ハードな映画体験…必死に意図を理解しようと努めた『トゥ・ザ・ワンダー』奮闘記…【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

ハードな映画体験…必死に意図を理解しようと努めた『トゥ・ザ・ワンダー』奮闘記…【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]


感想の前に その1:まずはタイトルの意味を考える

フランスにある世界遺産であり人気観光地であるモン・サン・ミッシェル。
英語でももちろんMont-Saint-Michel and its Bayなのですが別名があります。

ずばり、
"The Wonder of the Western World"
つまり"西洋の驚異"です。

ちなみにフランス語で"La Merveille de l'Occident"(ラ・メルヴェイユ・ドキシダン)。
これも後述するので頭に入れといてください。

"The Wonder of the Western World"
→"To The Wonder of the Western World"
 →"To The Wonder"

これが映画のタイトルになります。

映画においてパリからモン・サン・ミッシェルへ行くシーンから映画がスタート。
そして映画の行き着く先もある意味で、モン・サン・ミッシェル。

"モン・サン・ミッシェルへ"的な意味のあるタイトルなのです。

モン・サン・ミッシェルは何世紀に渡って増改築が繰り返されました。
建物の建築様式はゴチック式からロマネスク様式と様々なものが入り交じっています。
1203年から1228年にかけて建設された"La Merveille"(ラ・メルヴェイユ)と呼ばれる箇所が存在します。

これ冒頭書いた"The Wonder of the Western World"のフランス語である"La Merveille de l'Occident""La Merveille"の部分。ずばり驚異という意味を持ち合わせているゴチック式建築の傑作の建物なのです。

映画『トゥ・ザ・ワンダー』のフランス語のタイトルは"A la merveille"なのでこの建物の名前そのものになっています。ちなみにフランス語でモン・サン・ミッシェルは"Mont-Saint-Michel et sa baie"なのでやはり部分特化したタイトルに。

その歴史を深堀りしていくと?
そしてその歴史の思想や哲学史を深堀りしていくと?

その行き着く先が本作の監督テレンス・マリック監督の思考へと繋がる道であるのでしょう。

本作を理解する上でここからスタートしないといけないのです…






感想の前に その2:テレンス・マリック監督について


テレンス・マリック監督は本当に厄介です。
これは良い意味と悪い意味を持ち合わせます。

『天国の日々』『シン・レッド・ライン』『ニューワールド』『ツリー・オブ・ライフ』と独特な世界観と美しい映像表現の作品を送り出してるテレンス・マリック。

伝説の監督と言われ、映画好きほどハマる作品の数々。しかし同時に何も考えずに映画館に行くと痛い目に合う作品をいつも生み出しています。



例えば私が劇場に何となく気になって観に行った『ニューワールド』。
2006年でした。私は映画は好きだけれど劇場なんて年に数回しか行かない程度のライトな映画ファン。超有名作品程度しか目にしていない経験値。

なぜか予告編に惹かれ観に行きました。

もう最低でした。

今見返すと良さがわかりますが、ストーリーを語る映画ではないのです。
テレンス・マリック独特の映像センスと哲学的な意味合いを持つ語り口。
意味不明なんです。素人には。

意味不明だと映画に乗れなくなります。
そうするとつまらなくなります。
眠くなります。早く終わらないかなって思うようになります。
映画が5時間くらいに感じます。苦痛極まりなかったです。



その後公開された『ツリー・オブ・ライフ』。
当然素人目には意味不明。しかしカンヌ映画祭で最高賞のパルムドール受賞。
私は相当強張って映画館へ行きました。理解しようと相当な意思で鑑賞しました。

結果、意味不明でした。
『ニューワールド』の比ではありません。
だって何かビックバンとか恐竜出てくるし、何なん?

しかし後日解説等を読んで物語の構造を理解しました。
すぐわかる映画ではないので楽しくはないですが、理解できると苦痛ではなくなります。
今では『ニューワールド』も『ツリー・オブ・ライフ』も美しい映像や音楽を中心に時たま鑑賞します。



素人目にはそんな体験になる恐れもあるテレンス・マリック映画。
それを明確にわかった上での2013年、私柳下修平VSテレンス・マリック映画、劇場第3回戦!!←
さて、前置きが長くなりましたが今作の感想に入りましょう!!





ストーリーに沿った感想

まずテレンス・マリック監督映画として考えた時、
何てわかりやすい映画なんだ!!
テレンス・マリックにしては!ですけどw

だってストーリーわかるんですもん今回。
これは何?あれは何?
もそりゃありますし、独特のタッチですが、とってもわかりやすい!

