とにかく物足りない!11月1日公開、映画『スティーブ・ジョブズ』/彼は2時間で語ることはできないのか?【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレ解説あり] - Cinema A La Carte

とにかく物足りない!11月1日公開、映画『スティーブ・ジョブズ』/彼は2時間で語ることはできないのか?【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレ解説あり]



11月1日公開の『スティーブ・ジョブズ』。
文字通りのスティーブ・ジョブズを描いた映画です。
一足お先に鑑賞してきましたので感想を。

『スティーブ・ジョブズ』基本情報
公開日
=2013年11月1日

公式サイト
http://jobs.gaga.ne.jp/

監督
=ジョシュア・マイケル・スターン

出演
=アシュトン・カッチャー
=ダーモット・マローニー
=ジョシュ・ギャッド
=ルーカス・ハース
=J・K・シモンズ
=マシュー・モディーン

ストーリー
2011年に死去したアップルの創設者、スティーブ・ジョブズの生涯を描く。大学を中退し禅や仏教に傾倒しながらも、無為の日々を送るジョブズは、親友のウォズニアックの趣味であるコンピュータに興味を持つ。2人は友人たちの協力を得て世界初の個人向けマシンApple Iを商品化。ジョブズは自宅ガレージを改造して、ウォズニアックらとアップルコンピュータを設立する。ジョブズは社長として経営に辣腕をふるい、77年にApple IIを発売、大ヒットとなる。25歳にして成功を手中にしたジョブズだったが、そのときから周囲との軋轢に苦しみ、挫折と栄光を味わうことになる。

予告編




みなさんのジョブズへの考え方や知識で見方が変わる
正直な感想を述べますと何て中途半端な映画なんだと思いました。
しかしある数分のシーンが私は心にグサッと刺さりその数分だけで満足した映画でもありました。映画としては欠点があるけれど今のAppleに思い入れがある方がはきっと何か心に刺さる映画だと思います。

いいや、遠回しな表現やめましょう。
ジョナサン・アイヴ知ってる人は刺さります。感動しました。具体的には最後に。

[DVD/Blu-ray発売済み]

本作が描くのはジョブズの大学時代からAppleを一度去り復帰するところまでです。
数十年来のAppleファンで無ければ「こんなの知ってるわ」とはならない部分を映画は描いています。つまり彼の人柄と言いますか熱意と言いますかビジョンと言いますか、そこを描こうとしていることが明確です。

彼の傲慢さなども描かれており、一度Appleを追い出される一連のエピソードなども非常に面白いものがありました。彼の若かりし頃からの熱意も非常に見応えがありました。

しかし、それらを見るにあたって常に自分が思っているスティーブ・ジョブズの印象や知識と照らし合わせながら見ていました。つまり映画にのめり込んではいませんでした。

アシュトン・カッチャー演じるスティーブ・ジョブズは非常にそっくりで「似てるwww」と思うほど完全にコピーしていました。しかし常に実際のスティーブ・ジョブズと頭で比較しながら鑑賞したため非常に消化不良な印象となってしまいました。

つまり、映画的引力が弱く感じました。
これは映画の完成度を一概に低いというものでもないと思います。
私たちが思い描くスティーブ・ジョブズによって全く異なると思うのです。

私がApple製品を愛用してるのはここ8年くらいです。それまではPCやWeb自体詳しくなく、スティーブ・ジョブズは名前くらいしか知りませんでした。高校生だった私にとっては、単純に物を使用するにあたり経営者なんてどうでも良かったんだと思います。

つまりiPod誕生以前のAppleをスティーブ・ジョブズ視点ではリアルタイムで知らないわけです。しかしiPod→iPhone辺りからはスティーブ・ジョブズのことをWebを介してですがリアルタイムで様々情報を得てきました。

なので私のスティーブ・ジョブズの印象は一度Appleを追い出され、復帰した以降のスティーブ・ジョブズなのです。つまり追い出され前の傲慢な印象はそこまで持ってないのです。しかし映画で描かれたのはその以前の部分。

新たな視点であると同時に違和感を感じたのはこれが理由でしょう。
しかしそれでもジョナサン・アイヴのMacデザインのエピソードが入ったことにより、そのシーンだけで大満足した次第です。

みなさんが知ってる部分と知らない部分、それによってこの映画をどう感じるか変わってくるでしょう。これはこの映画の良い点であり悪い点でもあると思います。


facebookのマーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』は人物の内面をミステリアスにしながらとんでもない情報量を突っ込むことで、映画的満足度と完成度を上げました。隙がなく、実際知ってる情報と照らし合わせることなんてしませんでした。

『スティーブ・ジョブズ』はそれをする隙があります。映画的な余裕であると同時に欠点であり、私たちが抱くスティーブ・ジョブズが皆異なるのでそれによって評価も変わってくるものなのでしょう。良くも悪くも。


