『風立ちぬ』の見どころ、そして世界観・時代の流れ / 『風立ちぬ』連載コラム2 - Cinema A La Carte

『風立ちぬ』の見どころ、そして世界観・時代の流れ / 『風立ちぬ』連載コラム2


今回の記事では『風立ちぬ』の"見どころ"と"世界観&時代の流れ"をまとめていきます。




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1:見どころ

宮崎駿監督は『もののけ姫』の際に
「人は見どころを聞いてくるけど全部見どころだ!」
と仰っていました。

そりゃそうですよね(笑)


なので全部見どころ、なわけですが整理もしておきましょう(笑)

キャラクター編
・主人公堀越二郎のひたむきな姿勢
→二郎はぶれません。夢を追い続けます。その姿勢見習いたくなります。

・ヒロイン菜穂子の切なさと美しさ
→私の中ではジブリ映画史上ナンバー1のヒロイン。美しく切なく…泣かされました。Google+にてある女性が「菜穂子は男性の幻想だ」と批判してました。しかしTwitterの女性がこう仰ってました。「菜穂子は男性の幻想で、女性の理想。」。納得です。

・カプローニおじさんの絶妙なスパイス
→これ完全に予想してませんでした。二郎と出会うわけのないイタリアの飛行機設計士カプローニが映画に何度も何度も登場します。これが素晴らしいのなんの。実話をベースにした現実世界のフィクションであってもこの使い方は宮崎駿監督にしかできないなと。野村萬斎さんの声がまたいいんだなこれが。カプローニおじさん抜きにしてこの映画は語れません。

・黒川&夫人
→見ればわかる溢れる魅力w

・本庄
→二郎のふわふわとした印象と逆にキリッとしていて野望を持っている印象。しかし良い奴。二郎と良きライバルであり理解者でもあり、二郎の人柄は彼が引き出したといっても過言ではないです。


他にも二郎の妹が健気だったり、カストルプおじさんが素晴らしかったり、と魅力的なキャラクターがたくさん登場していました。



ストーリー編
ストーリーに関しては実話をベースにフィクションにしています。
これ過去の宮崎作品ではありえなかったことです。
なぜならファンタジーや神話がそこにないからです。

だからこそ本作は大人向けでもあります。
飛行機の話や戦争の話、恋愛や生きる話の積み重ねは子供には難しいでしょう。
ただ、ここ数作品続いた終わりの着地点が見えない制作はやめたようで物語にしっかりと筋が通っていたように思いました。
しかしそれは予定調和ではないのです。

実話ベースの現実世界での映画、みなさんならどんなラストを想像しますか?
やっぱ死に際ですかね?それとも次のステップへいく後ろ姿でおしまい?
いやいや、そんな予想通りになんて終わりません(笑)

松任谷由実さんも会見で仰っていましたがなんとも不思議で切ないラストでした。
これを完全に想像できた人なんていないでしょう。

素晴らしいラストでした。


映像編
・現実と夢の世界にたくさん登場する飛行機
→これはもう飛行機の設計技師を目指す二郎の映画ですからたくさん登場します。素晴らしいのが実在した飛行機だけでなく夢の中で夢の飛行機も出てくる点です。繰り返し観たいと思える魅力でもあります。

・時代によって異なる汽車
→本作ではたくさんの機関車も出てきます。ぼーっと観てると気付かないところでもありますが、シーンごとに汽車が毎回違うんです。

・戦前の昭和の町並みや細かな描写
→さすが宮崎駿監督で細かな時代描写が映像を美しく際立たせます。建造物から細かな道具、着ている洋服まで美しい映像が全編を支配します。

・美味しそうなサバの味噌煮(笑)
→ジブリ映画の名物といえば美味しそうな食事(笑)本作では二郎の学生時代にサバの味噌煮が出てきます。これほんと美味しそうで…空腹でジブリ映画を観てはいけません…

・関東大震災
→本作は戦争の時代を挟みますが空襲シーンなどはありません。しかし関東大震災のシーンは身体に力が入るほどの迫力で描かれています。地震の瞬間、そして広がる火災、逃げ惑う人々…これはアニメなはず…とんでもない迫力で息を飲みました。

・空と風
→飛行機がたくさん登場するので美しい空がたくさん登場します。飛行機がダイナミックに空を飛ぶシーンも大迫力。そしてタイトルにも入っているように風が象徴的に使われます。今までもジブリ映画では人物の心が動くと風が吹いたりしていました。今回はいつも以上にそれが印象的に使われています。

・二郎と菜穂子の恋愛模様
→ジブリ映画でここまで大人な恋愛描写に踏み込んだ作品はありません。とは言っても観てて気まずくなるような描写にしない辺りさすが宮崎駿監督。美しいんですよこの二人の恋愛模様が。特に庭から◯◯なシーン…あんな描写されたら泣くだろ、泣いたよ…

・日本と世界
→本作は群馬県藤岡町に始まり、東京、名古屋、各務原、軽井沢、八ヶ岳、ソ連、ドイツ、夢の中のイタリアなど様々な場所が登場する大スケールの映画です。これら場所場所の映像は素直に楽しいです。



他にも美しき映像の数々、ここはどんな映画でもジブリ映画の変わらないクオリティですね。今回もさすがとしか言いようがありませんでした。


音楽と音響
・久石譲さすが
→いつも通り久石譲さんの作曲。今回の『風立ちぬ』、非常にシンプルなテーマ曲です。30秒予告に出ているあの軽やかなテーマ曲が繰り返しかかります。それが映画全体の空気感を作っているので、そこから劇的な展開になると音楽共々一気に盛り上がり途中で涙してしまうのです。特に菜穂子周りの時の音楽に…繰り返し聴いて心に染み込ませたいです。

