『猿の惑星:新世紀(ライジング)』感想、現実世界の戦争と指導者のメタファーが重く響く[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『猿の惑星:新世紀(ライジング)』感想、現実世界の戦争と指導者のメタファーが重く響く[ネタバレなし]


『猿の惑星』新3部作の2作目である『猿の惑星:新世紀(ライジング)』を鑑賞しました。シリアス路線一極、現代の中東問題すら垣間見られる重い作品でありました。


私的満足度

★★★★★=星5=お見事!これは傑作です!

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。

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様々な歴史を考える隙のない出来

まず単刀直入に「素晴らしい映画」だと思いました。3部作2作目で、すっきり終わらないのですが1つの映画、1つの物語が終焉しての「残りは3で」という締めなので悪い終わり方でもありません。


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前作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』では猿の進化が描かれました。今回はある意味もっと単純明快で人間と猿が戦争するしないをめぐって一触即発の事態を描いていきます。

その「戦争する・しない」を巡った様々な人間や猿の思惑が交差し、猿の指導者であるシーザーが望まない戦争へと突き進まざるを得ない苦悩も描き出されます。

好戦的な人や猿、対話の道筋を探す人や猿、様々な戦争論が展開されます。それはまるで歴史のあらゆるシーンを見ているような錯覚に陥ります。

どの歴史を指しているか、これは人それぞれ知識の差で変わってくるのではないでしょうか。中東問題を彷彿ともさせつつ、本作のポスターが"民衆を導く自由の女神"風なのでフランス革命も彷彿とさせます。

「人間が猿のテリトリーを犯した/犯してない」のやりとりは、まるで領土問題中国と日本の1940年代の歴史認識の錯誤(盧溝橋事件や南京大虐殺の真相)を彷彿とさせます。

「人間は危険なんだよ!」なんてヒステリックになる好戦的な猿はどこかの国が「イラクには大量破壊兵器がある」といちゃもん付けて空爆したのに似ています。

そして望まない戦争へ突き進む姿…これは太平洋戦争における一部の日本軍幹部の実際の内面を見ているかのようでした。

自らの種族を守るために対立する姿は、自らの宗教と土地を守るために対立するパレスチナ問題を彷彿とさせました。

猿のトップの名前がシーザーですので、ジュリアス・シーザー、つまりユリウス・カエサルという暗喩でローマ史を示しているのかもしれませんね。

いずれにせよ「この戦争をモチーフに」ではなく世界史の様々な視点が垣間見られる作品だと思いました。どれか1つの戦争をモチーフにしていたとしても様々な視点で世界史とリンクさせてくれるそのバランス感覚は見事としか言いようがありません。



忘れてはいけない演技への賞賛

前作同様に猿のシーザーをモーションキャプチャーで演じたのはアンディ・サーキス。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラムで有名な俳優さんですね。モーションキャプチャーやらせたら彼の右に出る者はいません。

アンディ・サーキスの自然で情感ある演技はモーションキャプチャーの技術を駆使して作られた猿を通しても溢れ出るもので、プロ中のプロというかさすがだなと思いました。

猿というより知的猿なので、人間味も持ち合わせないといけないわけです。増して指導者としての苦悩までも。アンディ・サーキスに課せられた課題はとんでもないものだったと思いましたが、それを自然に演じるのはカリスマですね。その他猿たちのモーションキャプチャー演技も見事ですね。

そして人間側はメインとしてジェイソン・クラークゲイリー・オールドマン

ジェイソン・クラークと言えば『ゼロ・ダーク・サーティ』で冒頭から拷問するCIA局員の役で存在感を示し、『華麗なるギャツビー』では不倫される自動車修理工を演じました。今回も知的でありつつアクティブさも兼ね備えた人物であり、知性と苦悩がしっかりと溢れていました。

そしてゲイリー・オールドマンゲイリー・オールドマン出てる時点で5億点の映画なわけですが(笑)予告編では悪役的な立ち位置を想定していましたが、蓋を開けると共感できる部分も多い過激派という感じでした。ゲイリー・オールドマンがいるとピシっと締まりますね。さすがです。



戦争はしなければならないのだろうか?

 「戦争反対!」なんて言うのは簡単なんですよね。

理想を言及するほど簡単なことはありません。しかし「結果的にせざるを得ない事態」と言うのは現実世界では起こります。それは本作でも同じです。人間と猿は別々に生きていたのに、たまたま対立するきっかけができてしまいました。

人間も猿も「戦争しよう!」という者と「戦争反対!」という者が出てきました。どっちも言うのは簡単です。戦争反対というのは理想であります。平和は理想であります。理想を口にするのは超簡単な事なのです。

いざ戦争をしなければいけないという空気、事態になった時に何ができるかが重要なのです。あくまでも映画の話をしてますが、これは現実世界でも同じですよね。「危機に直面した時にどう対応するか」が大切なのです。

その過程が本作は実に見事に描かれており、それが映画の好評にも繋がっているのではないかと思います。


と、ここまで書いてきておわかりでしょう。本作、超ヘヴィーな作品です。人間VS猿は娯楽性があるのかないのかわからないレベルの重い話で彩られているわけです。

しかしその物語は重厚で無駄が無く映画としての面白み(緩急)も見事です。映画的に申し分無いものに仕上がっています。

興行成績は初週2位スタートと見事な出だしで好評なのでしばらくはやるのではないかと踏んでいます。ただ迫力ある映画でもありますのでお早めに大スクリーンでの鑑賞をお勧めします。

見事な重厚作品でありました。


『猿の惑星:新世紀(ライジング)』基本情報

タイトル
=猿の惑星:新世紀(ライジング)

原題
Dawn of the Planet of the Apes

監督
=マット・リーブス

キャスト
アンディ・サーキス
=ジェイソン・クラーク
=ゲイリー・オールドマン
=ケリー・ラッセル
=トビー・ケベル

ストーリー
猿のシーザーが天性のリーダーシップを用いて仲間を率い、人類への反乱を起こしてから10年。勢力を拡大し、手話や言語を操るようになった猿たちは、森の奥深くに文明的なコロニーを築いていた。一方の人類は、わずかな生存者たちが荒廃した都市の一角で息をひそめて日々を過ごしていた。そんなある日、資源を求めた人間たちが猿たちのテリトリーを侵食したことから、一触即発の事態が発生。シーザーと、人間たちの中でも穏健派のグループを率いるマルコムは、和解の道を模索するが、彼らの思惑をよそに、猿たちと人間たちとの対立と憎悪は日に日に増大し、やがてシーザーは生き残るための重大な決断を迫られる。

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=jHPvHQCAxLY


written by shuhei