この映画…

ぶっ飛んでますwww


ポスターから伝わってくる印象以上にぶっ飛び爽快作です!
麻薬栽培ビジネスで成功した若者二人がメキシコの麻薬カルテルといざこざして、
愛する女を誘拐されたのでその喧嘩買っちゃう、っていう話。

要するに無茶する話ですw

"カルテル"という言葉をご存知でしょうか。
麻薬を製造したり売買する組織のことです。
メキシコの麻薬カルテルとアメリカの麻薬に関わる人々を描いた傑作『トラフィック』をご存知の方も多いと思います。

『トラフィック』という映画はとにかくシリアスに麻薬売買や中毒を描きました。
しかし本作のポイントはそこではありません。
"愛する女の奪還劇"が本筋でその喧嘩相手がカルテルという感じです。

よってシリアスさはありません。
しかし麻薬カルテルに関する黒い取引や麻薬捜査官、裏切り者などサスペンスもしっかりと盛り込まれています。
サスペンスエンターテイメント、本筋はラブストーリーといった感じですかね。



本作の実質主人公の3人。
『バトルシップ』のテイラー・キッチュ、
『キック・アス』のアーロン・ジョンソン、
『ゴシップガール』のブレイク・ライブリー。

一人の女が二人の男を均等に愛するという謎の恋愛関係w
ここ突っ込んだら映画楽しめませんので・・・飲み込むしか無い!!w
映画冒頭から二人の男と交互にラブシーン…どんだけ淫らなん!?w

と、突っ込みたくはなるものの、この強固な絆が最後までしっかりと持続します。
よって映画の着地点が見失われず安心して映画を楽しむことができるのです。
なので飲み込むしかありませんw

アメリカ国内で医療用の認可の下りた麻薬栽培を含めて成功した二人。
当然メキシコの麻薬カルテルは彼らと組みたがります。
非合法の市場ではカルテルは当然複数あり、闘争も起きています。
なので成功した二人と組みたい、あわよくば使ってやりたいのです。

メキシコの麻薬カルテルなんて怒らせるもんじゃありません。恐いんです。
取引を開始したらもうその手中に入り込んでしまったようなもの…
しかし主人公二人は組むことを拒否します。

それを予期していたカルテルは二人の最愛の女を誘拐。
そしてそこから物語は加速度的に面白くなっていきます。
2つのカルテルの闘争や誘拐事件の真相、そして麻薬捜査官とカルテルの取引…

それらがエンターテイメント性全開で描かれていきます。


さて、ここまで書いて疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
「あれ?この映画…オリヴァー・ストーン監督だよね?」
と。

オリヴァー・ストーン監督といえば、
『7月4日に生まれて』『プラトーン』でアカデミー賞監督賞受賞、
『ミッドナイト・エクスプレス』でアカデミー賞脚色賞受賞の名匠です。

アメリカ政治や経済に関するシリアスな題材の映画が多いです。
そんなオリヴァー・ストーンの映画が"ぶっ飛んでる"わけです。
前作『ウォール・ストリート』もエンタメ性が高まってましたが、そんな比じゃないですw

言ってしまえば"アカデミー賞なんて狙ってません"路線なので痛快ぶっ飛び作で面白いのです!

しかし、映画の根底にはオリヴァー・ストーンらしさがちゃんとあります。
オリヴァー・ストーンの物語は"敗者"を描くことが多いです。
今回も"敗者"の物語なのです。

麻薬栽培ビジネスで成功した"勝者"な二人が事件をきっかけに"敗者"になるのです。
そして物語の最後にはちゃんと"敗者"としての結末が描かれています。
よって観てる最中はオリヴァー・ストーンらしくないと思いましたが、後味はオリヴァー・ストーンの映画だなと感じました。


この映画最大の魅力はどこでしょう?
これはもうラスト10分で間違いないでしょう!!

