史上最も美しい悲劇映画、ここに!!『アンナ・カレーニナ』 【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

史上最も美しい悲劇映画、ここに!!『アンナ・カレーニナ』 【映画紹介/2013年公開作】[ネタバレなし]



基本情報
日本語タイトル
『アンナ・カレーニナ』

原題
"Anna Karenina"

監督
ジョー・ライト監督

出演
キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー・ジョンソン、マシュー・マクファディン

公式サイト

ストーリー
19世紀末のロシア。政府高官カレーニン(ジュード・ロウ)の妻にして、社交界の花として人々から注目されるアンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)。しかし、華やかな生活の裏で夫との愛なき結婚に空虚なものを抱いていた。そんな中、彼女は離婚の危機に陥った兄夫婦の関係を修復させようと、彼らのいるモスクワへ。駅に降り立ったアンナは、そこで青年将校ヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と出会う。彼から強い思いをぶつけられて戸惑う彼女だが、自分にも彼を慕う気持ちで胸がいっぱいだった。(シネマトゥデイより)

予告編

感想
試写会にて鑑賞してきました。

ジョー・ライト監督、これまたとんでもない傑作を作り上げました。

悲恋なストーリーをあざ笑うかのようなどこまでも美しい世界観。
舞台セットで繰り広げられているかのような特殊演出。
その中に溢れるジョー・ライト監督らしさの数々、キーラ・ナイトレイの美しさ…。

これは凄まじい作品です。
 ”美しすぎる”と批判すら出た本作。
どこまでも美しく、物語はどこまでも悲しく、その対比が一つの映画となり芸術となりました。

原作の通り、不倫・悲恋物語である本作。
万人受けなんてしないでしょう。
しかしこの世界観にハマったら抜け出せない引力が本作にはあります。

ハマったらこういうしかない。
”傑作だ"と。
『アンナ・カレーニナ』、いつもの数倍の熱量でレビュー書いていきたいと思います!!



ジョー・ライト監督の神懸かり演出
『プライドと偏見』、『つぐない』とキーラ・ナイトレイと組み、
どちらも傑作に仕上げ世に送り出したイギリスのジョー・ライト監督。
特に『つぐない』は私のオールタイム・ベストムービーです。

その後『路上のソリスト』『ハンナ』とハリウッドで2本を監督。
どちらも味のある作品でしたが『プライドと偏見』『つぐない』には敵いませんでした。
駄作じゃないけど傑作ではないもやもや感が漂い、『つぐない』を指標にしてしまうと落胆をしてしまったのも事実でした。

そんなジョー・ライトが再び、キーラ・ナイトレイ主演で歴史ものを手がける。
これは期待せずにはいられなかったわけです。
しかし不安も少しばかり…なぜなら"あの『アンナ・カレーニナ』"の再映画化だったからです。

1877年にロシアで出版されたトルストイの長編小説『アンナ・カレーニナ』。
悲恋物語のバイブルとも言える傑作で、今日まで何度も舞台化、映画化されてきました。
誰もが知ってる物語、そして比較対象となる舞台や映画が数多くある。不安…w

その不安は予想の斜め上をいく演出により完全に払拭されました。
いや斜め上過ぎて一部で拒絶反応はありましたw
しかし、その斜め上の演出が見事に計算されたもので私は衝撃を受け、この世界観に完全にやられてしまいました。

言葉では非常に説明がしにくい今回の映画の演出方法。
映画の世界が、舞台で展開されているかのようなのです。
舞台のセットが入れ替わるように、映画内でセットが入れ替わったりするのです。

オープニング、アンナが舞台裏から出てきてステージを降ります。
すると客席に椅子は無くアンナの背後に壁が降りてきます。
するとそこが夫カレーニンの執務室へ早変わり…

(言葉で説明が難しい…w)

