『ダークナイト』のジョーカー徹底分析!/『ダークナイト』シリーズ徹底解説コラム 12 - Cinema A La Carte

『ダークナイト』のジョーカー徹底分析!/『ダークナイト』シリーズ徹底解説コラム 12



今回は『ダークナイト』のジョーカーについて掘り下げてみましょう。

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あくまでも独自の見解ですので、参考程度でお願いします。
魅力と言いますか色々と考えるきっかけを提供出来れば幸いです。


『ダークナイト』の様々なレビューを見ると多くのレビューで見かけるのはやはり「ジョーカー凄かった」という記述です。これは映画自体を評価していない否定的なレビューであっても「ただしジョーカーは凄かった」と書いてる方も多いですね。

100%評価される映画なんて存在しないわけですから、これはかなり凄いということが改めてわかりますよね。

ヒース・レジャーが演じたジョーカーの演技は、文字通り鬼気迫るものであり、映画史上類を見ない最強の悪役でした。ヒース・レジャーは本作撮影後、『Drパルナサスの鏡』の撮影中に急死してしまいました。

この急死は当然世界中の映画ファンにとって悲報であり、私も非常にショックを受けました。ヒース・レジャーが亡くなったのは『ダークナイト』の公開前でもあったので、「ダークナイト」の公開が中止になるのではないかとの噂も流れました。

まぁ噂なので実際どういう流れだったかわかりませんが、結果としてヒースが命を懸けたジョーカーを目の当たりにできて良かったです。このジョーカーの演技で、ヒース・レジャーはアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。

仮にヒースが亡くなっていなくても受賞に値した凄まじい演技でした。それくらいジョーカーの演技は凄まじいものですから。


今回はジョーカーの存在を少し掘り下げますが、実際こんな細かく見なくてもいいっちゃいいとは思います。

つまり、多くのレビューに書かれている通り、誰がどう見ても普通の演技じゃないですし、後付ではありますがもうこの世にいない俳優ヒース・レジャーの演技であるわけですから、ただただその凄まじい演技、ジョーカーという狂人を目撃するだけでもいいと思います。

実際私も映画を最初に見た時、ただただ「ジョーカーすげぇ・・・」と思いましたし。そう思って、もう少しジョーカーをちゃんと見て、「ダークナイト」の世界観をより深く楽しみたい方向けに少し掘り下げたいと思います。


ジョーカーの何が凄いのか?

まず、正体不明、動機不明という恐ろしさでしょう。

映画の悪役というのは大概は悪に落ちたエピソードが存在します。わかり易い例で言うと日本のサスペンス映画でありがちな、最初はただ悪人だったが過去を暴かれると涙して崩れ落ちて捕まるなどというパターン。悪人が本来の自分に戻る戻らないは別として、何かしらかわいそうなエピソードがあったりします。

もちろん殺人鬼などの場合、それだけの犯罪を犯しているので同情するまででもないですが、100%悪なのではなく、ちょっとかわいそうな過去があるので90%悪くらいな印象になるものが多いです。要するに人間らしさというか感情を含んでいるというかそういう類のものです。

しかしジョーカーはどう見ても100%悪です。あまりに徹底しすぎているので、レビューで「ジョーカーかっこ良かった」と賞賛する言葉すらでるくらいです。やってることは卑劣でしたがかっこ良いカリスマ性溢れるキャラクターでしたもん。

ティム・バートン監督版でジャック・ニコルソン演じたジョーカーとは比べなくていいと思います。あちらは過去のエピソードがあったので、やってることは卑劣でも過去によって人間味が出ていた部分もありますしね。それはそれで良しで良いのです。

このヒース・レジャー演じた、クリストファー・ノーラン版ジョーカーは、本名すら不明です。フラっとゴッサムシティー現れ、銀行強盗を歯切りにマフィアを脅し、バットマン、ハーヴィーデントを倒そうとしていく。その中で市民をも恐怖に陥れ、まさに誰しもが恐る悪へと存在感を増していきます。

そんな今作のジョーカーの特徴といえば、裂けた口と道化メイクでしょう。ジョーカーは口の両端にナイフで裂いたような痛々しい傷があります。そして顔には白塗りのピエロメイクをしています。しかも手に白塗りした後があったり。。。

この傷についてですが、おそらくジョーカーが悪に落ちた一要因はこの傷にあると私は思います。ジョーカーは映画の中で2度ほどどうして傷がついたか話しています。エピソードとしては父親にやられたというものと、妻の前でいつでも笑顔でいれるように自ら裂いたというエピソードです。

