映画『ロードトゥーパーディション』紹介、父子の絆に感動しサム・メンデス演出に唸る傑作[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『ロードトゥーパーディション』紹介、父子の絆に感動しサム・メンデス演出に唸る傑作[ネタバレなし]


『ロード・トゥ・パーディション』基本情報

タイトル
=ロード・トゥ・パーディション

原題
=Road to Perdition

製作年
=2002年

日本公開
=2002年

監督
=サム・メンデス

出演
=トム・ハンクス
=ポール・ニューマン
=ジュード・ロウ
=ダニエル・クレイグ

ストーリー
1931年、雪の降るイリノイ州ロックアイランドの町。良き夫であり2人の息子の良き父親であるマイケル・サリヴァンには、町を牛耳るアイルランド系マフィアの幹部という裏の顔があった。サリヴァンはボスのジョン・ルーニーから息子のように愛されていた。サリヴァンの2人の息子にも実の孫のように接するジョン。そんな父ジョンを実子コナーは、苦々しく思っていた。ある日、組織の幹部会でコナーはヘマをしでかしたとジョンに責められる。次第に追い詰められたコナーは、父への恐れとともに、サリヴァンに対する嫉妬と憎悪を膨らませていく…。


予告編




ハリウッド版の子連れ狼
『子連れ狼』という話はとても有名ですよね。本作はそれをモチーフにしたグラフィックノベルが原作となっています。

DVDの特典映像でもプロデューサーが言ってますが、『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞を受賞したサム・メンデス監督の次回作にぴったりとのことで、サム・メンデスに話を持ち込んだそうです。そして実現した映画です。

主人公はトムハンクス演じるサリヴァン。アイルランド系マフィアの幹部です。ボスには息子のようにかわいがってもらっていましたが、ボスの息子はそれを良くは思いませんでした。

ある日のある出来事をきっかけにサリヴァンは妻と下の子を殺されてしまうのです。悲しみの中残された上の息子と二人で逃避行へと出ます。もちろんただ逃げるだけではありません。ここから本当の戦いが始まるのでした。息子と二人で逃避行をしながら戦い抜いていく。まさに子連れ狼ですね。

それを1930年代アメリカで描くことで独特の世界観が映像として繰り広げられました。映像美や雰囲気、演技等は下にまとめるとして、ストーリーとしては理不尽な殺害により逃避行を送ることになってしまいながらも、父子の切れない絆を描いています。

対照的にマフィアのボスと息子の関係は信頼のしの字も無いほど冷め切っています。「絆のある追われる父子」と「絆のない追う父子」の対比がとても皮肉でしたね。 逃げているのは悪いことをしたわけではありません。

なので街や道中会う人々とは温かく接しています。これらエピソードが緊張感のあるストーリーをゆるめる効果となりちょうど良い具合に落ち着いています。

組織全体を巻き込んだ2つの父子の追う追われるという展開への見事なスパイスとなるのが、写真家兼殺し屋であるマグワイヤ。彼は私情を持ち込みません。ただただサリヴァンを殺すという仕事を全うするために彼を追い詰めていきます。

そんな中迎える凄まじきラスト。「絆のある父子」「絆のない父子」そして「殺し屋」の5人。最後に生き残ったのはたったの1人でした。その結末は映画でご堪能ください。




サム・メンデスの重厚な世界観に浸る
『アメリカン・ビューティー』で超絶シュールにアメリカの家庭を皮肉ったサム・メンデス。あ、毎度こういうのは褒めてますからねw本作はジャンルでいうとギャング映画だと思うのですが、かなり独特な作品です。サム・メンデスの演出がとても光っています。

ストーリーとしてはかなり多くの人間が死ぬので相当エグいです。では、ご覧になられた方、思い返して頂きたいのですが、本作はそのエグいストーリーに見合った目を背けたくなるような暴力描写はありましたか?

ほとんどないですよね。それこそがサム・メンデスの演出によるものなのでしょう。 『アメリカン・ビューティー』のラストの頭が銃弾で吹き飛ぶところもそれ自体は映さず血しぶきのみ映していました。何が起きたかは映像から伝わるのですが、それを直接映し出さない。良くも悪くも私たちの頭の中で映像が保管される演出が成されています。

本作だと息子がのぞき見した銃撃戦。子供目線の映像のみで描かれています。銃撃戦があって、相手が死んでサリヴァンが無事なのはわかりますが映像としては暴力性はないのです。

または終盤の雨の中の銃撃シーン。ボスの手下が一人、また一人と倒れていきますが、その映像はグロいどころか、芸術的で美しい映像としか表現できない素晴らしいものでした。