何を言ってもネタバレになってしまいそうなラスト10分!
どんでん返し、という表現とはちょっと違う…
しかしあっと驚くラストでした。盛り下げて盛り上げるという反則技でしたw

このラストの"盛り下げて盛り上げる"ことが映画の爽快感を増してくれます。
その前の小さないざこざがちゃんと伏線になってるのも良いです。
全編ぶっ飛んでてエキサイトするストーリー、あっと驚くラスト、エンタメ映画として申し分ない満足度を得ることができました。


テイラー・キッチュとアーロン・ジョンソンのコンビのフレッシュさがとても良く、
ジョン・トラボルタやサルマ・ハエックの名優が脇をしっかりサポート。
そしてベニチオ・デル・トロがぶっ飛びまくりで楽しませてくれますw

申し分ないキャスティング…

と言いたいところですが、本作唯一の難点であり個人的に納得いかないのが、
ヒロインのブレイク・ライブリーのキャスティングです。

ドラマ『ゴシップガール』を見ている身からすると、
この映画のヒロインが『ゴシップガール』のセリーナにしか見えないのです。
というかまんまセリーナです。

セリーナは『ゴシップガール』でよく暴走して事件に巻き込まれることがありました。
そんな問題児セリーナなら麻薬関連で誘拐されてもおかしくなく、
その誘拐先での態度やリアクションもセリーナを彷彿とさせてしまうのです。

ブレイク・ライブリーが出てくる度に脳裏に『ゴシップガール』の映像が浮かんでしまったのです。
つまり映画を楽しみつつも集中できなかったのです。

あまりに似てるので意識的演技、意識的キャスティングと思ったりも…w
文句があるというより、集中できなくて残念だったなと思いました。

『ゴシップガール』好きな方は要注意かもしれませんw



と少し文句も言わせて頂きましたが、
オリヴァー・ストーンのぶっ飛び痛快作としてとても楽しめる一本です!
そしてラストの驚き、これは一見の価値ありでございます。



映画自体が "トリック" 『レッド・ライト』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]




基本情報
日本語タイトル
『レッド・ライト』

原題
"Red Lights"

監督
ロドリゴ・コルテス

出演
キリアン・マーフィ、シガニー・ウィーバー、ロバート・デ・ニーロ、エリザベス・オルセン

公式サイト
http://gacchi.jp/movies/red-light/

ストーリー
科学者のマーガレット(シガーニー・ウィーヴァー)とトム( キリアン・マーフィ)は、超常現象の科学的解明の研究に没頭していた。そんなある日、30年前に引退したはずの超能力者サイモン(ロバート・デ・ニーロ)が復帰するというニュースが世間を騒がせる。マーガレットはその昔、サイモンの超能力のうそを暴くため彼に挑んだ経験があり……。(シネマトゥデイより)

予告編







感想
超能力者サイモンに対して科学者二人がその真相を科学的に解明しようとする話。
つまりトリックを暴く映画です。
超能力者サイモンの超能力者とは?仕掛けとは?そして映画の結末は?

という感じで映画の紹介が成されている本作。
トリックを暴く過程を私たちは予想できるか、できないかという面白さがあります。
そしてこの手の映画は"ネタバレ"してはいけないのでレビューが書きにくですw

超能力者サイモンは本当に超能力者なのかどうか?
本物ならなぜ本物なのか?
偽物ならトリックはどういったものか?

↑この3行自体が実はトリックでもあります。
サイモンのトリック云々もそうですが、映画の"トリック"を見破れるか見破れないかが重要です。


この画像を宣伝で使う時点で"仕掛け"にもなってます。
もうホントネタバレしたくて仕方ないですw

私は本作を楽しめました。
正直言って途中で仕掛けに気付きました。
しかし、それでも楽しめましたよ!