相当覚悟をして鑑賞してるせいもあるかもですけどねw
終わった後一気に眠気がくるくらい集中してみたのもありますけどねw
私はテレンス・マリック監督の映画を一度できらきらしながら感動できるほど頭よくありません。いや、できないお馬鹿です。

「トゥ・ザ・ワンダー傑作!」なんて全く思いません。

しかし、過去の経験からいくと親切な映画であり、相変わらずの映像美もあって途中でドロップアウトしたくない初めての経験でした。

[DVD発売済み]
モン・サン・ミッシェルの神秘性は恋愛初期の幻想をも抱いた夢と希望の世界の体現にぴったりですし、恋する街パリもナイスアシスト。映画の序盤の展開のわかりやすさにまず安心感を抱きます。ベン・アフレック演じるニールとオルガ・キュリレンコ演じるマリーナの情熱的な恋模様がしっかりと伝わってきます。

場面はアメリカのオクラホマへ。オクラホマの一般的な町並みは恋愛初期の幻想を解く隠喩でもありますね。殺風景さがオルガ・キュリレンコ演じるマリーナの心の空虚さを感じさせます。

そしてここで登場するカトリックの神父クインターナ。このエピソードがまた重いの何の…感想新婦という職業に疑問を抱き、ジレンマに陥っているクインターナ。生きるオーラの無い演技、さすがハヴィエル・バルデム。

ベン・アフレック演じるニールは夢を諦め仕方なく別の職業へ。ここで様々な矛盾を感じ、不安を抱き、それがマリーナとの関係悪化にも繋がっていくのです。

そんな中現れる昔の恋人、レイチェル・マクアダムス演じるジェーン。おっとこれはなかなかの展開・・・

こういった感じで物語は一見ありがちなものでありながら、希望や夢が見えない空虚な世界が広がっていくのです。テレンス・マリック恐るべし・・・しかもこれが冒頭のモン・サン・ミッシェルの映像もあってもう空虚さ全開の映像でして。

それでいてなぜか美しい映像なのはさすがテレンス・マリック監督×エマニュエル・ルベツキ撮影の力だなって思いました。

彷徨う登場人物たち、哲学的意味合いを持った数々の演出。
あなたは何を思う?
そんな言葉が聞こえてきそうでした。

整理するとわかりやすそうに見えますが、それでもこれはテレンス・マリック映画。
やはり全てわかるわけではないです。
これなに?あれなに?どうなってんの?って思うことも多かったです。

しかしピカソの画が絶賛されるように、わからないものがわかった時どれはとんでもない傑作と思えるのかもしれません。『ツリー・オブ・ライフ』より評論家の評価は低いですが、私としては一回の鑑賞でストーリーがわかったというのもあり、こっちの方が好きでした。


ただ、やっぱり難しいですね。
私の周りにこの作品のリピートしてる方何名かいらっしゃいます。
きっと私と全く異なる視点や価値観でこの作品が心に響いたのでしょう。
これは羨ましいです、ホントに。


こんなの映画じゃない!というレビューもちらほら見ます。
これって『レ・ミゼラブル』の批判にもありました。
要するに普段見てる映画のフレームワークから逸脱しているということでしょう。
レミゼだと全編歌って意味で。

しかし、逆に映画ってフレームワークに当てはまってないといけないのでしょうか。
そんな決まりどこにもありません。

万人受けするテレンス・マリック映画ではありませんが、フレームワークから逸脱した作品を作り出し全ての人がそっぽ向くことなく熱狂的ファンを獲得するこの現象。そう考えるとテレンス・マリックという監督、やはりすごいのかなと思いました。

町山さんの解説動画でも出たらまた観てみたいと思います。

でも、こうやって覚悟して背筋を正して映画を観なければいけなくなってしまってるのは何かね…好みではないですね、やっぱり。



基本情報

タイトル
=トゥ・ザ・ワンダー

原題
=To the wonder

監督
=テレンス・マリック

出演
=ベン・アフレック
=オルガ・キュリレンコ
=レイチェル・マクアダムス
=ハヴィエル・バルデム

ストーリー
フランスにやってきた作家志望のニールは、モン・サン=ミシェルで出会ったシングルマザーのマリーナと恋に落ちる。10代で結婚し、娘をもうけたものの、夫に捨てられ絶望の淵にいたマリーナは、ニールとの出会いで心が救われる。2人はアメリカへわたり、オクラホマ州の小さな町で暮らしはじめるが、時とともに情熱は失われ、ニールは幼なじみのジェーンに心惹かれはじめる。ニールとの関係に苦悩するマリーナは、町の人々に慕わるクインターナ牧師に悩みを打ち明けるが……。

予告編



written by shuhei