映画『レッドクリフ Part Ⅰ』『レッドクリフ PartⅡ』『The Red Cliff』の3つを併せて紹介、それぞれ良さと味がある![ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『レッドクリフ Part Ⅰ』『レッドクリフ PartⅡ』『The Red Cliff』の3つを併せて紹介、それぞれ良さと味がある![ネタバレなし]


『レッドクリフ』 、日本でも二部作合わせて100億円以上の大ヒットとなりました。
ご存知の方も多いと思います。今日はその二部作と欧米版の三つについてご紹介します。

レッドクリフには二部作バージョンと一本バージョンが存在する!
日本ではPart1とPart2が公開されましたが、アメリカやフランスではこの二本を一本に凝縮したバージョンが公開されました。二時間半一本なので半分はカットというバージョンです。

日本では公開された二部作は合計で五時間を超えるが故に場面によって間延びする箇所もありました。しかし人物描写が丁寧に掘り下げられ、戦闘シーンも迫力満点のドラマティックな仕上がりとなっており、この二部作は繰り返し見て魅力を噛み締めることができるなといつも思います。

逆にスピーディーに"こういうことが歴史上あった"と勢いで見せるのが欧米版の『レッドクリフ』。半分カットなので二部作知ってると、あのシーンもこのシーンも無いととんでもない違和感を感じますが決して変な切り方はせず赤壁の戦いをクライマックスにその前を綺麗にカットした作品となっています。

欧米版もストリーミングや輸入DVDで鑑賞できるわけですが、せっかくなので二部作を見ましょう。そして今回の記事はここからはその二部作について語っていきたいと思います。


魅力溢れる人物たち
本作に出てくる人物はみな人間味溢れています。俳優陣がベストを尽くしてるのでそれが鮮明に伝わってきます。

まず主人公の周瑜。トニー・レオンが演じました。元々チョウ・ユンファがキャスティングされていましたがダメになり、トニー・レオンが自ら立候補したそうです。

チョウ・ユンファが演じる場合の周瑜像はもっと冷徹な感じだったそうですが、トニー・レオンが演じた周瑜は優しさと信念に溢れる人間味ある人物となっていました。 素晴らしかったですね。
トニー・レオン演じる周喩


続いて諸葛孔明。金城武が演じていますが、このハマりっぷり何なんでしょうかw諸葛孔明自体が異色の人物なので凄く独特な雰囲気なのですがそれを極めていましたね。諸葛孔明は軍師ではありますが自ら戦闘には出ません。

だからこそ映画の中で一人だけ余裕があるというか、良い意味でぶっ飛んでるんですよね。それでいて戦い方等をしっかり提示したり同盟作戦を率いたりと大活躍。実際の人物との考証は置いておいて、映画における人物として大いに輝く演技だったなぁと思います。

特に二作目の10万本の矢を調達するシーンと風を読むシーンは鳥肌ものでした。ラストシーンの帽子のお洒落具合には笑いましたw

最強のハマりっぷりだった金城武演じる諸葛孔明


さてこんな感じで上げていくといつまで経っても終わらなそうなのでここからはちょっと巻いていきましょうw

次に実質悪役の曹操。もうこの嫌な感じたまりませんね。制圧することが一応の目的ですが、個人的な野望は周瑜の妻小喬を我物にすること。一人の女のために赤壁の戦いをするといっても過言ではありません。

そんな曹操、とにかく冷徹で自分の私利私欲が出まくり。嫌な感じ全開なのは演技が素晴らしかったからこそ感じるもの。お見事でありました。
非道で冷徹な曹操



続いて小喬。 いやぁ本当に美しい。リン・チーリンのキャスティングには賛否ありましたが、絶世の美女ということでいいキャスティングだったかと。

トニー・レオン演じる周瑜が優しさに溢れていたのでそれに吊り合う妻ということですが、良かったです。夫を支えることをしっかりとしつつも、先の戦いへの不安も見せる繊細な役どころ。

女優本格デビューが本作でしたが、繊細な役目をしっかりと果たしていたなと思います。
絶世の美女、小喬



続きまして趙雲。 趙雲は実際ここまで三国志で前面に出てないっぽい?ということはジョン・ウーは趙雲が好きなのかな?w無敵の戦闘能力で、いちいちカッコよかったですね。

