美しく切なく・・・青春の記憶を呼び起こしてくれる『言の葉の庭』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

美しく切なく・・・青春の記憶を呼び起こしてくれる『言の葉の庭』【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]


基本情報
日本語タイトル
『言の葉の庭』

監督
新海誠

公式サイト

ストーリー
靴職人を志す15歳の高校生タカオは、雨が降るといつも学校をさぼって公園で靴のスケッチに熱中していた。そんなある日、彼は27歳のユキノと出会い、雨の日だけの再会を繰り返しながらお互いに少しずつ打ち解けていく。タカオは心のよりどころを失ってしまったユキノのために、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作ろうと決心する。(シネマトゥデイより)

予告編


珍しく邦画のレビューであります。
というか今年初ですねはい(笑)
フォロワーさんに勧められた『くちづけ』観に行かないと早く・・・

さて本作全くノーマークだったのですが、Youtubeサーフィンしてたらたまたま予告編に遭遇して気になって観て参りました。
46分という短編と言いますか中編のアニメーションなんですが…いやはや素晴らしいの何の…

『秒速5センチメートル』の新海誠監督作品で、
雨の日に学校をサボる靴職人を目指す高校生の青年とたまたま出会った27歳の女性の交流を描く物語になります。

5月31日より公開されており、iTunesで独占先行配信で既に購入することもできます。



46分という短い時間で物語は起承転結をしっかり描き、かつその先の未来もしっかり暗示させて映画は幕を閉じます。

ストーリーがしっかし主人公二人の心の内面を描いている点、新宿駅周辺と新宿御苑のリアルな描写、あまりに美しい木の葉と雨の描写、感傷的な音楽、それらが見事に融合し、新海監督ならではの世界が見事に広がっていました。




今年鑑賞している映画では例年以上に感じるのですが映画は人それぞれ好みや生きてきた境遇で感じるものが異なります。昨年だと『桐島、部活やめるってよ』が最も顕著にそれを表していたと思います。

ハマった人は映画の評価だけでなく自らの高校生活を思い出し、その過去と映画を照らしあわせ涙したり心沈んだり、そして語りたくなったりと熱狂的な反応をし、響かなかった方には独特の時間軸構造もあり意味不明の映画として酷評されていました。

本作は美しさがあり、物語も46分という短編として起承転結をしっかり押さえており、『桐島、部活やめるってよ』より遥かに万人受けする傑作だと思いました。

しかし、私にとってこの映画は今年の『桐島、部活やめるってよ』ポジションのような気もします。私の高校生活とは全く相反する高校生活がそこに描かれていましたが、小さなエピソードや台詞が高校時代だけでなく、中学時代、大学時代の忘れていたことを思い出させたのです。

新宿御苑に一時期一人で通ってた時期もあり、本作の中心となる日本庭園をリアルに何度も見て空気を吸っていたのも自分の過去を思い出させた要因かもしれません。

そして物語に感動しただけでなく、自分の過去にまでそのパワーは浸透し心の奥底に響いたのです。映画のクライマックス泣かれた方多いようですが私は泣きませんでした。帰り道何か色々思い出してうるっとしたのです。いい意味でも悪い意味でも。

基本的に相当ポジティブ気質な性格なので、嫌なことなどはサクッと忘れるようにしています。ただ人間て実は記憶したことは忘れないんですよね。思い出せない、思い出さないだけなのです。その思い出していなかったものが様々溢れ良い思い出と悪い思い出とが入り混じり切ない気持ちになりました。

何か語りモードに入ってしまいましたが、つまるところこの映画は私の心の奥底にまで響いた今年の『桐島、部活やめるってよ』ポジションの傑作であったということです。



物語に関しては短編である以上少しでも語るとネタバレになってしまうので語りません。冒頭書いたように雨の日の新宿御苑で出会った青年と女性の心の交流を描いた物語です。女性の謎の解き明かし方、そして最初女性に抱いた「ダメ女と見せかけて・・・」の伏線が見事でした。

本作の魅力は起承転結見事なストーリーも当然ですが、私はそれ以上にリアルなアニメーション描写だなと思いました。今までの新海監督の映画もそうですが、とにかくリアルな世界を描写するのです。

本作ではシンプルに新宿駅周辺と新宿御苑。この描写がホント凄まじいのです。リアルな新宿駅と新宿御苑そのものなのです。空撮的な描写なんてGoogle Earth見てるかのような精細さで鳥肌ものです。