・効果音
→最近情報出始めましたが本作は効果音を人の声で表現しています。ただこのクオリティが半端ないんです。最初の二郎の夢の中の飛行機のポンピング以外人の声だと思わなかったです。終わったあとにそいえば人の声だったと思いだしたくらい。すごい再現力です。

・モノラル録音
→本作はよくある5.1chとか6.1chとかの音響設備を使ってません。『風の谷のナウシカ』へ原点回帰ということでモノラル録音をしています。しかし観て思いました。古臭くないんです。むしろ音へ印象的に耳を傾けていた気がします。ものは使いようですな。

・テーマ曲"ひこうき雲"
→荒井由実(松任谷由実)さんのデビュー曲"ひこうき雲"。この曲が本作のテーマソングですが、かかるのは1回です。その使い方、お見事でした。涙を誘います。


声優陣
主人公二郎の声を担当した庵野秀明さんですが、最初違和感ありました。
これは多くの方も思ってるようです。しかし、慣れるんです。
映画が終わる頃この声が完全に染み付き、二郎の人生はこの声だからこそ感動できたんだと思うほど。
これ映画の熱量にもよるみたいですけどね。最後までイマイチだったという声もありますので。

菜穂子の声を演じた瀧本美織さん。
これは文句なしでしょう。文句ある人いますかね?
いないでしょ?(笑)

本庄を演じた西島秀俊さんとカプローニおじさんを演じた野村萬斎さんはナイスアシスト!この二人、ある意味映画をしっかり支えたような印象でした。

志田未来ちゃん(さんw)や竹下景子さん、大竹しのぶさんもさすがの声。

そして西村雅彦さん、いやあ、いいですね!
黒川のキャラクターがコミカルなのもあってそれが見事!
大柄な印象の西村さんが小柄な黒川演じてたと思うといい意味で笑えます(笑)

ストーリーの部分が大人向けであり、単純にそれで楽しめる楽しめないはあるでしょう。
難しく感じる人もいるでしょうし、私みたいにガツンと心に響く方もいるでしょう。
それは個々人が自由に思えばいいと思います。

映像や音楽、音響に声優、特に映像周りのクオリティ、
これはジブリ映画史上最高レベルでしょう。
いくらでも映画を堪能できる切り口がある映画です。

そこは天下のスタジオジブリ×宮崎駿監督です。
彼の実話ベースのフィクション、楽しむに越したことはないですよ!



2:世界観と時代の流れ

宣伝でもネットの記事でも繰り返し言われていますが『風立ちぬ』の主人公は堀越二郎。
これは零戦を設計した設計技師の堀越二郎の名前です。
しかし本作は実在の堀越二郎の伝記映画ではありません。

『風立ちぬ』の堀越二郎は、
実在の人物堀越二郎と同時代に生きた文学者の堀辰雄の二人を混ぜて、
新しい堀越二郎を創りあげて描いた時代フィクションなのです。
その4のコラムで解説しますが、ヒロイン菜穂子は実在しません。

堀越二郎も堀辰雄も菜穂子という人物と結婚した歴史はありません。
そういったフィクションの人物であることを頭に入れておくべきです。

しかし、そんなフィクションの人物の映画という度は現実の歴史の中で繰り広げられていきます。 

昭和初期から始まり、関東大震災、世界恐慌の煽りを受けた不況の時代、
そして戦争へと突入していく時代、戦後までを描いています。
しかも国内だけでなくドイツやソ連のシーンまでです。

さて少しこの時代と主人公について考えていきたいと思います。


※ストーリーと時代整理になるため二郎の歴史のネタバレを含みます。
 そこで二郎が何をしたかという部分は失せますが未見の方は個々人でご判断ください。


1903年(明治36年)に堀越二郎は生まれます。
この年、アメリカではライト兄弟が初めて有人動力飛行に成功します。
これは運命を感じますよね。

それから20年、1923年(大正12年)9月1日に関東大震災が起きます。
この時二郎20歳、ここは映画ではかなり重要なシーンとして描かれています。
関東大震災の映像も凄まじいものでした。

1927年(昭和2年)、二郎は東京帝国大学工学部航空学科を卒業し、
名古屋の三菱内燃機KK(現 三菱重工業)入社します。
この時二郎24歳。英才として入社し腕を振い信頼も得ます。

1929年(昭和4年)、ドイツのデッソウにあるユンカース航空機へ視察へ。
この時三菱の人間だけでなく軍も動向。言うまでもなく戦争への伏線。
この時二郎26歳。それから二郎は西回りで世界を回りながら帰国へ。

1933年(昭和8年)、開発がうまくいかず失意の二郎は軽井沢へ。
ここで運命の出会い(再会)と人生を変える出来事が訪れる。
この時二郎30歳。このシーンはドイツ人とのやり取り含めて映画内でも相当好きなシーン。

1933年(昭和8年)、二郎が設計主任を務めた七試艦上戦闘機が各務原で初飛行。
この後二郎は九試単座戦闘機設計主務者へ。
軽井沢と順番逆だったかも…記憶が定かで無い…

そして戦争へ…

物語はこの30年を中心に進みます。
その前後や夢の世界も入り込み盛りだくさんの2時間6分です。


さて映画にスパイスを与えたカプローニおじさんについても書いておきましょう。

ジョヴァンニ・バッチスタ・ジャンニ・カプローニが本名。
1886年生誕、1957年死去。イタリアの航空技師。
測量の父親を持ち、モナコ工科大学で土木工学を目指す。
しかしライト兄弟の航空機の影響で航空技師を志すことに。
1940年に伯爵の称号を授与。

他にも書かねばならぬことが色々あると思うんですが、
ひとまずここまで。連載終えてから追記しようと思います。

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