『それでも夜は明ける』感想、アメリカの黒歴史を痛烈に描く傑作。悲しさを打ち消すのは小さな希望[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『それでも夜は明ける』感想、アメリカの黒歴史を痛烈に描く傑作。悲しさを打ち消すのは小さな希望[ネタバレなし]

祝!アカデミー賞作品賞受賞!


私的満足度(5つ星評価)

★★★★=星4=素晴らしい作品でした!

【評価の参考値】
★★★★★+・・・満点以上の個人的超傑作!
★★★★★・・・・お見事!これは傑作です!
★★★★・・・・・素晴らしい作品でした!
★★★・・・・・・普通に楽しめました。←平均評価
★★・・・・・・・ん〜イマイチ乗れませんでした。
★・・・・・・・・ダメなもんはダメ!クソ!
※通知表のような5段階評価で、個人的にツボった作品は例外で5+にしています。
ちなみに私は映画は楽しむ&褒めるスタンスなので評価相当甘いです。

WATCHAでレビューをチェック&書いてみる







『それでも夜は明ける』基本情報

タイトル
=それでも夜は明ける

原題
=12Years a Slave

日本公開日
=2014年3月7日

監督
=スティーブ・マックイーン

出演
=キウェテル・イジョフォー
=マイケル・ファスベンダー
=ベネディクト・カンバーバッチ
=ポール・ダノ
=ポール・ジアマッティ
=ルピタ・ニョンゴ
=サラ・ポールソン
=ブラッド・ピット

ストーリー
南北戦争以前の1841年、自由の身でニューヨークに生まれた黒人ソロモンが奴隷制度が根強く残る南部ルイジアナに売り飛ばされ3か所の綿花農園で奴隷として12年間の月日を過ごすことになった実話

予告編


悲しさよりも"生きる力"が全面に

本作はソロモン・ノースアップ著作の自伝が原作となっています。つまり実話です。
南北戦争以前の1841年にソロモン自由の身でニューヨークに生まれました。黒人が奴隷として扱われる時代ですが自由の身を持つ人もいたのです。(タランティーノのジャンゴでも触れられてますね)

自由の身で博識高い音楽家のソロモンでしたがある日誘拐によって奴隷制度が根強く残る南部ルイジアナに売り飛ばされてしまいます。身分を示すものを携帯していない以上黒人である=奴隷として扱われます。増してルイジアナです。

そして彼は自由の身から奴隷へと落ち、そこで12年もの苦節を味わうことに…。その模様が描かれます。彼は基本的に綿花農園の奴隷でした。その12年がとても苦しく痛々しく描かれていきますが、そこに宿るのは生きる希望、もう一度自由の身に戻りたいという希望でありました。

スティーブ・マックイーン監督の前作『シェイム』はセックス依存症を描いており、傑作ですがトラウマ的苦痛を伴う作品でした。それ故に本作は傑作と信じつつもかなり肩に力が入った状態で挑んだのですが、辛さの中の希望を私は感じました。

黒人奴隷制度の残虐さをこれでもかと見せつける本作。増して生まれつきの奴隷ではなく自由人から奴隷へ転落という悲劇。この辺りスティーブ・マックイーン監督、本気出しまくりです。それ故にかなり痛々しく心にも突き刺さります。

『ジャンゴ 許されざる者』ではそこまで非道に描かれていなかった奴隷制。しかしそれでも奴隷ファイトなどはなかなかきつい描写でした。本作はその比ではありません。白人の態度や拷問紛いのムチ打ちなど…辛い描写が満載でした。

それをあざ笑うかのようなルイジアナの美しさが皮肉の拍車をかけます。美しい映像がここまで悲しくなる映画も珍しいです。(褒め言葉です)

しかしその絶望の中、主人公のソロモンの希望を持つことを、諦めることをしない不屈の精神が私たちに勇気を与えてくれます。決して大げさではなく、内に秘めた希望が静かに静かに私たちに伝わってきます。

ソロモンを演じたキウェテル・イジョフォーの静かなる熱演、とにかく素晴らしい。そして新進女優ルピタ・ニョンゴがこれまた光ります。この方イェール大学出身なのですね。

そして脇を固める名優陣がアンサンブル映画的にいい味を出してます。
マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ジアマッティ、ポール・ダノ、クヮヴェンジャネ・ウォレス、ブラッド・ピット…。

各俳優陣の魅力を上げたら枚挙に暇がないありません。
特に凄い、いや凄まじかったのがマイケル・ファスベンダーとポール・ダノ。

マイケル・ファスベンダーといえば毎回スティーブ・マックイーン監督の映画に出てますが今回は残虐な農園主としてその力を存分に発揮しています。ポール・ダノと言えば『リトル・ミス・サンシャイン』のお兄ちゃん。あのお兄ちゃんも成長し残虐な白人に…。鬼気迫りまくりの二人でありました。

黒人奴隷という暗黒の歴史を直視したスティーブ・マックイーンの意思、そこには映像美やハンス・ジマーの音楽が映画的魅力を格段に上げ、傑作であるとしか言えないレベルに本作を押し上げます。

文句無しの大傑作だと思いました。

日本で戦争関連の映画は時として大ヒットすることがあります。『硫黄島からの手紙』など。本作はアメリカの歴史的悲劇の1つである黒人奴隷制度を描いている以上そういった類で評価される作品なのだと思います。

つまり、作品は悲劇を含むので見ていて決して楽しいものではありません。しかし"見るべき"映画であり、歴史の一部を直視する意味、意義を持ち合わせています。日本人としてこの映画を見た時とアメリカ人としてこの映画を見た時、感じるものが全く違うと思います。

よってアカデミー賞を受賞しても、日本人が同じようにこの映画を評価するとは思いません。ただドラマ性は非常に優れている完成度の作品ではありますので映画好きな方や歴史好きな方、シリアスな映画が好きな方は必見の1本かなとも思います。

良い映画を早い段階で見れて良かったです。おしまい。


関連作品

スティーブ・マックイーン監督作品


キウェテル・イジョフォー出演作品


マイケル・ファスベンダー出演作品


ベネディクト・カンバーバッチ出演作品


ポール・ダノ出演作品


ブラッド・ピット出演作品



written by shuhei