映画『ミスティック・リバー』感想、凍りつく演技、唖然とするラスト、完璧な完成度、見落とす隠れたハッピーエンド[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『ミスティック・リバー』感想、凍りつく演技、唖然とするラスト、完璧な完成度、見落とす隠れたハッピーエンド[ネタバレなし]


『ミスティック・リバー』の感想をまとめてみます。

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『ミスティック・リバー』基本情報

タイトル
=ミスティック・リバー

原題
=Mystic River

監督
=クリント・イーストウッド

出演
=ショーン・ペン
=ティム・ロビンス
=ケヴィン・ベーコン
=ローラ・リニー
=マーシャ・ゲイ・ハーデン
=ローレンス・フィッシュバーン

ストーリー
ジミー、デイブ、ショーンの3人の少年たちが路上で遊んでいると、警官を装った誘拐犯が現れデイブだけを連れ去り、監禁し陵辱する。それから25年後、ジミー(ショーン・ペン)の愛娘が殺害され、刑事となっショーン(ケヴィン・ベーコン)が捜査にあたり……。

予告編



「完璧」としか言えない

映画の完成度としてこの映画は伝説の域ではないでしょうか。

クリント・イーストウッド監督は伝説の映画を数多く世に送り出していますが、私は本作が最も素晴らしいと思います。とてもとても重い映画で、娯楽性はありません。批評も賛否両論でした。しかしそれは重い内容にであって、完成度は本当に凄まじいものです。

とてもとても重いストーリーにイーストウッドの演出と音楽、そして俳優陣が見せる完璧としか言い用のない演技。ショーン・ペンは本作で主演男優賞、ティム・ロビンスが助演男優賞を受賞しています。渡辺謙が『ラストサムライ』で助演男優賞にノミネートされた年ですね。

いやぁこれ勝てないですね・・・ティム・ロビンス素晴らしかったです。二人だけでなく、ケヴィン・ベーコンもローラ・リニーも助演賞を獲るに匹敵する演技です。「演技」というものがここまで光る映画ってありましたでしょうか。まさに完璧なのです。

終わった後ただただそう思う完成度です。重い重いストーリーに完璧な演出と完璧な演技。それらが融合し、本作は重い映画でありながらもとてもパワフルな映画になったと思います。まさに"完璧"な映画なのです。



サスペンス+人間ドラマの至高

本作は実質3人の男の物語です。3は子供の頃からの友人です。25年も前の子供の頃のある日の事件を描いた後、話は現代に移ります。ある日ショーン・ペン演じるジミーの娘が殺されてしまい、ここから物語がスタートしていきます。

ジミーは手下を持つ、言うならばギャングのボス的な存在。手下も使いつつ、一体自分の娘に何が起きたのかを探って行きます。刑事になった友人のショーンは警察として捜査を進めます。 その頃友人のデイブにはある隠し事ができ・・・そんな形で物語がスタートしていきます。

犯人を探していくというサスペンス要素に、「罪」や「道理」「受容」といった重いテーマが包みこむ人間ドラマが展開されていきます。 もう見応え充分、素晴らしいです。

本作では人が何人か殺されます。 しかしそれは殺人事件というよりも、「仕方のない死」というような境遇の死です。ジミーの娘も、後半で死ぬアノ人も、やるせないながら「仕方なく死に至った」という印象を受けました。

本作では殺人犯は出てきますが、殺した犯人は決して犯人という描かれ方をしていません。 殺したことによる代償がそこにはあるからです。 殺人を犯したけども、それにより人生が狂う。 しかし、それでも生きてるうちは頑張って生きていかなければならない。

頑張って生きるために殺したことは隠さなければならない。 そういった殺人側の焦りも描かれます。殺そうと思って殺してないんですよね。 これだからやるせない・・・

サスペンス+人間ドラマの至高とはこういうことなのかということがよくわかります。

ところで、映画の前半でジミーの娘を殺した犯人を当てた方っていらっしゃいますかね? 私はびっくりしました。 アノ人ではないと思ってましたが、「え?お前!?」という衝撃がありましたね。 その理由がまた・・・やるせない・・・

犯人がわかり一件落着かと思いきや・・・ 我々はそこから映画としては有り得ない衝撃のラストを経験することになります。後味の悪いというかやるせないといいますか、気持ちが沈むラストです。

映画として物語は完結しますが、とても重いラストでしたね。
しかしのラスト、登場人物たちの結末から我々は「生きる」ということについて考えさせられます。

「生き残ったものはそれでも生きていく、その終わりが来るまで」 

そんなメッセージを感じました。



よく考えてみると「何も救いがない」は間違い

映画は確かにバッドエンドと言えるでしょう。私も最初に見た時は「バッドエンドだけど映画としては素晴らしい」というのが率直な感想でした。しかし本作のラストは何も救いがなかったか? と言われると、ちょっと待て、と複数回見て思いました。

映画の中でケヴィン・ベーコン演じる刑事のショーンの家族のストーリーが少しだけ登場してきます。ショーンは奥さんと子供と離れているんです。ではショーンの家族とのドラマの結末はどうでしたでしょうか?

これハッピーエンドではないでしょうか? 映画の中では端っこになる凄く凄く小さなサイドストーリーでしたが、ショーンは最後に幸せを感じることができたのではないでしょうか。

ショーンは事件の「本当の真相」最後の最後に殺されたあの人を誰が殺したかわかっているでしょう。しかしそれによって逮捕はしないでしょう。それを隠して、彼は生きていくのです。

もう一度幸せを取り戻して。


3人が背負う十字架

映画全体としてはバッドエンド的ですが、 三人の男それぞれの運命を考えてみると全てバッドではないのではないでしょうか。ジミーは娘は殺されましたが、現状維持ではないでしょうか。

なぜなら背中に十字架の刺青を背負い、十字架を背負いながら生きていく決意をし、何があっても支えてくれる良き妻、強い妻がいるからです。十字架が背負う真実はとてもとても重いものになりました。それでも彼は生きていきます。

最後の表情は強い決意を感じさせました。デイブは結果として運が悪かった。彼自身はバッドエンドでしょう。彼にも支えてくれる妻がいました。しかし、彼自身が25年前のアレもあり、彼が取った行動や見せた素振りから考えて、悪い結果を招いてしまったことは確かでしょう。

もちろん、彼も罪は犯していた。 そして十字架にかけられた彼の罪はああいった形で償うこととなりました。本当に運が悪かった。

ショーンはハッピーエンドでしょう。あの最後の表情を見ればわかります。では完璧なるハッピーエンドでしょうか。彼は最後に秘密を持ちます。事件の結末にある人物が行方不明となるその真実です。

彼は何も言いませんが彼にはその真実がわかっています。それを秘密として背負って生きていく。ハッピーだけれども最後十字架にかけた罪は今後どうなるかはわかりません。

映画が辿るメインのストーリーとしてはバッドエンドと言われる映画です。実際はハッピーエンド、バッドエンドという言葉では片付けられない。奥深さのある映画なのではないでしょうか。

ストーリーとしては至高のサスペンス+人間ドラマとして素晴らしく、謎も無く終了。 しかし、映画を見終わった後、我々が考え、何を思うか、それが人によって異なり、そして出口がないような思考のループに陥る。それだけ深い深い映画なのです。

 本当に完璧でした。



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