『ダークナイト』のあらゆる魅力をまとめてみる/『ダークナイト』シリーズ徹底解説コラム 15 - Cinema A La Carte

『ダークナイト』のあらゆる魅力をまとめてみる/『ダークナイト』シリーズ徹底解説コラム 15



『ダークナイト』について今回も語ってみましょう。

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『ダークナイト』の魅力について、脚本の視点やジョーカー、そして警察と検察のすれ違いによって起きた悲劇など様々解説してきました。

しかしそれだけ書いても語りきれない本作。

どこまでも書き続けてもアレなので今回は諸々整理して項目ごとに魅力を整理していきたいと思います。


とりあえず10項目。

◯俳優陣の完璧さ
ジョーカーの演技が鬼気迫るものであり、映画史に残る悪役としていつまでも語り継がれることになるでしょう。しかしそのジョーカーを演じたヒース・レジャーだけでなく全ての俳優陣が見事な演技をしたと思います。

クリスチャン・ベイルはシリアスな演技をしっかりとこなし、私利私欲ではなくゴッサムのために尽くすバットマン兼ブルース・ウェインとして苦悩を今回も見事に演じました。

ハーヴィーデントを演じたアーロン・エッカートは完全なる善としてゴッサムの白馬の騎士として降臨しました。しかしジョーカーの罠にハマってしまい俗に言うダークサイドに転落。そこからの狂いに狂った演技に背筋が凍りました。

1作目から善として活躍するゴードンを演じたゲイリー・オールドマン、今回は苦悩やピンチも増えましたが最後までやはりゴードンの存在感と言いますか安心感は揺らぎませんでした。

マギー・ギレンホールは前作「バットマン・ビギンズ」でレイチェルを演じたケイティー・ホームズの代役、かわいくないという意見も多くありますが(笑)、シリアスなこのシリーズにおいて落ち着いた演技をこなしレイチェルの良さをより引き出してくれたなと思いました。

これら人物を中心に回っていく本作ですが、その脇を固める名優マイケル・ケインとモーガン・フリーマンがとてもとても見事でした。

モーガン・フリーマンはユーモアも含みつつバットマンとジョーカーの最後の戦いを裏で取り仕切りました。本作での彼の最後のカットには台詞はありませんでしたがあの最後の表情、いやいいですね。次回での活躍も期待です。

最後に本作だけでなくクリストファー・ノーラン作品に無くてはならない存在であるマイケル・ケイン。本作でもアルフレッド役としてバットマン兼ブルース・ウェインを支え続けます。最後の彼の手紙を燃やすカット、涙ものでした。



◯クロスカッティング
近年のクリストファー・ノーラン監督の持ち味でもあるクロスカッティング。『インセプション』でもいけいけでしたw複数の出来事を同時進行で進めることですがそれを複雑にではなく映画を盛り上げる手法として本作では活用されています。

複数箇所でクロスカッティングが使われていますが圧巻なのはレイチェルとデントの救出シーン。時限爆弾もあって緊迫するシーン、救出へ向かうもの、待つもの、そして鬼気迫るジョーカーをクロスして描いています。

この緊迫感は凄まじいです。クロスカッティングの編集は無駄な間が無くなるので次から次へと話が進みます。おそらく全編でやられたら混乱必須のクロスカッティングですが本作ではうまく使われ緊迫感増す演出となっていました。



◯善悪の対立構造とそれを破壊する要素
善と悪の対立構造が本作でははっきりしているようではっきりしてないのです。まず間違いないのはジョーカーが完全なる悪であるという点。過去に何かがあったかもしれないけれどもその過去がわからない、よくわからないけど弱みを見せず人を殺し翻弄し、ゴッサムの市民を恐怖に陥れました。

その完全悪のジョーカーに対してバットマンは完全なる善になりきれません。別記事にも書きましたがバットマンは超法規的存在。器物破損も時として行います。そして気づいた時にはバットマンはゴッサムの嫌われ者になってしまうのです。

ゴッサムを救うために頑張っているのにゴッサム市民に嫌われる…完全なる善になれずヒーローになれないのです。そこに完全なる善となるハーヴィーデントを配置、しかしそのデントもジョーカーによって完全なる善ではなくなってしまうのです。

ジョーカーを敵とし、明確なる対立構造を配置しているように思えながら完全なる善が存在しないという矛盾。善が存在しない、しかし完全なる悪は存在する。その構造は我々観客の価値観すらも崩壊していきます。

