焦点を絞り人間性を炙りださせた傑作!スピルバーグ新作『リンカーン』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレ解説あり] - Cinema A La Carte

焦点を絞り人間性を炙りださせた傑作!スピルバーグ新作『リンカーン』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレ解説あり]

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基本情報
日本語タイトル
『リンカーン』

原題
"Lincoln"

監督
スティーブン・スピルバーグ

出演
ダニエル・デイ・ルイス、サリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズ、デヴィッド・ストラザーン、ハル・ホルブルック、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ジョン・ホークス、ジェームズ・スペイダー

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/

ストーリー
エイブラハム・リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)が、大統領に再選された1865年。アメリカを内戦状態に追い込んだ南北戦争は4年目に突入したが、彼は奴隷制度を永遠に葬り去る合衆国憲法修正第13条を下院議会で批准させるまでは戦いを終わらせないという強い決意があった。そのためにも、国務長官ウィリアム・スワード(デヴィッド・ストラザーン)らと共に憲法修正に必要な票を獲得するための議会工作に乗り出す。そんな中、学生だった長男ロバート(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が北軍へと入隊し……。(シネマトゥデイより)

予告編







感想
ダニエル・デイ・ルイスがアカデミー賞主演男優賞を受賞した『リンカーン』。
タイトルそのまま、アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンを描いた映画です。
さすがスピルバーグ、見事にリンカーンを"人間として"浮かび上がらせることに成功しています。

本作の物語はとてもとてもシンプルです。
リンカーンの生涯を描く一大叙事詩なんかではありません。
奴隷制度を葬り去る"合衆国憲法修正第13条"の法案を通すだけの話です。

そのための数ヶ月の政治的論争、策略、そして議決の様子が2時間半で描かれます。
つまり南北戦争やゲティスバーグ演説等をしっかり描いてなどいません。
日本の歴史教育の視点で考えると完全に行間部分を描いた映画というわけです。

私はそれ故に知らなかった歴史の一部を垣間見ることができとても楽しめました。
また焦点を絞っているが故に浮かび上がってくるリンカーンの人間性も大いに魅力でした。
策略の話なのでその辺りも面白みがあり、歴史の結果はわかっていても大いに緊張するクライマックスでもありました。

とても見応えのある作品。
下手な捻りもない王道演出で感動させる辺りさすがスピルバーグといったところでしょう。





予想はしてたが日本での評価は良くない
私は本作はラスト数分以外完璧な映画だと思いました。
ラストに関しては後述しますが、それ以外何の穴もありません。
しかし、日本の映画サイトをいくつか見たら評価がよろしくないです。

"シンプル過ぎる"、”面白みがない”、"セリフ劇についていけない"などなど。
これは前述の通り"合衆国憲法修正第13条"の法案を通すだけの話故なのでしょう。
エイブラハム・リンカーンの人生を描いた一大叙事詩として想定して鑑賞されてしまうとそうなるのかもしれません。

そもそも"合衆国憲法修正第13条"というものは日本の歴史教育では細かく習いません。
リンカーン大統領の時代に奴隷制度が無くなった程度しか我々は習わないのです。
そしてスピルバーグの映画であるという点などからも我々は勝手に超大作をイメージしてしまうのでしょう。

アメリカでは本作は当然大絶賛されています。
それは簡単なことでアメリカ人にとって"合衆国憲法修正第13条"というのは知ってて当たり前のことだからです。
日本史を我々が習った通り、アメリカではアメリカ自国の歴史を当然習います。その差も今回は影響したのでしょう。

私は公開前から映画評論家の町山智浩さんのポッドキャスト等で本作のストーリーが
"合衆国憲法修正第13条"の法案を通すだけの話と耳にしていました。
それ故に映画を見るスタンスは「シンプルだけれど傑作ってどんなものだろう?」というものでした。

それ故に私は素直に本作を楽しめたのかもしれません。
というかこういうのを事前に耳にすると予習する癖がありましてw
合衆国憲法についてあれこれ調べたりもしたのでとてもとても楽しめました。

みなさんが鑑賞される際に細かく勉強するまでは必要ありません。
ただ、繰り返しになりますが本作はリンカーンの一大叙事詩ではありません。
"合衆国憲法修正第13条"の法案を通すだけの話。政治の話。それを頭に入れておいてください。


