ジブリ映画『ハウルの動く城』ネタバレ解説! 劇中で説明されていない謎を解き明かしてみる - Cinema A La Carte

ジブリ映画『ハウルの動く城』ネタバレ解説! 劇中で説明されていない謎を解き明かしてみる




宮﨑駿監督作『ハウルの動く城』のさまざまな謎についてネタバレ込で解説しつつ、原作との違いや制作秘話などの豆知識を紹介していきます。


ソフィーはどうして見た目が変わるのか?

荒れ地の魔女に魔法をかけられたソフィーは、物語が進むにつれて外見がコロコロ変わるようになりますよね。老婆になる呪いをかけられたはずなのに、なぜ若返ったり年をとったりを繰り返しているのでしょうか。

ソフィーは、美人で人気者の妹と自分を比較してしまったり「よくあるおとぎ話みたいに、自分は長女だから何をやってもうまくいかない」と思い込んでいる、ネガティブな女の子でした。劇中でハウルに対して「私なんか、美しかったことなんて一度もないわ!」というシーンもありましたね。原作でも(呪いをかけられる前に)鏡に映った自分のことをオールドミスみたいだと自嘲的に言う場面が出てきます。

荒れ地の魔女の呪いはそんなソフィーの意識が反映されたもので、つまりあれは呪いというよりもソフィーの自己暗示のようなものなのです。なので眠っている時や美しい花畑で心躍らせている時は、ソフィーの意識が自己暗示から遠のいているので若い姿のままです。しかしソフィーが自分の外見を意識したりすると、途端に老婆の姿になってしまいます。

ソフィーが若返る/年をとる場面に注目して見てみると、彼女の心境の変化がより理解できるのではないでしょうか。


「ハウルが心臓を食べる」という噂の真偽は……

結論から言って、食べません(笑) ハウルは非常に浮気症で、目をつけた若い女性を次々口説いてしまう(女性のハートを奪ってしまう)のですが、そのことを「心臓(ハート)を食べる」という話に変えて自ら噂を流していました。彼は師匠のサリマンや敵である荒地の魔女、過去に口説き落とした女の子たち、その他諸々から逃れるために、なるべく城に人を近づけないようにしていたのです。

余談ですが、ハウルの浮気症の原因はおそらくカルシファーとの契約にあると考えられます。契約によってハウルの心臓はカルシファーが持っているので、ハウルには心臓がありません。彼は心臓(ハート)を求めるあまり、女性のハートを手に入れることで一時的に喪失感を満たしていたのでは。そしてハートを手に入れてしまうとハウルは満足してしまい、その女性への興味を失ってしまいます。でもしばらくするとまた別の女性のハートが欲しくなり……。原作でもハウルが「契約のせいで誰かをちゃんと愛することができなくなった」という旨の発言をしている場面が出てきます。

(C)2004 二馬力・TGNDDDT

ハウルとカルシファーの契約の秘密とは

終盤、ソフィーがハウルの過去に行くシーンで、少年時代のハウルが星の子(後のカルシファー)に心臓を与えて契約をしていたことが判明しました。「ハウルの心臓をカルシファーに与えることで、カルシファーの力をハウルが得る」これが彼らの契約の秘密です。

同じ場面で、星の子が湖に落ちて消えてしまうシーンがありましたね。星の子は空から地上へ降ってくるとすぐに死んでしまうのです。それを見てかわいそうに思ったハウルが、星の子を死なせないために自分の心臓を与え、悪魔にする契約をしてしまったのです。

星の子(悪魔)との契約は自分の体の一部を与えることで成立しますが、心臓を与えることでより強力な力を得られる代わりに、悪魔と契約者は生死を共にすることとなります。しかも契約の期間が長くなると、契約者は悪魔に心を支配されるようになってしまうのです。

契約によってハウルの心臓を得た星の子は悪魔(カルシファー)となって魔力を増し、またハウルもカルシファーの魔力を分け与えられて力を増しました。しかしハウルが死ねばカルシファーも死ぬし、逆にカルシファーが死ねばハウルも死ぬことに。そのうえハウルにこき使われるのを嫌がっていたカルシファーは、ハウルとの契約を解除したがっていました。

最終的に、契約の秘密を知ったソフィーがハウルに心臓を戻し、二人の契約を解除することに成功しました。しかしこの契約の解除は、実はソフィーでなければできなかったのです。そしてそれにもちゃんと理由がありました。


ソフィーが持つ魔法の力について

実はソフィーは“生命を吹き込む魔法”の力を持っています。原作の小説ではこれについてはっきり説明されているのですが、映画版では非常に曖昧に表現されていました(監督の意向で敢えてそうしたようです)。

ソフィーはハウルに心臓を戻す際、本来であれば契約解除によって死んでしまうはずのハウルとカルシファーに対して、無意識のうちに“生命を吹き込む魔法”の力を使っていたのです。また、かかしのカブ(王子)の呪いが解けたのも、ソフィーの魔法の力のおかげでした。

心臓を失ったハウルと、生命を吹き込む魔法を使えるソフィー。この二人は、出会うべくして出会った二人ということだったのです。


原作との違い

映画『ハウルの動く城』は上記の他にも、ストーリーやキャラクター設定など原作の小説から変更されている点がいくつもあります。その中でも最大の変更点は“戦争描写の有無”でしょう。

原作『魔法使いハウルと火の悪魔』(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著)では、戦争をしているという設定はあるものの、戦争そのものは全く描かれていません。なので、原作と映画では後半の展開が全く違ったものになっています。宮崎監督は“戦火の恋”を描きたかったため、戦争描写をクローズアップしたそうです。

それ以外にも、マルクルの設定(原作だとマイケルという名前のティーンエイジャー)やソフィーの妹(三女のマーサ)の存在なども変更されていますので、映画を見て原作が気になった方はぜひ原作も読んでみてはいかがでしょうか。

[原作]

最初は細田守が監督するはずだった!!

あまり知られていませんが、『ハウルの動く城』はもともと細田守が監督する予定でした。細田守といえば『時をかける少女』『サマーウォーズ』で一躍有名となったアニメーション監督ですね。

『ハウルの動く城』は当初、森田宏幸監督の『猫の恩返し』と同時上映する中編作品として企画されており、宮﨑駿の推薦でそのころ東映アニメーションに所属していた細田守を監督に据えて制作が進められていました。しかしトラブルから制作が中止となってしまい、細田版ハウルは幻の作品となったのです。

ちなみに細田監督は昔スタジオジブリの採用試験を受けており、最低2枚の絵を提出するという試験で150枚以上描いて提出したものの、宮﨑駿から直々に「君の才能はうち(ジブリ)に入ったら潰れてしまう」という内容の手紙を送られて不合格になったそうです。そんな彼も今や日本を代表するアニメーション監督の一人。宮﨑駿は早くから彼の才能を見抜いていたのです。



謎が多いと言われる映画『ハウルの動く城』ですが、皆さんの感じた疑問がこの記事によって少しでも解決されていればなによりです。そして上記のような点を理解したうえで再び見直してみると、この作品をより深く理解し、楽しむことができるのではないでしょうか?


written by ayako