予習してから鑑賞したい人のための『風立ちぬ』コラム"ダイジェスト" - Cinema A La Carte

予習してから鑑賞したい人のための『風立ちぬ』コラム"ダイジェスト"


10本に渡って『風立ちぬ』について徹底的に語ってきた当ブログですが、
「予習するのに1本の記事にまとめてほしい」というリクエストが多々ありました。
私のブログ最大の欠点は"長いこと"ですからねw

ということで


予習してから鑑賞したい人のための『風立ちぬ』コラム"ダイジェスト"です!
10本の記事読んで頂いた方には不必要な記事なのでスルーしてください。



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それではスタート。


タイトル
=『風立ちぬ』

上映時間
=2時間6分

公式サイト
http://kazetachinu.jp/

主人公
零戦の設計者である堀越二郎と文学者の堀辰雄、
宮崎駿監督が好むこの二人の人物を混ぜた"堀越二郎"が主人公。
つまり実際の堀越二郎を描くわけではない。 
飛行機関連は堀越二郎の人生から、震災や恋愛は堀辰雄の人生や小説から持ってきてます。

ストーリー概要(公式サイト
かつて日本で戦争があった。
大正から昭和へ、1920年代の日本は、
不景気と貧乏、病気、そして大震災と、
まことに生きるのが辛い時代だった。
そして、日本は戦争へ突入していった。
当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?
イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、
後に神話と化した零戦の誕生、
幸薄の少女菜穂子との出会いと別れ。
この映画は実在の人物、堀越二郎の半生を描くー。
堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。
生きねば。
予告編


公開されている企画書文

その1:飛行機は美しい夢
零戦の設計者堀越二郎とイタリアの先輩ジャンニ・カプローニとの同じ志を持つ者の時空をこえた友情。いくたびもの挫折をこえて少年の日の夢にむかい力を尽すふたり。
 大正時代、田舎に育ったひとりの少年が飛行機の設計者になろうと決意する。美しい風のような飛行機を造りたいと夢見る。
 やがて少年は東京の大学に進み、大軍需産業のエリート技師となって才能を開花させ、ついに航空史にのこる美しい機体を造りあげるに至る。三菱A6M1、後の海軍零式艦上戦闘機いわゆるゼロ戦である。1940年から三年間、ゼロ戦は世界に傑出した戦闘機であった。
 少年期から青年期へ、私達の主人公が生きた時代は今日の日本にただよう閉塞感のもっと激しい時代だった。関東大震災、世界恐慌、失業、貧困と結核、革命とファシズム、言論弾圧と戦争につぐ戦争、一方大衆文化が開花し、モダニズムとニヒリズム、享楽主義が横行した。詩人は旅に病み死んでいく時代だった。
 私達の主人公二郎が飛行機設計にたずさわった時代は、日本帝国が破滅にむかってつき進み、ついに崩壊する過程であった。しかし、この映画は戦争を糾弾しようというものではない。ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。
 自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある。美に傾く代償は少くない。二郎はズタズタにひきさかれ、挫折し、設計者人生をたちきられる。それにもかかわらず、二郎は独創性と才能においてもっとも抜きんでていた人間である。それを描こうというのである。
 この作品の題名「風立ちぬ」は堀辰雄の同名の小説に由来する。ポール・ヴァレリーの詩の一節を堀辰雄は“風立ちぬ、いざ生きめやも”と訳した。この映画は実在した堀越二郎と同時代に生きた文学者堀辰雄をごちゃまぜにして、ひとりの主人公“二郎”に仕立てている。後に神話と化したゼロ戦の誕生をたて糸に、青年技師二郎と美しい薄幸の少女菜穂子との出会い別れを横糸に、カプローニおじさんが時空を超えた彩どりをそえて、完全なフィクションとして1930年代の青春を描く、異色の作品である。

その2:映像についての覚書
大正から昭和前期にかけて、みどりの多い日本の風土を最大限美しく描きたい。空はまだ濁らず白雲生じ、水は澄み、田園にはゴミひとつ落ちていなかった。一方、町はまずしかった。建築物についてセピアにくすませたくない、モダニズムの東アジア的色彩の氾濫をあえてする。道はでこぼこ、看板は無秩序に立ちならび、木の電柱が乱立している。
 少年期から青年期、そして中年期へと一種評伝としてのフィルムを作らなければならないが、設計者の日常は地味そのものであろう。観客の混乱を最小限にとどめつつ、大胆な時間のカットはやむを得ない。三つのタイプの映像がおりなす映画になると思う。
 日常生活は、地味な描写の積みかさねになる。
 夢の中は、もっとも自由な空間であり、官能的である。時刻も天候もゆらぎ、大地は波立ち、飛行する物体はゆったりと浮遊する。カプローニと二郎の狂的な偏執をあらわすだろう。
 技術的な解説や会議のカリカチュア化。航空技術のうんちくを描きたくはないが、やむを得ない時はおもいっきり漫画にする。この種の映画に会議のシーンが多いのは日本映画の宿痾である。個人の運命が会議によって決められるのだ。この作品に会議のシーンはない。やむを得ない時はおもいきってマンガにして、セリフなども省略する。描かねばならないのは個人である。
リアルに、
幻想的に
時にマンガに
全体には美しい映画をつくろうと思う。
公式サイトより引用)