仕掛けがわかると作品の見方が変わります。
ここで興ざめしてしまうとそれまで。
仕掛けを元に"ある人物の感情"を想定するとドラマ性が増して余韻を楽しめます。


主人公はキリアン・マーフィ
ロバート・デ・ニーロは全面に出た宣伝がされていますが、
主人公はあくまでもキリアン・マーフィ演じるトムです。
科学者としてデニーロ演じるサイモンへ挑戦していくのです。

その過程で様々な超能力者紛いの事件が起きます。
悲しみに支配され追い詰められていくトム…
最後彼がサイモンと対決するシーンはなかなかの見応えです。

シガニー・ウィーバー演じるマーガレットはサイモンと過去に因縁が。
それもあり、今回はトムと一緒に科学的解明を行なっていきます。
しかしサイモンは強い…本当に力があるのかどうか…



まとめ
トリック映画は今までも数多く作られました。
やはり傑作はクリストファー・ノーラン監督の『プレステージ』でしょう。
しかしトリック映画は"トリックが全て"という認識を持たれてしまい、それがわかると興ざめしてしまう方も多数。

よって『プレステージ』も賛否真っ二つとなっていますね。
あの映画はトリック映画の構造を持ちつつ、二人の男の苦悩やトラウマを描いたドラマなのです。
その視点で見れば何度も楽しめる重厚な映画として成り立つのです。

この『レッドライト』も同じです。
正直言って『プレステージ』に比べれば薄いと思いますし、俗にいう"オチ"が非現実的です。
しかし、"オチ"はあくまでも作品の印象を変える仕掛けなのです。
そこから"どう楽しむか"が大切なのです。

あ、問答無用で良かった点を1点!!
オープニングロール!
『セブン』ぽくてスタイリッシュで素敵でしたよ!

楽しむも楽しまないもあなた次第。
トリックを見破るか見破らないかもあなた次第。
さあこの挑戦、受けて立つか(見るか)、立たないか(見ないか)、これもあなた次第w




"真実と虚構"、真の人間ドラマ『フライト』の重厚な魅力【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレ解説あり]


基本情報
作品情報
日本語タイトル
『フライト』

原題
"FLIGHT"

監督
ロバート・ゼメキス

出演
デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、ケリー・ライリー、ジョン・グッドマン

公式サイト

ストーリー
ベテランのウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)は、いつものようにフロリダ州オーランド発アトランタ行きの旅客機に搭乗。多少睡眠不足の状態でも一流の操縦テクニックを持つ彼の腕は確かで、その日もひどい乱気流を難なく乗り越えた。機長は機体が安定すると副操縦士に操縦を任せて睡眠を取るが、その後突然機体が急降下を始め……。(シネマトゥデイより)

予告編



感想(一気に語り下ろし)
『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督、12年ぶりの実写映画です。

ジャパンプレミア試写会にて鑑賞してきました。
ずっしりくるラストを備えた素晴らしい映画!といったところでしょう。
秀作です!

話の大半を占める"あること"がネタバレになりそうなので文字色反転して書いていきたいと思います。
本作はサスペンスではなく、1人の男が自分とは何かを悟るまでの物語です。
アルコール依存症についての話ではありますが、本当の自分を認める話という点で誰もが自らに当てはめることができるのではないでしょうか。

映画は冒頭、フライト前に主人公のウィトカーが酒とドラックをやるところからスタートします。
あまりにダメ人間な描写ですが、冷静に考えてみればアルコール依存症だとすぐわかります。
魔が差したとかではないのです。依存症という病気であることが冒頭示されるのです。

そしてフライトへ。しかしここで飛行機はトラブルに陥り急降下し始めます。
これはウィトカー機長のせいではなく整備ミス等機体トラブルが原因だと思います。
ウィトカー機長は機転を効かせ、背面飛行を行い、最後機体を不時着させるのです。





この機体トラブルから不時着までの描写がお見事!
私たちも乗客になっているがごとく"体験"をさせてくれます。
この映画、飛行機乗ってる時は観たくないですね…それくらいパニック描写が見事でした。

ここまでが映画の宣伝でよく成されている情報ですが、これは映画の冒頭1/3にも過ぎません。
映画は不時着後のドラマがあくまでもメインの話なのです。
不時着後、乗務員は血液検査をされ、当然ウィトカー機長からアルコールが検出されます。

それが直接の原因だろうがなかろうが、当然これは大問題です。
それが故に弁護士がこの検査はミスであるという意義を立て報告書を潰しにかかります。

機長が自らが原因と思われたくない。
航空会社は機体メーカーの責任にしたい。
機体メーカーは航空会社の整備ミスの責任にしたい。
様々な思惑が働いていくのです。
サスペンスとして映画は進んでいきます。

