『バットマン・ビギンズ』中盤〜後半徹底解説!/『ダークナイト』シリーズ徹底解説コラム 10 - Cinema A La Carte

『バットマン・ビギンズ』中盤〜後半徹底解説!/『ダークナイト』シリーズ徹底解説コラム 10




前回は『バットマン・ビギンズ』冒頭30分について語ったので今回はそこからラストまでについてまとめたいと思います。

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ゴッサムに戻ったブルースは「殺された父親のように街を救いたい」と思うのです。
しかし街は父親が資産家として慈善事業などで活躍していた当時とは比べ物にならないくらい腐敗しています。マフィアが蔓延り、貧富の格差でホームレスが増えたり、強盗が増えたり・・・

それだけでなく、警察までも汚職に手を染め、終いにはマフィアの麻薬取引が摘発されたり邪魔されたりしないように警察がそれを警護するというあり得ない癒着まで。そんな街で慈善事業をしたところで貧困層を救えるくらいで、蔓延る悪は根絶できません。

そこで彼は何を思ったか。そんな腐っていくゴッサムシティーの中でそういった汚職と戦っている人物と手を組もうということです。しかし資産家ブルースウェインとしてそんなことをしても金持ちの遊びと思われ相手にされない可能性もある。

なので彼は超人的存在としてもう一人の自分を解き放つことにするのです。ここでバットマンの登場です。とは言っても彼はスーパーマンでもスパイダーマンでもなく、ただの人間。装備を付けなければそんな存在にはなれません。

ではどうするか?

彼には2つの幸運がありました。
1つ目は資産家であるのでお金が有り余るほどあるということ。
もう1つは父親が作った会社に役員復帰し、応用科学部というほとんど使われてない部署のフォックスと出会ったことです。

これがバットマン誕生の決め手となります。

この部署は言うならば庶務課的なアレです。会社の片隅の部署です。
ウェインカンパニーは総合商社なので製品開発や実験も行なっています。
しかし製造は海外なので(冒頭30分にもダンボール出てきますね)、この応用科学部は完全に陸の孤島的部署で捨てられたも同然の部署でした。

が、ブルースウェインはここに目を付けます。
そこには製品化されていない軍事用スーツや、軍隊の車のようなものが溢れかえっていたのです。これは使えると思ったブルースはフォックスからそれを借ります。

最初は何も知らなかったフォックスですが、行動が明らかになっていくに連れ彼がバットマンであるということに気づいたのでしょう。ここは細かな描写がありませんが、中盤でブルースがクレインの毒にやられた際に解毒剤を製造しているので、その時点ではバットマンであるとわかっているはずです。

『ダークナイト』では新しいバットスーツを製造しているのでこっちでは確実にわかってますね。

そうして2つの幸運からバットマンは誕生します。
仮面を被った彼はまず警察に中で正義を保っている人間に接触します。ゴードンです。
映画の冒頭でブルースの両親が殺され彼が警察に保護された際、彼を気遣ったのがゴードンでした。

ふむ、だから映画の冒頭30分は見逃せないのです。
そしてこのゴードンが子供時代のブルースを気遣ったシーンは『ダークナイト・ライジング』のクライマックスへのとんでもない伏線にもなっているのです。
目に焼き付けておきましょう。

こういった細かい伏線をしっかりと入れ込むところがさすがクリストファー・ノーランです。続いて彼は地検で正義溢れる人物にも接触します。これが幼なじみのレイチェルです。

バットマンの正体を知るアルフレッドとフォックス、バットマンの正体を知らないゴードンとレイチェル。正体を知っている知っていないはあるにせよ、こうしてバットマンは悪を倒していく体制を整えていきます。

『バットマンビギンズ』の一応の悪役はキリアン・マーフィ演じるクレイン博士と、トム・ウィルキンソン演じるマフィアのファルコーニです。この二人とその部下が色々と悪さをしていくので。なのでこの2人をバットマンはターゲットとします。

そして紆余曲折、ドラマ性を保ちながら二人を一応倒すことが出来ました。しかし・・・別に黒幕がいたのです。ここは詳細は上げないでおきますが、黒幕の目的はゴッサムシティを破滅させること。

『ダークナイト』でジョーカーが行なっていたことは街の混乱ですから、冷静に考えると『ダークナイト』よりも『バットマンビギンズ」』の方が街はピンチに陥っているんですよね意外にも。

ここで黒幕はどうやって街を破壊するかというと、気圧で水道管が全て破裂する装置を使用するのです。この装置、皮肉なことに製造したのはウェインカンパニー。元々は戦争で敵地の水源を気化させるための軍事装置なのですが、それを悪用されてしまいます。

しかも水道水に幻覚剤まで撒き、吸った人間は幻覚が見えるといういらないおまけまで付けてます。つまり、破裂した水道管の水を吸うと毒を吸ったのと同じことになります。街の水道管破裂=街の人全員毒を吸う=街で殺し合い=街の崩壊、なのです。

この黒幕が街を破壊する目的はジョーカーのように愉快犯的なものではありません。
「コンスタンティノープルやローマも一度は破滅したように腐った街を破滅させる」と台詞で言ってるのです。つまり切り口によっては究極の正義とも言えなくもないのです。

この微妙な感覚を攻めたクリストファー・ノーラン、やはり天才(笑)
そしてそこをうまくつついて『ダークナイト・ライジング』に活かした点、やはり天才(笑)

そして黒幕との最終決戦。何とかバットマンは勝利します。
しかし、この決着の付け方で冒頭30分がまた生きてきます。
そう、バットマンは人を殺さないのです。

「正義は秩序のため、復讐は自己満足のため。」
正義のためには悪を倒すのではなく、悪を根絶すれば良い。
つまり悪の目的が達成されなければ良いのです。

なので黒幕は最後はバットマンに殺されず、実質列車事故に巻き込まれ死亡するのです。
しかしなぜかこの黒幕…『ダークナイト・ライジング』にかなりの影響を持って再登場します。これにはただただ驚きました…

街は何とか平穏を取り戻します。
ブルースウェインは会社の社長を応用科学部のフォックスにし、会社としてビジネスの立て直しも図っていきます。またレイチェルには正体がバレます。


レイチェルは言います。
「ブルースの素顔は実は仮面、悪も恐れるバットマンこそあなたの本当の姿」と。

ブルースは反論します。
「今の素顔が自分自身だ」と。

レイチェルはこう言います。
「街に本当の平和が訪れて、バットマンの必要が無くなった時、きっと本当のあなたにまた会える。」と。

このシーン、『ダークナイト』が公開されるまでは言葉悪いですが、とりあえずうまいこと畳むためのシーンかと思ってました。しかし『ダークナイト』の結末がアレですよ?もうアレを知ってしまってからはこのシーンは泣かずにはいられないのです。

「必要が無くなった時、"また"会える。」

いやぁ・・・凄まじいですこの構成。

そしてラストシーンはバットマンとゴードンの会話。それでも悪は無くならないとゴードンは言います。そしてその後ゴッサムには究極の悪ジョーカーが降臨するのです。それが描かれたのがあの『ダークナイト』になります。

『バットマン・ビギンズ』、決して難しい話ではありませんが、常に冒頭30分のバットマンの定義を頭に入れておくと楽しめると思います。是非冒頭30分を堪能してから、映画全編を楽しんでほしいと思います。


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