6つ同時進行の複雑物語!『クラウド・アトラス』、全ては繋がっている。【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

6つ同時進行の複雑物語!『クラウド・アトラス』、全ては繋がっている。【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報

日本語タイトル
『クラウド・アトラス』

原題
"Cloud Atlas"

監督
 ラナ・ウォシャウスキー 、トム・ティクヴァ 、アンディ・ウォシャウスキー

出演
トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、ベン・ウィショー、ジェームズ・ダーシー、スーザン・サランドン、ヒュー・グラント

公式サイト

ストーリー
1849年、太平洋諸島。若き弁護士に治療を施すドクター・ヘンリー・グース(トム・ハンクス)だったが、その目は邪悪な光をたたえていた。1973年のサンフランシスコ。原子力発電所の従業員アイザック・スミス(トム・ハンクス)は、取材に来た記者のルイサ(ハル・ベリー)と恋に落ちる。そして、地球崩壊後106度目の冬。ザックリー(トム・ハンクス)の村に進化した人間コミュニティーのメロニム(ハル・ベリー)がやって来て……。

予告編




感想(一気に語り下ろし)
この映画を"わからない"と批判することはとても簡単なことでしょう。
なぜなら"わからない"といったらそれ以上"理解しようとする"ことを放棄するわけですから。

6つのストーリーが同時進行するというシナリオ、
アメリカでの賛否真っ二つの評価やレビューなど、
前情報を入れられるだけ入れて"わかる"ために試写会に文字通り"挑んで"きました。

結果として混乱することはそんなになく映画の世界を堪能できました。
あまりに壮大な物語、未来の描写に時として疑問が湧くこともありました。
しかし映画が終わった後、この映画のテーマでもある"全ては繋がっている"を感じることが出来ました。

綿密に繋がっているのではなく、"過去と未来の何かと繋がっている"という漠然とした印象を本作は私たちに提起します。
過去の人間の生まれ変わりが自分で、また自分の死後誰かに生まれ変わるということが描かれます。
それは仏教的な思想で要は輪廻転生です。

アメリカではストーリーの難しさによる批判だけでなく、きっとこの思想に関しての疑問からの批判もあったようです。
そりゃ宗教が異なれば思想は異なりますからね。



細かくあれこれ語る前に本作を堪能するコツをまとめてみます。
せっかくの映画体験です。少しでも楽しむべきです。

本作は予習してこそ楽しめるのではないかと思います。
6つの物語の基本設定をまとめます。
※ストーリー的なネタバレではありませんのでご安心を


物語1
・1849年
・南太平洋
・アメリカ人弁護士と奴隷を中心にした物語

物語2
・1936年
・イギリス
・作曲家とアシスタントを中心とした物語
・映画タイトルでもある"Cloud Atlas"という曲を作る物語

物語3
・1973年
・アメリカ カリフォルニア
・女性ジャーナリストを中心とした物語

物語4
・2012年
・イギリス
・編集者のちの作家を中心とした物語

物語5
・2144年
・韓国ネオ・ソウル(現在のソウルの上にできた未来都市)
・クローン人間を中心とした物語

物語6
・2144年から数百年後
・新世界大戦後の世界
・ハワイで暮らす人間たちを中心とした物語


この6つの物語が絡み合いながら展開されていきます。
物語1で書かれた本を物語2のアシスタントが読むといった具合にそれぞれの物語は関連性を持ちます。
直接ではなく間接的に繋がっているのです。

人間関係などは絡み合いませんので映画を見ながら"今どの物語なのか"だけを意識すれば大丈夫です。

予習しとけばそこまで複雑怪奇ではないのです。

トム・ハンクスやハル・ベリー、ヒュー・グラントといったベテランから、
ベン・ウィショーやジム・スタージェスといった若手まで、
オールスターキャストの本作ですが、みなさんが複数の物語で複数の役を演じています。

トム・ハンクスなんかはわかりやすいですが、
男性俳優が女性の役やったり、またその逆があったり、特殊メイクで別人になっていたりと非常に面白いです。
私も全てを1回で認識できませんでした。