ウィトカー機長は事故にショックを受け一度酒絶ちをしますが、
依存症故に、もう一度酒を手にした時、より依存症は悪化していくのでした。
事故と関係ないドラッグ依存症の女性ニコールとウィトカー機長を恋愛関係に持っていくことで映画は依存症を客観的視点で我々に提示するのです。

弁護士はウィトカー機長を無罪にすべく完璧な仕事をします。
ウィトカー機長のアルコール依存症も弁護士は把握します。
そして酒のない環境へ公聴会の日まで彼を置きます。

ここから映画はクライマックスへ進みます。
クライマックス約30分。これに関しては何も書きません。
みなさんが目撃すべきです。


クライマックス30分。
ストーリー云々は置いていおきまして、ウィトカー機長は本当の自分と向き合おうとします。
向き合えたか向き合えないかは言及しません。

真実と虚構、その間に置かれた自らを今後どの方向へ導くかが描かれます。
これは一人のアルコール依存症の男の話ですが、
"真実と虚構の間からの未来の選択"というのは我々人間誰しもが直面するものでもあり、国家や組織もその間で常にもがいているのが現実ではないでしょうか。
そう、だからこそアルコール依存症なんて他人事であっても本作は他人事ではないのです。


ラストは切なさを持って終わります。
しかしそこには救いが存在しました。
最後の台詞にウィトカーは笑顔を見せました。
そう、最後の台詞に対して明確な答えを見つけたのです。
最後の台詞は私たち観客への問いかけでもあります。
嘘をついたことのない人間なんてそうはいません。
最後の台詞、自らの心へ問いかけることで映画は余韻を与えてくれます。


切ないクライマックス、これぞロバート・ゼメキス監督です。
彼が約10年挑戦してきたCGアニメーションは私は虜にはなりませんでした。
彼はやはり実写のこういった重厚で切なさ・苦さを残してくれる映画でこそ味が出ると思いました。

デンゼル・ワシントンはこの役柄を見事に体現しました。
アカデミー賞主演男優賞のノミネートは納得といったところですね。
特にクライマックス、見事な演技でした。


それとジョン・グッドマン!!彼はホントいい役者です。
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』⇒『アーティスト』⇒『アルゴ』⇒『フライト』と立て続けに話題作に出演している俳優さんですが、今作は完全にムードメーカーのお笑い担当w
素敵でした!

オサマ・ビンラディン暗殺を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』の主人公は最後抜け殻になります。
映画の最後の台詞に答えられず絶望感が最後に残りました。

本作『フライト』の主人公は最後真の自分になります。
だからこそ映画最後の台詞に笑顔を見せました。
答えは言いませんでしたが答えがあるのはあの笑顔から明らかでした。

どちらも最後に残るのは"苦さ"。 
その"苦さ"は映画に帰結せず私たちへの問いかけでもある点で共通します。
 どちらも最後の台詞は私たちへの問いかけであると認識することで、映画の深さを感じることができるのです。

『フライト』というタイトルを被せた一人のアルコール依存症男の話です。
決して飛行機の話がメインではない点、期待してたものと違うと思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、今回記事に書いたように、
"真実と虚構の間"という広義で物語を捉えることで私たちの物語でもあるという点を認識すれば、価値ある2時間18分となるのではと私は思っています。




『ジャンゴ 繋がれざる者』感想、クリストフ・ヴァルツがまたやりおった!!タランティーノ最高傑作!!【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



『ジャンゴ 繋がれざる者』基本情報

日本語タイトル
=ジャンゴ 繋がれざる者

原題
=DJANGO UNCHAINED

監督
=クエンティン・タランティーノ

出演
=ジェイミー・フォックス
=クリストフ・ヴァルツ
=レオナルド・ディカプリオ
=ケリー・ワシントン
=サミュエル・L・ジャクソン

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/djangounchained/

ストーリー
 1858年、アメリカ南部。奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の手によって自由の身となる。やがて2人は協力し、次々とお尋ね者たちを取り押さえることに成功する。その後、奴隷市場で離れ離れとなってしまった妻を捜す目的のあったジャンゴは、農園の領主カルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)のところに妻がいることを突き止め……。