敵に囲まれても見事に倒してしまうその強さ。一作目の大活躍、二作目のピンポイント最強活躍、やはりジョン・ウー監督、趙雲大好きですねw
史実以上に大活躍の趙雲


続いて関羽と張飛。 この二人はあまりにも対照的な性格ですが二人共強い!関羽は冷静ながらも熱い魂を持って敵に立向かっていきます。

 張飛は感情で動きますがそれが強くてもはや笑えるレベルw 敵に身体一つで体当たりしていくとかw 実際あったのかこれw ないとしても張飛の体当たりの活躍は映画を大いに盛り上げるもので素晴らしかったと思います。大声出した時劇場うるさかったなw
勇猛果敢な関羽
最強で笑いもくれる張飛


続いて孫権。彼が映画を通して最も成長したのではないでしょうか。最初は若く少し弱い印象があり、虎のシーンを通して成長に転じます。その複雑な心情をチャン・チェンは見事に演じていたと思います。二作目のクライマックスも見事でした。
最も成長した孫権



そんな孫権の妹は尚香。演じたのはヴィッキー・チャオ。言うならばおてんば娘。しかし最後は見事に活躍をして見せました。一作目ではゆるいポジション。劉備気絶させたのは笑いましたw二作目ではとても重要な役どころを演じており、最後はとても悲しかったです。
孫権の妹、尚香


お次は劉備。人望厚い劉備。 言葉で語らずとも溢れるその人望、これはキャスティングミスると台無しでしたが、良かったですね。 全面に出ていたわけではないですが、心に残る演技でした。でも気絶は笑ったw
人望厚い劉備



上記の人物は多少の演出はあれど実在の人物です。そんな中架空の人物として投入されたのが甘興。元海賊でクセモノなんですが、信念があり戦いに強い実は良い人タイプの人物でした。特に二作目の最後は涙ものでした。

演じたのは中村獅童。いやぁ良かった良かった。『硫黄島からの手紙』の役柄があまり好かれるタイプではなく、竹内結子との離婚や飲酒運転などもあったので、 あんま好きではありませんでしたが見直しましたw すいません上から目線でw 認めてるので許してくださいw
中村獅童演じる架空の人物甘興


この辺りが主要人物ですかね、魅力的な人物がたくさん出ているので、 彼らの人物像等を掘り下げて見ていくだけでも十分楽しめますよ。


魅力は隅から隅まで
さてレッドクリフは二部作合わせて100億円が投じられただけあって大迫力の映像が魅力的です。 それに見事にマッチした音楽も見事です。明らかにCG描写だろうという部分もありますが、川を行く曹操軍の無数の船の上空からの映像などは圧巻でした。

また何と言っても最後の戦闘シーン! 赤壁の戦い自体は二作目なんですがこの一の陸戦もかなり凄まじいです。これを映像化できただけでも本作の価値はあると思います。それにたどり着くまで長い映画なんですけどねw

そして音楽は2部作合わせて文句なしに素晴らしい! 作曲は日本人の岩代太郎。 『蝉しぐれ』や『春の雪』、大河ドラマだと『義経』なども彼が作曲してますね。 レッドクリフのテーマ曲は有名になりました。 歴史映画だけれどもメロディーラインが強調されすぐぬ頭に残る音楽、これはジョン・ウーからのリクエストもあったようですが見事に応えたなぁと思いました。 素晴らしい!

レッドクリフはストーリーを進めるための台詞以外に格言的な台詞がたくさん出てきますね。これは映画を観て堪能していただきたいですね。抜粋して名言ということではなくて、そのシーンそのシーンでその台詞を喋るからこそ名言に成り得たという箇所がいくつもあります。

あとは三国志の話だけあって、文化的な儀礼というかそういったものも見ていて良かったです。普段ハリウッド映画ばかり観ている身としてはどこも魅力溢れる素晴らしい台詞に溢れていました。賛否割れる映画ですがジョン・ウー監督だからこそ各シーンが熱いものに仕上がったのではないかと思いますね。


そして二作目、赤壁の戦いへ
一作目のクライマックス、九官八掛の陣による見事な戦闘シーンは本当に素晴らしく、赤壁の戦いに入る前なのに大満足になるほどでした。しかしやはりこの二部作最大の見どころは何と言っても二作目の赤壁の戦いでしょう。

戦い自体は映画の後半ですが、前半も見所満載。特に周瑜と孔明が敵にも味方にも仕掛けた巧妙な罠の数々は見事でしたね。正直赤壁の戦いまでは二作通してテンポの悪い部分もありますが、赤壁の戦いの直前からラストまでは一気に突っ走ります。ここにはテンポの悪さはありませんでした。よって後半1時間は大満足であり、最後はすっきりと映画を見終えることが出来ました。

映画全体を振り返ってみます。映画前半の疫病蔓延のシーン、そして赤壁の戦いのシーンと、 本作では数えきれない兵士が命を落としていきました。あまりにも膨大な数の死を私たちは目の当たりにします。

