『ブリッジ・オブ・スパイ』感想、今知るべきジェームズ・ドノバンという人物の信念 - Cinema A La Carte

『ブリッジ・オブ・スパイ』感想、今知るべきジェームズ・ドノバンという人物の信念

(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

1月8日から公開されるスティーブン・スピルバーグ監督×トム・ハンクス主演タッグの実話映画『ブリッジ・オブ・スパイ』、一足お先に感想を。緊張感を途切らす事ないストーリーテリング、と心の通い合いが生むドラマに感銘を受けました。こういうのスピルバーグ外しません!


スコア

◯私的満足度
★★★★★(5/5)
=スピルバーグ×実話、まあ外さない!しかも脚本はコーエン兄弟!

◯ファミリーオススメ度
★★★☆☆(3/5)
=害はなし。東西冷戦下の話で、ほとんどドラマパートなので難しいと感じる人はいるかも。

◯子供オススメ度
★★☆☆☆(2/5)
=アクション等がほぼ皆無な史実ものでスパイの取引ものなので難しいかなと。

◯友人オススメ度
★★★☆☆(3/5)
=上に同じ。

◯デートオススメ度
★★★☆☆(3/5)
=上に同じ。

◯映画リピーターオススメ度
★★★★★(5/5)
=スピルバーグの堅実な演出×コーエン兄弟脚本は至高。そこに今回音楽がトーマス・ニューマン!し

◯WATCHAでレビューをチェック&書いてみる


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感想:「感動しながらどこかに宿るほろ苦さ」

時代は東西冷戦下、場所はアメリカ(とソ連とベルリン)、描かれる人物は「ジェームズ・ドノバン」という弁護士。トム・ハンクスが演じていますが、このドノバンが行った2つの事柄を軸に映画は紡がれていきます。


1つ目、ソ連スパイアベルの弁護inアメリカ

2つ目、米ソそれぞれが拘束したスパイの交換inベルリン


この2つをスティーブン・スピルバーグ監督が淡々と、しかし途切れることの無い緊張感を持って描いていきます。

スティーブン・スピルバーグ監督×実話映画と言うことで、『シンドラーのリスト』、『プライベート・ライアン』、『ミュンヘン』、『リンカーン』方面のスピルバーグ映画です。つまり、シリアスな映画。

『ミュンヘン』等で私たちは今この世を生きる絶望感を突き付けられましたが、本作はそういう後味の悪さはありません。

『プライベート・ライアン』と同様に、「私たちが知らないところにいた偉大なる人物」にスポットを当て、その人物の功績を私たちに教えてくれる映画に仕上がっています。

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私は本作の主人公ジェームズ・ドノバンを存じ上げませんでした。この映画で彼の信念、プロフェッショナルさを知ることが出来ました。

映画の前半で描かれるソ連スパイアベルの弁護シーンを見て、彼の仕事に対する曲がることのない強い信念を見せつけられます。

弁護士という仕事は依頼された人物を弁護すること。しかしソ連のスパイの弁護ともなれば世論は売国奴と批難。遂には彼の家族にまで危害が及ぶ事態に。それでも彼は仕事の信念を曲げることはありませんでした。

この仕事の最中、アベルに対して偏見の目を持たずにコミュニケーションを取ったことが映画の後半、「映画として」非常に重要な意味を持つことになります。


映画の後半はソ連で捕虜となったアメリカ人パイロットとアメリカ人学生の二人と、前述のソ連スパイアベルを交換させる困難なミッション。これが『ブリッジ・オブ・スパイ』のタイトルにかかってきます。

史実として、このスパイ交換は成功しています。映画前半でソ連スパイに対しても手を抜くこと無く仕事をしたドノバン。そんな彼とソ連スパイのアベルとの別れ、なぜかそこには「寂しさ」が漂っていました。

仕事としてコミュニケーションを取ったドノバン、それによって少し心を開いていたアベル。もう一生会うことなど無いであろう二人の永遠の別れ、二人は敵国同士なのにとても寂しいワンシーンに感じました。私はなぜか熱く込み上げてくるものが・・・。


アメリカ国民から批難されたスパイの弁護、アメリカ国民から英雄視されたスパイ交換。それら仕事はアメリカ国民からすれば全く異なる2つの事象ですが、ドノバンからしたらどちらも「依頼された仕事を一生懸命にこなした」というだけ。

史実の上での偉大なる功績であると同時に、ドノバンという人物のプロフェッショナルさを非常に感じました。それらは言葉で紡がれるものではありません。演出で見せられるもの。

トム・ハンクスの演技、スピルバーグの演出、コーエン兄弟の脚本の見事な融合が生み出したものと言えるでしょう。

また今回は音楽担当がスピルバーグ映画で長年音楽を務めてきたジョン・ウィリアムズからトーマス・ニューマンへ変更になっています。これは見事にマッチしていて嬉しい驚きでした。

スピルバーグ映画らしさを音楽で彩りつつもトーマス・ニューマンらしさを残し、どこかサム・メンデス監督の映画を思い出したりも。今後もタッグを組んでほしいなと思いました。

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この映画の私自身の満足度は高いですがその他のスコアは落ち着いたものにしました。そう、この映画は非常にエンターテイメント性が低いのです。

戦争映画とも異なるのでアクション的なものがほぼ皆無。厳密にはU-2撃墜事件で有名なそれの撃墜シーンのみです。

緊張感が続く映画ですが、悪く言えば淡々としていて地味なのです。スピルバーグ監督ですので、もっとドラマティックに展開する選択肢やチャンスもあったと思います。しかしスピルバーグ監督はそれを選択しませんでした。

これは前作『リンカーン』でもそうでしたが、描くべきポイントを絞ることで逆にその人物像を炙りだしでプロフェッショナルさを私たちに見せてくれるのです。それには賛否や好き嫌いがあると思いますが、今回はその選択によりドノバンという人物を深く知ることができるわけです。

淡々としている、悪く言えば地味と言う点で見る人を選ぶ映画です。しかし戦争映画ではなく、目を背けたくなるような暴力的なシーンも拷問くらいでほぼありません。

私たち日本人のほとんどが知らないであろうジェームズ・ドノバンという人物。是非この映画が気になる方には彼の功績を知ってほしいと心から思いました。

とても完成度の高い、プロフェッショナルさを感じる映画でございました。

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どんな映画?

保険の分野で着実にキャリアを積み重ねてきた弁護士ジェームズ・ドノバンは、ソ連のスパイとしてFBIに逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を依頼される。敵国の人間を弁護することに周囲から非難を浴びせられても、弁護士としての職務を果たそうとするドノバンと、祖国への忠義を貫くアベル。2人の間には、次第に互いに対する理解や尊敬の念が芽生えていく。死刑が確実と思われたアベルは、ドノバンの弁護で懲役30年となり、裁判は終わるが、それから5年後、ソ連を偵察飛行中だったアメリカ人パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが、ソ連に捕らえられる事態が発生。両国はアベルとパワーズの交換を画策し、ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。


公式HP
http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/


予告編



written by shuhei