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=VYQDZ7ofEFA


感想「おもしろかったー!!!!」

あれこれ書くまえにシンプルにこれだけは伝えておきましょう。

とんでもなく面白かった!!と。

クエンティン・タランティーノの新作となれば映画ファンはそれだけで観に行きたくなるもの。しかも今回はウエスタン映画!!『タランティーノのウエスタン映画』、観ない理由がありません(笑)

主人公ジャンゴと謎の歯科医シュルツがあれこれ退治していくウエスタン。映画の完成度がどうとか、映画のメッセージ性がどうとか正直どうでも良くて、タランティーノらしさが全編炸裂している本作はとにかく面白い!

もうそれでいいではありませんか。

タランティーノの映画はR指定になる暴力描写が満載ですが、今回はいつも以上に暴力描写が満載です。血は飛ぶ、肉は飛ぶ、いやぁ…暴力的です。

でも面白いw

シンプルなストーリーなのに一場面一場面が凝っていて一切飽きません。絶妙な台詞回しはもちろん、俳優陣の熱演、そしてタランティーノ演出が映画をぐいぐい引っ張ります。
最後にスカッとする結末もお見事。爽快感を持って劇場を後にできます。

タランティーノの映画らしいくどいくらいの会話の連続。ストーリーの大筋と関係ない会話も多発します。しかしこれはタランティーノの映画。それがないとタランティーノ映画ではないのです。よって「この点文句を付けるくらいなら見るんじゃない!」となりますw過去のタランティーノ映画が好きな人にはこれも魅力なんです。

しかも過去の俺様的な作りに比べて観客を楽しませようとする意思も見え隠れします。
よって長い長い会話シーンも楽しめるのです。というかこの脚本でアカデミー賞脚本賞受賞!!流石すぎてw


俳優陣最強!

本作には褒めるべき点がいくつもありますが、やはり俳優陣の熱演が特出してますね。名優を無駄なくキャスティングしてますが、今回"も"一番目立っていたのはクリストフ・ヴァルツ!

祝アカデミー賞助演男優賞受賞!!


タランティーノ前作『イングロリアス・バスターズ』ではドイツ人将校ハンス・ランダを演じ、アカデミー賞始め、その時の賞レース助演男優賞を席巻しました。前作は冷徹なユダヤハンターでしたが、今回は情も垣間見える賞金稼ぎシュルツを演じています。

とは言ってもまあ殺しまくってますw躊躇なく人を殺す姿勢にランダ大佐の面影も見えますwしかし主人公ジャンゴと旅をする中で見せるちょっとした優しさがまた素敵でした。

彼の最後の場面もシュルツらしいなと言った感じがしました。クリストフ・ヴァルツはこの演技でゴールデングローブ賞と英国アカデミー賞の助演男優賞を受賞。

そして第85回アカデミー賞助演男優賞受賞!!
納得の怪演でした。




悪役の農場主を演じたディカプリオの狂った演技もまた見事。
クリストフ・ヴァルツの演技を前に霞んでる気もしますが、
いやぁ…ディカプリオ史上最高の悪どい演技を見せてくれています。

とんでもなく冷徹で完全に狂ってるとしか言えない悪どい奴。しかし日常では呑気な農園主を気取ったりもして、それがまたうざいwハンマー振りかざすシーンとか怖すぎて笑いましたw




そんな農園主のお手伝いさんを演じたサミュエル・L・ジャクソンがまた良い!正直言ってヘタレウザキャラなわけですが、そのヘタレウザキャラシーンによって、その後のあるシーンで狂気が増すのです。でもやっぱヘタレでしたw



と、周りばかり褒めてますが、主人公ジャンゴを演じたジェイミー・フォックス良かったです!

妻を盗られ、奴隷として生きていたジャンゴが黒人賞金稼ぎとなり、最後には妻を救出する。カッコいい!シュルツに鍛えられた銃撃スキルがラストに生きており素敵でした。

最後屋敷を後にするシーンのカッコ良さと爽快感はお見事!途中まで完全にクリストフ・ヴァルツ演じるシュルツが場をさらっていましたが、最後は主人公がしっかりと締めていてスッキリしました!


