映画『メメント』紹介、天才クリストファー・ノーランの最初の長編傑作![ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『メメント』紹介、天才クリストファー・ノーランの最初の長編傑作![ネタバレなし]


□『メメント』基本情報

監督
=クリストファー・ノーラン

出演
=ガイ・ピアース
=キャリー=アン・モス
=ジョー・ポントリアーノ

ストーリー
前向性健忘(発症以前の記憶はあるものの、それ以降は数分前の出来事さえ忘れてしまう症状)という記憶障害に見舞われた男が、最愛の妻を殺した犯人を追う異色サスペンス。ロサンジェルスで保険の調査員をしていたレナード。ある日、何者かが家に侵入し、妻がレイプされたうえ殺害されてしまう。その光景を目撃してしまったレナードはショックで前向性健忘となってしまう。彼は記憶を消さないためポラロイドにメモを書き、体にタトゥーを刻みながら犯人の手掛かりを追っていく……。  

予告編


無限にある解釈

本作は一度見ただけではなかなか理解しにくく、かと言って何回も観ると逆に疑問が増えたり謎が謎を呼んだりな複雑な映画です。その完成度は計り知れないわけですが、その複雑さや計算された脚本によって、観客が受ける反応や解釈も分かれます。それについて云々は置いときまして、一先ず私の中での解釈に沿ってレビューを進めていきたいと思います。




時間軸逆行による記憶喪失の疑似体験

上に貼った予告編はご覧頂けましたか?大げさじゃないか?と思われる予告編ですが、本編本当にこんな感じです。映画は時間軸が逆行して進んでいきます。要するに通常ラストシーンであるシーンから映画が始まり、オープニングシーンがラストシーンになるのです。

その中でまた少し複雑なのですが、わかりやすく言いますと、
例えば映画が10の章からできているとします。


1,2,3,4,5,6,7,8,9,10  と。

それが逆に進んでいくのです。 10,9,8,7,6,5,4,3,2,1 と。


それをもう少し複雑にした感じです。 なので最初は「?」なものがだんだんとわかっていく流れです。 「?」自体も1つではなく多くあるわけなので、

私たち自身の記憶も試されます。映画では主人公レナードは記憶が10分しか持たないので、私たちもそれに似たものを映画で試されるのです。章が変わった時に、前までで覚えていることを頭で整理し、そしてそれを元に主人公レナードと共に真犯人を探っていくのです。



主人公を追いつつ観客は核心に迫る

主人公レナードは記憶が10分しか持たないので、メモに残した事以外は忘れてしまっています。しかし私たち観客は記憶が蓄積されていきます。最初の章、次の章、その次の章と。その積み重ねによって私たちはレナードが追っている真犯人の事実を知ることになります。

いや、事実というか、映画のストーリー自体の真実でしょうか。衝撃のラストという言葉が本作では大げさでなく使えますね。よく映画を観てラストシーンに差し掛かった時、「騙された~!」とどんでん返しされることがあります。本作もそれです。

しかし本作のそれは映画の中におけるどんでん返しではなく、映画の存在自体におけるどんでん返しなのです。記憶喪失の疑似体験を記憶が残る私たちにさせたクリストファー・ノーランは天才としか言いようがない。

「インセプション」されちゃいましたねw




革新的なクリストファー・ノーラン監督

『インセプション』や『ダークナイト』の監督であるクリストファー・ノーランの第2弾作品ですが、ノーラン監督は本当に最初から天才だったんだなとこれでわかりましたね。観客を驚かせる革新的な何かということに関してこの監督を超える人はなかなかいませんねぇ。

本作では構成や映画の存在におけるどんでん返し。
『ダークナイト』ではリアルな世界のバッドマンやジョーカー。『インセプション』では夢の多重構造など。革新的な「何か」その「何か」は毎回変わるわけですが本当に素晴らしい監督です。

本作は弟のジョナサン・ノーランが原案を考えたのですが、この兄弟はホントどういう頭してるのでしょうw普通思いつきませんからw記憶が10分しか持たない男の物語を時間逆行で見せることで我々に疑似体験させる。この設定だけでこの映画はもう価値がありますね。増してそれがお遊びでなくラストシーンにちゃんと生きてくるので。



