『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』知ってるようで知らないザ・ビーチ・ボーイズの歴史と「Pet Sounds」 - Cinema A La Carte

『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』知ってるようで知らないザ・ビーチ・ボーイズの歴史と「Pet Sounds」

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人気グループ、ザ・ビーチ・ボーイズ。バンドのリーダーで作曲を担当してたブライアン・ウィルソンの半生を描いた『ラブ&マーシー 終わらないメロディ』。劇中に流れるザ・ビーチ・ボーイズの楽曲と傑作「Pet Sounds」を振り返りましょう!


ブライアン・ウィルソンの名前を知らなくても「ザ・ビーチ・ボーイズ」の名前だけでも知っている人は多いでしょう。知らなくてもテレビ番組のハワイ特集やサーフィン場面のBGMで耳にしたことはあるかなと。

ビートルズのライバルとも呼ばれた彼らの経歴やブライアンの人生に大きく影響することになる名作「Pet Sounds」を紹介します。音楽明るいのに道のりが全然明るくないよ!


ザ・ビーチ・ボーイズって?

ザ・ビーチ・ボーイズ(以下ビーチ・ボーイズ)は、

・1961年に結成したブライアン、デニス、カールのウィルソン兄弟と従兄のマイク・ラヴ、高校・大学の同窓生アル・ジャーディンの5人からなるアメリカ・カリフォルニア出身のロックバンド。

・サーフィン、青い海をイメージした爽やかで軽快なメロディラインが特徴。
 (実際にサーフィンをしたことがあるのは5人中1人)

デビューから4年間はヒット曲を連発、ロックンロールのリズムにコーラスワークを多用したブライアンの楽曲は今でも多くのロックバンドに影響を与え続けています。






1966年に発表された「Pet Sounds」発表後からビーチ・ボーイズは大きく変わっていきます。

・ブライアンは精神状態の悪化により事実上ドロップアウト。

・バンドは残りのメンバーで続行、レコード売上は振るわなくなるがライブを中心に活動していく。

バンド活動に波風を立てたのはブライアンだけではなく、デニスもこの時期に後にロマン・ポランスキー監督の妻シャロン・テート惨殺事件を起こしたチャールズ・マンソンと楽曲共作や共同生活を送っており、事件後スキャンダルとして取り上げられてしまいます。

長い停滞期の後、1988年ブライアン以外のメンバーがビーチ・ボーイズ名義で発表したトム・クルーズ主演の映画『カクテル』の主題歌「Kokomo」が22年ぶりに全米1位に輝きます。





その後ブライアンの復帰、デニス、カールの死やバンドの分裂・和解やメンバー同士の訴訟問題などを経て解散をせずに今日まで活動中。

ポピュラー音楽の分岐点となった「Pet Sounds」

ブライアンは1964年頃からライブ活動から離脱し、作曲とレコーディング作業に専念し始めていました。新しい音を模索していた頃、イギリスで活躍していたビートルズが「Rubber Soul」を発表しました。

従来のロックバンドの 枠に囚われない幅広い音楽性と当時は革新的だった多重録音を駆使したこの作品に対抗心を燃やしたブライアンはバンドとのツアーを取りやめ、一人スタジオに籠ります。

1966年にブライアン渾身のアルバム「Pet Sounds」を発表、フルートやハープシコードや自転車のベル、犬笛を使用したり多重録音で作るハーモニーとブライアンの心情を綴った繊細な歌が複雑に混ざり合う実質的に彼のソロ・アルバムとも言える作品になりました。




現在でこそ多くの評論家から最良のポップアルバムやロックの名盤と評価されていますが、音楽の難解さと従来のビーチ・ボーイズのイメージと全くかけ離れた「Pet Sounds」の評判はあまり良いものでありませんでした。

バンドの中でも受け入れられないメンバーがいたり、レコード会社はアルバムコンセプトを理解できずプロモーションが上手くいきません。保守的なアメリカのファンにも中々受け入れられません。

全米10位、50万枚の売上を記録したもののそれまでの作品に比べて売上が伸び悩んだ為、レコード会社はビーチ・ボーイズのベスト盤を発売、こちらは100万枚売れます。予想以上の反響の低さとベスト盤の好調な売れ行きに精神的に不安定だったブライアンは非常に傷つき、その後20年以上もこの事を引きずることになります。

一方、イギリスではアルバムチャート26週連続トップ10入りを果たす大ヒットを記録しました。翌年ビートルズは実験的アルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」を発表。メンバーのポール・マッカートニーは「Pet Sounds」から影響を受けたと公言していて、自身の好きな音楽アルバムにも挙げています。





ビーチ・ボーイズとビートルズがお互いに影響を受けながら次々と楽曲を作っていた60年代後半を境に、ロック・ポピュラー音楽が単純でわかりやすい楽曲からより複雑で内省的なものが増えていく様になっていきます。

映画を通して感じる天才の苦悩

『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』は音楽好きにはビーチボーイズの代表曲が劇中で次々と流れることと、ロック・ポップミュージック史上の名盤といわれる「Pet Sounds」製作秘話が描かれているところが最大の見所。ミュージシャンでもあるポール・ダノのブライアン本人にも負けないくらいの歌声にも注目です!

また、この物語はバンドの人気絶頂の中で徐々に精神を病んでいく60年代のブライアンと、薬物の後遺症に悩みながらも立ち直ろうとする80年代のブライアンを同時進行で追っていきます。

明るい音楽の裏に隠された彼の心の闇を垣間見ることができるので映画好きにも見応えのある映画です。

天才故に自身の音楽の才能とその才能を妬み利用しようとする人間に振り回され続けた彼の苦悩は観ていて居た堪れなくなるのですが、彼の作った軽快かつ優しい楽曲が重苦しさを払拭してくれるし、ブライアンを助けることになるメリンダとの恋もあり。観終わった後はビーチ・ボーイズの音楽がまた違って聴こえてくるかもしれませんね。

まだまだ劇場公開中なので繊細なロック・レジェンドの挫折と復活の物語をぜひ観て下さい!


『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』公式サイト
http://loveandmercy-movie.jp/