『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その6〜両シリーズの繋がり編〜 - Cinema A La Carte

『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その6〜両シリーズの繋がり編〜

(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.

実はいろんな所で繋がってた?! 『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』をより楽しむために、両者の関連性を知ろう!


はじめに、本記事は盛大に『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』のネタバレをしていますので、未見の方はご注意ください







それでは……










いきますよー!










石になった3匹のトロル

『旅の仲間』序盤の誕生パーティの場面で、ビルボが子どもたちに自分の冒険話をしているシーンが出てきますね。お気づきの方も多いと思いますが、あそこで話していたのは『ホビット 思いがけない冒険』で3匹のトロルに捕まったときのことです。

あのトロルたちは最終的に朝日を浴びて石になってしまいましたが、実は彼らは『旅の仲間』にも登場していたのです!

裂け谷に向かう途中、ナズグルに襲われ傷を負ったフロドは森の中で瀕死の状態になりましたまさにあの場所こそが、3匹のトロルが石になった場所なのです。カメラが引きで森を映しているときによく見てみると、トロルたちの姿が映っているのが分かります(スペシャル・エクステンデッド版ではトロルの顔がはっきり映され、サムが「ビルボの旦那が言っていたトロルですよ!」とフロドに言っているシーンが追加されています)。

余談ですが、ビルボの冒険話を聞いている子どものうちの一人に、黒髪で大きな瞳の可愛い女の子がいたのを覚えていますか? 彼女は実はピーター・ジャクソン監督の娘なのです。彼女は『ホビット』シリーズでもエキストラとして出演しているので、ぜひ探してみてくださいね!


モリアの領主バーリン

『旅の仲間』の中盤、荒れ果てたモリアの坑道で、ある墓を見つけたギムリが嘆き悲しむ場面がありました。あの墓に埋葬されていたのは、『ホビット』シリーズでビルボと共に旅をしたドワーフのうちの一人、バーリンです

真っ白い髪とヒゲがトレードマークの癒し系おじいちゃん、バーリン。彼は『ホビット』の物語の後、かつてのドワーフ王国を復興すべく一部のドワーフたちを率いてモリアへ向かいました。この旅には、同じく『ホビット』シリーズに登場したオーリ(おかっぱ頭でスリングショットの使い手)やオイン(補聴器がトレードマーク)も同行していました。

しかし、モリアにたどり着いた彼らは地下に潜んでいたオークたちと戦いになり、それによってバーリンを含むモリアのドワーフは全滅してしまいました。フロドたちが到着したころには、モリアは見るも無残な姿に……。

バーリン以外に実はオーリも『旅の仲間』に登場しています。映画は『ロード〜』シリーズのほうが先に作られているのでおそらく後付け設定ですが、バーリンの墓の横で本を抱えていた白骨死体がオーリであると監督が明言しているのです。

あの本は「マザルブルの書」といって、モリアに移り住んだドワーフたちのことが記録されているものです。「マザルブルの書」の最後の数行はオーリが記録したと推測されているので、それであの死体がオーリということになったのでしょう。

ちなみに字幕・吹替共に、モリアの場面でギムリが「いとこのバーリン」と言っていることになっていますが、バーリンはギムリの父親のいとこなのでこれは誤訳です。英語の“cousin(いとこ)”には単純に「親戚」という意味もあるので、この場合はこちらの意味になります。


ゴラムを見逃したビルボ

個人的な話になりますが、私は『ホビット』3部作の中で、『思いがけない冒険』でビルボがゴラムを殺さずに逃げるシーンが一番のお気に入りです。「なんでそこ?」と言われることもありますが、『ロード〜』『ホビット』の関連性とこれらの物語の結末をちゃんと理解していると、あの場面は非常に感慨深いものになるのです。

(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.

なぞなぞ対決の末に襲ってきたゴラムから逃げたビルボは、指輪を嵌めたことで自分が周りから見えなくなっていると気づき、その隙にゴラムを殺そうと剣をかざします。しかしビルボはゴラムを殺しませんでした。

彼がゴラムを殺さなかった理由、それは「ゴラムがかわいそうになったから」。原作ではこのときのビルボの心境が描かれていますが、映画では全く語られていません。しかしビルボの表情が全てを物語っています。あの場面のマーティン・フリーマンの演技は本当に素晴らしいものでした。

しかし、このシーンの良さはそれだけではありません。実はこの時の出来事について言及している場面が『ロード〜』に登場していたのを、皆さん覚えていますか?