兵士はゲームのように次から次へと死んでいくのでその瞬間に命の尊さを感じることはありませんでした。しかし疫病のシーンのそれを見た同盟軍の主要人物たちの苦悩の表情。そして映画の最後、決着が付いてから映る亡くなった兵士たちの安らかな顔、そこには明確な答えこそ出ずとも命とは尊いもの。

来世があっても命落としたらこの世にはもういれないんだなという儚さが感じられました。主要人物は生き残る人物が多かったですが、無名の兵士たちの死んだ表情からそれらを感じました。

また某主要人物が弓にやられ、最後は爆死しましたが、その死を周瑜から聞いた際の趙雲の一言。 「無駄にはしません。」こういった台詞にも命に対する尊さを感じましたね。

遺書を破り捨てるシーンなんかもそうですし、命という考えて答えが出なくとも 大きなテーマについて考えさせられたなと思いました。ジョン・ウーの映画には必ず鳩が出てきます。 鳩は平和の象徴。ジョン・ウーの平和への願いを感じることができました。


やはり諸葛孔明!
赤壁の戦いの場には諸葛孔明はいませんでした。 Part1のレビューでも書きましたが諸葛孔明が軍師であり兵士ではないからです。そんな最大の見せ場にいないのに本作でも見事に存在感を見せてましたね。

実際の諸葛孔明はもっと真面目でいい意味でつまらない人物だったようですが、 金城武演じる諸葛孔明は少しユーモアがあり、それでいて頭脳明晰といった感じでした。 だからこそ短時間でも存在感を発揮できたんでしょうね。

諸葛孔明本作の大きな見せ場は10万本の矢を集めるところと、東風を予知し見事に的中させたところでしょう。10万本の矢を一瞬にして集めるあの奇策。お見事でした! また東風の予知もお見事。

三国志だと東風を呼ぶという表現のようですが、本作では天気を見事に当てたという感じですね。でもあのピンポイントで風が吹き始めたあのシーンは鳥肌が立ちましたね。そして最後に「やるべきことはやりました」。 いやぁカッコいいですね!

映画の最後の場面はオシャレして登場w 最後は出産を手伝った馬を引き取ります。小喬は「萌々を戦場に出さないでね。」といい、 孔明は「私が出産を手伝った馬ですから。」と言います。

それだといいのですが、孔明はこの赤壁の戦い後も軍師として大活躍ですから どうせ戦馬にしたんじゃないのとちょっと苦笑いで思ったりもwww 兎にも角にも諸葛孔明、お見事でした。 金城武に拍手!

教科書で三行の出来事に感動し、魂が震える
本作は宣伝の仕方が悪かったのもありますが、 これどう見ても"三国志完全映画化"ではないです。だからこそ『正史』や『演義』といった三国志関連の話と照らしあわせて批判する必要はないと思います。

そもそもそれに沿うつもりならば、オリジナルキャラクターやサイドストーリーは付けないと思います。それを付けている時点で本作はレッドクリフであり、三国志ではないのです。実際映画の宣伝ではこう言われてましたよね。

 "John Woo's Red Cliff" 。

これはジョン・ウー監督のレッドクリフという作品なわけです。なのでその時代の話なんだなという観点のみ抑え、現代に作られたエンターテイメント作品として捉えると楽しめると思います。せっかくの映画ですからね、楽しんだもの勝ちですよ。 イライラ2時間半見るよりものめり込んで感動して2時間半見たほうが良い映画体験になると思いますし。

1800年代のほんの少しの時期を映画化したレッドクリフ。超大作ですが、冷静に振り返るとこの超大作は歴史のほんの片隅でしかないんですよね。実際世界史の勉強で赤壁の戦いとか教科書で三行くらいでしたもんね。

それがこれだけ圧倒的なドラマになるのです。こんなことからもわかる通り、人類が歩んだ歴史には数えきれないドラマがありました。世界史の教科書の2~3行でこれですもん。

良いことも悪いこともあり、未だに紛争のなくならない人間の世界。しかしそれでも歴史は刻まれていくのです。今この時もきっと。そんなことも考えてみたり。レッドクリフ2部作は好きな私からしてもテンポの悪さは否めません。

しかし数々のドラマティックなエピソードと素晴らしい台詞、演技、映像、音楽、 それらに感動し繰り返し観ているのも事実。 先日facebookのマーク・ザッカーバーグの本読んでたんですが、 そこに書いてあった一説を本作に照らしあわせてみたり。

『しでかした』は『しなかった』に勝る。 

作ったことに意義のある『レッドクリフ』2部作だったと思います。 謝謝。



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