映画の中で舞台が展開されるという非常に特殊な演出が成されているのです。
あまりに特殊な世界観でこれに拒絶反応が起きたらそこまで。
普通の場面展開や屋外シーンもあり、全てが舞台ではありませんがやはり特殊ではあります。(理由は後述します)

この特殊演出を中心に、衣装や俳優陣、カメラワークなどがとにかく美に溢れています。
その美しさを堪能したい…ところですがそれをあざ笑うかのように主人公アンナは破滅への道を進みます。
その対比がまた素晴らしいです。

また、全編を彩るダリオ・マリアネッリの音楽が秀逸で見事!
『プライドと偏見』『つぐない』でも組んでおり、『つぐない』ではアカデミー賞作曲賞受賞!
今作でもアカデミー賞作曲賞にノミネートされました。お見事です。

『アンナ・カレーニナ』のストーリーに意外性はありません。
なぜならラブストーリー、悲恋物語の基本だからです。
つまり今日まで数千、数万と語られてきた物語のベースなのです。

意外性の無さに対しては変な脚色はされず淡々と破滅への道が描かれていきます。
しかしそれを支える美しい数々の"事もの"が新しい『アンナ・カレーニナ』を作り上げているのです。
そして映画が終わった後、映画というエンターテイメントとして満たされた満足感と、
物語による悲壮感を感じ、何とも不思議な感覚に陥りました。

その結果どうなるか?
もう一度観たいと思うのです。
私が傑作だと思う映画で毎度起きる症状が見事に起きたわけです。


美しさの裏でしっかりと描かれる悲恋がもたらす"心"
政府高官の妻であるアンナは、将校ヴロンスキーに恋をしてしまいます。
それは“神の掟”に背くことになりますが、自らの気持ちを優先させます。
つまり不倫に走ります。彼女の中では"愛に生きる決意"をしたのです。

不倫や離婚なんて今現在の何倍、何十倍もありえなかった昔。
そこで愛を選び、言ってしまえば暴走したアンナの一生涯が丸々描かれます。
その結果どうなったか…あまりに有名なラストですがご存知ない方のために伏せておきます。
世相を気にせず愛に生きた結果、それ相応の結末がアンナには訪れます。

アンナのその行動は当然夫カレーニンや周りの人物をも巻き込んでいきます。
不倫に走る二人と、裏切られた夫カレーニンだけを描くだけでなく、
原作のように周囲の愛も描かれます。それを客観的に目撃することで私たちは答えの出ない"愛とは何か?"を考えることになります。

その"愛とは何か?"の答えは出ないにしても、
アンナのように破滅への道もあれば、
ある人物のように結果として笑顔が自然とこぼれる人生になる場合もあります。
また、愛が何かを悟る人物もいます。

このように様々な愛が描かれます。
アンナの最後の行動は現在日本でやったら最低と見なされる行為でしょう。
しかし行動こそ違えど、倫理感を無視した愛に全て身を預けるとあのように破滅への道を歩まざるをえないのでしょう。

愛とは本当に恐ろしいものであることを再認識させられました。
それと同時に愛を悟ったある人物を見て、愛とは捨てたもんじゃないなとも思うのです。
美しさばかりが先行して語られる今回の『アンナ・カレーニナ』ですが、物語もしっかりと深い所までアプローチしています。

ジョー・ライト監督、さすがです。


なぜ舞台のような演出が成されたのか?
冒頭書いた舞台のように映画の場面転換が成される点、
私はそれがとても素敵で最初は単純に美しいと見とれていました。
が、途中でなぜこういう演出をしているのか仮説を立てました。

「舞台=演じる=本当の自分を出してない」ということか?そのように持ったのです。
映画で描かれているのは貴族社会。つまり社交の場です。
つまり社交の場=舞台なのではないかと思ったのです。

