問題作ではある。しかし生きることの大切さを教えてくれた『インポッシブル』- スマトラ島沖地震の津波から奇跡の生還を果たした家族の物語【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

問題作ではある。しかし生きることの大切さを教えてくれた『インポッシブル』- スマトラ島沖地震の津波から奇跡の生還を果たした家族の物語【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]


基本情報
日本語タイトル
『インポッシブル』

原題
"The Impossible"

監督
J・A・バヨナ

出演
ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー、トム・ホランド、サミュエル・ジョスリン、オークリー・ペンダーガスト

公式サイト
http://gacchi.jp/movies/impossible/

ストーリー
2004年末、マリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)は、3人の息子と共にタイにやって来る。トロピカルムードあふれる南国で休暇を過ごすはずだったが、クリスマスの次の日、彼らは未曾有の天災に巻き込まれる。一瞬にして津波にのみ込まれ、散り散りになった家族はそれぞれの無事を祈りつつ再会への第一歩を踏み出す。(シネマトゥデイより)

予告編






感想
2004年12月26日に起きたスマトラ島沖地震。
M9.1の大地震により大津波が発生し、インド洋沿岸地域を襲いました。
死者22万人、負傷者13万人という甚大な被害が出ました。

本作はその津波に襲われた一組のスペイン人家族に焦点を当てて描かれています。

"演出的に強調されていることはありません。エピソードを追加といったこともありません。ただ、全てを見せてしまうというのは見ている方にとって刺激が強すぎる部分もあるので、どこまでを見せるか、というのは非常に難しい部分もあったと思います。"

と本作で描かれているご家族の母親マリアさんがインタビューで答えているので実話を誇張していることも無さそうです。

率直な感想をまず書きたいと思います。

映画の完成度面、メッセージ性、そして震災を経験した日本との兼ね合いなど、どれを取っても傑作だと私は思いました。

[DVD発売済み]
映画好きの人間は演出があれこれ、音楽があれこれ、演技があれこれと語りたくなるものです。そんなことなど気にならず(気にならない=完璧ということでもある)に称賛したいのが本作です。

本作は大批判、大論争も巻き起こしています。
東日本大震災の津波で被災した方の本作に対する批判を目にしてあくまでも"津波なんて経験したことない蚊帳の外の人間"として感動したんだなと改めて思いました。
その点後述します。まずは感想を書ききります。

あまりに強烈な津波描写やその後の地獄絵図、目を背けたくなる傷口の描写が実話であることを物語胸が苦しくなりました。そんな状態でも離散した家族たちは懸命に生き、再会を信じ各々が行動をしました。その積み重ねに何度も涙を流しました。

人間の弱さが露呈しながらも、その弱さが人の強さを引き出し、そして絆を作り上げていく様、その温かさと言葉では表せない信じる心や生きる意思を感じることができる映画でした。

再会した家族の実話であるため美談にではあります。しかし美談に留めず、最後の飛行機のシーンで同時に助からなかった数多くの人々がいる現実をしっかり盛り込み、作り手の謙虚な姿勢も感じました。それでも足りなさすぎるという批判も多いです。

ナオミ・ワッツとユアン・マクレガーの熱演が見事で胸を打ちます。そして長男のトム・ホランドくん始め子供たちの演技がそれにも増して素晴らしく涙腺崩壊に追い打ちをかけました。

特にこのトム・ホランドくんの演技は今まで観てきた全ての映画の子役演技を含めてもベスト級ではないでしょうか。長男らしい強さと弱さが見事に表現できていて、行動1つ1つが涙を誘います。兄弟の再会シーンなんて…思い返しただけで涙が出てしまいそうです。

苦しい映画ではありましたが、映画の完成度として申し分のない完璧さ。作り手の謙虚な姿勢とあの現実を伝えようとする意思。そして震災を経験、目の当たりにした日本人として言葉に言い表せない何かを感じた素晴らしい映画でした。

映画の存在意義に関しては様々論争が起きていますが、映画のクオリティは津波の残虐描写含め一級品。素晴らしい映画であると思いました。




"怖い"ということ、"生きる"こと、タイトルの本当の意味
レビュー的なものは上にサクッとまとめましたので溢れていることをこの章にて。

本作には"怖い"という台詞が印象的に出てきます。
東日本大震災を思い出しながら観る私たち日本人はこの映画の感じ方はみなさん異なることでしょう。
私はとにかく"怖い"が印象的に記憶に残っています。

母親と長男が津波に流され木に捕まるシーン、
父親がホテルの上部(避難してる所)で次男に話しかけるシーン、
至るところで"怖い"が印象的に響きました。

私は関東に住んでるため東日本大震災において直接的被災者ではありません。
しかしあの時の地震はとてもとても怖かったです。
どこでも恐いとその時は言いませんでしたがとても怖かったです。

