映画『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』大絶賛感想、英国政府が50年機密扱いしてきたコンピュータの父アラン・チューリングの悲劇の人生に心が痛む[ネタバレ解説あり] - Cinema A La Carte

映画『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』大絶賛感想、英国政府が50年機密扱いしてきたコンピュータの父アラン・チューリングの悲劇の人生に心が痛む[ネタバレ解説あり]



3月13日公開予定の『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』を一足お先に鑑賞してまいりました。コンピュータの父と呼ばれるアラン・チューリングの悲劇の人生に心が痛み、生涯忘れることなどできない衝撃を受けました。素晴らしい映画でした。


スコア

◯私的満足度
★★★★★(5/5)
=エンタメ性を持たせながら、あまりにも悲痛な物語をしっかりと描く傑作。

◯ファミリーオススメ度
★★★☆☆(3/5)
=暗号解読や人生の物語。人生にこの映画鑑賞する時間を入れて損はなし。

◯子供オススメ度
★★☆☆☆(2/5)
=戦争、暗号解読、結婚、同性愛など少々難しい。性描写や暴力描写はなし。

◯友人オススメ度
★★★★☆(4/5)
=エンタメ性×人間ドラマ×元祖コンピュータで重くも楽しめる。

◯デートオススメ度
★★★★☆(4/5)
=上に同じ。恋愛側面でキーラ・ナイトレイ演じる女性に学ぶことも多い。

◯映画リピーターオススメ度
★★★★★(5/5)
=受賞は厳しいですがアカデミー賞ノミネート確実の傑作は目撃すべし。

◯WATCHAでレビューをチェック&書いてみる



一言感想

一概なエンタメ作品ではありませんので見る人を選ぶ作品かもしれません。

ただ私個人の、自分自身がどう感じたか、どう思ったか、の感想を一言で言えば、


「今年この映画を超えるものは出てくるのだろうか…こんなにも心が傷んで、映画が終わってもこの映画のことしか考えられなくなるとは…今使っているテクノロジーのほぼ全てにこの映画の主人公の知恵が影響してると考えると…」



とにかくこの映画に完全にやられました。

『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』、コンピュータの父と呼ばれるアラン・チューリングの伝記映画と言って差し支えありません。第二次世界大戦中にドイツ軍の暗号"エニグマ"の解読を成功させるまでの過程を軸に、あらゆる角度から「アラン・チューリングとは何者だったのか?」を描いていきます。

暗号解読のカタルシス等娯楽要素も含みつつ、とにかくアラン・チューリングの過ごした生涯が悲劇に次ぐ悲劇で切ない…。細かくは後述するとして胸の痛むエピソードが頻発されアラン・チューリングにひたすら同情したくなりました。

史実が示している通り、当時の仕打ちの数々は正式に政府によって謝罪が成され名誉回復が成されていますが、そうは言っても自殺(と思われる)死に方で生涯を閉じた結末を知り、かつ今あるコンピュータは彼がいなければ存在しなかった事実を突きつけられると…もう頭が真っ白になってしまうのです。

エンタメ性を盛り込みながら、アラン・チューリングという人物の悲劇を描き、名誉回復の件もしっかりと盛り込んだ映画。ベネディクト・カンバーバッチの熱演は息を飲むもので、サポートするキーラ・ナイトレイの演技も秀逸。

演出、映像、そして耳に残る音楽と、映画を彩る全てのものが記憶の領域に届き、そして埋めていき、心をも支配する傑作。あくまでも私の感想に過ぎませんが、久々に全ての側面で圧倒され、映画を見て「悲しくて、やるせなくて泣いた」作品でした。

そう思わせた映画の力、これこそ「傑作」と言える素晴らしい作品なのだなと思いました。



どんな話?

