『ワールド・ウォーZ』感想、なぜか日本では隠されているがこれはゾンビ映画だ!そしてこれは傑作だ!【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

『ワールド・ウォーZ』感想、なぜか日本では隠されているがこれはゾンビ映画だ!そしてこれは傑作だ!【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報
タイトル
=『ワールド・ウォーZ』

原題
="World War Z"

監督
=マーク・フォスター

出演
=ブラッド・ピット
=ミレイユ・イーノス
=ダニエラ・ケルテス
=ファナ・モコエナ
=アビゲイル・ハーグローブ

ストーリー
突如発生した謎のウィルスが瞬く間に世界中へと広がり、各国の政府や軍隊が崩壊状態に陥る。元国連捜査官で、伝染病の調査や紛争国での調停役を務めた経験をもつジェリーは、旧知の仲の国連事務次官ティエリーに呼び出され、ワクチン開発の情報収集のため各国をめぐる調査隊に同行するよう依頼される。ジェリーは妻と娘2人を安全な国連指揮艦の空母にかくまってもらうことを条件に依頼を引き受け、ウィルスの謎を解明するため混乱する世界へ旅立つ。

予告編



史上最大のゾンビ数!まさかの大傑作!

"量より質"とは様々なフィールドで唱えられるもの。しかし、圧倒的な量を質を持って成せばその満足度は文句なしに上がるもの。『ワールド・ウォーZ』はそれを見事に証明した映画でありました。娯楽映画として、家族の物語として、パニック映画として、そしてゾンビ映画として、大満足の一本でありました。

8月10日に公開される本作。先日のブラッド・ピット来日のジャパン・プレミアで先に鑑賞してきました。ざっと感想をまとめると上記のようになります。

ゾンビ化した人間に噛まれると数秒でゾンビ化してしまう病気(?)が蔓延し、世界がパニックに陥る。国連職員であるブラピ演じる主人公がその原因を突き止め解決の道筋を見つける。これが『ワールド・ウォーZ』。

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予告編を観た時から私はこの映画は大失敗映画になると思ってました。理由は簡単で、監督がマーク・フォスターだったからです。マーク・フォスターと言えば『ネバーランド』や『君のためなら千回でも』といった人間ドラマの傑作を生み出した名監督。

同時に『007 慰めの報酬』で近年では低評価の007の監督でもあります。私は『007 慰めの報酬』が好きではありません。『007 カジノ・ロワイヤル』と『007 スカイフォール』の傑作に挟まれた現在、その気持ちは強くなるほどです。

つまりマーク・フォスターの人間ドラマ映画は好きだけれど、彼の超大作は嫌いなのです。だから今回は超大作であり、固定概念で最初から期待なんてできなかったというわけです。しかし、これは大間違えでした。固定概念は人の意志を揺らがすと言いますがまさにその通り。反省しきりです。


圧倒的なゾンビの数、しかし人間の延長線で感染症的なゾンビであり、身体能力の人間のまま、なのでゾンビ1人映ったところで目を背けるような残虐なビジュアルではありません。(まあそれでもゾンビなのである程度ゾンビですがw)

しかしこのゾンビが数十、数百、数千、いや数万・数十万の大群衆で襲い掛かってくる様・・・この恐怖半端ないです。特にパレスチナのシーンあまりに凄すぎてぽかーんとするしかない大迫力・・・

現実世界でゾンビ化してしまった人間が大量に増えていき、人間として生き残ってる人々が解決の糸口を探っていく物語、"地に足付いた現実世界で起きたら?"という設定で進む物語故に数だけゾンビ映画になってないのも凄く良かったです。


そういったパニック・アクション・ゾンビ性を持ちつつ、それを家族愛の物語でサンドした本作。国連職員である主人公ジェリーはなぜ避難できた空母からわざわざ危険の地へ任務へ出向くのか?それはゾンビ化する世界に歯止めをかけなければ家族すら将来死してしまうからなのです。つまり任務の目的は世界平和でありながらも家族を守るための行動なのです。素晴らしいではありませんか。

一連の出来事の末、一定の結末を迎えた本作。
後述しますがラストシーンは当初の予定と異なっているため若干の地味さは正直あります。しかし物語としては地に足ついた着地点です。