映画を見ながらストッパーをかけてたその怖かった気持ちを思い出しました。
「あの時怖かったなあ・・・震えてたな・・・でも我慢してたな・・・でも怖かったな・・・」
そんなことを映画を見ながら思い出したので"怖い"が印象的に感じたのかもしれません。

映画の中でも語られていますが、恐怖は一人でいるより複数でいる方が和らぎます。
その気持ちが共有できるからでしょう。
それがこの映画では家族の括りや避難所の人との括りで描かれ胸を打ちました。



そして本作の中心に存在するのは”生きる"ということなのは明確でしょう。
母親は病院に運ばれた時、心のどこかで父親(夫)と次男、三男は亡くなってしまったという覚悟があったようです。
なので長男に残された家族は自分しかいないと思い、瀕死の重傷で衰弱していても生きる意思を持って生き抜いたのでしょう。

家族が再会した際に死を覚悟した言葉が出たのはそのためでしょう。
子供には親が必要。その強い意思がそれらに表れていました。
ナオミ・ワッツの熱演に改めて拍手を送りたいです。

"人間は何のために生きているのでしょうか?"
哲学としてよく問われることばですよね。
哲学的な正解ではないのかもしれませんが私は本作を観て一つの答えを得ました。

"人間は生きるために生きている"のです。
今この一瞬は未来の一瞬一瞬を生きるために生きているのです。
言葉で言い表すと難しく聞こえるかもしれませんが、映画を観て明確にそう思いました。

生きるために津波に飲まれても生きようと必死にもがいたのです。
生きるために避難したのです。生きるために治療をしたのです。
生きるために瀕死の状態でも最後の力を振り絞って心臓の鼓動を止めなかったのです。

だから、今ある生命を改めて大切にしようと思いました。
無駄にしようと思ったことはないですが、改めてそう思った次第です。



本作のタイトル『インポッシブル』には深い意味がありました。
津波に飲み込まれてそこからの生還と再会、再生なのでその意味での『インポッシブル=不可能』かと思いましたがそれだけではありませんでした。

『インポッシブル』のタイトルの本当の意味は映画の中盤の次男と見知らぬ女性との会話に由来します。

夜空に光る星はもう何年も前に無くなってしまった星もある。
その輝きが何年も宇宙を旅して今こうして光り輝いている。
今存在している星と無くなってしまった星を見分けることは"不可能"="インポッシブル"。
だけれどその疑問て悪く感じない疑問だったりする。

つまり、離れた家族と再会できる可能性がある限り絶対に諦めない。
もう一度会えると希望を見出す強い意思を持つこと、諦めない心を持つことが大切。
可能性が少しでもあるなら可能性を信じる、それって悪いことじゃなかったりする。

それが『インポッシブル』のタイトルに込められた意味になります。
深いですよね。
辛い映画ではありますが、もう何回か観に行ってより深く味わうことができたらなと思ってます。




◯今観るべきでない人もいる。一生観なくていい人もいる。
この映画で描かれている津波は地震発生後、スリランカ、インド、モルディブ、アフリカ諸国などへはすぐ津波が押し寄せました。しかし震源の東側であるタイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなどでは地震発生から2時間半を過ぎて津波が到達したようです。

本作の舞台はタイのプーケットから100キロほど行ったところなので津波が遅く到達した地域でしょう。警報などはならずにいきなり津波が押し寄せたのを見る限りここまでの被害は予想してなかったんだなと思いました。実際東日本大震災でもこれほどの津波は警報鳴れどもすぐに予測できるものではなかったですしね。自然の脅威を改めて感じます。

本作は5人家族の旅行先での幸せなひと時が描かれ、すぐに津波が襲うシーンに入ります。
この津波描写がとても強烈でして、私たち日本人であれば東日本大震災を思い出さずにはいられません。津波の被害者ではない私でも正直直視するのがとても苦しかったです。

実話なので軽くストーリーにも言及しますが、5人家族は津波に飲み込まれるも生還することができました。しかし父親と次男・三男、母親と長男の二組に離散してしまいました。

この津波に関して予備知識が無くとも、東日本大震災を目の当たりにした私たちであれば遠くまで流されて再会できなくなるという物理的構図は想像することができるでしょう。

私たちはこの映画を東日本大震災を意識せずして観ることはできないでしょう。それは仕方のないことですし、むしろそう観て然るべき映画でもあると思います。

以下本作に関する批判等に関してご紹介します。
本作は論争されるべき映画ですので。

"(前略)・・・結局は家族全員が生き残り、再会を果たして感動のエンディングを迎えますが、 逆に私はそこでは泣けなかったし、心に残ったのは「感動」ではありません。 非常に複雑な気持ちを抱えたまま、未だにうまく感情の整理ができていないので 何と表現したらいいのか難しいのですが、 まだ、これを見て感動できるような心理状態じゃないというか、 まだ、心の準備ができていない、というのが一番しっくりくるというか、 感動よりも、なんせ恐怖だったり、悲しさだったりの感情が大きく上回る感じ。・・・(後略)"
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id343970/rid7/p2/s0/c15/