ジョナ・ヒルがちょこっと出てたり、なぜかタランティーノ監督が出演していたりと、その辺もまた楽しめます。てかタランティーノ結構出てたw

センスの良さ全開の音楽!

そんな俳優陣の熱演、タランティーノらしい演出と脚本、これらだけでもう傑作確定なわけですが、タランティーノ映画、音楽センスが神懸かりです。

オープニングの選曲やタイトルの出し方に垣間見られる70年代らしさに始まり、もう全編ハイセンスの選曲で彩られます。エンドロールの音楽も渋くてカッコいい!どこまでもタランティーノ映画!

あれこれ乱雑に書いていますが、とにかくタランティーノ映画なのです!クエンティン・タランティーノという映画人を知っていて、彼の作品が好きな方は絶対に楽しめます!絶対に、絶対に、絶対に。

できれば前作『イングロリアス・バスターズ』を観てから是非鑑賞してほしいです。クリストフ・ヴァルツの比較もそうですし、タランティーノらしさを知って観てほしいのです。

オススメです!!



『ゼロ・ダーク・サーティ』感想、完璧な映画!ビンラディン暗殺までを描き最後に残るのは空虚…【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレ解説あり]



『ゼロ・ダーク・サーティ』基本情報

日本語タイトル
=ゼロ・ダーク・サーティ

原題
=ZERO DARK THIRTY

監督
=キャスリン・ビグロー

出演
=ジェシカ・チャステイン
=ジェイソン・クラーク
=ジョエル・エドガートン
=ジェニファー・イーリー
=マーク・ストロング

公式サイト
http://zdt.gaga.ne.jp/

ストーリー
ビンラディンの行方を追うものの、的確な情報を得られずにいる捜索チーム。そこへ、人並み外れた情報収集力と分析力を誇るCIAアナリストのマヤが加わることに。しかし、巨額の予算を投入した捜査は一向に進展せず、世界各国で新たな血が次々と流されていく。そんな中、同僚の一人が自爆テロの犠牲となって命を落としてしまう。それを機に、マヤの中でビンラディン捕獲という職務が狂気じみた執心へと変貌。ついに、彼が身を隠している場所を特定することに成功するが……。

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=wdMkSTp0rjI



感想「完璧」


オサマ・ビンラディン暗殺までを描いた本作『ゼロ・ダーク・サーティ』、この映画は完全に好み真っ二つ分かれる映画だと思います。しかしこの映画、完成度として完璧以外の何ものでもありません。

震えるほど完璧な脚本、完璧な演出、完璧な演技がこの映画で堪能できます。しかし、この映画はあまりにもシリアスな映画です。描かれている事の事実性を巡って大論争にもなっています。しかし映画として完璧なのです。



みなさんにとって9.11とは何でしょうか?
遠いアメリカで起きた他人事のテロ事件でしょうか?


みなさんにオサマ・ビンラディンとは何でしょうか?
日本と関係ない遠い中東の地のアルカイダのリーダーでしょうか?


みなさんにとってテロとは何でしょうか?
アメリカや中東で起きている他人事でしょうか?


9.11では24名の日本人が亡くなりました。2005年にはロンドンでもテロが起きました。
この『ゼロ・ダーク・サーティ』で描かれる世界は他人事ではなく私達が生きている世界なのです。

CIAの女性職員マヤを中心にオサマ・ビンラディンの居場所を突き止めていく映画ですが、
暗殺の日までに起きた数々の出来事が映画内には詰め込まれています。9.11の際の緊迫した肉声テープで始まり、拷問描写、テロ描写、CIAの緊迫と焦り、徐々に徐々にビンラディンの居所へと迫っていく描写、そして突入作戦の描写、全てが終わった後の主人公の描写。

あらゆる歴史を私達は画面を通して目撃します。数十年前、数百年前にあった歴史ではなく、ついこないだあった歴史をです。それが"完璧な完成度"で描かれていくわけですから圧倒されるしかありませんでした。

