『風立ちぬ』、宮崎駿監督の破壊衝動、得意技と矛盾 /『風立ちぬ』連載コラム6 - Cinema A La Carte

『風立ちぬ』、宮崎駿監督の破壊衝動、得意技と矛盾 /『風立ちぬ』連載コラム6

宮崎駿監督の作品には様々な破壊描写があります。
そして数々の戦争描写もあります。それらの歴史と今回の『風立ちぬ』のそれをまとめていきます。



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さてだんだんと悟りの境地へ深堀りを始めたこの解説ブログ。
まだ鑑賞してから一日経ってないんですけどねw

今回は宮崎監督の戦争観、破壊衝動、得意技と矛盾について書いてみたいと思います。

宮崎監督の映画には破壊の様がよく登場します。
『崖の上のポニョ』の洪水シーンで街が飲み込まれる様。
『ハウルの動く城』での空襲シーンと壊れる城。
『もののけ姫』『天空の城ラピュタ』『風の谷のナウシカ』然りです。

それは宮崎監督の破壊衝動によるものでもあり、我々観客もそれを一種見ものとしています。宮崎映画のカタルシスであると同時にアイコン、エンターテイメントでもあるのでしょう。

しかしその破壊衝動は矛盾を含んでいます。

なぜなら宮崎監督は破壊すると同時に平和を求める人でもあるからです。
『ハウルの動く城』での反戦的メッセージなどそれが諸に出る時もあります。
しかし同時に宮崎監督は戦闘機や戦艦といったメカが大好きです。

破壊衝動を持ちながら、反戦平和的思考を持ち、戦闘機が大好き。
これは矛盾というか一概に言葉で表現できないものを持っています。
言い換えれば、目の前にあるものを壊したいと思うと同時に愛したいと思っているのです。こう表現すると少し矛盾は薄まるでしょうか。

二面性に見えつつも実は一面性なのかもしれませんね。
その上に『風立ちぬ』が立つのです。

宮崎監督は昭和16年生まれ、戦争が終わった時4歳でした。この頃の子どもたちは戦闘機などメカが大好きでした。しかしその後その子どもたちが大人になる過程では学生運動が起き、平和活動へ邁進していったのです。これもいささか矛盾であり、実は二面性に見える一面性なのかもしれませんね。

宮崎監督は暇さえあれば戦闘機の絵などを描いてるそうです。
そういった矛盾に見えつつも矛盾してないかもしれないものや、特技であり大好きな戦闘機を扱わせながら、戦争の時代を避けられない映画を宮崎監督が作ったらどうなるか?

鈴木敏夫プロデューサーはこれに興味が湧いたようです。
そして『風立ちぬ』を提案したのだそうです。

戦争の時代の物語、破壊衝動はあるけれど戦争は望まない宮崎監督。
ただ空襲シーンを撮って「戦争って嫌だよね」なんて軽いことをする監督ではありません。そうした結果、『風立ちぬ』はあのような映画になったのです。

主人公の堀越二郎は美しい飛行機を作りたかったわけですが、結果は美しい戦闘機ができました。夢のシーンで何度もカプローニおじさんが"人を乗せる飛行機"の魅力を解きます。
これは一種反戦メッセージでもありますよね。

戦争の時代、戦闘機を作らなければならなかった矛盾を抱えながらも、
一切矛盾しない一途な愛を菜穂子と貫き"力を尽くして生きた"二郎。
冷静に見えて二郎はきっと常に矛盾と戦い苦悩していたのでしょう。

しかし二郎はあまりにも、私たちが真似できないほど"力を尽くして生き"ました。それがあのようなひたむきさを生んだのでしょう。それが宮崎監督自身の葛藤にも見えてきますね。

破壊衝動と平和を願う気持ち、戦闘機好き、そして愛。
そういった矛盾との戦いを『風立ちぬ』で見ることができます。

同時に宮崎監督が大好きな飛行機のシーンが大量に登場。
これはきっと相当楽しく作ったんじゃないかなって思いました。
矛盾と戦わせながら得意な戦闘機をたくさん登場させた本作。

魅力的としか言えないわけです。
深く探求すればするほど、この映画の味がどんどん出てくるのでした。

次回は『風立ちぬ』と『もののけ姫』の比較をします。
もう悟りの境地です(笑)

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