つまり2つともエピソードが異なります。よって実際の原因はわからないままです。しかし傷について語るときのジョーカー、かなり恐ろしく語気が強いのです。なので実際の原因はわからないにしろ、傷が彼の過去に何かあるのは間違いないでしょう。あんな傷、自分でやったか誰かにやられたかしないとつかないですもんね。

事故などではないはずです。原因は不明にしろ2つのエピソードを合わせると、父親と妻と何かあったんだろうなぁとは思いますね。ブルースのペントハウスを襲撃した際に白髪の男性に「父親を思い出す」とナイフ突きつけてますし。あの傷を想像するに壮絶な過去があることはわかりますが、それでも真相は不明なまま。

ジョーカーは弱みを見せません。弱みを見せないというのは他のあらゆるシーンでも徹底されています。わかりやすい例だと、警察に一度捕まりある理由でバットマンにぼこぼこに殴られるシーン、殴られたり、鏡に頭を叩き付けられ鏡が割れるほど強打をしても彼は爆笑しています。

もう頭が狂っているとしか言いようがないですね。またデントに拳銃を持たせ、自分の頭に銃を突きつけるシーン。実際弾が入っていない可能性もありますが、あのシーンも全然恐れていません。良くも悪くも通常運転のジョーカーでした。

そしてクライマックス、ビルでの戦闘シーンでビルの高いところから突き落とされるジョーカー。バットマンは人を殺さないので結果として落ちずに捕まったわけですが、あんな高さから突き落とされたら普通死にます。それでも落ちながら彼は爆笑していました。

『バットマンビギンズ』では例の悪役が最後に死を覚悟した際は目を閉じていましたからね。ジョーカーは最後の最後まで徹底的に狂っており、弱みを一切見せないとんでもない人間でした。

そんなジョーカー、狂っているといいつつもとんでもなく計算のできる人間なのは間違いありません。あれだけバットマンやデント、警察、市民が振り回されたわけですから。

デントに「俺が計算で動くと思うか?」と言うシーンがありますが、全て計算でしょうね。そうしないとあそこまで街を混乱させることは不可能です。よって狂っていつつもとんでもなく頭の切れる人間なのは間違い無いですね。


では、ジョーカーがそこまで悪事を働く目的とは何なのか?
おそらく「混乱」でしょう。

バットマンやデントに個人的恨みがあるようには思えません。彼は犯罪を楽しんでいます。しかもそれは犯罪行為を楽しんでいるのではなく、犯罪を起こすことで混乱する人々を見ることを楽しんでいるように思います。

そして彼はそれを「悪」とレッテルされること自体楽しんでいます。バットマンに対して「俺はお前を殺せない。大切なおもちゃだからな。」と言うシーンがあります。つまり、バットマンは法律的にはうやむやですが、一応街を守る超人的存在。

そしてデントはジョーカーからしたら完全なる善人。市民のヒーローです。この2人を殺してしまうと「善 vs 悪」の構図が成り立たなくなります。まぁデントは殺されかけましたが・・・

だからこそジョーカーはバットマンを何があっても殺さないのです。バットマンをぎりぎりのピンチまで追い詰めつつ生かすことで自分の存在を保っているのです。どこまでも狂人ですよね。

彼の目的は「混乱」。

だからこそ市民と囚人のフェリー爆発合戦を仕掛けたりもしましたし、「橋を渡るのはご用心」とテレビで声明を発表し、市民を混乱に陥らせたりもするのです。そして結果的に彼が仕掛けた混乱の中で最たるものはデントを半殺しにしたことでしょう。

今まで街のヒーローとして君臨していた正義の男を人前へ出れなくしたこと。これはジョーカーはとんでもなく喜んでいたことでしょう。デントが存在的に死んだのであとはバットマンをおちょくれば楽しめる。彼にとっては全てがゲームなんでしょうね。

常にベストな状態で犯罪行為を楽しんでるの死も恐れていないのかも。そのようにどこをどうつついても弱みが見つからないのがジョーカーなのです。まぁ唯一の弱みと言えば人間であることですかね。超能力はないので人間としてのキャパシティしかありません。しかしそれはバットマンも同じですね。バットマンも生身の人間ですから。

となるとジョーカーの欠点である普通の人間であるということは、精神面をえぐりでもしないとつつけないということになりますね。その精神面は狂っていて死にそうでも爆笑しているので・・・もうどうにもなりません。

