映画『サイダーハウスルール』紹介、重い題材を鮮やかに感動的に描いた傑作[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『サイダーハウスルール』紹介、重い題材を鮮やかに感動的に描いた傑作[ネタバレなし]



『サイダーハウス・ルール』基本情報
タイトル
=サイダーハウス・ルール

原題
=Cider House Rules

監督
=ラッセ・ハルストレム

出演
=トビー・マグワイア
=シャーリーズ・セロン
=マイケル・ケイン

ストーリー
20世紀半ばのアメリカ、メイン州。孤児院で生まれ育ち、その院長ラーチの堕胎手術を手伝う青年ホーマー。院内のスタッフや無邪気な子供たちに囲まれながら穏やかな日々を過ごすホーマーだったが、今後の人生をなかなか見出せないでいた。そんなある日、中絶に訪れたキャンディと恋人の軍人ウォリーと意気投合し、孤児院を抜け出してしまう。そしてウォリーの母親が営むリンゴ園で住み込みで働き始め、作業を仕切るミスター・ローズから色々と学んでいくのだった。また、ウォリーが再び戦地へ発ったことをきっかけにキャンディとの恋が芽生えるホーマー。やがて、ローズの娘の思わぬ妊娠や、ウォリーの帰還による三角関係の行方など、様々な問題に直面するホーマーだが…。  


予告編



テーマは重く、ストーリーは爽やかに
孤児、中絶、堕胎、近親相姦、不二の病、などなど・・・ 
本作はそれらが当たり前のように何回も出てきます。 

それらを重苦しく扱いメッセージとして伝えてるのではありません。 映画の世界ではそれらが幾度と無く日常で出てきます。そういう場所にいるからこそ。舞台となるのは孤児院 兼 産婦人科とリンゴ園。 

孤児院で育ったホーマーは外の世界を知りません。ある時チャンスを見つけ旅に出ていきます。その旅を通してのたくさんの経験が本作のメインストーリーになります。孤児院もそうですし、リンゴ園もそうですが、どこにでもルールがあります。 

それらルールを守ったり、時にそれに抵抗したり、時には感情に負けてしまったり、凹んだり、笑ったり、喜んだり、悲しんだり・・・ 

そんな人生の旅を重い題材が取り巻く中爽やかに描かれています。中絶の話でも孤児の話でもなくあくまでも人間ドラマですね、この映画は。 

そういった意味でかなり異色の映画だと思います。かなりの傑作映画ですが涙を流したり心を揺さぶられたり、そういう映画ではないのです。何か見てる時は普通に見てて、普通に終わりました。 

しかし見た後に言葉では表しにくいんですが、心地よい感じがしたんです。 そして繰り返し見る。

何かを学んだりとか、重いメッセージを自分なりに考えたりなどせず、美しい情景、重くも爽やかな情景、人間味ある登場人物たち、素晴らしすぎる音楽、そして優しさ溢れる嘘の数々、笑顔のラスト、これらが引き寄せて離せない素晴らしい映画だなぁといつも思います。




どこか別世界で起きている印象
孤児や中絶はとても重いテーマなのですが、本作は客観的にそれらを見ることができます。これはストーリーはもちろんのことですが、演出が効いていると思います。

本作の監督はラッセ・ハルストレム。『ギルバードグレイプ』や『ショコラ』の監督です。『ショコラ』のレビューも今後掲載したいと思っていますが、あの映画は「お伽話」という表現が非常によく似あうと思っています。

チョコレートのお伽話である『ショコラ』より前の作品ですが、これに似た要素があると思うんです。 良い意味でいつも「どこかの世界の小さなお話」なのです。

だからこそ大きく感情移入したりする、のめり込むものではなく、 客観的、言うならば絵本を読んでいるように感じるのです。そいえば同じくラッセ・ハルストレム監督の『HACHI 約束の犬』もそうでしたね。

当初は号泣映画かと思いましたが、号泣と言うより少し泣ける素敵な映画でした。あれもどこか別世界の小さなお話といった感じでした。ちょっとしか泣かないけれどこれも心地よく映画館に何度も足を運んだのを覚えています。

