映画『アーティスト』紹介、アカデミー賞圧勝作の魅力を検討してみる!無声映画は懐古ではなく新次元![ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『アーティスト』紹介、アカデミー賞圧勝作の魅力を検討してみる!無声映画は懐古ではなく新次元![ネタバレなし]




『アーティスト』基本情報

タイトル
=アーティスト

原題
=The Artist

監督
=ミシェル・アザナヴィシウス

出演
=ジャン・デュジャルダン
=ベレニス・ベジョ
=ジョン・グッドマン
=ジェームズ・クロムウェル
=ペネロープ・アン・ミラー

ストーリー
1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していたジョージ・ヴァレンティンは、新作の舞台あいさつで新人女優ペピーと出会う。その後オーディションを経て、ジョージの何げないアドバイスをきっかけにヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと駆け上がる。一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、自身の監督・主演作がヒットせず……。

予告編



とても爽快で楽しい映画でした!

映画論評とか堅苦しい話は抜きにしてこの映画はただただ爽快で楽しい映画だなと感じました。アカデミー賞獲ったから?公開2日目に行って劇場の観客の空気があったから?いえいえ、これはいつ観ても素敵な作品だと思えるものでしょう。

話題にあがっている通り本作はサイレント映画。そう、セリフは無く音楽と効果音で映画が進んでいきます。サイレント映画の時代、スターのまっただ中にいた主人公が、音声映画、つまりトーキー映画の発達とともに仕事を無くし、人生崖っぷちに陥っていきます。

それとは反対に、彼のスター時代に彼のアドバイスで駆け上がった一人の女優はトーキー映画の発展とともにスターダムを駆け上がり・・・。しかし彼女はお人よし。彼を気遣い・・・と、予告編で出ているストーリーそのままに進んでいきます。どんでん返しなどないです。

誰もが予想のつく予定調和の物語。しかしそれは批判ではなく褒め言葉、王道を極めた素晴らしい映画なのです。セリフがない以上言葉による深みが映画から姿を消します。それなのに全く退屈無く1時間半楽しめました。

ん?楽しんだというよりのめり込んだのか?とにかく素敵な映画でした。

さて本作はサイレント映画。サイレント映画がアカデミー賞作品賞を受賞したのは何と第1回以来なのです!そこで多くのレビューで使われた言葉が「懐古主義」です。良し悪しは人それぞれとして、サイレント映画の良さが今の世界で息を吹き返し、その魅力が爆発したということです。

レビュー等こういった意見が多かったので私も「古き良き映画」という認識で劇場へ足を運びました。しかし結果としては「違うじゃん」と思いました。

映画はこれだけ語っているとおりとてもとても楽しかったです!しかしこれは懐古主義ではないです。

今の時代、この時代にだからこそ作れたサイレント映画なのです。この問いかけが全てです。この映画と全く同じものを80年前に作れたか?ストーリーは置いといて技術的にです。

これ答えは当然NOです。

そう、途中ジョージの夢の場面やクライマックス最後の最後、あの演出は80年前では不可能です。今の時代にサイレント映画の手法を取ったからこそそれができたのです。

この物語を通常の台詞ありの映画としてつくり上げることもできたでしょう。サイレントっぽい映像に台詞を付けることもできたでしょう。しかしサイレント映画の手法をこの現代に取ったことでこそ生まれた傑作だと思います。新鮮な驚きや感動を受けました。

40代のフランス人監督がサイレント映画の手法でハリウッドを描く。これは緻密な計算を元に懐古主義ではなく未来を見据えた新しいジャンルなのではないかと思いました。

古き良きものを現在に「利用する」ことには批判が出る恐れもあったでしょう。今の若いフランス人が何を偉そうに古き良きアメリカをサイレント映画で描くのかと。

しかしそんな心配はこの完成度を見れば心配なんていらない結果でした。映画愛に溢れている作品でしたが、気持ちだけではこんな傑作は生まれません。ミシェル・アザナヴィシウスの演出や俳優陣の演技、犬かわいさ、素晴らしい音楽などが合わさってこそできた作品なのではないかと思いました。


チャーミングな主演二人と犬のアギー

本作でアカデミー賞主演男優賞を獲得したジャンディジャルダン。台詞のない演技を見事にやり遂げました。台詞がないのでその他の演技力がモノを言うのは当然で、彼の演技力がお見事だったのは言うまでもないです。

喜怒哀楽を言葉以外でわかりやすく表現していました。しかしそれ以外に素晴らしいと思ったものがありました。それは彼のビジュアルです。

少々大きめな体格、少々大きめな顔、愛嬌ある表情、これらがサイレント映画の中で魅力的に輝いていました。表現しづらいのですが魅力的な表情というか、要は生まれ持ったその顔に魅力的な演技が宿っているのです。

前半の愛嬌ある表情からの後半の悲痛な表情、これらを見ていて安心感があるというか何というか。文字では説明できないビジュアル的な魅力が映画をより魅力的なものにしたのは間違いないでしょう。


実質ヒロインでスターダムを駆け上がっていくペピーを演じたベレニス・ベジョ。ミシェル・アザナヴィシウス監督の実際の奥さんでもあります。ハリウッド女優にはない不思議な魅力がありましたね。演じてる役はハリウッド黄金期の女優なわけですが、

エキストラの女優からスターダムを駆け上がっていく上で必要であった大衆を惹きつける魅力が出ていたと思います。演技力とかそういうもの以前にあるチャーミングさですね。

ジャンディジャルダンと同様に表情が豊かであったと思います。サイレント映画の中でその表情は光り輝く「美しい」とその魅力を感じ取れました。


そして忘れてはいけない犬のアギー!アギーが主役級に活躍をする本作。どうこう論じるというよりとにかく可愛らしい!ただ映画の片隅のスパイスではなくちゃんとストーリーに絡んできます。

クライマックスの活躍っぷりとお茶目さといったらもうwあの「バン!」⇒パタリ、には劇場笑いに包まれました。素敵な素敵な犬でした。心温まる活躍にドッグフードを送ってあげたいくらいですw


劇場は拍手に包まれた、感動した

私は新宿ピカデリーで公開二日目に本作を鑑賞しました。午後の中途半端な時間でしたが満席でした。そして終わった後劇場が何と拍手で包まれました。

今まで私が劇場で体感した印象深い出来事は3回ほどあります。

1つ目は『ダークナイト』のジャパン・プレミア@東京国際フォーラム。
映画が終わり最後にタイトルが出た瞬間拍手喝采。クリスチャン・ベールのクレジットが出たらまた拍手喝采。そしてヒース・レジャーのクレジットには割れんばかりの拍手。自然と涙が出ました。

2つ目は『ブラックスワン』公開初日夕方の回@新宿バルト9。
映画が終わり劇場が明るくなった瞬間、言葉では表せないどよめきが。
ざわざわざわざわと・・・
これはあの衝撃的なラストから起きたものですね。

3つ目は本作鑑賞後の体験ですが『ダークナイト・ライジング』のジャパン・プレミア@東京国際フォーラム。
これは『ダークナイト』とほぼ同様、しかしこちらはみなさん泣きながらの熱狂的拍手。シリーズが終わった!というのを感じた瞬間でもありました。

『アーティスト』では終わったと今回は劇場が誰もいないスクリーンに向かって拍手を送ったのです。レビューを見る限り割と万人に評価されているようですが、これを拍手で体感しましたね。素敵な回を選んだなと思っています。



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