映画の"堀越二郎"が歩んだ道と歴史
1903年(明治36年)に堀越二郎生誕。
この年、アメリカではライト兄弟が初めて有人動力飛行に成功。
これは実在の堀越二郎の生誕年でもあり運命を感じる。

1923年(大正12年)9月1日に関東大震災。
この時二郎20歳。まだ幼い菜穂子と出会う。

1927年(昭和2年)、二郎は東京帝国大学工学部航空学科を卒業し、
名古屋の三菱内燃機KK(現 三菱重工業)入社。
この時二郎24歳。英才として入社し腕を振い信頼も得る。

1929年(昭和4年)、ドイツのユンカース航空機へ軍と共に視察。
この時二郎26歳。その後西回りで世界を見ながら帰国へ。

1933年(昭和8年)、開発がうまくいかず失意の二郎は軽井沢へ。
この時二郎30歳。二郎の人生の映画から二郎と菜穂子の二人の映画へと移る重要な年。

※この年表が示していますが二郎の映画です。菜穂子はヒロインであってダブル主人公ではありません。"二郎と飛行機"、"二郎と菜穂子"、"二郎とカプローニ"が描かれる堀越二郎の映画なのです。ラブストーリーは映画の一部でしかありません。先入観にご注意を。

1933年(昭和8年)、二郎が設計主任を務めた七試艦上戦闘機が初飛行。
この後二郎は九試単座戦闘機設計主務者へ。

そして戦争へ…その結果ラストはどうなる…?

この30年の時間軸と別に、ストーリー概要にもあるカプローニおじさんのストーリーが入ってきます。どう絡んでくるか…?それは観てからのお楽しみ(笑)


菜穂子は実在したのか?
ヒロイン菜穂子は実在しません。
実在の堀越二郎も堀辰雄も菜穂子という人物と結婚した歴史はありません。
この名前は堀辰雄の小説"菜穂子"からきています。


カプローニって誰?
ジョヴァンニ・バッチスタ・ジャンニ・カプローニが本名。
1886年生誕、1957年死去。イタリアの航空技師。
測量の父親を持ち、モナコ工科大学で土木工学を目指す。
しかしライト兄弟の航空機の影響で航空技師を志すことに。
1940年に伯爵の称号を授与。

見どころ
宮崎駿監督は『もののけ姫』の際に
「人は見どころを聞いてくるけど全部見どころだ!」
と仰っていました。

そりゃそうですよね(笑)

とは言っても気になると思うので詳細を別記事にまとめました。
お時間ある方は是非ご覧いただければと思います。

こちら


で、面白いの?面白くないの?
傑作ですが"面白い映画"ではありません。
なぜなら娯楽映画ではないからです。
堀越二郎という人物の30年あまりを追っていく映画だからです。

その30年は予告編やストーリーにある通り、激動の昭和で生きるのがつらい時代でした。
その時代を二郎と菜穂子は駆け抜け、そしてカプローニも二郎を応援してくれます。
生きること、生きてきたこと、これから生き続けること、それを静かに描き勇気を与えてくれる映画なのです。

宮崎駿監督は近年「今までと同じものが観たいならそれを観てくれればいい」と仰るように新しいものへ挑戦し続けています。ハウルはとにかく実験的でしたし、ポニョなんて絵のタッチが全然違いますしね。

『風立ちぬ』はとにかくまっすぐにひたむきな映画です。
賛否様々な意見を観ていて思ったことがあります。
自分に正直に、夢にまっすぐに生きている人の心には届いていると思いました。

これは映画の好き嫌いを超越して、ひたむきな二郎を好きになっているからでしょう。
二郎はとにかく夢へ邁進します。しかし完璧な人間かというとそうでもないです。
妹の加代は正直振り回されてます。でも仲良し。だから人はいい。

そんな二郎が正直に生きてる人には響くんです。
映画を対映画として観るその先、映画と自分という2時間6分を過ごすことがこの映画を堪能するポイントかもしれません。

せっかくの2時間6分。
1人でも多くの方の人生の糧になるといいなと、この映画のファンとして強く願っています。
おしまい。


ここにまとめた記事の元になっている連載は以下になります。

『風立ちぬ』関連記事一覧

レビュー:1人の男の人生を通して描かれる"力を尽くして生きる"勇姿。
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu.html

あらすじ・ストーリー・キャラクター・声優・主題歌など
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu1.html

見どころと世界観・そして時代の流れ
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu2_5.html

ヒロインの名前が"菜穂子"の理由
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu3.html

関連書籍と"力を尽くして生きる"
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu4.html

宮崎駿監督が最初やりたがらなかった理由
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu5.html

宮崎駿監督の破壊衝動、得意技と矛盾
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu6.html

『もののけ姫』との比較、宮崎監督の得意技という視点での比較論
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu7.html

 "魅力と欠点"
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu8.html

賛否真っ二つに思うこと、そして大切だと思うこと
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu9.html

予習してから鑑賞したい人のための『風立ちぬ』コラム"ダイジェスト"
http://www.cinemawith-alc.com/2013/07/kazetachinu21.html

【年表比較】『風立ちぬ』の堀越二郎と、現実の堀越二郎と、現実の堀辰雄
http://www.cinemawith-alc.com/2015/02/Wind-N01.html

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