"(前略)・・・実話ってことでは結末にケチはつけられない、ここは素直に感動するべきなのだろうけど、見終わった後、そりゃ大変な目に遭ってしまったけど、あなた達は最後は家族揃って、しかもあんなVIP待遇で地獄を脱出できたんじゃない、と意地悪な気持ちになってしまった自分がすごく嫌でした。 悲惨さを競うわけじゃないけれど、どんなにひどい状況でもそこに残るしかない被災者より、あなた達はすごくラッキーで、所詮は他国の出来事じゃないの、と。 あ~ 私って心狭い~ あの甚大な被害の中に実在した幸運な家族の物語に、感動したり勇気もらったりできるほどには自分はまだ立ち直ってないんだなあと思い知らされました。 日本人には、と言うか私にはまだちょっと無理な映画でした。・・・(後略)"
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id343970/rid3/p2/s0/c19/


こういった意見が出て然るべき映画なのだと思います。
映画の出来ではなく、映画の存在や公開意義に対して意見が出て然るべきなのです。
まだ鑑賞するのが辛い方がたくさんいるということを知ってほしく引用させて頂きました。

また、是非みなさんに読んで頂きたいブログがあります。

ご本人から引用の許可を頂いたので一部引用させて頂きますが、できればブログへ飛んで全文読んでください。これは正論でありますので。

"インポッシブルの見所は津波の映像表現や、避難所の空気感を再現した場面くらい。津波が海岸を襲う映像表現はたしかに見事だった。妻が津波の濁流に飲まれて、ミキサーのようにかき回されるシーンではあまりの痛々しさに目を覆った。
だがやはり津波を見事に描いた一方で、災害時における混乱、略奪、人身売買などがほとんど描かれていない。スマトラ大震災では、まだ息のある被災者のアクセサリーが略奪され、治安の悪化が原因となる強姦が多発し、親と逸れた子供達がマフィアによって誘拐されたという現実がある。インポッシブルでは、災害時の大混乱や本当の被災者の姿が描かれていないのだ。

この程度のストーリーと描き方で、『感動した』だの『涙が止まらなかった』だの言ってるのは、大災害を体感しなかった頭の中がお花畑の連中くらいだろう。お花畑の連中は大津波が沿岸部を襲った映像をテレビの前から眺め、遺体も映らない検閲された映像だけで、被災地の悲劇を何となく想像して理解した気になっていた。インポッシブルはそんな奴らが喜びそうな映画だ。
マスコミによって加工され、情報統制された映像は、被災者を分かりやすい弱者として演出し、彼らの同情を誘った。
彼らは安全圏から傍観できる立場から、被災者に同情する一方で、放射能の影響を大げさにわめき散らし、デマで情報かく乱した上に、被災地を煽りまくった。物資が十分にあるはずの首都圏で、食料品を買いあさり、復旧が進まない状態で被災地ツアーに出掛ける。復興ボランティアという名目で、偽善者どもがドヤ顔で被災地を踏み漁る。普段は何の影響力を持たない彼らが、自分たちより悲惨な人達を助けることで自尊心を満たそうと被災地を訪れた。"
東日本大震災で津波の被害に遭われた方が本作を観たご意見です。
私は「感動した」「涙を流した」と書きました。それは事実ですし、もう一度観てもそうなるでしょう。なぜなら私は真の震災被災者ではなく、画面を通じた津波しか知らないからです。

しかしそれは事実なのです。

今回私が強く思ったことは映画のメッセージや姿勢がどうこうということ以上に、私のような津波蚊帳の外の人間が「感動した」ということは津波の被災者を苛立たせたり、傷つけたりするものでもあるんだなと言うことです。

なので本作のレビューを消そうと思いました。
しかし今回紹介したブログの方とやり取りができ、ブログの引用許可も快く頂いたので消すことはせず事実をここに追記している次第であります。

この方とは際どい話をいくつもしましたが冷静に真摯的にご対応頂き、最後は温かい言葉まで頂きました。ご対応頂いたことこの場を借りて御礼申し上げます。

映画の感想は良い作品も悪い作品も口コミを生みます。しかし、本作の口コミは場合によっては人を傷つけるのです。難しい映画です。東日本大震災を描いたものではなくスマトラ沖地震の津波の話でもありますしね。でも津波は津波。尊い命が失われたことは同じです。とっても難しいです。

私の考えがまとまっておらず、このブログも中途半端ですが・・・一先ず閉じたいと思います。




written by shuhei