映画『アメリカンビューティー』紹介、美しき破滅・・・美しき家庭崩壊・・・美しき人生崩壊・・・[ネタバレなし] - Cinema A La Carte

映画『アメリカンビューティー』紹介、美しき破滅・・・美しき家庭崩壊・・・美しき人生崩壊・・・[ネタバレなし]



『アメリカン・ビューティー』の基本情報

タイトル
=アメリカン・ビューティー

原題
=American Beauty

製作年
=1999年

日本公開
=2000年

監督
=サム・メンデス

出演
=ケヴィン・スペイシー
=アネット・ベニング
=ソーラ・バーチ
=ウェス・ベントレー
=クリス・クーパー


アメリカの郊外で生活するレスターは、妻のキャロリンと高校生の娘ジェーンの3人暮らし。プライドの高い妻との仲は冷え切り、娘も反抗期を迎えて、両親とほとんどしゃべろうとはしない。キャロリンは娘とコミュニケーションをとるきっかけにと、チアガールをするジェーンを観に、レスターと出かける。が、そこでレスターが出会ったのはジェーンの友だちのアンジェラ。レスターは一目でアンジェラに心を奪われ、ジェーンはそんな父をより軽蔑するようになる。

予告編


とても深い映画

1999年度のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門を受賞した作品です。アメリカンビューティーと聞いて何を思い浮かべますか?アメリカン・ビューティーとはバラの名前です。映画のタイトルももちろんそこからきています。

映画の中で主人公レスターの奥さんが庭に植えているのはこのアメリカン・ビューティー。そしてレスターの痛い妄想の中で女子高生の官能的表現として使用されているのもアメリカン・ビューティーです。そういったバラを随所に出すだけで、映画『アメリカン・ビューティー』と付けたのではもちろんなく、『アメリカン・ビューティー』=アメリカンなビューティー=アメリカの美しさという意味も持ちあわせています。

となると何となく「美しい映画なんだ!!」と思って当時劇場に行かれた方も多いかもしれませんね。その感覚で行かれたか方には大方評判が良くないのはちょっと残念ですが。なぜ「アメリカの美しさ」を求めて映画に行くとがっかりするのか?

理由は簡単で、「アメリカの美しさ」というタイトルを付けた家庭崩壊の話だからです。世間的にはどこにでもある裕福な中流家庭。要するに外見は美しい。でもその内部、家庭内はぼろぼろで、そのただでされぼろぼろな状況が、 音を立てて崩れていく様が描かれるのです。

そんな映画に「アメリカの美しさ」とタイトルを付けるのは要はブラックジョークなのです。今回はそんな『アメリカン・ビューティー』 の奥深さをお伝えしたいと思います。


以下、一気に語り下ろしますw
おそらく賞に絡んだ映画の中で、  史上最も情けない主人公でしょう。 妻に浮気され、娘に嫌われ、リストラされ、最後は殺される。ひどいwww

あ、最後に殺されるというのはラストのネタバレかと思われますが、大丈夫です。 なぜなら映画の冒頭でケヴィン・スペイシー演じるレスターのナレーションで 「僕は殺される」 て言って始まるからです。

最初見た時結末最初に言うのかよってびっくりしましたけどw

しかし誰に殺されるのか?
なぜその人に殺されたのか?
それを映画が終わった後考えるとこれまた深いものを感じることができます。

近年『ノーカントリー』という映画でも似た表現がされていましたが、 この映画の主人公一家と隣の一家、そしてそれらを取り巻く環境は、 アメリカの社会というものの縮図となっています。


湿った空気の流れる冷たい家庭 

仕事がつまらなくやる気をなくした夫 


浮気に走る妻 


親を嫌う娘 


麻薬の売人 


麻薬の常習者 


虐待 


精神病 


同性愛 


殺人 


未成年との恋愛 



これでもかの負の要素、それが小さな小さな人間関係の中に体現されています。 しかしそれらはサム・メンデス監督の圧倒的な演出により陰鬱な空気が払拭され、 軽快に時に笑えるような演出の元進んでいくのです。

こういったテーマなので爽快感はもちろんないですが、 これだけのテーマであるなら十分な爽快感を味わえる映画です。 「アメリカの美しさ」とは言いますが、 このアメリカとは何を指しているのかも考えどころです。

何年も前ですが、これは「白人アメリカ」を指しているのではないだろうかという指摘を目にしました。 よく見るとこの映画、主要登場人物が全て白人アメリカ人なんですよね。

(言葉悪いですが)普通なら黒人やアジア人が入っているものです。 映画の公開は2000年なので現在のようにオバマ大統領の元のアメリカとは状況が異なりますが、 当時の白人アメリカ社会への痛烈な皮肉が映画には込められている気がしますね。

それを確信したもう1つの要因は、映画見た方なら記憶にあるアレによってです。

そう、 飛ぶビニール袋。 スーパーのビニール袋が風にあおられて、 ふわふわ宙を舞っている状況をこの映画では 「これが最も美しい」 と言っています。 ビニール袋の色は? 白です。

白いビニール袋がどこに行くかもわからず風に身を任せてただ宙を舞っている。 白いビニール袋を白人に置き換えると?そういうことになります。この映画は日本人向けかというとそんなことはないでしょう。

アメリカの家庭が崩壊していく様を描いたコメディー映画ですから。 コメディーなのに笑えない方も多いでしょう。 しかし、映画のストーリーから少し視野を広げた時、とてもとても深いメッセージはそこにはあると感じることの出来る映画なのです。 

魅力あるものにしているのはやはり主演男優賞受賞のケヴィン・スペイシーの演技であり、 他のキャストの演技であり、サム・メンデスの演出であり、 映像美であり、音楽であり、、、 全ての融合により芸術作品という名の相応しい完成度にあるのでしょう。

小さなエピソードもアメリカを象徴しているのでそういった点でも考えさせられます。 例えばチアガールの女の子が最後レスターの前で泣くシーン。見た目と実際のギャップというやつですね。

振る舞いと本当の自分は異なるもの・・・ 深いです。当時「期待ハズレ」であった方も見方を変えて何かを感じ取れたらいいなと思います。答えがそこにあるわけではない。

しかし考えさせられる何か不思議な魅力にこの映画は溢れているのです。


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