映画『ブラックホークダウン』紹介、戦争系映画ではこれが最も素晴らしいと思う![ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『ブラックホークダウン』紹介、戦争系映画ではこれが最も素晴らしいと思う![ネタバレなし]


『ブラックホーク・ダウン』基本情報

タイトル
=ブラックホーク・ダウン

原題
=BLACK HAWK DOWN

監督
=リドリー・スコット

出演
=ジョシュ・ハートネット
=エリック・バナ
=ウィリアム・フィクナー
=トム・サイズモア
=ユアン・マクレガー

ストーリー
1993年、泥沼化する内戦を鎮圧するためソマリアに兵士を派遣したアメリカ。なかなか収束しない内戦に焦り始めたクリントン政権は、10月3日、ついに敵対するアディード政権の本拠地への奇襲作戦を決行するため特殊部隊を投入した。作戦はものの30分で終了するはずだった。しかし、敵の思わぬ逆襲に遭い、ヘリコプター“ブラックホーク”が撃墜されてしまう。敵の最前線で孤立する兵士たち。やがて、救助に向かった2機目も撃墜されてしまう。その間にも、兵士たちは必死に応戦するが、一人また一人と仲間が倒れていく……。


予告編



この衝撃はいつまでも忘れない
戦争映画という1つのジャンルが確立するほど気づけば戦争を題材とした映画は増えてきました。 『プラトーン』や『地獄の黙示録』、『プライベート・ライアン』や『シン・レッド・ライン』、 近年ではクリント・イーストウッド2部作『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』など。 

戦争映画は題材がヘヴィー、かつ予算がかかるためそれなりの監督が担当、よって大駄作になることはよく考えるとない気がしますね。『パールハーバー』くらいでしょうか?w 

そんな数多くの戦争を題材とした映画の中で、私が最も繰り返し見ているのが『ブラックホークダウン』。初見時の衝撃は忘れませんし、何度見ても辛い作品です。しかし徹底された戦争映画は魅力に溢れています。

傑作としか言いようがありません。




戦争映画の最高傑作
監督はリドリー・スコット(『グラディエーター』『アメリカン・ギャングスター』) 
×
プロデューサーはジェリー・ブラッカイマー(『パイレーツ・オブ・カリビアン』『アルマゲドン』)  。

組むべくして組んだ二人のタッグ、見事でした。

映画の構造はとてもシンプル。冒頭30分は米軍基地内での兵士のやり取り、そこから2時間弱ひたすら戦闘、ラストはさらりと幕引き。本当にこれだけです。 

戦闘シーン中に兵士がフラッシュバックで家族を思い出したりなどというドラマ演出は一切ありません。これだけ大胆な構造で傑作に見せてしまうのはやはりリドリー・スコットの手腕でしょうね。 

ではなぜこのシンプルな構造にも関わらずこの映画は多くの映画ファンに戦争映画の傑作と言われるのでしょうか。 

ポイントはむしろその徹底した戦闘シーンの描き方でしょう。最初の30分は言うならば説明演出。後半がひたすら戦闘シーンなのでその前に誰が上司で誰が部下か。また米軍内での違い、デルタフォースとレンジャー部隊などを米軍基地内での平和なやり取りから観客にわからせます。 

主役は一応ジョシュ・ハートネットですが、ユアン・マクレガー、エリック・バナ、ウィリアム・フィクトナー、トム・サイズモアらも実質主役でしょうね。アンサンブル的なストーリーです。 

よって1人の男が見た戦争の真実などではなく、「アメリカ兵が見た奇襲攻撃の失敗と生還」という視点でしょう。この点が『硫黄島からの手紙』や『プライベート・ライアン』とは異なりますね。この映画は戦争という状況下の男たちの物語ではないのです。これは戦争の映画なのです。 

視点はアメリカ側からのみ。よって劇中2時間弱に及ぶ市街戦は米軍の前に敵が沸くように襲ってくるまるで戦争のゲームを体験している錯覚に陥ります。倒したと思ったらまた襲ってくるというくり返しです。それらは容赦無いリアリティーある演出で描かれます。 

