『ある過去の行方』感想、愛憎、因縁、ミステリー、、、人間の負の部分と過去の炙り出しに唸るしかない・・・[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『ある過去の行方』感想、愛憎、因縁、ミステリー、、、人間の負の部分と過去の炙り出しに唸るしかない・・・[ネタバレなし]


4月19日より公開の『ある過去の行方』の感想です。イラン映画で初めてアカデミー外国語映画賞を受賞した『別離』の監督アスガー・ファルハディの新作で、国外に舞台を移しながらも彼らしい深く重い話に仕上がっています。


私的満足度

★★★★=星4=素晴らしい作品でした!

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。

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『ある過去の行方』基本情報

タイトル
=ある過去の行方

原題
=Le Passe/The Past

監督
=アスガー・ファルハディ

出演
=ベレニス・ベジョ
=アリ・モサファ
=タハール・ラヒム
=ポリーヌ・ビュルレ

ストーリー
夫と別れて4年がたつシングルマザーのマリーは、子持ちの男性サミールとの再婚を予定し、新たな生活を始めていた。しかし、正式な離婚手続きをしていないため、イランにいる夫のアーマドをパリに呼び寄せる。アーマドはマリーの新しい家庭と生活を目の当たりするが、そこにはどこか不穏な空気が流れていた。長女リュシーとの関係がうまくいっていないというマリーから、娘の本音を探ってほしいと頼まれたアーマドは、リュシーの話を聞くことになるが……。

予告編


こんな映画です

一人の女性が別居してその先に新しい男と結婚したくなる。でも別居しただけで離婚してないから結婚できなくてとりあえず離婚しなきゃ〜ってなって別居中の夫を呼び出して・・・

とごたごたあるのは目に見えてますが、三角関係で話が進むのかと思いきや、あら不思議〜と話は派生していきまるでミステリーな展開に・・・

という感じでネタバレ書きにくい愛憎劇というかミステリーというか、人間の負の部分を扱った映画になっております。




感想を率直に申し上げますと、

人間の負の部分を炙り出しながらもミステリアスな展開に娯楽性がちょっとあったり、全て語らないラストに少しほっとする側面もあったりで「ずーーーーーーん」とする感じではありませんでした。

ただただ緊迫感溢れる画面にのめり込み、気づくと心臓の鼓動が早くなっていて、終わった後脱力感を全身で感じました。やられました。これは凄い映画です。

また満点出して叩かれる流れだこれwww


[DVD発売済み]

アスガー・ファルハディ監督の前作『別離』も傑作でして、こちらも人間の負の部分というか内面を炙り出す非常に巧みな通好みの映画になってるのですが、その路線というか彼のテイストは守りつつも進化したなというのが率直な感想ですね。

物語の人物たちを語りたくなる映画ではなく、映画そのものを語りたくなる映画ですね。


新しい男との結婚へと歩み出すために、正式な離婚手続きに進む主人公マリー。ただ、別れようとする夫を家に呼び出して寝泊まりまでさせちゃう時点でもう何か、、、何かあれなんですよ。憎悪というか憎しみというか内面のどろどろした雰囲気が伝わってくるのです。

行動1つ1つや家の状態、物の配置のそれぞれがメタファーというか彼女の内面を示しているように見えて分析したくなる感じがあります。いや、実際そうなのかはわからないんですけどね。

離婚劇の様相が、徐々に子供や新しい男の妻も巻き込むとんでも展開に……特に子供たちの内面が出始めてからのミステリアスな愛憎劇っぷりの引力は凄まじく、ただただその経過を見守ることしか出来ない観客は、良い意味でもやもやとする時間を過ごすことになります。


物語というか映画全体、登場人物たちの過去が明らかになるにつれ、その炙りだされる真実が人物一人一人の内面をより深く察知するそれとなり、映画に深みを与えます。

舞台はフランス・パリなのですが、私たちが思い描くパリはここには出てきません。薄暗い部屋だったりそういった部分がクローズアップされます。これはうまいなと思いました。

例えば、東京は世界で最も美しいと言う外国の方々たくさんいらっしゃいます。しかし、私たちにしてみればその東京は休日を満喫する東京であると同時に日常の東京であり、嫌なこともある東京なのです。それをパリを舞台に映画で描くとこうなるというのが、本作ではしっかりと成されております。

邦題の『ある過去の行方』は良い邦題でしょう。ある過去が今に影響を与えている。それは自分だけでなく他人の今にも。それが炙りだされ、人間の内面を示していきます。

映画の終わりは全てのピースがしっかりと整うものではありません。しかし、そのはみ出たものと言いますか、語られなかった部分に様々な思いを抱き余韻となるので見事だと思いました。

本当は◯◯が△△したから、☓☓で、それで□□なんですよね〜というレビューを書きたい作品なのです。しかしそのネタバレをしてしまっては面白くありません。

どんな過去が炙りだされ、登場人物たちは劇中でどう動いていくのか、そしてその内面はどう炙りだされていくのか。その1つ1つを目撃し、アスガー・ファルハディ監督にしかできない人間描写を堪能してください。


written by shuhei