次の項目へ続く。



◯我々観客の価値観の混乱
『ダークナイト』の一般人レビューをどこのサイトでもいいので少し確認してみてください。どこにでも必ず「ジョーカーカッコいい」「ジョーカー素晴らしい」「ジョーカーかわいい」というジョーカーを賞賛するコメントが存在します。

私もジョーカーはカリスマ性を持った悪役だと何度見ても思います。しかしこれっておかしくないでしょうか?ジョーカーがやってることは破壊行為であり殺人行為であり恐喝であるのです。

以下別記事で記述してますが再掲。

ゴッサム・シティを東京に置き換えてイメージしていてください。東京にテロリストのようなジョーカーが降り立ち、次から次へ人を殺し、大きな病院を破壊し、統治する指導者を半殺しにする、最終的には東京から出てけと警告するも橋は使うなと脅して身動きが取れなくなる・・・

イメージしただけでも恐ろしいです。完全なる戦時下の様相です。

しかしジョーカーがやってることはこういうことなのです。しかしそれを私たちは魅力的に思い、映画と言えども賞賛します。ヒース・レジャーの演技がすばらしかったという賞賛に限らずジョーカーを褒めるのです。

これはジョーカーがあまりにも圧倒的な悪の存在でありカリスマ性を持っているため私たちは価値観が混乱し麻痺してしまうのです。感覚こそ違えどタランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』のランダ大佐にも似たカリスマ性がありますね。

逆に『ノーカントリー』のシガーはハヴィエル・バルデムの演技は圧巻ですがあのキャラクターにはカリスマ性は感じず恐ろしいとだけ感じます。

ジョーカーの設定にはその恐ろしさがあるのです。圧倒的な悪は魅力を放つのです。そしてその魅力に実世界で取り憑かれるとどうなるか。それは悪へと力を貸す行為をしてしまうようになるのでしょう。なんて恐ろしいジョーカー・・・



◯様々なタブー・挑戦
この項目はサクッと。別記事でも書いたようにヒロインをこんな扱いする映画はそうはないです(褒め言葉)

あと私が凄いなと思ったのは映画の最初のカットです。空撮でビルに近寄っていき、そしてビルのガラスが破壊。これは当然9.11でワールドトレードセンターに突っ込んだあの悲劇の再現になっています。

それを最初のカットで見た瞬間、ジョーカー軍団は正体不明の悪となり、それに戦いを挑むゴッサム・シティやバットマンにアメリカの影を感じるのです。こういったタブーと言いますか挑戦がたくさん成されています。バットマンとジョーカーの最後も今までにないものになっていましたね。

バットマンがジョーカーを倒してオレこそが正義の味方なんていう終わり方はしません。完璧なラストですが今までのアメリカンコミックではありえなかった凄まじいラストです。

そしてそういった挑戦やタブーを破ることはやはり『バットマン・ビギンズ』でバットマンの根底を描いたからこそできたのでしょう。クリストファー・ノーラン…あんたはやっぱ天才や。



◯IMAXカメラを使用した圧巻の映像
クリストファー・ノーラン監督はCGで全てを描くことはしません。そして3Dではなく高解像度のIMAXカメラを使用することであたかも目の前でそれが起きているかのような臨場感を我々に提供してくれます。

これは言葉で説明が難しいのですが要するに劇場で見る価値のある映画なのです。超大画面×超高音質のIMAXシアターで観るべきシリーズなのです。IMAXシアター増えてきましたが日本まだまだです。

既に3部作が公開終わってDVD化されてるので劇場で鑑賞するのは難しいですが、IMAXの映像を堪能するためにご自宅の大画面で鑑賞されること、Blu-rayで鑑賞することなどをお勧めします。



◯ハンス・ジマー×ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽
前作の重厚な音楽をベースとしつつ、"A Dark Knight"というドラマティックなテーマ曲やキチガイ(褒め言葉)なジョーカーのテーマ曲が追加されました。"A Dark Knight"のメロディは香港のシーンで少しかかった後は最後までほとんどかかりませんが、最後のこの曲の盛り上げ具合は鳥肌&涙でした。

ジョーカーのテーマはオープニングを含め各所で流れます。曲というかじりじりと不吉な効果音。このジョーカーのテーマはハンス・ジマーが作曲したのですが彼のキャリアにおいてもありえないぶっ飛んだ1曲です。