血は吹き出ますし、腕は吹っ飛びますし、傷口も容赦無く描写されています。でもこれは必要な演出だったと思います。なぜならこの映画は「戦争の映画」なのですから。 

では人間ドラマがゼロかというとそうではないんですよね。何かが心に残るんです。それは今作と他の戦争映画における兵士の状況によるのではないかなと思います。

例えば『プライベート・ライアン』、例えば『硫黄島からの手紙』。どちらも危険な戦地での任務であるということは兵士はわかっているはずです。

プライベート・ライアン』では実際オープニングのノルマンディー上陸作戦で多くの兵士が亡くなっていき、 その後の物語には死が付きまとっています。 

『硫黄島からの手紙』では栗林中将の「生きて祖国の地を踏めると思うな」的な趣旨の台詞があります。そこには兵士の覚悟があります。

しかし『ブラックホークダウン』では想定外な市街戦に兵士たちは巻き込まれるのです。30分で終わる奇襲作戦でそれなりに困難ではあるものの徹夜の市街戦や仲間の死などは想定せずに出撃しているはずです。

それが想定外のブラックホークダウンの墜落から市街戦への突入。次々に仲間が倒れていく。どうしたらいいのかわからない状況。昨日の夜まで笑ったりしていた仲間たちが生死を彷徨う市街戦に望みもせず突入してしまうのです。だからこそストレートな人間ドラマがそこから感じ取れるのです。 

家族がどうとかではなく、仲間が撃たれ死んでしまうというただそれだけの状況。そんなストレートな悲劇が繰り返されるのです。でも悲しみに暮れている暇はない。

市街戦の中で仲間の足が撃たれ、止血をしなければならなくなった時、麻酔がないので負傷した仲間を2人がかりで抑えつけ、もう1人が足の傷口に指を突っ込んで止血するといった想像を絶するような痛々しい描写すら出ていきますが、これもただその状況になってしまったからこそやるしかない、生きるためにはこれしかない状況下での一種の人間ドラマなのです。こういった死の瀬戸際の小さな人間ドラマが積み重ねられていく2時間弱です。 



Leave no man behind.
司令官の台詞にもあり、映画のポスターにもキャッチフレーズで使われ、映画のメインテーマのタイトルでもある1つのフレーズが全兵士の心に通っているのが 映画をより熱くした要因かもしれません。 

それは "Leave no man behind. "

例え仲間が死んでも誰一人そこに置いてくるなということです。だから墜落でヘリに挟み込まれて死んでいる兵士も意地でも助け出す。銃撃で腕ごと落ちた仲間の腕も戦地に残さずポケットに入れて持ち帰る。  

それら"Leave no man behind"の精神が全編に感じられます。最初はただの奇襲作戦だった。気づいたときにはみんなで市街戦から抜け出すぞという団結の元に生まれた数々の物語を 我々は目撃することになったのでした。 

アメリカの敗北を描いているのでアメリカ的に印象の良くない映画とも思われますが、ここまで書いていきたおわかりだと思いますが、アメリカの団結を描いているのでよくも悪くもこれもアメリカ万歳の映画なのかもしれませんね。 

そんなこんなで市街戦から抜け出しますが、映画を見てる我々は圧倒されるだけで、意識しないと人間ドラマによる感動は感じないでしょう。しかしそれらを感じさせてくれるのがラスト5分です。 

この映画で一貫して弱さを見せないエリック・バナ演じるフート。彼は市街戦から抜けて基地へ戻ってきてもすぐにまた市街へ戻ろうとします。そんなタフな彼が主人公であるジョシュ・ハートネット演じるエヴァーズマンに最後に発する台詞。これがこの映画の全てを集約させたと思います。 

よくこう言われる。  

何で戦うんだ?  

戦争中毒なのか?  

俺は何も答えない。  

連中にはわからないのさ。  

なぜ俺達が戦うか。  

俺達は仲間のために戦うんだ。  

そうとも。  

それだけさ。


今回の奇襲作戦はすぐに失敗してその後の市街戦は仲間を救い出すために行われたもの。それがこの台詞でわかりますね。そして最後の最後のシーンのエヴァーズマンの台詞が心を打ちます。 


英雄になろうなんて誰も思ってない。結果としてそうなる。


目を逸らしたくなるような描写も入れつつも圧倒的な映像で我々を圧倒させてくれたこの映画。アカデミー賞は音響賞と編集賞だけでしたが、この映画はアカデミー賞作品賞に匹敵する映画でしょう。賞が全てではありませんが公開年が悪かったですね。 

私的にも3本指に入る傑作『ビューティフルマインド』がアカデミー賞を受賞した年。今作監督のリドリー・スコット監督作品は前年度に『グラディエーター』で作品賞を受賞。プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは娯楽映画のプロデューサーなのでアカデミーからは好かれていない。 などなど。 

あらゆる理由でアカデミー賞は獲れませんでしたが、 後にも先にも戦争映画といえば「ブラックホークダウン」。 という衝撃を与えてくれました。




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