『ぼくを探しに』感想、都合良く(悪く)改変された記憶を正す旅、そして思わず吹き出す童貞と処女の攻防…![ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『ぼくを探しに』感想、都合良く(悪く)改変された記憶を正す旅、そして思わず吹き出す童貞と処女の攻防…![ネタバレなし]


傑作アニメ『イリュージョニスト』のシルヴァン・ショメ監督の実写映画『ぼくを探しに』のレビューです。


私的満足度

★★★★★=星5=お見事!これは傑作です!

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。

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2歳の記憶を改変する旅へ

試写で拝見させて頂きましたが、前情報少なめどころか0で拝見しました。ポスタービジュアル1枚と『アメリ』のプロデューサーという情報だけです。

映画が始まってもフランス映画特有(褒め言葉)の何が進んでるのかわからない感が先行して、最初の30分は若干眉間にしわを寄せながら物語に入り込もうと努力する我慢の時間が続きました。

30分を過ぎた頃でしょうか、物語が徐々に動き始めました。そこからはもう様々な魅力溢れる至福の時間。どうあがいても丸く収まらないだろうというクライマックス直前の展開から、強引に丸く綺麗に納めてしまう神がかりのエピローグもあり、大満足の1時間40分となりました。


[DVD発売済み]

主人公ポールは2歳の時に両親を亡くしたショックから、言葉を発することができなくなってしまいました。しかし2歳の時に何が起きたかはポール自身もちゃんとは覚えてない。ただ覚えてることは母親は優しくて父親はおっかなかったということだけ。

そんなポールは33歳になったある日、同じアパートにすむプルーストおばさんと出会います。このプルーストおばさんはちょいと怪しい人で、飲むと過去の記憶を辿ることができるというハーブティーを調合してました。

ポールもそのハーブティーを飲むことになり、彼は徐々に過去の記憶を取り戻し、真実へと迫っていきます。


「両親は殺された」それはなぜ?誰が?何のために?


それを迫っていくミステリー的展開、まさかのミュージカル調シーン、童貞ポールに歩み寄る超積極的処女の中国人の行動、そしてポールの未来…重い題材になりそうなものをユーモラスで可愛く楽しく描いた『ぼくを探しに』。これ、愛せずにはいられないわけです。



シルヴァン・ショメ監督初の実写長編映画

傑作アニメーション『イリュージョニスト』のシルヴァン・ショメ監督が初めて長編実写監督を務めた本作ですが、アニメーション出身であるその過去の経験が良い意味で染みついている世界観が、本作にピッタリです。

パリの雰囲気を癖たっぷりに描き、記憶のシーンはミュージカル調となり、色はまるで絵本の世界、それでいて描くべき主題や物語はきっちり描く。お見事なバランス感覚であります。もし夢の世界が普通の演出だったり、逆に全てが絵本のようだったらこういう満足度にはならなかったとおもいます。

「私は映画館に、違う世界を探検しに行くのが好きなのです」という監督の言葉が、映画に愛溢れて体現されていたと思いました。

非日常っぽさが魅力でありつつ、記憶を辿り未来を見据える重要性は今を生きる私たちも必要としているものです。そのバランスがかなり気に入りました。

楽曲が全て3拍子!

「ディスコチューンを含めた楽曲すべてを3拍子にしました。3拍子でダンスを踊るときは、子供をゆするように、或いは腕に誰かを抱えるように体を動かすからです。それは温かく、まるで母親のようです。」

こんなことを監督自ら仰っています。

なるほど!だからこそ心地よさを感じ、派手でないのに音楽を心地よく感じ(映像との連動もあり)、愛を感じたのでしょう。


マダム・プルーストおばさん最高!

映画に突如登場し、謎の行動しまくって、謎のハーブティー差し出して、ポールを記憶の旅へと誘うプルーストおばさん。このおばさん、癖ありまくりですが物語が進むにつれてとても愛情を持ったすてきなおばさんであることがわかります。

いつも気さくで力強くポールを支えてくれたおばさんの、後半のまさかの展開には驚きもあります。いつも冷静なおばさんが取り乱す様、色々考えるところがありました。

この映画の主人公はポールですが、プルーストおばさんがいなければあのエンディングにはならないわけです。その意味でこの映画の登場人物たちの中で最大の功労者はプルーストおばさんで間違いないのです。



童貞と処女の攻防に抱腹絶倒w

ポールは言葉を喋れず、友達もいません。そんなある日コミュ障の中国人と出会います。お互い音楽をやっている共通点があり、合奏することで心を少し開いたかなと・・・思われたとき映画では大事件が起きました。

「あなた童貞?わたし処女なの」

何ですか、この唐突のカミングアウトは! この中国人の女の子、嫌みではなく好感的に申し上げて地味子ちゃん。そんな子がいきなり音楽やってる時にこんな発言するもんですから童貞のポールくん大慌てw

その後なぜか超積極的アプローチし始めた中国人w 手を触れようとするだけで手をどけるポールw おいwww 童貞しっかりしろwww

馬鹿にする意図はなく、絵本に書いたような恋愛初心者二人の攻防は見ていてにやにやしてしまうながら「おい! 二人ともガンバレ!」と応援したくなるものでした。

結末がどうなったか? それは劇場でご覧くださいw


『思い出のマーニー』とテーマは似てる

記憶の旅と未来への成長。このテーマは、物語こそ違えど現在公開中のジブリ最新作『思い出のマーニー』と似てるんですよね。

人間は壁にぶつかったとき、すぐに外の何かにすがろうとします。しかし、肝心な答えはその外ではなく自分の内側にあったりするんですよね。

これは『思い出のマーニー』でも『ぼくを探しに』でも同じでした。そこから未来をしっかりと提示してるのも良かったです。

『ぼくを探しに』は童貞と処女の攻防こそありますが、誰が見ても楽しめるほんわかした傑作です。ミニシアター扱いになると思いますが、デートにもオススメできる1本だったりします。

公開は8月2日から。たくさんの方に見てほしいですね。

おしまい。



『ぼくを探しに』基本情報

タイトル
=ぼくを探しに

英語タイトル
=ATTILA MARCEL

監督
=シルヴァン・ショメ

キャスト
ギョーム・グイ
=マダム・プルースト
=ベルナデット・ラフォン
=エレーヌ・バンサン
=ルイス・レゴ
=ファニー・トゥーロン


ストーリー
「ベルヴィル・ランデブー」のサントラで使われた楽曲「アッティラ・マルセル」に着想を得て、仏文豪マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」のエッセンスも織り交ぜながら、孤独な主人公が不思議な女性との出会いから失われた過去の記憶が呼び覚まされ、少しずつ変化していく人生を描いたファンタジックな物語。幼い頃に両親を亡くし、そのショックで言葉を話すことができなくなったポールは、伯母のもとで世界一のピアニストになるよう育てられる。友だちもいない孤独な人生を歩み、大人になったポールは、ある日、同じアパルトマンに住む謎めいた女性マダム・プルーストと出会う。彼女のいれたハーブティーを飲むと、固く閉ざされた心の奥底の記憶が呼び覚まされていき、ポールの人生に変化が訪れる

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=v8Pouv1nNSI


written by shuhei