少しばかり文句も言いつつ感動したと表現した『スティーブ・ジョブズ』。
それは私が思い描くステレオタイプのAppleの印象故でもあります。

ジョナサン・アイヴ。
現在のApple製品を愛用していて、製品発表会等もチェックしている方ならご存知の方も多いでしょう。

ジョナサン・アイヴ

現在はジョブズ体制の時以上に権限を持つデザイン担当上級副社長です。
Mac、ipad、iPhoneのデザイン、そして今年更に権限が拡大しiOS7のデザインも担当。中も外も今のAppleのデザインは彼が統括しているのです。

その賛否は置いておきました、映画の中ではスティーブ・ジョブズとジョナサン・アイヴの語りのシーンがあります。語ることはMacのデザインについて。今は懐かしの半透明で複数カラーのあるiMacです。

そのシーン、静かにデザインとビジョンを語るだけなのですが、私はこれに打ちのめされました。感傷的だったわけではないですが、ジョブズが復帰する前からあった二人の友情や、今のジョナサン・アイヴの活躍などを考えて胸がいっぱいになりました。

ジョナサン・アイヴが今回iOS7でiPhoneの中身を初めて全面刷新しました。ユーザーの好き嫌いは置いといて、評論する方々の中にはやはり「ジョブズならこんな刷新しなかった」という方々がいます。

でも、このシーン、あくまで映画のシーンですが、そんなことないよなと思うのです。ジョナサン・アイヴは「ジョブズが全面刷新するならこうするだろう」という思考も持ち合わせているのです。なぜなら彼は元々ずっと外部デザインを担当してきたのですから。それが初めて内部デザインにまで波及した結果、美しいフラットでシンプルなデザインになったのでしょう。

色々言う方も多いですが、きっと数年後にはスタンダードになっていることでしょう。いや、そうあることを願いたいです。

という感じに私はジョナサン・アイヴが大好きなので、映画でもこのシーンとても感動しました。




映画の描く実際の人物描写は100信じてはいけません。

『ソーシャル・ネットワーク』のマーク・ザッカーバーグが最低の男だったが実際そこまでじゃないというのと同じです。あの映画では彼の性格を極端にアスペルガー的にすることで映画の面白みを与えました。

事実のエピソードで話を進めつつ映画的な脚色を存分に行ったのです。
結果的に映画は傑作でした。あの映画を見てTwitterやブログなどに「こんなやつの作ったfacebookなんて使うか」って意見が溢れるくらいでしたからね。

しかしそれはあまりに極端な考え方です。そんな狭い視野だめ。映画一本でその人を決めつけちゃいけません。そういった意味で『ソーシャル・ネットワーク』はそこまで説得力があった傑作であると同時に非常に重い罪を背負った映画でしょう。

私が生涯ベスト10に入る映画でありながら未だにレビューを書けないのはこれが理由でしょう。



さて話を『スティーブ・ジョブズ』に戻しまして。

本作のスティーブ・ジョブズはそこまで悪いイメージは無いですが、100%信じるものでないのは同じでしょう。最後「やっぱりスティーブ・ジョブズは必要だ」となるわけですが、映画の大半を占める彼のビジョン故の傲慢さはその通りとは思えません。

もしかしたらもっと優しかったかもしれませんし、もっともっと傲慢だったかもしれません。それはわからないのです。だってこれは所詮映画なのですから。

しかし、映画を見ることでスティーブ・ジョブズやAppleを考えたりするのは面白いです。また単純に映画を見るという中で非常に面白い題材でもあります。

映画の描くスティーブ・ジョブズ、みなさんの思い描くスティーブ・ジョブズ、どっちも本当のジョブズではないのです。本当のジョブズを知ってるのは彼と実際に過ごした家族や同僚たちなのでしょう。本作にかぎらず伝記映画はこの認識が重要だと思います。



ここまで一生懸命にビジョンを掲げ、命を捧げた人物がいたことを、映画を見て改めて痛感できます。そして私たち自身何かやる気が湧いてきます。そういう意味でこの映画は素晴らしいです。

あれこれ欠点も述べましたが、相対評価で満点の完璧な映画は素晴らしいですが、絶対評価でマイナスあれども突き抜ける何かある映画こそ人々は愛して止みません。そんな映画ではないでしょうか。

ジョブズのそっくり演技はもはや笑えるレベルの完璧さw
それだけでも面白いので是非公開されたらご覧になって頂きたいです。

同時にこう思います。

2時間の映画で消化不良だったのだから、もう一度アシュトン・カッチャー主演で何十時間に及ぶステレオタイプのドラマをやるべきだ!!

と。アメリカのテレビ局さん、期待してますよ(笑)

おしまい。


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written by shuhei