入念なリサーチを元にしたマーク・ボール執筆の脚本の完成度、キャスリン・ビグロー監督の魂が入った熱くもわかりやすい演出、そして鳥肌が立つほど気迫溢れるジェシカ・チャステインの熱演、完璧な完成度で目撃する歴史、言葉にできない衝撃を味わいました。

この映画で最も大切なシーンは暗殺作戦のシーンではなく、ラストシーンです。最後、パイロットが主人公マヤへ「どこへ行くんだい?」と訪ねます。マヤは何も答えられません。ただ静かに涙を流します。このシーンがこの映画の全てです。

主人公マヤはビンラディンを暗殺することをほとんど生きる目的として執念で成し遂げました。そんな彼女はそれが達成されても残るものは喜びではなく空虚だったのでしょう。
それが涙となり、返せない言葉となったのです。

この「どこへ行く」は私達への問いかけであり、世界への問いかけでもあるのです。ビンラディンはいなくなった。ではこれからどこへ向かうのか?ビンラディンはいなくなった。けれど世界は平和にならない。どうするか?

その答えは私達も明確に示すことはできないのです。そういった物凄く重いメッセージを残して映画は幕を閉じます。終わった後唖然とするしかないのです。

ビンラディン暗殺を描いているためアメリカのプロパガンダ映画ではと言う方もいます。
そんなことありません。暗殺作戦は見事に達成されましたが映画を見て残るのは空虚だけです。その重い重いメッセージを受け取ることが本作の存在意義。プロパガンダではないのです。

非常に重いメッセージを備えたヘヴィー級の映画です。しかし繰り返している通り完璧な映画です。是非みなさんにも歴史を目撃してほしいと思います。


拷問シーンについて

拷問シーンですが、事実性を巡って大論争になっています。ずばり、拷問など実際は無かったのではという説が出てきています。それにより映画のバッシングまで起きる事態です。

どうやらリサーチをして、その後撮影している最中に拷問が無かったと情報が改められたようです。しかし最初のリサーチでなぜ拷問の話が出たのでしょう?そう考えるとあったかなかったかは当事者のみぞ知る、なのでしょうね。


ジェシカ・チャステインの演技

主人公マヤを演じたジェシカ・チャステイン。本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、先日のゴールデングローブ賞では主演女優賞(ドラマ部門)を受賞しています。

当然の結果と言える大熱演でした。前半からビンラディンを探し出すために全力を尽くすマヤ、ある出来事をきっかけにその全力は執念へと進化していきます。

ビンラディンを暗殺することだけを目的に生きているようなヒステリーさも垣間見え、
その鬼気迫る演技には圧倒されました。特に上司に「テロの阻止のためにはビンラディンを捕まえるか殺すかするんだ!」と突っかかるシーンの緊迫感は素晴らしかったです。

このシーンの台詞も見事な言い回し。
書き起こし貼っておきますね。


You just want me to nail some low level Mullah-crack-a-dulla so that you can check that box on your resume that says while you were in Pakistan you got a real terrorist. 

But the truth is you don't understand Pakistan, and you don't know Al Qaeda. 


Either give me the team I need to follow this lead, or the other thing you're gonna have on your resume is being the first Station Chief to be called before a congressional committee for subverting the efforts to capture or kill bin Laden.



残る空虚さ、しかし映画の完成度はリピートを誘う

前述の通り映画の最後のメッセージにガツンとやられます。「どうしたらいいのだろう」という空虚さに支配されます。唖然とするしかありません。しかし、映画の完成度は完璧です。メッセージの重さにより"楽しむ"ことのできない映画ですが、その完成度により少し時間を置くと"また観たい"と思ってしまうのです。

何度観てもきっと最後のメッセージの答えは出ず、この世界の平和と紛争についてもやもやが残るだけでしょう。むしろそのもやもやは見れば見るほど増えるでしょう。

しかし完璧な映画であるが故、それでもまた劇場へ足を運ぼうとしている自分がいます。そんな不思議な気持ちになっていること、それこそが本作が傑作であるということを表しているのです。