『アクト・オブ・キリング』感想、あまりに衝撃的で言葉が出ない。100万人を虐殺した英雄じいちゃんたちが虐殺を再現… - Cinema A La Carte

『アクト・オブ・キリング』感想、あまりに衝撃的で言葉が出ない。100万人を虐殺した英雄じいちゃんたちが虐殺を再現…


2013年度のドキュメンタリー映画で最も賞賛された映画です。問題作故にアカデミー賞こそ逃しましたが、世界が熱狂した1本。凄かったです。


私的満足度


★★★★★=星5=お見事!これは傑作です!

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。

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『アクト・オブ・キリング』基本情報

タイトル
=アクト・オブ・キリング

原題
=Act of Killing

監督
ジョシュア・オッペンハイマー

キャスト
アンワル・コンゴ
=ヘルマン・コト
=アディ・ズルカドリ
=イブラヒム・シニク

ストーリー
1960年代インドネシアで行われた大量虐殺を加害者側の視点から描いたドキュメンタリー。60年代、秘密裏に100万人規模の大虐殺を行っていた実行者は、現在でも国民的英雄として暮らしている。その事実を取材していた米テキサス出身の映像作家ジョシュア・オッペンハイマー監督は、当局から被害者への接触を禁止されたことをきっかけに、取材対象を加害者側に切り替えた。映画製作に喜ぶ加害者は、オッペンハイマー監督の「カメラの前で自ら演じてみないか」という提案に応じ、意気揚々と過去の行為を再現していく。やがて、過去を演じることを通じて、加害者たちに変化が訪れる。

予告編

感想を率直に申し上げますと、

衝撃・・・

この一言に集約できるでしょう。


[DVD発売済み]

衝撃には様々な意味を含みます。インドネシアにおける100万人の大虐殺の加害者が英雄として祭り上げられていることにまず衝撃。

世界史では数行でスルーした1960年代のインドネシアでこんなことがあったとは…衝撃。

その当時の虐殺を再現しようという企画がまた…衝撃。

それに乗っちゃう英雄じいちゃんが楽しそうなこと…衝撃。

再現であってもやはりエグい…グロい…衝撃。

殺人を笑顔で語るなんて不快…不愉快…衝撃。

と思ってたらあまりに普通に語るからこっちの感覚が麻痺…衝撃。

価値観がわからなくなる…恐ろしい…衝撃。



言葉の整理ができない映画であります。



虐殺加害者で英雄のじいちゃんたちは嬉しそうに楽しそうに虐殺を再現していきます。どう殺すと効率的かとか…それいらねえよ知識として(笑)

同時にその流れの中で善と悪、罪について様々な思いが出てきて人間的な一面が垣間見られてきます。

しかしその人間的な一面が出たとしても善悪はっきりとした何かの答えは本作では示されません。ドキュメンタリー映画ですからね。その良くも悪くも不安定なラスト付近に非常に困惑しました。

ドキュメンタリーと言えども、虐殺を再現している時点でそこには"芝居"が見られます。じいちゃん、最後の感情は本音?芝居?ねえどっち?いや、本音なんだろうけど…それすらわからなくなるんですよこの映画は。

価値観というか、倫理観を揺さぶられる映画です。決して非倫理的になる映画でも無いのでお見事。


虐殺の再現と言っても小学生のお遊戯会のようなお芝居レベルなんです。言うならばポール・グリーングラス監督『ユナイテッド93』のようなガチ再現なんて雲の上の雲の上の雲の上、いや次元が違います。本作の虐殺再現は超低レベルです。

だからこそじいちゃんたちの内面が見えてきて衝撃的なのです。ガチ再現を目的としてない。あくまでもそれを通じてのじいちゃんたちを描いていきます。だからこそ伝わるものがあります。

「1人殺せば殺人犯だが、100万人殺せば英雄である」とはまさにこの事。

しかし英雄は祭り上げられ死ぬまで富裕な生活が保証されながらも、何だかんだ傷は負ってるんですよね。『父親たちの星条旗』のアメリカ兵とここのじいちゃん、多分傷は同じ。苦悩が見えてるか見えてないだけ。


ラストの観客への揺さぶりも衝撃的です。いや、そのシーンが衝撃的なのではなく、映画の積み重ねからのこのラストは・・・衝撃です。

アクトオブキリング=殺人という行為

殺人が良い悪い、虐殺が良い悪い、なんて甘ったれたお行儀の良さはここにはありません。もっと深く、人物たちの内面に迫り、そしてそれが本当か嘘かわからずとも、じいちゃんたちのあの表情を炙り出しただけでこの映画は勝利でしょう。完成度文句なし。

価値観が揺さぶられるのではなく、何かわからないことになる。そんな映画でございました。


written by shuhei