名優ズラリ!演技が光る『リンカーン』
エイブラハム・リンカーンを演じたダニエル・デイ・ルイスが史上初の3度目の主演男優賞を受賞しました。
我々はリンカーンの映像を生で見たことはありません。
しかし、この演技を見ると、彼がリンカーンとして存在しているかのような錯覚を抱くほどのめり込みます。

ダニエル・デイ・ルイスというと『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などの大味の演技も名物ですが、
本作では静かに淡々と、しかしその隙間から覗く情熱や思いを感じることができます。
静かなリンカーン故に、時折見える荒々しい部分がまた光るのです。ホントこれはお見事ですよ。


そんなダニエル・デイ・ルイスの演技はアカデミー賞お墨付きなわけですが、周りの俳優陣がまたお見事でして。
一人ずつ名前を上げたら日が暮れてしまうほど語り明かしたいです。
一先ず、サリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズの二人について語らせてください。

サリー・フィールドはリンカーンの妻を演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。
私見ですが『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイよりサリー・フィールドが受賞するべきだったと思います。
まあサリー・フィールドは受賞経験もありその辺りの事情もあるわけですが、とにかく見事な演技でした。
偉大なる大統領の影に偉大なる妻あり、と改めて思いました。

そしてトミー・リー・ジョーンズですよ。
アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
奴隷解放急進派のタデウス・スティーブンスを演じています。

映画の後半彼は映画内を書き回します。
奴隷解放の急進派故に、法案が不十分と言うのです。
そして彼にはある秘密が…最後はその秘密と絆に泣かされます。

アカデミー賞レースでは有力候補ですが、受賞は『ジャンゴ』のクリストフ・ヴァルツに譲る形となりました。
まあクリストフ・ヴァルツほぼ主役でしたのでこれは致し方なしでしょう・・・
しかし映画において涙を誘った最後を含めて見事な存在感でした。

それ以外にもデヴィッド・ストラザーン、ハル・ホルブルック、ジェームズ・スペイダー、
ブルース・マッギル、ジャレッド・ハリス、ジョン・ホークスと名優揃い!
大人気ジョセフ・ゴードン=レヴィットもリンカーンの息子で出演してます。

ダニエル・デイ・ルイスの卓越した演技だけが先走りせず、
その名演技を名優がしっかり下支えする。
そのバランスは名優陣故、そしてスピルバーグの演出故に機能したのだろうと改めて思いました。

ところで、驚きのデータがありまして、
スピルバーグの映画でアカデミー賞の演技賞を受賞したのは
今回のダニエル・デイ・ルイスが何と初めてなんです!

あれだけ名作を生み出しているスピルバーグなのに・・・
意外なこともあるもんですね。
何はともあれ、この演技合戦、映画好きなら見るしかないですよ!




たくさんの満足と1つの不満
さて、ここまで書いてきておわかりの通り、私『リンカーン』大好きな映画です。
試写会で見終わった時は感動と余韻で何も言葉を発したくないほどでした。
ジョン・ウィリアムズの音楽がまた王道で見事でしてね。今でも聴くと映画の場面が蘇ってきます。

完璧と思っていたのですが先日1つ不満に思うようになってしまいました。
ニューズウィーク日本版に書いてあったレビューの指摘に納得をしてしまいまして。

"最後は南北戦争終結後に妻と落ちあって劇場へ行く後ろ姿でいい"との記述。

これ確かにな・・・と思いました。
本作のラストは王道なんですが確かにちょっと感傷的過ぎる気もしました。
リンカーンの最後がどうなったかは歴史が示している通りです。

だからこそリンカーンの生前の後ろ姿で終わるラスト・・・
ああ、確かにこっちの方が感動できたかもしれません。
決してマイナスではありませんがよりベターな指摘をニューズウィークがしてしまいましたねw

惜しいところです・・・


さて、不満も書きましたが、焦点を絞った政治劇であっても
1人の歴史に残る偉人の人間性に迫った本作を日本人が見る価値は十分にあると思います。
真のリーダーの姿を綺麗事だけでない真の人間として目撃することができます。

今の日本、昨年政権が自民党に戻りました。
安倍首相は今現在様々なことに挑戦しています。賛否もありますね。
大切なのは結果を残すことです。それを期待したいと映画を観て改めて思った次第であります。




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