まさに徹底した悪。だからこそ観てる側が娯楽として軽く観ても楽しめる映画ですし、深く掘り下げても楽しめるのです。


それでいて、時たまなぜか可愛げのあるジョーカー。

もう何なんでしょうねこの生き物w

鉛筆消すマジックやったり(実際とんでもないですがw)、自分のジャケットにダイナマイト仕掛けたり、ナースの衣装着てぴょこぴょこハネたり、起爆装置間違ってすぐに作動しないでかちゃかちゃやったり。なぜか笑えてしまいます。

実際こんなのが街に君臨してたら生きることに絶望すら感じそうですが、あまりにカリスマ性のある悪役だからこそ映画としては素晴らしい作品になったわけです。



しかしこの「ジョーカー素晴らしい」は我々観客の価値観が麻痺してる所以に思うことなのです。

『ダークナイト』のレビューをどこのサイトでもいいので少し確認してみてください。どこにでも必ず「ジョーカーカッコいい」「ジョーカー素晴らしい」「ジョーカーかわいい」というジョーカーを賞賛するコメントが存在します。

私もジョーカーはカリスマ性を持った悪役だと何度見ても思います。しかしこれっておかしくないでしょうか?ジョーカーがやってることは破壊行為であり殺人行為であり恐喝であるのです。

ゴッサム・シティを東京に置き換えてイメージしていてください。東京にテロリストのようなジョーカーが降り立ち、次から次へ人を殺し、大きな病院を破壊し、統治する指導者を半殺しにする、最終的には東京から出てけと警告するも橋は使うなと脅して身動きが取れなくなる・・・

イメージしただけでも恐ろしいです。完全なる戦時下の様相です。
しかしジョーカーがやってることはこういうことなのです。しかしそれを私たちは魅力的に思い、映画と言えども賞賛します。ヒース・レジャーの演技がすばらしかったという賞賛に限らずジョーカーを褒めるのです。

これはジョーカーがあまりにも圧倒的な悪の存在でありカリスマ性を持っているため私たちは価値観が混乱し麻痺してしまうのです。感覚こそ違えどタランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』のランダ大佐にも似たカリスマ性がありますね。

逆に『ノーカントリー』のシガーはハヴィエル・バルデムの演技は圧巻ですがあのキャラクターにはカリスマ性は感じず恐ろしいとだけ感じます。ジョーカーの設定にはその恐ろしさがあるのです。

圧倒的な悪は魅力を放つのです。

そしてその魅力に実世界で取り憑かれるとどうなるか。それは悪へと力を貸す行為をしてしまうようになるのでしょう。なんて恐ろしいジョーカー・・・

どうでしょうか。魅力的であると思うこと、それはヒース・レジャーの演技、そしてクリストファー・ノーラン監督の演出・設定が完璧過ぎるが故に我々の価値観が混乱してしまったのです。ジョーカーのファンの方たくさんいらっしゃると思います。

私もカリスマ性を持った悪役と思ってます。しかしそれは完全に価値観を狂わされてしまったということなのです。どこまでも凄まじい作品です『ダークナイト』は。


そんなジョーカーは完全なる悪なわけですが、バットマンは善でしょうか。
そうではないですよね。善とはつまりヒーローです。「ダークナイト」のフィナーレで、ゴードンはこう言います。

"He is not a hero."

そう彼はヒーローではないのです。では何なのか?その答えはDark Knightです。

つまり「暗黒の騎士」なのです。


次の記事では意外と見落とされているゴードン(警察)とデント(検察)の思惑の違いが生んだ悲劇やバットマンについてを詳細に解説していきたいと思います。


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徹底解説コラム2:映画に詳しくなかった私が『バットマン・ビギンズ』で受けた衝撃


徹底解説コラム3:『ダークナイト』初見の感想。ジャパン・プレミア会場は拍手喝采の熱狂になった!!


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徹底解説コラム5:シリーズで最も大切な『バットマン・ビギンズ』の概要 


徹底解説コラム 6:シリーズ一の衝撃作『ダークナイト』の概要


徹底解説コラム 7:伝説の壮絶なる終わり『ダークナイト・ライジング』の概要


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徹底解説コラム 9:『バットマン・ビギンズ』冒頭30分で描かれたバットマンの定義をしっかりと押さえてみる


徹底解説コラム 10:『バットマン・ビギンズ』中盤〜後半徹底解説!


徹底解説コラム 11:『ダークナイト』の脚本力


徹底解説コラム 12:『ダークナイト』のジョーカー徹底分析!


徹底解説コラム 13:ゴードン(警察)とデント(検察)の思惑の違いが生んだ悲劇


徹底解説コラム 14:『ダークナイト』におけるバットマンの存在意義を考えてみる


徹底解説コラム 15:『ダークナイト』のあらゆる魅力をまとめてみる


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