第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピューターの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。
Yahoo!映画より

暗号解読をエンタメ要素としてうまく配置させつつ、映画の根幹は「アラン・チューリングとは何者だったのか?」からブレない一貫性、その構成が見事でした。




思った以上にトリッキーな構成

『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』は昨年末から「アカデミー賞有力候補の1つ」と言われていたので早くから入手できる情報はチェックしていました。

例えば音楽。人気映画音楽家アレクサンドル・デプラが耳に残る美しいスコアを提供しています。特にサウンドトラックの1曲目と21曲目のテーマ曲がミステリアスで美しいんです。

1曲目
The Imitation Game

21曲目
Alan Turing's Legacy


Imitation Game
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Alexandre Desplat
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この曲を何度も聴いた状態で映画を見たんですね。この2曲の使い方は見事で映画を盛り上げる要素として機能してるのですが、映画の冒頭でかかる曲がこの1曲目じゃなかったのです。

ちょっと「お!?」と良い意味で裏切られて、そのあとテーマ曲がかかって鳥肌モノでした。

映画の構成も冒頭が戦後の1951年だったりと時系列通りに進みません。しかしその構成の妙な決して遊びではなく、「アラン・チューリングとは何者だったのか?」を辿る演出として機能していました。

1951年にアラン・チューリングはあることで警察から取り調べを受けるのですが、戦時中の暗号解読は機密扱いになっているので警察がいくら調べても戦時中のアラン・チューリングの業績が出てきません。

で、警察が「お前はいったい何者なのだ?」となりまして、観客である私たちがその後映画で目撃するように事実を1つずつ掴んでいくわけであります。淡々と描かれるようで、出てくるエピソードの小出し感が構成の妙により見事に機能。

テンポよく、そしてクライマックス付近に私たち観客の感情が一気に持っていかれる進み方をするのです。

もうクライマックス付近のカンバーバッチの演技が熱演に次ぐ熱演になってから涙止まらず…最後、一番最後に出るテロップ、一文のテロップ「Today we ◯◯◯◯」で全てが繋がり涙腺決壊。

構成によって感情が弄ばれたように映画にのめり込んでしまいました。素晴らしいです。



アラン・チューリングの生涯について

※映画でも描かれている彼の「秘密」に触れています。有名な史実ですが、知りたくない方はここから先は映画鑑賞後にご覧ください。


映画はもうあらゆる側面で魅力があり、演出や演技、音楽など秀逸なわけですので「一見の価値あり」とストレートに申し上げておきます。

では、アラン・チューリングの生涯について、俯瞰して整理してみたいと思います。


Googleが2012年にアラン・チューリングの生誕100周年を記念した暗号ゲームを開設していたようなのでYoutubeキャプチャ貼っておきますね。



◯アラン・チューリングの生涯(略史年表)
1912年6月23日:アラン・チューリング誕生

1926年:14歳でシャーボーン学校に入学

1928年:16歳にしてアインシュタインの相対性理論について理解

1928年:この頃親友のクリストファー・モルコムに恋をする
※同性愛意識の芽生え

1930年:クリストファー・モルコム牛結核症で死去
(エニグマ解読機が"クリストファー"なのはこのため)

1930年:モルコムの悲劇からチューリングは無神論者に

1931年:ケンブリッジ大学キングス・カレッジへ進学

1934年:ケンブリッジ大学キングス・カレッジ卒業

1935年:中心極限定理を証明した論文が認められてキングス・カレッジのフェロー(特別研究員)に選出

1936年:チューリングマシンの概念導入でアルゴリズムの概念を定式化
※コンピュータの原型

1938年:プリンストン高等研究所で博士号取得

1938年:イギリス暗号解読組織"政府暗号学校 (GCCS) "で働き始める

1939年:海軍のエニグマ暗号の基本部分を解明

1940年:イギリス暗号解読組織"Hut 8 "で働き始める

1941年:同僚の数学者ジョーン・クラークにプロポーズ
※同性愛者であるが故長くは続かず(映画でも描かれています)

1945年:戦争終了

1945年:イギリス国立物理学研究所 (NPL) にてACE(Automatic Computing Engine)の設計を行う

1948年:マンチェスター大学数学科助教授に就任

1949年:マンチェスター大学のコンピュータ研究室に異動、初期のコンピュータ ソフトウェア開発に従事

1950年:人工知能の問題を提起、今日チューリングテストを提案

1952年:アーノルド・マレーという青年と出会い、別の日に一夜を共に(したと言われている)