終盤の別のシーンも然り。サリヴァンがホテルに押し入り入浴中のある奴を殺したシーン。銃撃の瞬間は映像では出ませんでした。撃たれた後ドアが閉まる途中で逆側にあった鏡に殺された人間が映るという素晴らしい演出。

事実をリアルに描くのではなく映画が映画として存在できる 「映像の工夫」を持って演出するサム・メンデスのセンスは本当に素晴らしいです。 今思えば『レボリューショナリー・ロード』のラストもそうでしたね。エイプリルがバスルームでやってしまったアレの描き方。やってることはとんでもなく心痛むエグいことですが、映像では出てませんでしたね。

改めて考えると一貫してるなぁ。今は亡き本作の撮影を務めたコンラッドLホールの撮影センス×サム・メンデス演出により 独特の世界観が見事に出来上がりましたね。直接の暴力描写がないため暴力シーンは本作の売りにはなりませんし、かつ私たちの頭にも刷り込まれません。だからこそ本作のラストは感動しますね。

生き残ったものの最後の一言。この一言に全てが詰まって涙が出ましたね。



トーマス・ニューマンの美しき音楽
本作の音楽を担当したのはトーマス・ニューマン。『アメリカン・ビューティー』や近年だとピクサーの『WALL・E 』なども担当しています。本作のスコア音楽は時にもの哀しく、時に美しく、時に優しくといったもの。美しさが際立ったスコアです。

アイリッシュ音楽っぽさを出したり、ピアノメインで持って行ったりと、 とにかく美しい。エンディングも静かに聞こえる旋律が映画の雰囲気を引き立てていました。ん~・・・作曲賞なぜ取れなかったんだろうwこんないい音楽なのにw

映画を見ないで音楽だけ聴いてもあまり主張性のない音楽と思ってしまうと思います。それくらい静かに流れます。しかし映画を見てから音楽を聴くと各シーンが蘇り、感動に包まれます。映画音楽としての役割を見事に果たしている音楽ですね。



俳優陣の見事な演技
トムハンクス×ポール・ニューマン×ジュード・ロウ×ダニエル・クレイグ。凄まじい共演でした。

私はトム・ハンクスの出演作ではこれが1番ハマり役だと思います。時に冷徹でありながらも家族を思う優しい心が伝わってきます。そして何があっても息子を守るという決意。その決意故に最後まで戦う強さ。言葉以外からにじみ出る人柄が素晴らしかったです。

ポール・ニューマンはマフィアのボスが本当にハマり役でしたね。根は優しいが息子のことは認めていません。しかし心配をしている、不安に思っている。それでいてサリヴァンを息子同然にかわいがっていたら、映画の中でこの様。アカデミー賞助演男優賞ノミネート納得です。

そんなポール・ニューマンの息子を演じたダニエル・クレイグ。今でこそ007ですが、当時は売り出し中。ホント嫌なやつ全開でしたね。あ、役としてですよ。何をどう思っても好きになれないバカ息子という感じでした。それを見事に演技ていたと思います。

そして最後は殺し屋を演じたジュード・ロウ。私情を挟まないのでミステリアスで恐ろしかったですね。顔を怪我し、治療したあとのあの痛々しい顔の状態での微笑み。あれは背筋が凍る恐ろしさでしたね。

死に際の人間を写真に撮るとかもとても恐ろしかったです。ジュード・ロウ新境地といったところでしょうか。脇役で前半は登場しませんが見事な存在感でした。

そんなスター俳優4人の中堂々と演じたサリヴァンの息子役のタイラーホークリンがまや素晴らしい。 子役と言うと『チャーリーとチョコレート工場』のフレディーハイモアや『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリン。 ダコタ・ファニング&エル・ファニング姉妹などなど、みんなかわいいんですが、褒め言葉としてタイラーホークリンは地味で大人っぽい。

だからこそサム・メンデス演出の映画の中で見事に光っていましたし、これはキャスティングうまくやったなぁと思いましたね。今何してるのかな。 気になるところです。

そんな本作、演技も注目するポイントです。本作はギャング映画ですが「ゴッドファーザー」と真逆の傑作と言えるでしょう。

何せ暴力描写ありませんので比較が難しいです。ギャング映画でありながら、物語の焦点は組織でなく父子。ギャングというエグい世界を描きつつ、絆を描くという繊細な作品。これはサム・メンデス監督だからこそバランスが取れたのでしょう。このテイストで見れて良かったです。

娯楽性は高くありませんし、見終わった後「面白かった」となる映画でもないでしょう。しかし映画が終わったあとに色々と考えることが出来るでしょう。

何か答えが出なくても、

「生きるって何だろう??」

「大切な人を守るって何だろう?」

「理不尽な出来事によって夢が崩れた時どうしよう?」 

そんなことを考えられるだけでも本作を見た価値はあると思いました。


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