『ドローン・オブ・ウォー』感想、戦場にいなかろうと兵士の精神は蝕まれる・・・[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『ドローン・オブ・ウォー』感想、戦場にいなかろうと兵士の精神は蝕まれる・・・[ネタバレなし]

(C)2014 CLEAR SKIES NEVADA, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

10月1日に公開される『ドローン・オブ・ウォー』をお先に鑑賞させて頂きました。戦地に直接出向かなくとも、精神を蝕まれていくドローン操縦士の苦悩や今の戦争の現実を突きつけられました。


スコア

◯私的満足度
★★★☆☆(3.5/5)
=なかなかヘヴィー、しかし映画的満足度はあった

◯ファミリーオススメ度
★★★☆☆(3/5)
=仕事と家族の狭間で葛藤する主人公を見るのはきついが見る価値あり

◯子供オススメ度
☆☆☆☆☆(0/5)
=R15指定なので見れない

◯友人オススメ度
★★★☆☆(3/5)
=静かだがどこか緊迫感のある雰囲気、終わった後語りたくなる

◯デートオススメ度
★★☆☆☆(2/5)
=ちょっとキツいと思う・・・

◯映画リピーターオススメ度
★★★★☆(4/5)
=異色の戦争映画またここに、なので是非とも

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感想「戦場との距離は関係ないのかも」

「ドローン」と聞くと多くの方は日本での首相官邸へドローンが落下した事件を思い浮かべるのでは無いでしょうか。→首相官邸にドローン落下 けが人はなし 

そもそもドローンとは、

無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる航空機の総称
参照:新語時事用語辞典

のことで、本作『ドローン・オブ・ウォー』のドローンは首相官邸の落下事故(事件)のドローンとはちょっと異なります。



ざっくり言えば本作は「無人攻撃機のパイロットの精神を描いた映画」です。アメリカの戦争全体のお話や、政治的あれこれを描くものではありません。

凄く乱暴な言い方を言えば「戦場シーンの無いアメリカンスナイパー」「ビンラディン暗殺の無いゼロ・ダーク・サーティ」です。



イーサン・ホーク演じるドローン操縦士のトミーは元々はF16戦闘機のベテランパイロットの経歴が。そこからラスベガスの空軍基地のコンテナで静寂の中ドローン操縦で空爆をするパイロットへ。

腕は一流ながらも、動きなくゲームでもするが如く数々空爆で(敵であったとしても)人命を奪いまくる仕事に違和感を抱いていきます。

本作はとにかく「静か」な作品。描かれる空爆シーンは、主人公トミーが見ているものと同じで画面を通しての、衛星からの映像のみ。音も無く、ただただ上空から攻撃地点が破壊される映像は繰り返し映しだされます。

そこでは(敵であっても)何十人の命が奪われています。しかし映画を見ていてもその実感はどうも湧かない。映画を見ている私たちですら違和感を感じるわけですので、ドローンのパイロットはよりその違和感を強く感じていると思います。増して元F16戦闘機パイロット。

静かなる任務の積み重ねで主人公トミーは精神を病み始めます。まるで『アメリカン・スナイパー』の戦場帰りのクリス・カイルのように。まるで『ゼロ・ダーク・サーティ』のビンラディン捕獲へ狂乱するマヤのように。

PTSDで精神はズタボロ、家族とも亀裂が起き、酒を煽り、自らのアイデンティティがわからなくなる・・・。静かに静かに、しかし確実に崩れていく彼の精神を見ているのは静かさもあって余計に辛かったです。

その上にCIAが「それダメでしょ」な指示をする始末。それが彼を余計に追い詰めます。

「戦場に行かずして、戦争に苦しむ兵士」、ドローン攻撃はピンポイント爆撃で正確性もありターゲット以外の巻き込み犠牲者が少ないと評判でもありますが、それによって攻撃する側、される側共に変わらず傷つくものがいる現実を突きつけられました。



だからといって「これだから戦争はいけない!」なんていうのは綺麗事でもあるわけで、平和を祈りつつも一人の力ではどうにもならない遣る瀬無さを感じ、未来とは希望だけでなく絶望も多いと思わざるをえないのでした。

映画としては絶望だけでなく希望も描きますが、絶望も抱えて映画館を出ることになる作品です。それも映画、それも映画の良さであります。


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どんな映画?

戦地に行かずして空爆を行う現代の戦争の実態と、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられるドローン操縦士の異常な日常をリアルに描く。アメリカ空軍のトミー・イーガン少佐の赴任地は、美しい妻とふたりの子どもと暮らす住宅街のマイホームから車を走らせ、歓楽街を抜けた場所にあるラスベガスの基地に設置されたコンテナの中にあった。そこで無人機ドローンを遠隔操作し、1万キロ以上離れた異国をクリック1つで空爆をする。ゲームのような現実感のない戦場と家族の待つ家との往復、それがイーガンの日常であり、異常ともいえる現代の戦争の姿だった。

参照:http://eiga.com/movie/82364/


予告編


戦争に携わる仕事と日常の困難さ

『アメリカン・スナイパー』、『ゼロ・ダーク・サーティ』を今回例に上げましたが、戦争によって精神を蝕まれる人物を描いた映画は本当に多いですね。

ぱっと思い付くだけでも、『ハートロッカー』、『ディア・ハンター』、『父親たちの星条旗』、『プラトーン』、『フルメタル・ジャケット』、『キリングゲーム』などなど。

戦争によってこびりついた記憶による精神の蝕まれはいつの時代も変わらないものだと今回の『ドローン・オブ・ウォー』を見て改めて思いました。特に今回は直接的な戦闘を経験してないのに精神を蝕まれているので…。

そんな苦しい仕事をしつつ、『ドローン・オブ・ウォー』の主人公トミーは仕事が終わればラスベガスの街へ出て家族と過ごせるわけです。あまりの非日常と日常が24時間の中で重なり合うことは経験しないとわからない辛さなのかもしれないと思いました。

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キャスト&スタッフ一覧を見ると色々と興味深い

映画本編のお話では無いですがキャスト&スタッフに目を向けるとまた色々と見えてきます。

監督アンドリュー・ニコル✕主人公イーサン・ホークのコンビは1997年の『ガタカ』のコンビでもあります。

またキャストに目を向けた時、別のドローン操縦士スアレスを演じるゾーイ・クラヴィッツに目がいきます。ゾーイ・クラヴィッツの出演歴を見ると『マッドマックス 怒りのデスロード』と。そう、マッドマックスのレディースの中の一人を演じていました。

製作のニコラス・シャルティエは『ハート・ロッカー』でアカデミー賞を受賞したプロデューサー。

音楽のクリストフ・ベックは『アナと雪の女王』の作曲家です。

多彩な才能が集い製作された異色作であり静かでヘヴィーな作品、それが『ドローン・オブ・ウォー』です。


公開は10月1日からになります。


公式HP
= http://www.drone-of-war.com/