全てを疑えとはこの映画のこと

よく映画において「全てを疑え」みたいなキャッチフレーズってありますよね。甘いですwそれは本作のために用意された言葉ですw映画のストーリー自体は是非ご覧になって噛み締めて頂きたいですが、ストーリーの流れには触れず鑑賞する上で楽しめるポイントをお伝えしたいと思います。

内容には触れませんが、映画の構造には触れますので、一切を遮断したい方はご覧になられた後でお読み下さい。

では構造に触れつつ再スタート。

本作で観客は主人公レナードと共に真犯人を探って行きます。彼の残したメモや独り言などを元に。さて、ではですよ、「もし彼のメモ自体が嘘だったとしたら?」これを頭の片隅に入れておくと色々見えてきます。

 全てが嘘ではありません。しかし嘘やカラクリが多いです。

・本当に犯人はジョンGなのでしょうか? 

・実際の犯人は本当にまだ逃げているのでしょうか? 

・そもそも犯人なんているのでしょうか? 

・奥さんはレイプで殺されたのでしょうか? 

・レナードは本当に記憶が持たないのでしょうか?

まさに「全てを疑え」でかかると面白いです。ちなみに上記には嘘と本当が混じっていますw疑ってかかることで本作の魅力が増しますので是非試してみてください。



もしもずる賢い人間の前に記憶の持たない男が現れたら

上の続きですが、 本作の主人公レナード以外の登場人物はずる賢い人間ばかりです。レナードが記憶が持たないということを利用して彼をうまい具合に使っていきます。ある意味これが本作における重要ポイントですね。

核心には触れませんが、 例えばモーテルのオーナー。彼は、主人公レナードが記憶が持たないということがわかると彼に2つの部屋を貸します。なぜなら彼には記憶が残らないから。余分に請求できます。儲かりますね。

これはまだ全然かわいいラインです。これがテディやナタリーになると映画全編を揺るがすレベルに・・・そう、目の前に記憶喪失の人間がいたらうまいこと使うのです。ずる賢い人は。

この辺りが映画の構造を通して私たちは騙されます。なぜなら私たちは主人公レナード側に立って映画を見るからです。

たたでさえ時間が逆行する映画。主人公と共に、周りの人間の言うこととメモを便りに真犯人を探るのです。でも周りの人間が言ってることやメモ自体が嘘ならば? 客観的にこの映画を見た時の衝撃ったらもう・・・ そんな感じになります。



記憶が持たなくなっても彼に残った彼の性格

彼は情報こそ10分程度で忘れてしまうのですが、彼は彼自身でありますし、妻を殺した犯人を探すという行動は止めようとは思っていません。
いつまでもいつまでも犯人を探し続けます
(↑映画の中身知っている人にはにやにやの書き方ですねw) 

つまり彼は直近の記憶だけが持たなくなっているのです、性格などは変わっていませんし、どうも記憶が持たなくなる前過去は覚えているようです。そんな彼の性格はオチから推測するに「ご都合主義」なのでしょう。うまい具合に自分の言いように解釈する癖があるのでしょう。

映画が全てわかると「あ~性格が悪く働いたな・・・」と思ってしまいます。 悲劇・・・


見れば見るほど楽しくなる

本作はレビューでも軒並み高評価ですが、低評価のレビューも目立ちます。映画の完成度ではなく、「わかりにくさ」への指摘が多いんですよね。何せ複雑ですから。

残念ながらぼーっと見る類の映画では全くもってありません。集中して頭フル回転で見る映画です。ノーラン映画では2番目に難しいかな? 1番は深さもあって『プレステージ』だと勝手に思ってます。

本作はそのわかりにくさを繰り返し見て理解することで払拭できます。そこからはもう面白い面白い。上に少し書いたように、人と人との嘘を使った駆け引きの描き方が素晴らしいです。

最初は復讐映画に見えるのですが、これは騙し合い映画ですね。そうなったらあとは楽しめます。私も最初はこの映画イマイチだったんです。だって難しいんだもんwしかし繰り返し見て味が出てきました。

私自身嫌いな映画もちろんあります。趣味に合わなかったり明らかに駄作だったりはもう放置ですが、本作のように「難しい」場合は理解をすればそれは傑作であるかもしれないな、と本作を見たあと思うようになりました。『プレステージ』然り。

是非クリストファー・ノーラン映画『メメント』で、頭の中『インセプション』されちゃってください。最後うまくまとめたつもりw


Amazon