フロドら旅の一行がモリアで道に迷ったとき、ゴラムが後をつけてきていることにフロドが気づきますが、その時のフロドとガンダルフの会話が以下のとおりです(日本語は拙訳になります)。


Frodo    : It's a pity Bilbo didn't kill him when he had the chance.
     ビルボおじさんが情けないばっかりに、あいつを殺し損ねたんだ。

Gandalf : Pity? It is pity that stayed Bilbo's hand.
              Many that live deserve death.
              Some that die deserve life.
              Can you give it to them, Frodo?
              Do not be too eager to deal out death and judgment.
              Even the very wise cannot see all ends.
              My heart tells me that Gollum has some part to play yet, for good or ill...before this is over.
              The pity of Bilbo may rule the fate of many.
     情けない? その“情け”がビルボの手を止めたのだよ。
     生きるべき者が死ぬことがある。
     また死すべき者が生きながらえることも。
     フロド、お主にその判断が下せるか?
     軽率に生死を判断するべきではないのだ。
     どんな賢者でも、物事の結末を見通すことはできないのだから。
     きっとゴラムにはまだ果たしていない役割がある。
     それが良いことにしろ悪いことにしろ……全てが終わる前に分かるだろう。
     ビルボの“情け”が、多くの者の運命を左右することになるかもしれぬ。


第3弾(『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その3〜指輪とフロド編〜)でも少し書きましたが、ゴラムは指輪の破壊に携わる重要な役割を担ったキャラクターでした。もしビルボがゴラムを殺していたら、指輪の破壊はできなかったのです。つまり、『思いがけない冒険』のあの場面は、中つ国の運命を大きく左右した超重要な出来事だったのです!

ビルボという一人のホビットのかけた小さな“情け”が、多くの命を救った……それを理解していれば、あのシーンの見かたがきっと変わることでしょう。


ビルボからフロドへ受け継がれたもの

『ロード〜』でフロドが裂け谷から旅立つ際、つらぬき丸(スティング)とミスリルの胴着がビルボから贈られました。『ホビット』シリーズを見た方であれば、ビルボがどうやってこれらを手に入れたかをご存知でしょう。

『思いがけない冒険』で、トロルの洞窟で短剣を見つけたガンダルフはそれをビルボに渡しました。それが後のつらぬき丸です。このときはまだ名前はありませんでしたが、『竜に奪われた王国』でビルボが闇の森の蜘蛛と戦った際に、ビルボの剣で突き刺された蜘蛛が「It stings!(つらぬきやがったな!)」と言ったことから“つらぬき丸(スティング)”と命名されました。

ちなみに闇の森にいた蜘蛛は、『王の帰還』に登場する大蜘蛛シェロブの子どもたちです。シェロブ自身も、サムとの戦いでつらぬき丸の一撃を食らっていましたね。

(C)2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.

また、ミスリルの胴着は『決戦のゆくえ』でトーリンからビルボへ贈られたものでした。この胴着もつらぬき丸と同じく、ビルボからフロドへと渡っています。モリアでの戦いでトロルの攻撃を受けたフロドは、この胴着を着ていたことで命拾いしました。トーリンからビルボへの贈り物が、フロドの命を救ったのです。しかも、前述したバーリンの墓のある部屋で。



『ロード〜』と『ホビット』はそれぞれ独立したシリーズではあります。しかし、上記のように様々な部分が実は密接に関わりあっているので、それらを知っていると中つ国の世界観をより深く理解することができるでしょう。

ということで、次回はこの両シリーズに共通して登場するあのキャラクターをピックアップしてみたいと思います!それではまた!


[徹底解説リンク]
第一弾『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その1〜基本のおさらい編〜
第二弾『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その2〜キャスト編〜
第三弾『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その3〜指輪とフロド編〜
第四弾『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』徹底解説その4 〜よくある質問・前編〜

written by ayako