1952年:アーノルド・マレーが泥棒手引きで捕まり、そこからチューリングと同性愛関係があったことが明らかに
※当時のイギリスでは同性愛は違法

1952年:チューリング、同性愛容疑で逮捕
※チューリングは有罪となったが、入獄か化学的去勢の保護観察かの選択権があった。性欲を抑えると言われていた女性ホルモンの投与の刑を受け入れることに。(映画におけるこのシーンのカンバーバッチ熱演は見事)

1954年6月8日:41歳の若さで死去
※死因は青酸中毒死。ベッドの脇には齧りかけのリンゴが落ちていた。
※「魔法の秘薬にリンゴを浸けよう、永遠なる眠りがしみこむように」という台詞を生前残しており、リンゴに青酸を塗って自殺したと言われているが確証は闇のまま。



◯アラン・チューリングが人工知能を作ろうとしたのはクリストファー・モルコムを復活させたいという願いが?
「〜と言われています」というレベルですので確証は無いのですが、青年時代に恋をしたクリストファー・モルコムの死をアラン・チューリングがずっと引きずっていたと言われています。

それ故に『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』の映画内でも機械の名前が"クリストファー"になっています。

その後コンピュータの派生で人工知能を作ることに従事していったアラン・チューリング。人工知能を作り上げるということは恋をしながらも死を持って会うことができなくなったクリストファー・モルコムの魂を復活させるという意図があったと言われています。

何て切なく一途な恋なんでしょうか…。



Appleのロゴをかじったのはアラン・チューリング?

諸説あり都市伝説とも言われていますが、Appleコンピュータのロゴとアラン・チューリングの関係性について書いておきます。


お馴染みのAppleロゴ、リンゴのロゴですがリンゴがかじられているんですよね。

「記憶単位」のByteと「かじる」のbiteを引っ掛けてるものですが、このリンゴ誰がかじってるの?という問いの答えがアラン・チューリングと言われています。

今現在、この世に無くてはならない様々なコンピュータ、Apple社の正式名称は"Apple Inc."ですが旧称は"Apple Computer, Inc."です。

コンピュータの父であるアラン・チューリングの悲劇のリンゴを意識していないことも無いのかなと、都市伝説とも言われてますが映画を見ると信じたくなる自分がいます。

※Appleから正式な説明はないようです。


◯「アラン・チューリングの生涯について」を書くに当たって参考にしたサイト
Who Killed Turing ? 誰がチューリングを殺したのか
アラン・チューリング(Wikipedia)



余談:"エニグマ"の意味

私はブロガーメルマガのEdge Rankの執筆陣なの一人のですが、1月からの新メンバー"ツカウエイゴ"を運営するRihoさんのブログに興味深いことが書かれていましたのでご紹介します。

参照記事はこちら
映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』で耳にした「decrypt」の意味とは?

enigma: someone or something that is mysterious and difficult to understand
(謎めいていて理解しがたい人物または物事、という意味なんですね。)
引用元:http://www.tsukaueigo.com/archives/decrypt.html


「バットマンに出てくるリドラー(The Riddler)っているやろ」
「うん」
「リドラーの本名って、エドワード・ニグマ(Edward Nigma)やから」
「エドワード・ニグマ・・・エニグマ!」
引用元:http://www.tsukaueigo.com/archives/decrypt.html


エニグマは"謎"という意味で、バットマンコミックに出てくる悪役リドラーの本名の"エドワード・ニグマ"はエニグマから来ているというお話。リドラーはなぞなぞキャラですので間違いないですね。知れて良かったです。


原作あります

原作は"Alan Turing: The Enigma"でして、映画公開に合わせて映画画像表紙のものが新たに発売されています。(洋書です)

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まとめ

兎にも角にも、アラン・チューリングという人物を今日まで詳しく知らなかった自分を恥じるほど、このアラン・チューリングという人物は偉大であることを痛感した映画でありました。

映画的魅力に溢れ、題材としても優れ、この人物の偉大さも痛感。

あまりの悲劇に決して「面白かった!」となる映画ではありませんが魅力溢れる映画であり、かつコンピュータの父の伝記映画であります。

現代テクノロジーに肖っている方は是非、この映画を見てコンピュータの父に思いを馳せてほしいなと思っています。


おしまい。




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