そんな感じで「サイダーハウス・ルール」も同じく小さな別世界でのお伽話。 重い題材だけれども別世界で繰り広げられるお話の登場人物は良い人ばかり。 

途中悪い人も出てくるように思えますが、あのリンゴ園の彼の最後を見て、100%悪いとは思いませんよね。そういった意味で人間味溢れている登場人物たちだったなぁと思います。原作や演技も効いてますが、この辺りさすがラッセ・ハルストレム監督の演出といったところでしょう。



主役3人の素晴らしさ
主役のトビー・マグワイアは「スパイダーマン」でお馴染みです。どうもスパイダーマンにそこまで思い入れがないのであの映画のトビー・マグワイアについて何とも言えないのですが、本作のトビー・マグワイアはハマり役だと思います。 

レビューによっては感情がないように感じるとの批判意見もありますが、 孤児院という閉鎖空間で育ち、大切に育てられながらも外の世界を知らなかった主人公ホーマー。感情を表には出しませんが、心が揺れていることはふとした表情から伝わってきたなぁと思います。

このホーマーに近い映画の主人公で真っ先に思い浮かぶのが『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のベンジャミン。ブラピが演じた段々と若返っていく主人公でしたが、彼も感情を表には出していませんでしたね。

しかしあらゆる境遇に対して心は動いていたということはわかります。あれだけの決断をしているのですから。本作のホーマーも同じ。表に出す感情表現ではなく行動や決断の1つ1つが彼に気持ちを代弁しているのでしょう。それをパッと見無表情でおっとりしているように演じたトビー・マグワイア、とても良かったと思います。

続いて実質ヒロインのシャーリーズ・セロン。二人の男性の間で揺れる役でしたが、いやぁ美しかったですねぇ。シャーリーズ・セロンは好きな女優さんなので色んな映画見ていますが、この『サイダーハウス・ルール』が1番好きかもしれません。

『イーオン・フラックス』とかああいうの出なくていいからw こういった美しい役を今後もやって頂きたい・・・ってこの映画からもう10年か・・・w

そんな主人公二人を差し置いてやはり最も輝いていたのはマイケル・ケイン。『ダークナイト』のアルフレッド演じてるおじいちゃんと言えばわかりますかね。 彼は本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

決して目立つ演技をしているわけではなく、さすがの演技といったところです。 しかし彼から溢れ出る信念や優しさ、これを言葉や大げさな感情表現ではなく伝えられるのはさすが名優だからこそなせる技といったところでしょう。

あのおやすみの挨拶いいですねぇ。

Goodnight, you princes of Maine, you kings of New England. 

もう80歳を超えていらっしゃいますが、いつまでも活躍されることを願うばかりです。



あらゆる場面で今でも使われる名曲スコア
『サイダーハウス・ルール』の映画を知らない方でも、本作の音楽を知っている方は多いかもしれません。

 動画貼っておきましょうか。


ホントこれはとんでもない名曲ですよね。映画も大好きですが、音楽だけ聴くのも大好きです。作曲されたのはレイチェル・ポートマンという女性の方です。ラッセ・ハルストレム監督作品では「ショコラ」も彼女が担当していますね。

優しく、美しく、耳に残る旋律、何度も何度も聴きたくなります。このテーマ曲以外の他のスコアも時に優しく、時に重く、緩急つけていて見事ですだからこそ思うのです。

なぜこれでアカデミー賞作曲賞獲れなかったのかとw




本作から溢れ出る優しさ 
本作ではいくつも嘘が出てきます。1番大きな嘘が最後に明かされますが、何かわかった瞬間嬉しくなっちゃいましたね。そんな優しさに溢れる嘘でした。本作は色んな嘘に溢れていると同時に色んな優しさに溢れています。それら優しさは大げさでなくちょっとしたことが多いです。だからこそ最初みた時に意識的に何か思ったりはしないのですが、何となくそれは心で感じているので見た後に心地よい気持ちになります。

この言葉で詳細に説明できないもどかしさこそ本作の魅力かもしれないです。 

是非ご覧頂きたい作品です。


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