これは仮説でしたが、調べていくうちにそれが当たってることがわかりました。

以下引用です。
"19世紀のロシアの貴族社会をどのように描くべきか試行錯誤していたジョー・ライト監督は「貴族は人生を舞台の上で演じているかのようだった」という歴史家の文章に出会った。そこでオペラ劇場のセットが建てられ、登場人物たちが時にリアルなセットで、時に観客の視線が注がれている舞台上でドラマを展開する大胆な演出プランを導入された。"

なるほど!
そう考えると次見た時、登場人物たちの心をより考えることができますね。
だからこそ郊外のシーンはほとんど舞台ではなかったのか、と納得もできるのです。



ジョー・ライト監督名物、開始10分で炸裂!
『プライドと偏見』『つぐない』で繰り出したジョー・ライト監督の名物演出があります。
そう、"長回し"です。
一つの場面をカットをせず一つのカメラでひたすら撮り続けるのです。

例)『つぐない』の長回し
http://www.youtube.com/watch?v=TvR6s9Iw01I


歴史ものである本作、今回もやってくれました!
今回は超長回しではなく、1〜2分程度の長回しが複数展開されました。
開始10分でダンスの振り付けのごとく長回しが出た時、思わずニヤつきましたw

引き伸ばすための長回しではなく、ジョー・ライト監督の場合ダンスの振り付けのような効果をもたらします。
今回も長回しはカメラがただ演技を撮っているというより、
振り付けが成されたダンスのような一場面の中、カメラも踊っているような感覚でした。

ジョー・ライト監督映画はこういった"監督らしさ"を味わうことができるのも素晴らしいです。


完璧なキャスティング
ジョー・ライト監督はキーラ・ナイトレイを最も美しく撮れる監督でしょう。
『プライドと偏見』『つぐない』共にとても美しいキーラを堪能できました。
今作もとても美しかったです。

キーラ・ナイトレイ自身、ジョー・ライト監督との信頼関係がしっかりできているので演技という面でも非常に魅力的に映ります。
今作は人妻で不倫する役。
それは大胆さを要求され、最後は破滅するのでとても難しい役柄だったと思いますが、見事に演じきっています。
アカデミー賞主演女優賞ノミネートされなかったのが残念で仕方ないです。

ジュード・ロウはカッコ良さを隠し地味な政府高官に。
演技も控えめ、しかしそのもの静かさの裏にある苦悩がしっかりと表情に出ており、
同情を買うであろうカレーニンを見事に演じていました。

そんな中驚いたのがヴロンスキーを演じた最もアーロン・テイラー・ジョンソン!
キーラ・ナイトレイもジュード・ロウも"さすが"という感じなのですが、
あのアーロンがこんな色男を演じるとは!!

"あのアーロン"てどのアーロンかと言いますと、
『キック・アス』のオタク全開のアーロンですw
それが人妻を落とし、大恋愛をする色男に見事変身!
それでいて後半は幼さというか、頼りなさを見せる辺りも見事。

これからもっと活躍していくことでしょう。


まとめ
不倫破滅劇と言う点でストーリー的に気に食わない方も多いでしょう。
これはもう致し方なしです。

特殊演出は単純に好みの尺度で賛否割れるでしょう。
これも致し方なしです。

しかし、映画の美しさ、これは誰しもが感じれるものではないかと思います。
アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した衣装は当然のこと、
映像全体の美しさ、ダンスの美しさ、俳優陣の美しさ、音楽の美しさ、セットの美しさ。

そしてどこまでも演出の効いた人の仕草や表情、そして動き、長回しによる効果。
"美"というものに溢れている映画だと今書きながら改めて思っています。
一度では堪能し切れません。もう何回か劇場で観たいと思います。

不倫破滅劇ではありますが、そこに溢れる美しさに完全ノックアウト。
今年観た映画でも『世界にひとつのプレイブック』や『ジャンゴ』と並ぶ、
私的完全ドストライクの超傑作でした!

ジョー・ライト監督、私はやはりあなたの撮る時代映画が大好きです。
ありがとう!!