新宿を知らなくても街の描写としてとても巧みなことはきっとわかると思います。新宿知ってる方ならもう驚くしかないでしょう。Twitterでリプ頂いたのですが毎度のこのリアル描写に批判もあるようですね。

いやいや、これがいいのではありませんか。リアルな世界での話なんだから実写でもいいとお思いの方もいるでしょうが、ん〜これ実写だと私冷めてしまうと思います。

光の当たり方や突然雨が上がり光が差す描写などはアニメーションでないとできない演出です。妥協なきリアルな描写にアニメーションだからこそ感動するストーリーや演出が見事にマッチしてるのです。新宿ドコモビルの上を横切るカラスとか、新宿駅の線路に咲いている花からのホームの視点とか、そういったリアルな世界のアニメーション描写が見事なのです。

そしてそれこそが魅力なのです。
この詳細描写とにかく素晴らしいなと思いました。

それと新緑と雨の描写、これがまたもう素晴らしいの何の。
雨の描写がとても美しいわけですが、これ雨単体の美しさではなく雨と新緑の融合による美しさだと思うのです。冒頭でやられましたからねこれ。最後の雪描写も良かったです。

音楽も人の描き方もとにかく美しい。
私はジブリが大好きでCGアニメのピクサーも大好きです。
ジブリの温かみある映像好きですし、CGなのに心のこもったピクサーも大好きです。

それとはまた違ったこの新海監督のテイストも大好きです。46分という短編でありましたが、是非2時間のドラマも次観たい所です。大変だと思いますが(笑)


今年観た映画、様々な傑作があります。

エロ熊全開の下品ムービーかとおもいきや映画愛に溢れ最後は感動と笑顔をくれた『テッド』。

オサマ・ビンラディン暗殺までのリアルなサスペンスと緊迫の突入シーンを描き、最後はそれでも世界に平和は訪れないという痛烈なメッセージを残した『ゼロ・ダーク・サーティ』。

登場人物全員ダメ人間、だけれどもダメならダメなりに元気に笑顔に生きていけばいい。心を通い合わすことが大切だと教えてくれた『世界にひとつのプレイブック』。

タランティーノ節炸裂で西部劇を彼らしくどこまでも勢いを持ってどこまでもバイオレンスに描き娯楽の究極性を教えてくれた『ジャンゴ 繋がれざる者』。

不倫破滅劇という残虐な物語をこれでもかと美しい映像とセット、衣装で彩り、舞台演出を加え不思議な感覚を味あわせてくれた『アンナ・カレーニナ』。

両足切断という悲劇に遭いながらも人間の本能的部分を綺麗事でなく力強く、どこまでも力強く見せてくれた『君と歩く世界』。

どこまでもエンターテイメントで笑いあり、涙あり、歌あり、ダンスあり、で社会問題まで言及したインド映画『きっと、うまくいく』。

バズ・ラーマン監督がド派手演出と抑制演出を巧みに使い、一人の孤独な男の詠歌盛衰をどこまでも美しく残虐に描いた『華麗なるギャツビー』。

スマトラ沖地震の津波で被災した家族の生還と再生を描き、賛否両論と大きな拒絶反応も巻き起こしている『インポッシブル』。

とにかく様々な傑作がありました。
それらはどれも傑作であり、ここに書いてないその他多数の傑作映画もあります。それらは一概に比べられるものではありません。

そんな中本作『言の葉の庭』は美しくリアルな映像と切ないストーリー、それら作品の持つクオリティだけでなく自らの記憶に触れた作品として当然1つの傑作として今年の年末また語るであろう作品の1つです。

私この作品に関して他の方のレビューも何も見てないで今レビューを書いています。評価いいのか悪いのかもわかりません。ただ私には心に響きました。記憶に触れました。その切ない気持ち、これって実は気持ちいいものではないんですが、それを呼び起こしてくれたこと感謝したいです。

いい作品でした。
劇場公開中の映画ですが、iTunesで独占先行配信もしており2000円でダウンロードして何度も観ることができます。(HDは2500円)



近くに劇場ある方は是非劇場で、無い方はiTunesでダウンロードしてこの映画、是非堪能してほしいと思います。

『言の葉の庭』、オススメです!




written by shuhei