エンドロールで誰が何を演じていたか開示されます。
なのでこれ二回目の方が確実に面白いだろうなと思いました。

とにかく物語が6つあって、それぞれ時代が大幅に異なる。
それを意識しておきましょう。
それで混乱することは減るはずです。


1つ1つの物語は独立していて、それぞれが間接的に絡み合う。
演じてる俳優がどのパートも同じ。
これが新しいですよね。

映画の監督はマトリックスシリーズのウォシャウスキー姉弟。
そして『パヒューム ある人殺しの物語』のトム・ティクヴァ。
3人監督という珍しいものになっています。

マトリックスでも東洋思想が反映されていましたが、本作も輪廻転生です。
そして本作の面白さである"男性が女性を演じる"、"女性が男性を演じる"という点、この製作陣を見ると色々意図が見えてきます。

ラナ・ウォシャウスキー監督、元々は男性で性転換手術をしたのです。
つまり自らの肉体そのままに生まれ変わりをしたわけです。
こういった部分、"生まれ変わり"、"つながり"といった本作のテーマと関わりがあり、きっと言葉で語る以上に思い入れがあったんだろうなと察します。





ある程度の予習をし、ラナ・ウォシャウスキー監督の性転換手術のエピソードなども知った上で見た本作。
上記の通り混乱せず"わからない”ということはありませんでした。
物語が間接的に繋がる、つまり直接的に繋がっていない点は言葉で解説するのが難しい抽象的な印象を抱きました。

しかしその抽象的とは褒め言葉です。
"きっと私も過去と未来の繋がりの中で今を生きてるんだろうな"と思うことが出来ました。
その漠然とした印象を良く取るか悪く取るか、これで評価はまた分かれるでしょう。

そういった点で人には勧めにくい映画でもあります。
日本でも否定派が多くなると思います。
"ぱっと見の難しさ"と"抽象的な繋がり"故に。



物語に関して6つ同時進行や輪廻転生、抽象的な繋がりや印象といった評価分かれのポイントを書きましたが、それを差し置いて素晴らしい側面の多い映画でもあります。

まず音楽。
トム・ティクヴァ監督自ら作曲してますが、これが美しくて素敵なんです。
超大作の本作に静かにゆったりとした美しい音楽が流れます。

その意外性が見事に機能してます。
エンディングの静かな幕引きとか、いやあいいですね。


続いて映像。
これは6つの時代を描いているだけあり見応えあり。
未来描写に関しては"THE SF"といった近未来世界で賛否あるでしょう。

私もネオソウルに関しては何かあまりに理想化された未来だなと正直思いましたw
まあウォシャウスキーの世界観だなとw

しかしあれこれがいちいち美しいのでホント素敵です。

オープニングに物語1で海辺の水たまりに青空が映ってたシーンが印象に残ってます。
そこには雲(cloud)も映っています。
映画"Cloud Atlas"と関係あるのかなと思ったりもしました。


そして俳優陣の演技。
ショートストーリーの積み重ね故、熱演というものはありませんが、バランスが良かったです。
トム・ハンクスやハル・ベリーはさすがといったところで、
私的良かったのがベン・ウィショーとジム・スタージェスですね。

ベン・ウィショーはトム・ティクヴァ監督の『パヒューム』で主人公を演じました。
昨年は『007スカイフォール』でQでも演じ、ブームまたきたのかなと感じました。
ジム・スタージェスも軽めの作品への出演が多かったですが本作とても良い印象を残してくれました。

あといつも通り、ジム・ブロードベントは映画にいるだけで安心できますw




まとめに入りましょう。
前述の通り、否定派の多い映画です。
私も世界観で一部違和感を覚えました。

しかし壮大な物語の根底にある"全ては繋がっている"というメッセージ、
1つ1つの物語から感じられる"愛"の様々な形。
そして最後のまとめ。素晴らしい物語ではありませんか。

"理解しようとする"ことを怠らなければ物語はすーっと理解でき、心へ届くのです。
それに対して好き嫌いはあって然るべきでしょう。
しかし6つのストーリー故に物語を理解することを放棄するのはもったいないです。

壮大過ぎる物語、"完璧"ではないでしょう。
しかし、無駄なく紡ぎ上げられた今までになかった6つで1つの物語。
感じるものがたくさんありました。

傑作とはいいません。
だから私はこれ以降この映画へあれこれ言及することはほぼないでしょう。
しかし、数ヶ月、数年、数十年経った時、もう一度見返したいなと思います。

その時にまた何かを感じることができるはず。
そういった映画だと思ったのでした。