ゾンビへの最後の対応に「ゾンビ云えども人間なのだからあまりに残虐すぎ」との否定意見もあるようですし、完璧な平和は訪れていません。これ、どうなるかわかりませんが続編を意識したラストだと私は思ってます。幸いアメリカで大ヒットしたので続編計画にはGoサインが出たようです。

ストーリーとして着地点はありますが、続きも気になるラスト、続編を楽しみにしながら映画的満足度も極上。グロくもない。この夏オススメの映画の一本であります。

3Dと2Dありますが、3D絶対推奨映画ではありません。お好きな方でご鑑賞ください。


なぜ宣伝でゾンビを隠す?

劇場予告編はまだしもテレビCM等ではゾンビ映画であることを隠して宣伝がされている本作。良くないですねこういうのは。

映画評論家の町山智浩さんも苦言を呈してますね。
町山智浩氏が観客を騙す日本の映画宣伝に苦言

アメリカだとゾンビ映画と大々的に宣伝すればむしろお客がくるようです。しかし日本は逆。敬遠してしまう方も多いようです。それら事象からもゾンビ映画であることを隠しているのでしょう。しかしこれは良いことなのでしょうか?今思えば『アイ・アム・レジェンド』もそうでした。終末ものかと思ったらゾンビ映画。

私はあの映画の感想で最初に思った言葉は「騙された」でした。映画の宣伝を100信じたり、期待しすぎて失望するのは良くないですが本質を隠してしまっては映画が正当な評価を受けなくなります。

映画が公開されたら各所『ワールド・ウォーZ』のレビューには間違いなく「終末もの、家族ものかと思ったらゾンビ映画だった。騙された。」とのレビューが付きます。そのような低評価レビューは映画の正当な評価ではないのにレビューサイトにおいて映画に傷を付けるのです。これ製作者どう思いますかね?

映画は娯楽であると同時に産業ですから利益が無ければいけません。ハリウッド映画である以上ある程度ノルマもきていることでしょう。ただ騙して集める日本のこの手法はどうも腑に落ちないですよね。


最初の感想に書いたように本作、グロくないんです。ゾンビの数はおびただしいですがR指定もかかってないですし、ほとんど血も流れません。というか元々用意されていたラストシーンが残虐すぎたので撮り直してあのようなラストになったのです。

誰でも安心して観ることができる配慮がなされていて、娯楽性もあり、家族愛もある。
そのまんま本作の魅力を伝えれば十分なのに・・・。

仕方ないので微力ながら私はSNSとブログで本作がゾンビ映画であることを大にして叫んでおきたいと思いますw微力ながら。


本作のゾンビは何の象徴か?

『桐島、部活やめるってよ』の鑑賞日記でも書きましたが、ゾンビというのは世相の何かの象徴として描かれることが多いです。ただゾンビを登場させて娯楽要素を持たせるだけには留まらないということです。

私は申し訳ないながらゾンビ映画にそこまで詳しくありませんのでゾンビ映画総論はできないわけですが、本作に限って言えば"人種"や"感染病"に置き換えることができると思いました。


イスラエル-パレスチナ地区に実在する数百キロに渡る分離壁。世界情勢ある程度わかる方はご存知かと思いますが、イスラエルの言い分としては自爆テロの治安防止や領土の明確な証明のためのものです。

その壁を今作ではゾンビが越えてきます。つまり壁で遮られた先の世界へ反乱を起こすのです。映画のようにゾンビが重なって越えてくることはなくても、反乱が起き紛争が激しくなることは当然想定されるべき懸案事項であります。


感染症もそうでしょう。あまりに広まった感染症は場合によっては手が付けられなくなり、その患者たちは隔離されたり放置されたりする可能性があります。現在は起きていませんがその患者たちへの医学的対処法が無く、かつ感染速度が早い場合は非人道的な方法で患者たちを殺すことだって考えられない話ではありません。


そういった現代社会に潜む危機へ置き換えることができる『ワールド・ウォーZ』で描かれるパニック。そう考えると娯楽要素満載で家族愛に心打たれると同時に怖くなってくる映画でもあります。

そう思うことは同時に映画がそれだけの力を持った傑作であるとも思うわけであります。


written by shuhei