アニメ映画『パーフェクトブルー』の魅力、それは幻覚か? 現実か? 混乱の末に辿り着いた結末は……[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

アニメ映画『パーフェクトブルー』の魅力、それは幻覚か? 現実か? 混乱の末に辿り着いた結末は……[ネタバレなし]

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今敏監督の傑作サイコスリラー『パーフェクトブルー』を紹介。ナタリー・ポートマン主演作『ブラック・スワン』との共通点・相違点についても考えていきます。


「あなた、誰なの?」

B級アイドルグループ“チャム”のメンバーである未麻は、グループを脱退し女優への転身を図るも、役を得た連続ドラマの撮影で大胆なレイプシーンを演じることに。さらにヘアヌード写真集の依頼も来て、アイドル時代では考えられなかったような仕事に精神的ダメージを募らせていく未麻。女優としてキャリアアップするためと自分に言い聞かせるが、やがて彼女はアイドル時代の自分の幻覚を見るようになり……。

というあらすじのアニメ映画『パーフェクトブルー』は、2010年に亡くなったアニメーション監督、今敏の映画初監督作品です。幾重にも張り巡らされた伏線と斬新な演出で、国内外を問わず非常に高く評価されています。

「サイコスリラーっていっても所詮アニメだし……」と侮ってはいけません。レーティングR−15(外国ではほぼR-18)の本作にはなかなか衝撃的なシーンも含まれており、家族や付き合いたてのカップルで見ようものなら気まずくなること間違いなし(笑) ですが、作品自体は非常に面白いので、一人で、もしくはエロ・グロシーンを一緒に見ても気まずくならない方との鑑賞をおすすめします。




『パーフェクトブルー』と『ブラック・スワン』


『パーフェクトブルー』との比較としてよく話題になるのが、ダーレン・アロノフスキー監督作『ブラック・スワン』です。アロノフスキー監督は今監督のファンであることを公言していて、2001年日本公開の監督作『レクイエム・フォー・ドリーム』には『パーフェクトブルー』にオマージュを捧げているシーンもあります。

『ブラック・スワン』は、バレエ「白鳥の湖」のプリマを演じようとするバレリーナのニナ(ナタリー・ポートマン)が精神的に追い詰められていく様を描いた作品で、ざっくり言うと“表舞台に立つ女性が性的経験や精神的苦痛を経て幻覚を見るようになる”という点や“鏡に幻覚が映る”といった演出方法が『パーフェクトブルー』と共通しています。

『ブラック・スワン』の公開当初から「これは『パーフェクトブルー』のパクリだ!」と言っている人もいました。確かに、アロノフスキー監督自身が意識したか、それとも無意識のうちかは分かりませんが、先述した共通点からも『パーフェクトブルー』の影響を受けていると考えられます。


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ですが、この二作はそれぞれが違った素晴らしさを持っている名作です。ネタバレになってしまうので書きませんが、終盤の展開や主人公の結末は全く違っていて、見終わった後に感じるものも違っているのです。

『パーフェクトブルー』は、とにかくサスペンス色の強い作品です。特に後半、現実・夢・劇中のドラマという3層が入り乱れる目まぐるしい展開と、未麻の周囲で起こる不可解な事件、そしてさりげなく張り巡らされた伏線やミスリードに、見るものはどんどん混乱させられていきます。最終的に物語は二転三転し、予想だにしなかった方向へ。

対する『ブラック・スワン』は、サスペンスよりもホラー要素が強い印象です。物語が進むにつれ、ニナが見る幻覚はより恐ろしいものへと進化していきます。この恐ろしくリアルな幻覚の描写は、実写ならではの良さと言えるでしょう。そしてニナが迎えるラスト。これはハッピーエンドか、はたまたバッドエンドか……。


必ずもう一度見たくなる

似ているようで違っている『パーフェクトブルー』と『ブラック・スワン』にもう一つ共通して言えるのが、どちらももう一度最初から見てみたくなる映画ということです。特に『パーフェクトブルー』後半の畳み掛けるような演出に混乱しないという人はいないでしょう。

どこまでが現実で、どこからが幻覚か。見終わったあともう一度見なおして「ここはこうだったのか!」と理解するところまで楽しむことができる作品です。


written by ayako