ミュージカル映画『RENT/レント』の魅力、ニューヨークの片隅で貧しい若者たちに舞い降りた、クリスマスの奇跡[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

ミュージカル映画『RENT/レント』の魅力、ニューヨークの片隅で貧しい若者たちに舞い降りた、クリスマスの奇跡[ネタバレなし]

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『ピクセル』『ハリー・ポッターと賢者の石』のクリス・コロンバス監督作品『RENT/レント』を紹介。“Seasons of love”をはじめとする珠玉のナンバーに彩られた、社会的マイノリティたちの物語。


伝説となった人物、ジョナサン・ラーソン

2006年に日本公開した『RENT/レント』は、12年間のロングランヒットを記録したブロードウェイの人気ミュージカルを映画化した作品です。ニューヨークのイースト・ヴィレッジ(オリジナルのミュージカルが作られた90年代半ばまでかなり治安の悪かった地域)を舞台に、貧困層の若者たちの一年間を描いています。

『RENT/レント』を語るうえで忘れてはいけないのが、オリジナルのミュージカルの作詞・作曲・脚本を担当したジョナサン・ラーソンです。プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』に着想を得た彼は、7年もの歳月をかけ、ほぼ一人でミュージカル“RENT”を書き上げました。

1996年2月にオフ・ブロードウェイ(ブロードウェイよりも小規模の劇場で上演される舞台を指す)で開幕したこのミュージカルは、セクシャル マイノリティや麻薬中毒、 HIVといった題材を大きく扱っており、そういった事柄を敬遠しがちだった当時の演劇界においては異色の作品でした。

(c)2005 Sony Pictures Entertainment,Inc.

“RENT”は若者を中心に話題となり、同年4月にはブロードウェイに進出。トニー賞やピューリッツァー賞など数々の栄冠に輝き、先述のとおり12年にも及ぶロングランヒットとなりました。しかし、このミュージカルを作り上げたジョナサン・ラーソンその人は、観客の喝采を浴びる“RENT”を見ることはありませんでした。

“RENT”のプレビュー公演(本公演の前に数週間行われるテスト公演のこと)の初日未明、ラーソンは胸部大動脈瘤破裂によって亡くなりました。その数週間前から体調が悪く病院に通っていたにも関わらず、医師の誤診によって見逃されていたのです。

彼の訃報を受け、プレビューの初演は役者が座ってセリフを読み歌をうたうだけの追悼公演に急遽変更。しかし中盤で気持ちを抑えきれなくなったキャストたちが歌い踊りはじめ、そのまま全員最後まで演じきるという事態に。大きな拍手に包まれたカーテンコールのさなか、観客の一人が“Thank you Jonathan Lason!”と叫んだことで、他の観客とキャストも一緒になってこの言葉を叫んだそうです。

この“Thank you Jonathan Lason”の言葉はブロードウェイのみならず世界各国の公演の最後にバックスクリーンに映しだされるようになり、映画版『RENT/レント』でもエンドクレジットの最後に表示されました。

ちなみにこのミュージカルは日本公演も行われていて、1998年の初演を皮切りに、1999年、2008年、2010年、2012年、そして2015年と、定期的に上演されています。


実力派のキャストと珠玉のナンバー

ブロードウェイのオリジナルキャスト8人のうち、6人が映画版『RENT/レント』でも同じ役で出演しています。その6人のうち、モーリーンを演じたイディナ・メンゼルは皆さんご存知、あの『アナと雪の女王』のエルサの声を担当し“Let it go”を歌っていた人です。今や舞台・映画・ドラマと様々な分野で活躍するイディナ・メンゼルですが、彼女のブロードウェイデビュー作がこの“RENT”でした。

他にも、ラッセル・クロウ主演の『ビューティフル・マインド』など映画と舞台の両方で活躍するアンソニー・ラップや、『シン・シティ』シリーズのロザリオ・ドーソン等も出演。どのキャストも、歌もダンスも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれています。

また本作を見たことがなくても、代表曲“Seasons of love”を聞いたことがあるという方はいるのではないでしょうか。映画版では一番最初に歌われるこの曲は、印象的な歌詞とメロディで私たちを一気にこの作品の世界観に引きこんでくれます。

(c)2005 Sony Pictures Entertainment,Inc.

社会的マイノリティの生き様

本作は同性愛者や麻薬中毒者、エイズ患者といった社会的マイノリティの人たちを主に描いています。これをお読みの方で、そういう人たちにはあまり馴染みがないという方もいれば、まさに自分が該当するという方もいるかもしれません。なので見る人によって、社会的マイノリティの世界を知るきっかけにもなれば、自身の経験を重ねあわせることもできるのではないでしょうか。

ジョナサン・ラーソンが文字通り“命をかけて”作り上げたミュージカルを、クリス・コロンバス監督が丁寧に、原作を尊重しつつ映画化した『RENT/レント』。ぜひご覧になって、彼らがこの作品に込めたメッセージを感じ取ってください。

(c)2005 Sony Pictures Entertainment,Inc.


written by ayako