『フルートベール駅で』感想、青年が警官に銃殺された実際の事件の"その場"と"その前"を突きつけられ心に穴が開く[ネタバレ解説あり] - Cinema A La Carte

『フルートベール駅で』感想、青年が警官に銃殺された実際の事件の"その場"と"その前"を突きつけられ心に穴が開く[ネタバレ解説あり]


私的満足度

★★★★=星4=素晴らしい作品でした!

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。


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『フルートベール駅で』基本情報

タイトル
=フルートベール駅で

原題
=Fruitvale Station

日本公開
=2014年3月21日

監督
=ライアン・クーグラー

出演
=マイケル・B・ジョーダン
=オクタビア・スペンサー
=メロニー・ディアス
=ケビン・デュランド
=チャド・マイケル・マーレイ

ストーリー
一般市民の青年が警官に銃殺された実在の事件を映画化。2009年の元日、米サンフランシスコのフルートベール駅のホームで、3歳の娘を持つ22歳の黒人青年が警官に銃殺された事件が起こる。ごく普通の市民にすぎなかった青年が、なぜそのような悲惨な死を遂げたのか、青年の人生最後の1日を描く。


予告編


こんな映画です

実話です。2009年の元旦、サンフランシスコのフルートべール駅。22歳の黒人青年オスカーが警官に銃で撃たれ死亡しました。ニューイヤーの駅ですので目撃者がたくさんいて、その時の映像も本作で使われております。


[DVD発売済み]

日本にいてもアメリカでの白人警官による黒人への不当な対応はよく耳にしますので、知らないものもきっとたくさんあるのでしょう。本作の事件はかなり社会問題化しましたので薄らと私も記憶しています。

本作はその事件当日と"その前"を描いています。ここがポイントです。事件は言うならば理不尽に起きたものであり、オスカーはまさか自分が銃殺されるだなんて思わないで死ぬ前の時を過ごすのです。




感想を率直に申し上げますと、

未来は約束されたものではないという絶望を感じ、今この時をしっかり生きないと、と個人的にあれこれ考える気持ちとなりました。



上記のように、理不尽に銃殺された黒人青年が主人公であり、その死はあまりにも突然やってくるわけですので、映画的出口に救いとか無いわけです。そりゃだって因縁付けられたわけでも無いし、色々報道されてますが白人警官は「黒人だし、うざいから打っちゃった」くらいだったと思いますからね、正直なところ。

その事件を映画化するに当っては様々な切り口があったと思いますが、本作は銃殺した白人警官への糾弾などはしていません。もちろんその行為は反社会的なもので、実際この警官は刑務所送りになってますからね。(保護観察処分で11ヶ月で出所)



本作はあくまでもオスカーについて描いています。これ身内や友人が見たら悲しさが溢れると同時に懐かしさも溢れて製作陣には感謝の気持ちになるのではないでしょうか。オスカーはお世辞にもよく出来た人間ではありませんでした。しかし一生懸命生きていました。

ある程度低迷期から抜け出す道筋も描けて「新年、よしここからまた頑張るぞ!」という決意を持った矢先、この世を去ることになってしまったのです。

「オスカーは駄目な人間だったけど、人一倍優しくて、未来に向けて頑張ろうとしてました」というメッセージが伝わってきました。そういう映画なので社会派映画とかそっちよりも人間ドラマでしょうね。

事件の模様は衝撃的に描かれますが、それと対象的に映画の大半は日常生活が淡々と描かれます。その淡々とした描写の積み重ねで彼に親近感を覚え、亡くなってしまったオスカーがいたたまれなくなります。



オスカーと銃殺した警官だけを見て、「警官が悪い!」と言うことは簡単です。では警官だけを悪者扱いすればそれで済むのでしょうか。今まで何度も起きている白人警官への黒人への不当な扱い全体へ目を向けて、その全体の問題であることを認識しなければなりません。また、それは人種差別という世界に蔓延る問題としても見なければいけません。

答えなんてすぐ出ない世界に蔓延る人種差別の中で起きてしまった問題なのです。製作陣はそれをわかっているからこそ、冷静に淡々とオスカーの生前を描き、起きた悲劇を描いたのです。

ただただ、いたたまれないです。これがフィクションなら「ここから頑張るぞ!」と観客は背中を押して彼はここから歩んでいくべき人間なのですから。その歩もうとした矢先の銃殺。ご家族に思いを寄せ、このような問題が少しでも起きないことを願いますが、そう願うことしか出来ない自分のちっぽけさに嫌気が差すのでした。

映画として文句はありません。素晴らしかったです。


written by shuhei