『ウォルト・ディズニーの約束』感想、メリー・ポピンズ誕生のきっかけを知った時、愛着以上に胸が苦しくなる作品。完成度文句無し。[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『ウォルト・ディズニーの約束』感想、メリー・ポピンズ誕生のきっかけを知った時、愛着以上に胸が苦しくなる作品。完成度文句無し。[ネタバレなし]


私的満足度

★★★=星3=普通に楽しめました。

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。


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『ウォルト・ディズニーの約束』基本情報

タイトル
=ウォルト・ディズニーの約束

原題
=Saving MR. BANKS

監督
=ジョン・リー・ハンコック

出演
=エマ・トンプソン
=トム・ハンクス
=ポール・ジアマッティ
=ジェイソン・シュワルツマン
=コリン・ファレル

ストーリー
米ウォルト・ディズニーが、自社の映画製作の裏側を初めて描いた作品で、1964年の名作ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の製作秘話。ウォルト・ディズニーは娘が愛読している児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化を熱望し、原作者パメラ・トラバースに打診するが、トラバースは首を縦に振らない。やがてイギリスからハリウッドへやってきたトラバースは、映画の製作者たちが提案する脚本のアイデアをことごとく却下。なぜトラバースは「メリー・ポピンズ」を頑なに守ろうとするのか。その答えが、幼い頃の彼女と父親との関係にあると知ったディズニーは、映画化実現の最後のチャンスをかけ、トラバースにある約束をする。

予告編

こんな映画です

ウォルト・ディズニーは娘が小さい頃に『メリー・ポピンズ』の映画化を約束していました。原作者パメラ・トラバースは映画化なんてまっぴらごめんと20年間拒否し続けてきました。しかし20年が経過し資金繰りがどうにもうまくいかなくなったパメラは苦渋の決断で映画化を受け入れました。

しかし…パメラは映画化にあたりアレはダメ、コレはダメを連発しなかなかうまくいきません…

なぜパメラは『メリー・ポピンズ』をそこまで大切にしているのか、大幅な改変に聞く耳さえもたないのか…幼い頃の彼女と父親との関係に理由があると知ったウォルトは映画化を何としても成し遂げるためにある約束をすることに。

その一連の『メリー・ポピンズ』製作舞台裏を主人公パメラ・トラバース中心に彼女の少女時代の回想を頻繁に挟みながら描いていきます。つまりウォルト・ディズニーは主人公ではありません。邦題の"ウォルト・ディズニーの約束"は映画内のエピソードとして"約束"の意味はありますが主人公をウォルト・ディズニーと勘違いして見ると肩透かし食らうかもしれません。


感想を率直に申し上げますと

傑作だけど辛かったです。辛いとは主人公のトラバースに感情移入し過ぎてしまい。史実を綺麗事にしてることは映画としてアリと思いつつ、「でも…でも…」と思った自分がいました。ここまで深刻に考えてしまう理由は後述します。

映画の完成度は文句無し一級品。世界観、演出、脚本、演技、音楽と、それぞれの一級品が見事に融合して傑作映画に仕上がっていたと思いました。


[DVD発売済み]

『メリー・ポピンズ』の映画化の過程とパメラの幼少期が交互に描かれていきますが、どちらも素晴らしい世界観演出でふんわりと心地よさ、時にコメディ性を持って描かれていきます。しかしパメラの幼少期の物語が進むにつれて、どうも心がざわついてしまいました。

「辛い過去なら…無理に処理しなくてもいいじゃん。ウォルトさん、それ優しい言葉だし…心意気はさすがなんだけど…でも…そっとしておいてあげてよ。」

私はそう思いもう胸が締め付けられる思いで…。ウォルト・ディズニーのパメラ・トラバースへの気遣いは素直に感動されてる方が多いので、私はかなり深刻に受け止めてしまってるようで…さっきも書きましたがその理由というか仮説は後述。


映画のタイトル、原題は"Saving Mr.Banks"です。"バンクス氏の救済"です。バンクス氏とは『メリー・ポピンズ』に出てくる銀行員のお父さん。これはパメラ・トラバースの父親を投影しているものなのです。なので映画化において原作の改変は彼女の思い出への侮辱でもあるわけです。