音楽の盛り上げが本作を何倍も重厚に、そしてドラマティックにしたのは間違いありません。



◯緊張感の中に含まれる絶妙なユーモア
とてもとえもシリアスな本作ですがその中に笑いをも入れこんでくるクリストファー・ノーラン映画。あんたすげえわ(笑)

しかし主要人物に過度なユーモアを担わせるとキャラクターが歪んでしまい全体のシリアスさが失われてしまう可能性もあります。クリストファー・ノーランがそこで活用したのはそのユーモアのためだけに一瞬登場する半分エキストラとも言える役の起用です。

わかりやすい例を上げれば中盤のジョーカーとデントとバットマンのチェイスシーン、バットポッドが登場してバットマンがジョーカーを追う途中で子供が2人車に乗り指を銃に見立ててエアガンごっこを車標的し行なってます。

そしたらいきなり指を向けてる車が爆発(笑)別の角度からバットマンが移動途中で邪魔なので爆破させたわけですがこういった小さなユーモアを入れ込む辺りどこまでも計算されてる脚本だなと改めて思いましたね。

それに対して『インセプション』ではユーモアは凄く少なく主要人物のイームスが少しちゃらめでユーモアを担当してましたね。うまいなあこういう調整。

ちなみに仮説ですが、クリストファー・ノーラン監督の弟のジョナサン・ノーランも脚本を担当する場合にユーモアが増えるのではないかと思われます。言ってしまえばクリストファー・ノーランは真面目過ぎて、弟のジョナサン・ノーランが入るとバランスが取れるとw

次回作『Intersteller』はジョナサン・ノーランも脚本担当なので・・・そういうことになるでしょうw



◯価値観の混乱、破壊の中に忍ばされた小さな救いの数々
小さなユーモアこそあれどやはりどこまでも徹底的にジョーカーに翻弄される本作。最後の最後までジョーカーに翻弄され、最後はまさかのジョーカーの勝利です。別記事で書いたようにそこからのラスト2分で全てが覆り映画史上最高のラストになるわけですが、そんなジョーカーに翻弄され我々の価値観が混乱する中でやはり人間が良心を見せたなと思うのが2隻のフェリーのシーンですね。

そして最後のアルフレッドの手紙を燃やす優しさ。こういった小さな救いが本作最後、絶望に包まれた中で光を放ってくれます。最後の最後、ゴードンの子供の「彼は何も悪くないのに」という台詞も胸を打ちます。どこまでも価値観が揺るがされ、破壊の中に絶望を感じ、ジョーカーにすら魅力を感じてしまう本作のこういった小さなエピソードが映画をどこまでも素晴らしいものに昇華してくれてる気がします。



◯『ダークナイト・ライジング』を見てわかった最後の決断の完璧さ
最後のバットマンの決断、胸を打ち完璧なラストになるわけですが、そこで「本当にこれで平和になったのだろうか」という疑問を持った方もそれなりにはいるようです。素晴らしい映画だったが最後少しもやもやなどという意見もそれなりに見受けられます。

映画が公開された際は続編の情報が皆無だったのとヒース・レジャーが亡くなってしまっていたのでなおさらでした。しかしその疑問は『ダークナイト・ライジング』を観てこのラストは完璧であったと改めて思いました。

『ダークナイト・ライジング』は平和に溢れた8年後のゴッサム・シティから始まりました。普通の街と同様にそれなりに犯罪や事件はあるでしょう。しかしジョーカーが降臨した時のように俗に言う戦時下からは既に脱していました。

つまり『ダークナイト』の最後でバットマンが下した重大な決断はゴードンがしっかりと役割を成し良い方向へと進んだわけです。良かった良かった・・・

と思ったらその"嘘によって成り立った平和"は『ダークナイト・ライジング』で完全に崩壊をしたのです。

これは現実の歴史も表していますね。平和は一生は続きません。8年後の冬、今度は街の混乱ではなく街を制圧し革命を成し遂げようとするベインが降臨したのでそた。それが『ダークナイト・ライジング』でした。

『ダークナイト・ライジング』によって『ダークナイト』をぶっ潰すという製作側の覚悟が伝わってきました。

さて、『ダークナイト』に関してはこの辺で一旦終了。
次回の記事から『ダークナイト・ライジング』に入っていきますよー!!


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徹底解説コラム 15:『ダークナイト』のあらゆる魅力をまとめてみる


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