映画『パンズ・ラビリンス』の魅力、大人のためのファンタジー映画! 少女が試練を乗り越えた先にあるのは……。 - Cinema A La Carte

映画『パンズ・ラビリンス』の魅力、大人のためのファンタジー映画! 少女が試練を乗り越えた先にあるのは……。

(C)2006 ESTUDIOS PICASSO,TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督が『千と千尋の神隠し』に影響を受けて作ったダーク・ファンタジー作品! 見方によって解釈の変わる、悲しくも美しい世界を紹介!


どんな映画なの?

メキシコ人の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督によるダーク・ファンタジー。1944年、フランコ独裁政権下のスペイン。冷酷で残忍な義父から逃れたいと願う少女オフェリアは、昆虫に姿を変えた妖精に導かれ、謎めいた迷宮へと足を踏み入れる。すると迷宮の守護神パンが現われ、オフェリアこそが魔法の王国のプリンセスに違いないと告げる。彼女は王国に帰るための3つの試練を受けることになり……。
参照:http://eiga.com/movie/34228/

ファンタジーと現実を行き来した先に

2007年に日本公開した『パンズ・ラビリンス』。ダーク・ファンタジーと銘打たれた本作ですが、全体の比率としてはファンタジーなシーンよりも現実のシーンのほうが多いです。しかも、主人公オフェリアの養父が指揮する独裁政権軍が反乱軍とドンパチやってたりするので、戦闘・拷問シーンなども出てきます。

「ファンタジー映画だし、親子で見れそう!」なんてノリで見ると、リアルな戦争描写等にビックリすることになると思います。ヘタしたら子どものトラウマになりかねません。

しかしこの映画、ファンタジーと現実にハッキリとした境界線がなく切り替わりが非常に絶妙なので、話が進むにつれてこの不思議な世界観にどんどん引きこまれていき、最後には「この魔法の王国って、つまり……」といろいろ考えてみたり、他の人の意見を聞いてみたくなる、非常に完成度の高い作品なのです!


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さらに本作は、見る人によってハッピーエンドかバッドエンドか意見が分かれます。見方によって、どちらにも取れるエンディングなのです。見た人同士で「どっちだと思った?」なんて話し合ってみるのも楽しいかもしれませんね!


ギレルモ・デル・トロと『千と千尋の神隠し』

本作の監督であるギレルモ・デル・トロは日本のアニメや怪獣映画の大ファンで、この『パンズ・ラビリンス』も、宮﨑駿監督の『千と千尋の神隠し』に影響を受けて作ったそうです。「一人の少女がある目的のために試練や困難を乗り越えていく」という点は『千と千尋の神隠し』と共通していますね。

さらに『パンズ・ラビリンス』をよく見ていると、冒頭の山道のシーンや1番目の試練のシーンなど、明らかに『千と千尋の神隠し』にオマージュを捧げている場面も出てきます。こういったオマージュシーンを探してみるのも楽しいでしょう。

(C)2006 ESTUDIOS PICASSO,TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

神話・宗教の要素

実はこの『パンズ・ラビリンス』、さまざまな神話・宗教の要素も取り入れられているのです! その一部を紹介していきたいと思います。

・迷宮の守護神パン
“パン”とは、ギリシャ神話に登場する牧羊神のことです(本作の原題El laberinto del faunoの“fauno”は、ギリシャ神話のパンにあたるローマ神話の神ファウヌスのこと)。牧羊神パンは、上半身は人間、下半身は山羊で、頭に山羊のツノが生えています。映画のパンの姿もそんな感じでしたが、守護神というわりにはちょっと怖い見た目をしています。

実は山羊には悪魔のイメージもあります。キリスト教の悪魔の一人であるバフォメットが、山羊の頭をしているからです。

つまり本作に登場する守護神パンは、良い者と悪者、どちらにも取れるのです。これが、本作はハッピーエンドかバッドエンドかを悩ませる原因にもなっています。

(C) 2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

・ペイルマンと2番目の試練
『パンズ・ラビリンス』といえばペイルマンをイメージする人も少なくないのでは。思わず真似したくなるあのキャラクターは、オフェリアが挑む2番目の試練で登場します。制限時間内に地下世界からある物を取ってくるという2番目の試練は、「地下世界にある物は一切食べてはいけない」という条件付きでした。

この条件は、ギリシャ神話における冥界のルールがもとになっていると思われます。冥界の神ハーデスが支配するその世界では「冥界の食べ物を口にした者は二度と冥界から出られない」という決まりがあるのです。

またその地下世界には、ペイルマンが子どもを襲って食べている様子が描かれた壁画があります。この壁画、恐らくスペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤ作『我が子を食らうサトゥルヌス』をもとにしているのでしょう。

このゴヤの絵は、ローマ神話の神サトゥルヌス(サターン/ギリシャ神話の神クロノスにあたる)が自分の子どもに殺されるという予言を恐れて5人の子どもを次々食べてしまった、という神話の場面を描いたものです(なかなか強烈な絵なので画像は貼りませんが、気になる方は『我が子を食らうサトゥルヌス』で検索してみてください)。

(C) 2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

小難しい話になってしまいましたが

もちろん、先述したような神話や宗教の要素を理解していなくても、本作を楽しむことは充分できます! 深く考えずに見るも良し、オマージュシーンを探しながら見るも良し、神話・宗教の要素を考えながら見るも良し! 

見る人によって解釈の変わる『パンズ・ラビリンス』。自分がどういう解釈をするか、ぜひご覧になって確かめてみてはいかがでしょう。


written by ayako