私たちが映画を通して『メリー・ポピンズ』映画化の苦節を知っていきます。いや、原作者パメラ・トラバースの苦節を知っていきます。その二重構成は映画的には見事ですね、そこはもう完璧。

ウォルト・ディズニーは良い人で、私達が見たいウォルト・ディズニーがそこに描かれています。ディズニー映画ですしね、悪くは描きません。ただし、神格化もしていません。そのバランスは素晴らしいと思いました。

映画のクライマックス、完成した映画を見たパメラ・トラバースの不満そうな顔からの号泣…泣き崩れ…その涙の理由は映画に感動したからではありません。涙の理由は映画を目撃してきた誰もがわかることでしょう。

「ウォルト・ディズニーはパメラ・トラバースの心を救ってあげて、映画もできた! ウォルト・ディズニー素晴らしい! パメラ・トラバースもお疲れ様! また『メリー・ポピンズ』見るよ!」というような感想が普通のようです。そう見れると温かい心になり涙を流すかもしれません。

しかし、私はそうは思いませんでした。「もうこれ・・・パメラさん可哀想だよ・・・勘弁してあげてよ・・・」という気持ちになりました。映画にのめり込んでるので映画的評価は高いですが、パメラさんが救われたとどうしても思えなかったのです。(私のオールタイム・ベスト・ムービー『つぐない』でも似た感想になってる。つまり映画としては素晴らしいのは繰り返し述べておきます)

私は仕事柄マーケティング戦略やストーリーのアイディアを出すことが多いです。電子書籍レベルですが小説も書きます。自分の作った作品て、表に出す建前以外に内に秘めた思いが必ずあるのです。言葉では説明できない、生きてきた記憶と結びついた何かが。

パメラ・トラバースにもそれがあったはずです。それを考えるともういたたまれなくて・・・アイディアを形にする仕事ではそんな地位無い私でこれですので、もっと普段から傷つきながらそういう仕事されてる方はもっと落ち込んでしまうのではないでしょうか。

繰り返しますが、そう思ってしまうほど映画は強い力を持ってるので素晴らしい出来ではあります。ぐちぐち言っててもそれは映画にハマったからということで、映画やウォルト・ディズニーを非難してるのではないことは明確にしておきます。


この映画に悪役はいません。恨む人はいません。パメラ・トラバースに同情する気持ちと同じくらいウォルト・ディズニーへ尊敬の念を抱きました。"チムチムチェリー"の心苦しいラストの後、エンドロールでかかるトーマス・ニューマン作曲のテーマ曲の温かさたるや…今現在のウォルト・ディズニーカンパニー及び製作者からパメラ・トラバースへの敬意のようなものをそのラストシーンとエンドロールで感じることができました。

エマ・トンプソンの演技は素晴らしくアカデミー賞ノミネートされなかったのが不思議で仕方ありません。トム・ハンクスのウォルト・ディズニーは意外にもチャーミングで親しみが持てました。脇を固めるポール・ジアマッティら名優陣もお見事。そして幼少期のパメラの父親を演じたコリン・ファレルがキャリア史上最高に爽やかな演技を見せます。(コリン・ファレルっていい意味で男臭い印象が強かったのでびっくりです)

映画を見て「ハートウォーミングな傑作」か「胸が締め付けられる傑作」か、はたまた「駄作」か、それは捉え方次第でしょう。私には「胸が締め付けられる傑作」でした。どのような感想であっても、ディズニースタジオ自らがディズニーを、『メリー・ポピンズ』を、ウォルト・ディズニーを、美化しつつ美化し過ぎないその姿勢には好感を抱くことでしょう。それ自体がディズニーならではの子供騙しという非難ももちろんありますが。

史実はもっとカオスだったようですが、脚色あってこそ映画ですのでそこは良いでしょう。映画としては傑作、でもパメラ・トラバースは今天国でディズニーの『メリー・ポピンズ』を良く思ってるのか、私にはわかりません。

みなさんが映画を見たあと「『メリー・ポピンズ』もう一回見たい!」と思えることを願っております。

おしまい。



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written by shuhei